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■舞台:日本
■主人公:”ちょっと変わった”中学生たち
「トップ・シークレット」あんのまるさん最新作は、世界が注目する海上のカジノシティ【トコヨノクニ】を舞台に、命がけで極上な《バトル×アクション×だましあい》!!
むかう敵は極悪非道な武器商人たち。
その目的は、4年前の「ある因縁」にさかのぼる――
「お前たちは逃げられない。絶対にだ」
こんな物語、見たことない!!
さぁ、極上のゲームの、はじまりです!
8.最終準備
8月29日 午前10:00 in別館
オープニングセレモニーは明日。
別館の庭で、書き込みだらけの資料の山を整理して、小型の無線機や変装道具のチェックをし終えたとき。
「ねえ、【蓬莱郷】には何があると思う?」
庭でテーブルセットの練習を終えたあざみが、手持ちぶさたに庭の花をぶちっと引き抜いて言った。
「わたしは、キラキラのお金がつまってるんやと思う!」
「ぼくは、そうだな、数年前の日常を取り戻せるような、何かがあると良いなって思う」
「僕、すごいスピリチュアルなものがあると思う! だ、だって蓬莱ってさ、不老不死の薬を持った仙人が住んでる伝説の場所なんだよ!」
モネの言葉に、ぼくはカジノシティの【トコヨノクニ】って名前を思い出した。
これは、古事記とかに出てくる常世の国っていう、不老不死になれる理想郷からとってるんだろうな。
「き、気づいたんだけど、『玉枝』っていう名前はさ、竹取物語で、かぐや姫が求婚者の1人に要求した“蓬莱の玉の枝”からつけたと思うんだ。そんな名前を使うなんて、考察がはかどるよね! ふへへ」
その話は国語でやった気ぃする、ってつぶやいた楓は内容を思い出そうとして、あきらめてた。
「あははっ もしかしたら【蓬莱郷】は、月に住む天上人がいるような不思議な場所かもしれないな」
「しししっ そうだよね。世界中の悪い大人がほしがる代物だし、人生を変えるくらいのものがあるに決まってるよね!」
そう言ったあざみは、手に持った赤紫色の花を見つめて笑った。
4年前。
多くの裏社会に生きる大人たちが、【蓬莱郷】を求めて探し回った。
けれど、だれも、その理想郷を見つけることはできなかった。
ネット上では、半年も経てば、うわさはうそと片づけられて。
人々はまたちがううわさに夢中になった。
でも、ぼくらはちがった。
正確には、ぼくらと、バロイア国と、千手楼は。
「よし、こっちに集まって。作戦の最終確認だよ」
あざみの声に、ぼくらはあい色のクロスのかかったテーブルに集まった。
そこには、ナイフとコインと、一輪の花だけが、三角を描くように置いてある。
「まずは、4年前の振り返りから。あのときのゲームのメインプレイヤーは、3チームだった」
ナイフが、千手楼のいる本郷グループ。
コインが、バロイア国。
赤紫の花が、ぼくら『スパギャラ』。
「4年前の、おれたちの目標は2つ。1つ目が、『玉枝』を盗むこと。2つ目が、【蓬莱郷】を見つけて入ること」
いつの間にか、テーブルの中央に『玉枝』を示す花瓶が置かれてた。
「1つ目の『玉枝』を盗むのには成功。2つ目の【蓬莱郷】を見つけることはできなかった」
花瓶をつかんだあざみ。
「しかも、最後におれたちは、『玉枝』を奪われた」
花瓶は、バロイア国のコインのとなりに移動する。
「これが、4年前のこと」
ぼくらはうなずいた。
「『玉枝』は実在した……ところで、なんで千手楼は『玉枝』をほしがってると思う?」
「え、それは、本郷の持ってたものは、いまは千手楼のもんやから、取り返したいんやろ?」
楓の言葉に、あざみはしししっと笑った。
「千手楼は、【蓬莱郷】に行きたいからだよ、きっと」
なるほど。あざみの言いたいことがわかったぼくは、にこっと笑った。
「おれは気づいたんだ。千手楼は【蓬莱郷】のありかを知ってるから、『玉枝』をほしがってるんだって。だから、このタイミングでおれたちが集められて、仕事を依頼されたんだ」
あざみの推理に、ぼくの鼓動は速くなる。
「【蓬莱郷】は、今回の求人内容にはふくまれてないけど、この理想郷は、どこにあると思う?」
「どこやろ、この別荘地にはなかったもんな……」
楓が首をひねる。
ニヤッと笑ったあざみが、バッとテーブルクロスを引き抜けば。
真っ白のテーブルに、竹筒状のナプキンが美しくのっていた。
「カジノシティ【トコヨノクニ】だ」
「え! そこにあるんか!?」
「きっとね。4年前に【蓬莱郷】がうわさされはじめたときから、本郷は【トコヨノクニ】をつくりはじめてたから、可能性は大だ」
【トコヨノクニ】を示すテーブルの上の配置は変わっている。
中心に、【蓬莱郷】のナプキン。
右に、本郷グループのナイフと、ぼくらの花。
左に、バロイア国のコインと、『玉枝』の花瓶。
「作戦はシンプルだよ。カジノシティに、バロイア国が『玉枝』を展示する。その『玉枝』とニセモノを、おれがすり替える」
花瓶をパッと背中に隠したあざみは、ニヤッと笑う。
「そして、『玉枝』を千手楼に渡して、おれたちは100億円を手に入れて、首輪を外してもらうんだ!」
「ふへへ、本番はまかせてよ」
「ついでに、【蓬莱郷】も、行けたら行きたいな」
「ついでに、あのムカつくバロイアのやつらに、仕返しもできたらええな!」
ぼくらは、互いに目を合わせた。
これから、【100億円求人】っていうセカンドゲームがはじまる。
100億円を手に入れて、首輪からも、千手楼からも。
この最低な日常からも。
逃げきるために。
「絶対に、成功させるよ!」
あざみのつきだしたこぶしに。
ぼくらはこぶしをぶつけた。
「ゲームスタートだ」