KADOKAWA Group

Children & Education

子育て・教育

【専門家に聞く】落ち葉が大好き! 秋の公園で見つけるミミズのひみつ

NEW

落ち葉やどんぐり拾いが楽しい秋の公園。ふかふかの落ち葉の下をのぞいてみると、そこにはミミズが元気に暮らしています。見慣れた存在ながらも、どちらが頭か、オス・メスはいるのかなど、意外と知らないことばかりですよね。そこで今回は、ミミズ研究の専門家である栃木県立博物館・主任研究員の南谷幸雄さんに、ミミズの知られざるすごさや観察ポイント、素朴な疑問についてお話をうかがいました。 


ミミズは地上の生き物を支えている!

 私たちにとって身近な存在であるミミズは、じつはまだよくわかっていないことがたくさんある生き物です。現在、日本で名前がついているミミズは163種類。国内には名前のない新種を含めて500種類以上、世界には5000〜6000種類ものミミズがいるといわれています。

 ミミズは落ち葉がたくさん溜まった、湿り気のある日陰を好みます。街路樹の下や森などで落ち葉をめくると、親指の爪ほどのコロコロとした土の塊が見つかることがあります。これがミミズのフン。黒く湿っていたら、ミミズが近くにいるサインです。


ネッタイミミズの糞塊


 ミミズは、落ち葉などを食べて植物の養分にする「分解者」として知られています。コナラやブナなどの落葉広葉樹林や、シイやカシなどの常緑広葉樹林の土中で暮らしている生き物たちの重量の約8割はミミズです。土の中にはそれだけたくさんのミミズが暮らしていて、森の栄養の循環を支えています。

 さらにすごいのは、ミミズが「ほかの生き物のエネルギー源となって生態系を支えている」という点です。ムクドリやツグミなどの鳥をはじめ、タヌキやモグラはミミズが大好物。骨がないミミズは食べられる部分が多く、消化しやすいタンパク源なのです。小型のタカチホヘビや、漫画家・手塚治虫さんのペンネームの由来として知られるオサムシの幼虫(厳密にはオオオサムシの仲間)など、ミミズしか食べない生き物もいます。アナグマも、エサの9割がミミズだといわれています。たくさんの生き物が森で暮らせているのは、それを支える圧倒的な数のミミズがいるからこそ。ミミズは、落ち葉を起点に、地上の生き物へとエネルギーを巡らせているのです。


オサムシの幼虫


親子でチャレンジ! ミミズを観察してみよう

「ミミズの絵を描いて」といわれたら、東日本の多くの人が茶色一色で描くのではないでしょうか。よく見てみると、じつは縞模様があったり、灰色や緑っぽかったりしているミミズもいます。西日本に生息している全長約30センチのシーボルトミミズは、青く光った見た目をしています。


シーボルトミミズ


 さらによく見てみると、からだ全体が同じ色ではないことがわかります。鉛筆をくるくる回転させるようにミミズをまわして観察してみましょう。黒っぽいほうが背中で、白っぽいほうがおなかです。おなか側を上にして置くと、黒っぽい背中が上になるように動きます。

 土の上にそっと置いたとき、ミミズが進む方向が「頭」です。頭をよく見ると口があり、そこから舌のようなものを出し入れして、まわりのにおいなどを探る動きをします。「どっちが頭かな?」「あ、口があった!」などと声をかけながら親子でじっくり観察してみてください。


口が出ているミミズ


知らなかった! ミミズ10の疑問

 気になるミミズの素朴な疑問について、南谷先生にQ&A形式でお答えいただきました!

Q1. ミミズは「虫」ですか?

ミミズは「環形動物門」というグループで、ヒルやゴカイ、イソメの仲間です。足が6本ある昆虫とは分類が異なりますが、日本では江戸時代まで生き物を獣・鳥・貝・魚・虫の5グループに分けていたため、長く「虫」の仲間として親しまれてきました。


釣り餌で使われている青イソメ


Q2. どれくらいのスピードで動く?

普段は1秒に1センチほどのスピードで動くことが多いようです。体節を縮めたり伸ばしたりする「ぜん動運動」が多いですが、種類によってはヘビのようにくねくね動いたり、敵などに驚くとウナギのように跳ねて逃げたりすることがあります。シーボルトミミズは、山の斜面を転がり落ちるようにして敵から逃げることもあります。

Q3. オス・メスはいる? 卵で増えるの?

ミミズは1匹がオスとメスの両方の機能を有する「雌雄同体」の生き物です。同じ仲間と出会ったとき、互いに精子を交換して卵包をつくります。ミミズは移動能力が低く、仲間と出会う機会が多くありません。そうした環境で子孫を残していくために、雌雄同体なのだと考えられます。また、一匹だけで卵を産んで繁殖する「単為生殖」を行うミミズもいます。

Q4. 手でさわっても大丈夫?

ミミズにはツノも爪も牙もなく、人間を傷つけることはありません。毒などもありませんが、ミミズを介して土中の雑菌がつくこともあるため、さわったあとはしっかり手を洗いましょう。じっくり観察するのであれば、手袋をつけるか、落ち葉などの上にそっと乗せて観察すると安心です。変温動物のミミズにとって、人間の体温(約36℃)は熱すぎるからです。



Q5. なぜヌルヌルしているの?

ミミズの背中には背孔と呼ばれる小さな穴があり、敵と遭遇するなど興奮したときに、この穴から防御物質として敵が嫌がるニオイの体液を出すことがあります。また、おしっこのような排泄物の場合もあります。ミミズは体液を介して皮膚呼吸をしています。体液があるおかげで、石や凹凸がある土の中でもからだを傷つけずに移動できます。

Q6. 雨の日に土から出てくるのはなぜ?

「雨で土の中の微生物が活発になり、酸素が足りなくなるから」という説がありますが、反論する専門家の意見もあり、まだはっきりわかっていません。ただ、ミミズにとって雨の日は乾燥や高温のリスクが低くなるため、地表を移動しやすくなるのではないかと考えられています。だから雨の日にミミズをよく見かけるのかもしれません。

Q7. コンクリートの上でミミズを発見! どうしたらいい?

ミミズは体液を介して皮膚呼吸しているため、表面が乾くと、呼吸しづらくなります。コンクリートの上などで干からびそうなミミズを見つけたら、湿った土や落ち葉のある場所へ戻してあげましょう。割り箸などでやさしくはさんで動かしてもいいですよ。



Q8. ちぎれたら2匹になるって本当?

ちぎっても2匹にはなりません。頭から体の3分の1くらいまで残っていれば、生き残る可能性は高いです。頭がない方は、しばらくピクピク動いたあと動かなくなります。

Q9. ミミズが鳴くってホント?

ミミズは鳴きません。ミミズには音を出す器官がないからです。ミミズがいそうな地面の下から聞こえる「ジー」などの音は、「ケラ」という昆虫の鳴き声です。

Q10. ミミズの天敵は?

「モグラ」です。モグラが土を掘るような振動を感知すると、ミミズは地上に出てきます。北米では、制限時間内に決められた区画からどれだけ多くのミミズを地上におびき出せるかを競うレースがあり、多くの参加者が地面に振動を与えてミミズを捕まえています。



ミミズは大地の歴史を教えてくれる

ミミズは鳥や昆虫のように広い範囲を自由に移動することが難しく、地域を超えて仲間と出会うことがほとんどありません。「この地域のミミズは南からきたのかな? 北からきたのかな?」と、ミミズの分布や系統を調べると、その土地の歴史や生態系の成り立ちを推測するヒントになります。ミミズは、「大地の歴史」を教えてくれる、とてもとてもおもしろい生き物です。秋の公園や森の中で、ぜひ探して観察してみてください。


取材・文:三東社

写真:PIXTA


【プロフィール】

南谷幸雄
栃木県立博物館・主任研究員。博士(農学)。
鳥のえさとしてのミミズの研究を皮切りに、愛媛大学大学院連合農学研究科でミミズの系統分類の研究に注力し、博士号を取得。栃木県立博物館で昆虫を除く無脊椎動物を担当。テレビやラジオなどメディア出演多数。

この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする

特集

ページトップへ戻る