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【懐かしい絵本18選】子どもにも読んでもらいたいおすすめ作品を紹介


子どもの頃に夢中になった絵本は、大人になっても心に残るもの。自分が好きだった懐かしい絵本を、子どもと一緒に読みたいと思っているママやパパも多いのではないでしょうか。そこで今回は、子どもに読んでもらいたい懐かしい絵本に注目。絵本専門士・高橋真生さんおすすめの作品を、年代ごとに厳選してご紹介します。
(※表紙の画像を押すと、それぞれの作品ページへ飛ぶことができます)


もくじ

誰もが懐かしく感じる絵本


10~20代が懐かしく感じる絵本

30代が懐かしく感じる絵本

40代以上が懐かしく感じる絵本

懐かしい気持ちで、子どもと一緒に絵本を楽しもう

 

誰もが懐かしく感じる絵本

絵本は世代を超えて愛されるロングセラー作品の宝庫。10代〜40代以上まで幅広い世代の人の心に残る絵本は、今でも子どもたちに大人気。誰もが懐かしく感じる絵本をまとめました。

長年多くの子どもたちに読み継がれているベストセラー『ぐりとぐら』(福音館書店)



なかがわ りえこ 作 / おおむら ゆりこ 絵

1967年に出版されて以来、今も多くの子どもたちに読み継がれているロングセラー絵本。シンプルな絵とリズミカルな文章は小さな子どもにも親しみやすく、登場する大きなカステラに思いを馳せた人も多いでしょう。関連書籍は20冊以上も出版され、多くの人に愛され続けています。

高橋さん:
「いつ手にとっても、のびのびとした明るさに元気がもらえる、おなじみのロングセラーです。
おいしそうなカステラはもちろん、ぐりとぐらが卵を運ぼうとする場面、卵の殻の車など、記憶に残る場面がたくさんあります。
大人として読んであげる側になってみると、その文章の読みやすさも魅力的。軽やかでリズミカルで、ただ読むだけでもいきいきと響きます。
『子どもの頃好きだったから読んであげたい』という方は、そのエピソードをぜひお子さんに話してあげてください。読み聞かせは、絵本だけでなく、読んでくれた人との幸せな時間が心に残るもの。きっと3世代、4世代とこれからも読み継がれると思います。3歳くらいからがおすすめです」

日本の伝統をモチーフにした愛らしいキャラクターが人気『だるまちゃんとてんぐちゃん』(福音館書店)



加古 里子 作・絵

「だるまちゃん」シリーズの最初の作品として1967年に出版され、愛らしいだるまちゃんは今でも大人気。だるまちゃんの気持ちに共感しながら絵本の世界を楽しめます。だいこくちゃん、てんじんちゃんなど、日本の伝統的なキャラクターも登場。加古里子さんのイラストは、今も昔も子どもたちを楽しませてくれます。

高橋さん:
「なんといってもキャラクターの魅力が光る『だるまちゃん』シリーズ。こちらは第一作です。
だるまちゃんのおねだりに一生懸命応える家族、ずらりと並んだおもしろい物、リズムのあることばに、子どもの心は穏やかに満たされます。だるまちゃんは、てんぐちゃんのまねっこばかりするのに、てんぐちゃんは、それを嫌がりもせずいつもほめてあげます。そういうてんぐちゃんの素直さと優しさを、喜ぶ子もいます。
だるまちゃんやてんぐちゃん、そしてこの絵本を読む子どもたちを見ていると、子どもの喜びや幸せの源がわかるような気がします。親にとっては、子どもの心や物の見方を教えてくれる絵本かもしれません。3歳くらいの子からおすすめです」

迫力満点なイラストが印象的『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)



マーシャ・ブラウン 絵 / せた ていじ 訳

力強いイラストが特徴的な絵本で、作品に登場するトロルは迫力満点。ちょっぴり怖いお話として印象に残っている人も多いかもしれません。1965年に出版され、今なお読み継がれている名作です。

高橋さん:
「幼い子は、大人が思うよりもずっと、知恵と勇気で危機を乗り越える昔話が大好きです。
こちらは保育園・幼稚園の定番絵本で、ノルウェーの昔話です。単純明快で力強く、子どもたちが何度でも読みたがる名作で、日常ではなかなかできない怖い冒険を、心の底から楽しむことができます。絵本の安心感をきちんと受け取れる4歳児くらいにおすすめです。
勢いのある見事な訳文ですが、古典的なことば遣いが気になるという方も。幼い子にも知らないことばを時間をかけて味わう喜びがありますから、テンポの良さを活かして、他のことばに言い換えずに原文のまま読んであげてください。もし意味を聞かれたら、その時に教えてあげるとよいでしょう」

国際的に高く評価されている絵本『すてきな三にんぐみ』(偕成社)



作:トミー・アンゲラー 訳:今江祥智(いまえよしとも)

黒いマントと黒い帽子を身にまとった三にんぐみが主人公。怖そうな雰囲気のある絵本ですが、最後まで読むとまた違った印象を持つかもしれません。1969年に出版され、1971年には旧厚生省が主催していた中央児童福祉審議会・特別推薦賞を受賞。1978年と1980年には国際アンデルセン賞・画家賞・次席を受賞するなど、国内外で高い評価を受けている絵本です。

高橋さん:
「表紙から漂う不穏な空気。一目見て“子どものころに読んだ!”と思い出す人も多い、インパクトのある絵本です。
子どもたちは、三種の武器をおもしろがり、小さな女の子の発想に感心し、寂しい孤児たちが救われることにほっとします。ワクワク・ハラハラ・安心など、さまざまな感情の体験に、夢中にならないはずがありません。歯切れのよいことば遣いも大人気です。
大人が読むと、どろぼうが孤児を助けるという関係性や、三人と女の子の出会いがより鮮明に感じられ、子どものころとは違う感想を持つかもしれません。つい深読みしてしまうところも、楽しい絵本です。怖いものに興味が出てくる4歳くらいから、幅広い年齢の子におすすめです」

教科書などでおなじみの作品『スイミー』(好学社)



レオ=レオニ/作 谷川俊太郎/訳

1969年に出版され教科書にも収録されている名作で「懐かしい」と感じる人も多いはず。絵本作家・レオ=レオニの画力と、絵本作家や詩人として活躍している谷川俊太郎さんの和訳が魅力的。一度読むだけで深く心に残る作品です。

高橋さん:
「教科書にも収録されている『スイミー』は、授業で扱われるためか、スイミーの賢さ、勇敢さ、仲間と力を合わせる大切さなど、教訓的な部分が印象に残っているという方も多いようです。
けれども、この絵本の大きな魅力はやはり絵。海の美しさや不思議さは、子どもたちに新鮮な驚きを与えます。ぜひ絵本を手に取ってみてください。
また、小学生なら、スイミーだけでなく赤い魚など別の視点から物語を読んだり、大人なら、個性や人生について深く考えたりすることもあります。何歳でも楽しめる、絵本の奥深さを感じる作品です。保育園・幼稚園行事の題材に使われることがあればその時に、小学生であれば授業の始まる少し前に、読んであげるのもよいですね」

10~20代が懐かしく感じる絵本

子どもの時に好きだった絵本を久しぶりに読むと、当時の思い出がよみがえり懐かしい気持ちで読書体験ができるかもしれません。もう一度読みたい絵本は何でしょう。10代から20代の多くの人たちが懐かしく感じる絵本をご紹介します。

小さなそらまめくんが大活躍!『そらまめくんのベッド』(福音館書店)



なかや みわ 作・絵

愉快なそらまめくんが大活躍する人気作品。なかやみわさんのデビュー作で、色鉛筆などを使ったやわらかな画風は多くの子どもたちを魅了し続けています。

高橋さん:
「大人には、パッと見た印象のかわいらしさに、逆に手が伸びないと言われることもある絵本ですが、読んでみると、ほのぼのしたまめたちの世界の意外なリアリティに気付くのではないでしょうか。
『かーしーて!』を巡る登場人物たちの揺れ動く気持ちや言動、そして成長は、まさに3歳くらいの子どもたちと同じもの。また、草花も、実際と同じように細やかに描かれています。だからこそ、子どもたちはこの絵本に引き込まれるのでしょうし、物を譲り合って使うようにと言われるよりも、自分がどうしたらいいのかを実感を持って学ぶことができるのだと思います。
今回ご紹介する中では新しい方ですが、すでに20年以上読まれている定番絵本です」

乗り物好きな子もそうでない子もみんなで楽しめる『おたすけこびと』(徳間書店)



なかがわちひろ 文 コヨセ・ジュンジ 絵

こびとたちと重機のスケールの違いがおもしろい! 見応えのある横長絵本です。文字量が多くないため、読み聞かせはもちろん、絵本を一人で読み始めた子どもにもおすすめ。街で重機を見かけたら、この絵本を思い出すかもしれません。子どもの想像力を広げるお手伝いをしてくれる絵本です。

高橋さん:
「『わー、楽しい!』『こんな小人がいたらいいな』と素直に思わせてくれる絵本です。
重機もお料理の工程もリアルなのに、働いているのは小人で、作っているのはケーキという楽しいギャップ。横長の画面に細かく細かく描かれた小人たち一人ひとりをじっくり見ても飽きません。乗りものに興味がない子も、この絵本なら、乗りもの好きの子と一緒に楽しめると思います。
夢いっぱいの絵本ですが、親子でゆっくりと眺めて、いろいろおしゃべりすることで、さらに夢がふくらみますよ。
人気シリーズでもあり、特に『おたすけこびとのクリスマス』(徳間書店)はプレゼントにもおすすめです。2・3歳から楽しめます」

子どもの一夜の冒険を描く『よるくま』(偕成社)



作・絵:酒井駒子(さかいこまこ)

大人のファンも多い酒井駒子さんによる、デビュー2作目の絵本。1999年に出版され2000年全国学校図書館協議会・選定図書に選ばれました。母親がそばにいない、よるくまの気持ちを誰もが一度は経験しているはず。親の立場になると、懐かしい記憶とともに子どもの気持ちに寄り添えるのではないでしょうか。

高橋さん:
「夜、目が覚めた時、保育園や幼稚園にいる時……子どもは、母親がそばにいない心細さや寂しさを、不意に感じてしまうことがあるようです。
この絵本では、『ぼく』はよるくまのために奮闘することで、自分の不安を解消し、幸せな気持ちで眠ります。読み手の子どもたちも、一夜の冒険を楽しんだ後、やはり安心を得ることができます。
ただ、目が覚めたらお母さんがいなかったという設定や、真っ暗な世界に、ショックを受けてしまう子も。文字数が少なく、よるくまが愛らしいので、低年齢の子向けとしても人気の絵本ですが、3・4歳くらいから、様子を見ながら読んであげるとよいと思います。
大人は、たくましいよるくまのお母さんに元気付けられますよ」

 

子どもたちの想像力を刺激する名作絵本『ミリーのすてきなぼうし』(BL出版)



作/きたむらさとし

2009年に出版され瞬く間に人気作の仲間入り。主人公の豊かな想像力が、色鮮やかなイラストで表現されています。「自分だったらどんなぼうしを被りたい?」読了後、子どもとの会話も弾む名作です。

高橋さん:
「ミリーは自分の想像でどんな帽子でもかぶれるようになりましたが、同時にみんなもそれぞれの気持ちに沿った帽子を持っていることに気付き、思いやりの心を持てるようになります。
想像力は空想を楽しむだけの力ではなく、想像力があるからこそ人に優しくできるということがよくわかります。
大人になってから読むと、ミリーにていねいに向き合う帽子屋さんやお母さんに、子どもの時とは違う感動があるでしょう。
教科書に掲載されていますが、載っていない絵もありますし、絵とことばがしっかりと結びついた作品なので、ぜひ絵本で読んでみてください。
現実と空想が混ざったストーリーは、幼い子には少し難しいようです。小学校低学年くらいがおすすめです」

30代が懐かしく感じる絵本

親になり子どもへ絵本の読み聞かせをするようになると、これまでとは違う絵本の楽しさに気付くこともあるでしょう。絵本のおもしろさは世代を超えて、現代の子どもたちの心にも思い出として残ります。30代の方たちが、懐かしいと思う絵本をご紹介します。

女の子とぬいぐるみが繰り広げる冒険の物語『こんとあき』(福音館書店)



林 明子 作

林明子さんが描く子どものかわいらしさや世界観は、幅広い世代で大人気。同作では、女の子のあきと、あきのおばあちゃんが作ったキツネのぬいぐるみのこんの冒険が描かれます。大好きなぬいぐるみと友だちみたいにしゃべることができたら? 夢あふれる世界は、大人も夢中になってしまいます。

高橋さん:
「優しい絵と、かわいい相棒――この絵本を、そんなふうに記憶している方も多いのでは?
改めて読むと、こんとあきのことばや行動に、思いやりやがんばろうとする意志が繊細に表現されていることに驚くかもしれません。子どもたちは、ハラハラする展開を楽しみながらも、それらを受け止め、2人を真剣に応援します。
また、幼い2人の真っ直ぐな気持ちは、大人の心も揺さぶります。こんのけなげさ、あきの成長に、「読むと泣いてしまう」という人も少なくありません。
背景には、『さむがりやのサンタ』(福音館書店)『不思議の国のアリス』など、さまざまな名作の登場人物が隠れていますから、探してみてくださいね。4・5歳くらいの子におすすめです」

「死」について考えるきっかけに『わすれられないおくりもの』(評論社)



スーザン・バーレイ 作・絵 / 小川仁央 訳

かけがえのない友人の死をテーマにした絵本で、死の意味を優しく伝えてくれます。絵本を通して死に触れることで、子どもが生や死について自分で考えるきっかけになるかもしれません。スーザン・バーレイの絵のやわらかなタッチも魅力的です。

高橋さん:
「子どもは、生きものに触れたり、身近な人やペットの死に遭遇したりすることで、生や死と出合います。
死とは何か。死をどう受け入れるのか。死について、子どもにどう伝えるのか。子どもに聞かれた時、答えるのがとても難しい質問ですが、淡々と死と向き合うこの絵本は、きっと大きなヒントとなるでしょう。
アナグマが動物たちそれぞれに残した、宝物となるような知恵や工夫。それをもってみんなで助け合うこと。死について語りながら、生きることについて考えるような絵本です。
6歳くらいから大人まで、幅広い年齢の方におすすめですが、子どもが疑問に思った時、いつでも読んであげてください」

意地悪だけどチャーミングなキャラクターに心温まる『となりのせきのますだくん』(ポプラ社)



作/武田 美穂 絵/武田 美穂

インパクト強めのますだくんを見て、絵本を読んでいた当時の記憶を思い出すママやパパもいるかもしれません。ぎょろっとした目に大きな口と牙のますだくんは、一見意地悪ですが愛らしさもあるチャーミングなキャラクターです。

高橋さん:
「隣の席の子が嫌で学校を休みたいという気持ちを、率直にていねいに描いた絵本です。明るい色遣いや、親しみやすい手書きの文字の効果で、重たさがなく楽しく読めます。小学校低学年くらいの子や、自分で本を読むのに苦手意識のある子におすすめです。
ますだくんは、意地悪な怪獣として登場しますが、本来はただ不器用な男の子のよう。みほちゃんに謝った後の後ろ姿は、人間に変わっています。どんな理由があっても意地悪は嫌と言っていい、でもその後に仲良くなる可能性もある、と感じさせるラストに、ほっとして、心があたたかくなります。
ちなみにこちらは、2人の始まりの物語。「ますだくん」シリーズを、親子でお楽しみください」

切ないラストが胸に響く『ごんぎつね』(偕成社)



作:新美南吉 絵:黒井健

1930年代に活躍した児童文学作家・新美南吉さんの代表作です。1986年には全国学校図書館協議会・選定図書や日本図書館協会選定図書に選ばれました。やわらかなタッチで描かれるごんぎつねの姿は印象深く、絵本で見た時に懐かしさを覚える人も多いはず。悲しい物語ではありますが、これからも読み継がれていくであろう名作絵本です。

高橋さん:
「教科書に何十年も掲載されている童話の絵本です。
『ごんぎつね』は文章だけで完成された作品ですが、この絵本の淡い色調の繊細な絵からは、ごんの悲しみや後悔といった気持ちがひしひしと伝わってきます。
ハッピーエンドでない物語を受け止め、深く味わえる小学校中学年くらいにおすすめですが、静かな文章は声に出して読むとより美しく響きますから、お子さんに紹介するだけではなく、ぜひ読んであげてくださいね。
また、親の視点では、ごんの幼さやひとりぼっちの寂しさが、より切なく感じられるかもしれません。大人になって絵本と再会する醍醐味を教えてくれる絵本でもあります」

40代以上が懐かしく感じる絵本

絵本はロングセラー作品の宝庫。人気作品はどの時代の子どもにも印象深く残り、新鮮なおもしろさを届けてくれます。40代以上の大人たちが懐かしく思う絵本も、決して古さを感じさせません。当時の思い出と共に、子どもと一緒に読書体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。

思わずホットケーキを作りたくなる!?『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)



わかやまけん 作 , もりひさし 作 , わだよしおみ 作

愛らしいこぐまちゃんの表情ときれいなオレンジ色が印象的。ホットケーキができ上がる様子を見ながら、自分も一緒に作りたくなってしまうかもしれません。シンプルでかわいらしい絵は、低年齢の子どもも楽しめます。

高橋さん:
「フライパンにたねを落として、ホットケーキが焼き上がるまでの過程を見開きで紹介するページには、きっと大人も目を奪われてしまうはず。
シンプルな絵で、ホットケーキの作り方も、子どもらしい失敗も、汚れたエプロンを着替えるところも、本当にリアルに表現しています。だからこそ子どもたちは、しろくまちゃんやこぐまちゃんになりきって遊べるのであり、お友だちにもなれるのでしょう。
この絵本は、「こぐまちゃんえほん」シリーズの中でも特に人気のある一冊です。そう、実は、シリーズの主人公はこぐまちゃんなのです。本書の主人公でこぐまちゃんのご近所さんであるしろくまちゃんも、もちろん登場しますよ。2・3歳におすすめです」

愛らしいねずみたちに夢中になれる!『14ひきのあさごはん』(童心社)



いわむらかずお さく

累計部数100万部を超える人気を誇る「14ひきの」シリーズの第1作となる絵本。1983年に出版された絵本ですが、ねずみたちの愛らしい様子は一度見たら忘れられません。丁寧に描かれた背景も魅力のひとつ。「14ひきの」シリーズのおもしろさを親子で楽しんでみてはいかがでしょうか。

高橋さん:
「『おねぼうさんは だれ?』というようなことばに誘われて、子どもたちは一生懸命絵を見ます。細やかに描かれたみずみずしい自然の中で、朝ご飯の支度をするねずみたち。みんなで協力しながらも、のんびりだったり、お茶目だったり、キャラクターはそれぞれ。自由でのびのびした空気と、家族の間のたっぷりの愛情が、この絵本の魅力。子どもたちは、気になる子になりきったり注目したりしながら、森の朝を満喫します。絵を楽しめるようになる3歳前後からがおすすめです。
それから、おいしそうな朝ご飯も大人気。『食べてみたい』『作ってみたい』……絵本の世界と生活とが一緒になって、興味はぐんぐん広がります」

子どもたちの想像力を刺激する人気絵本『おおきなきがほしい』(偕成社)



文:佐藤さとる 絵:村上勉

1971年に出版された翌年には、世界で最も美しい本コンクールと言われるライプチヒ国際図書デザイン展で銅賞を受賞しました。細部まで描かれた村上勉さんの挿絵は美しく、大人になってもツリーハウスに住んでみたいと思わず憧れてしまいます。

高橋さん:
「老若男女に愛され、皆が自分の憧れを熱く語ってしまう――50年以上愛され続けるツリーハウスの絵本です。五感を刺激する絵本は記憶に残りやすいものですが、画面いっぱいに広がる木の上の小屋、小屋に吹き込む風、おいしそうなホットケーキ、小さな生きものたちとの触れ合い。この絵本には、そんな幸せがすべて入っています。主人公であるかおるの想像にリアリティがあるので、読者の想像力がより刺激されるのかもしれません。
また、横に開く絵本が、途中で縦開きに変わり、高い木に登る気持ちを盛り上げてくれます。細やかに描かれた小屋の中の様子や、窓から見える景色などから季節の移り変わりを味わうのもよいですね。5歳前後からおすすめです」

アメリカで最も権威のある絵本賞を受賞した名作『マドレーヌといぬ』(福音館書店)



ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作・画 / 瀬田 貞二 訳

絵本を通してパリのおしゃれな雰囲気が伝わってくる人気シリーズの一冊。天真爛漫な主人公・マドレーヌや、犬を飼う様子に憧れた人も多いでしょう。ルドウィッヒ・ベーメルマンスは、本作品でアメリカで最も権威ある絵本賞と言える、コールデコット賞を受賞しています。

高橋さん:
「パリの寄宿舎に住む女の子が主人公のマドレーヌシリーズは、どの作品も物語のテンポがよく、文章はレトロで軽快、洒脱な絵も素晴らしく、パリ案内としても楽しめます。
そして何より魅力的なのは、一番のおちびさんなのに、一番やんちゃなマドレーヌ。こちらの2作目では、寄宿舎でかわいがっていた犬を勝手に捨てた大人に、マドレーヌは『あなたには、てんばつが くだりますから!』と猛抗議。
4・5歳くらいの子どもたちは、自分にはできないことをしてくれるマドレーヌに拍手喝采。うれしくて楽しくてたまらなくなってしまいます。子どもが何度も読みたがる絵本です」

独特な雰囲気が多くの人を魅了する『モチモチの木』(岩崎書店)



斎藤隆介 作 滝平二郎 絵

切り絵が特徴的な本作品を教科書で知った人も多いのではないでしょうか。じさまのために必死で夜道を走り抜ける豆太の姿、美しいモチモチの木の様子など、ページをめくるたびに懐かしい気持ちに包まれます。1971年に出版されて以降、作品の持つ独特な雰囲気は今でも多くの人を魅了し続けています。

高橋さん:
「教科書でもおなじみ、深い印象を残す名作です。
この絵本は、子どもとの出合いが肝心。子どもが表紙を怖がったり、方言や独特の語り口に戸惑ったりすることがあるからです。そのハードルを超えると、熱心に読み返す子も実に多い絵本なので、まずは読んであげてくださいね。ゆっくりお話の世界に浸ることで、怖かった切り絵のあたたかさに気付き、各場面の幻想的な美しさにも出合うことができます。
子どもたちは、豆太の勇気と優しさを心から喜びますが、豆太が結局甘えん坊のままであるというエピソードにもうれしがります。自分と同じ“普通の子”のありったけの勇気に力をもらえるのでしょう。小学校2・3年生くらいからがおすすめです」

懐かしい気持ちで、子どもと一緒に絵本を楽しもう

絵本は子どもの読み物という印象が強いかもしれませんが、大人になっても楽しめます。10代から20代、30代から40代と、読むタイミングによって、作品をおもしろいと感じるポイントは変わるかもしれません。懐かしい気持ちになりながら、子どもと一緒に絵本のおもしろさを味わってみてはいかがでしょうか。

【監修者プロフィール】

高橋真生(まい)さん



学びと読書のアドバイザー・絵本専門士。教員・図書館司書の知識と経験を活かし、学習・読書支援に携わる。また、言葉や日本の伝統に関する疑問について、生活文化の伝承という視点から解説を行う。
ホームページ:https://maitaka84.com/


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