KADOKAWA Group

【3歳児におすすめの絵本10選】ベストセラーや知識欲に応える絵本などを紹介!


3歳にもなると、言葉や人の気持ちなどいろいろなことがわかりはじめます。そんな3歳児にとって、絵本はさまざまな物事に触れるきっかけにもなります。おもしろいだけではなく、発達に合った絵本を読みたいものですが、どのように選べばいいのでしょうか?

そんな悩みに応えるべく、3歳児向けの絵本の選び方のポイントとおすすめの10作品を、絵本専門士・高橋真生さんが教えてくれました。子どもの気持ちや状況に寄り添った、ベストな一冊を探してみましょう。

(※表紙の画像を押すと、それぞれの作品ページへ飛ぶことができます)


もくじ

3歳児にとって絵本とは?絵本選びのポイントは?


想像する楽しさを味わえるおすすめ作品

子どもの気持ちと重なるおすすめ作品

はじめての経験を手助けできるおすすめ作品

その子の興味や経験に合わせてピッタリの一冊を選びましょう

 

3歳児にとって絵本とは?絵本選びのポイントは?

まずは、3歳の子どもにとって絵本とはどんな存在なのか、高橋さんに聞きました。

高橋さん:
「子どもは3歳くらいになると、生活の中での行動範囲や人間関係が広がり、多くのことを理解するようになっていきますが、現実と想像の世界を自由に行き来することもできます。絵本が、さまざまな体験やジャンルへの窓口になって、子どもの背中を押してくれますから、その時の気持ちや状況に合った絵本がおすすめです」

そのうえで、3歳児向け絵本選びのポイントは大きく3つあるといいます。

高橋さん:
「3歳の絵本選びのポイントは、主に『想像する楽しさを味わえる』、『子どもの気持ちと重なる』、『はじめての経験を手助けできる』の大きく3つです。それぞれのポイントを説明しながら、おすすめ作品を紹介します」

想像する楽しさを味わえるおすすめ作品

3歳は、聞く力に加え、想像力も大きく発達する時期。芽生え始めた想像力は、絵本を読む時、そして読んだあとにも発揮されるようになります。

高橋さん:
「絵本の世界に没頭することができ、心に思い描くイメージがどんどん豊かになっていく時期ですから、シンプルなストーリーで、子どもが自由に想像を楽しめる絵本がおすすめです。絵本を読んだあとに感想を言ったり、その絵本の世界に入り込んだ“ごっこ遊び”に熱中したりする子もいるでしょう。そんな時には、子どもの感想がどんな内容であっても否定せず、その気持ちをしっかりと受け止めてあげてください」

どのようなものが、想像する楽しさを味わえる絵本なのでしょうか。高橋さんがおすすめする作品を紹介します。

 

日本を代表するファンタジー絵本『わたしのワンピース』(こぐま社)



にしまきかやこ 作

空から落ちてきた真っ白い布で、うさぎさんがワンピースを作りました。それを着てお花畑を通るとワンピースは花模様に、雨が降ると水玉模様に、次々と柄が変わります。1969年に発行され、ファンも多いロングセラー。これまでに数々の絵本賞を受賞した、にしまきかやこさんの人気絵本です。

高橋さん:
「ご家族で楽しめる、世代を超えて愛されている絵本です。シンプルなのに、一度読んだら忘れられないような、やさしくてあたたかみのある絵と言葉、そして軽やかでゆったりとした空気。それらすべてが、子どもたちを想像の世界へと招き入れ、たっぷりと遊ばせてくれます。表現することがおもしろくなってくる年齢だからこそ、自分の好きなワンピースの絵を描いたり、着せ替え遊びをしたりと、絵本が日常とつながる喜びも味わえるでしょう。よく『女の子向けですか?』と聞かれますが、魅力的なファンタジーであり、シンプルなうさぎの表情には誰もが感情移入しやすいので、男の子にもおすすめです」

 

こわくないおばけの絵本『おばけのてんぷら』(ポプラ社)



作・絵:せな けいこ

うさこがごきげんでてんぷらをあげていると、においにさそわれた山のおばけが、そーっとしのびこんできました。さあ、たいへん!
ユーモラスな貼り絵で構成された、せなけいこさんの「めがねうさぎ」シリーズ。大人から子どもまで幅広い層に人気が高い、1976年発行のロングセラーです。

高橋さん:
「『おばけの絵本を読んでみたいけど、まだちょっとこわい……』という子には、読んでいると笑いがこみあげてくるような、こわくないおばけの絵本がおすすめです。
こちらは、マイペースな『うさこ』とおっちょこちょいな『おばけ』のひそかな攻防がいつ読んでも楽しい絵本。少し嫌なことがあっても『うさこ』みたいに『まあ いいや』とおおらかな気持ちになれます。
さらに、おいしそうな天ぷら、ぬくもりのある貼り絵と、わくわくするもの・心惹かれるものがギュギュッと詰まっています。子どもが読んでも、大人が読んでも気持ちが満たされる内容だからこそ、長く読み継がれているのだと思います」

 

エリック・カールの大人気絵本『パパ、お月さまとって!』(偕成社)



作:エリック・カール 訳:もりひさし

娘に月をせがまれて、パパは本当に月を連れてきた! 
本を上下左右に広げることで空の高さや月の満ち欠けを表現した、大胆かつユーモラスなしかけ絵本です。著者は、世界的なベストセラー『はらぺこあおむし』(偕成社)のエリック・カール。

高橋さん:
「子どもが絵本にあまり興味を示さない時や、読み聞かせに苦手意識がある時には、物語の展開に能動的に関われる『しかけ絵本』で誘ってみましょう。
この絵本では、お月さまに会いに行くパパのはしごの長さや山の高さが、上下左右に大きく開くしかけで表現されています。開いた誌面が絵本の見開きサイズよりも大きくなるページもあり、そのスケールにはみんなびっくり! 自分でしかけをめくり、その迫力を体感することで、誰もが絵本の世界に没頭できます。
エリック・カールが、娘の『お月さまとって!』というリクエストに応えるために作った、ワクワクのほかに、パパから娘への愛情が詰まった絵本でもあります。読み終えると、ほんわかした気持ちになりますよ」

 

子どもの気持ちと重なるおすすめ作品

3歳の子どもの気持ちと重なる絵本を選ぶポイントは何なのでしょうか。

高橋さん:
「3歳は、挑戦したいという意欲や知的好奇心が盛んになる頃なので、その気持ちに応える絵本を読むことで、実体験につなげたり、楽しみながら知識を習得したりすることができます。たとえば、『自分でしたい!』という自己主張が強くなってきたら、身の回りのことやお手伝いがテーマの絵本がおすすめです。また、絵本の暗唱や大人の口まねが多くなってきたら、言葉遊びやひらがなの絵本がぴったりです。乗りものや動物など、好きなジャンルをとことん掘り下げるのもよいでしょう。
また、絵本を読むことで、自分のしたいことや興味を見つけられることもありますから、物語や科学など幅広いテーマに触れさせてあげてください」

子どもの挑戦心を応援!『みつばち みつひめ てんやわんやおてつだいの巻』(ブロンズ新社)



秋山 あゆ子

はちのすじょうにくらす、みつひめは、おてんばなおひめさま。ある日、大事なつぼをわってしまいおおあわて!生まれて初めておしろの外に飛び出して……。
秋山あゆ子さんの『みつばちみつひめ』シリーズ第1弾。細部まで描き込まれたミツバチワールドが楽しい、ミツバチが主人公の時代劇仕立ての絵本です。

高橋さん:
「子どもの『自分でしたい!』という気持ちを応援してくれる昆虫時代劇絵本です。ミツバチの『みつひめ』のしたいこと、それはみんなのお手伝い。失敗しても元気でポジティブな『みつひめ』は、3歳の子どもにとっても、親近感たっぷりのキャラクターとして描かれています。『みつひめ』を見守る大人たちも愛情深く、読んでいてホッとします。
細かく描き込まれた絵も見どころの一つですが、とても愛らしいのに、実はそれぞれの虫の描写はかなり正確。虫が苦手な子も、この絵本を通して虫のイメージが変わり、『かわいいな』と思えることがあるかもしれません。
『ゆかいじゃ』『すまぬ』など時代劇風の言葉遣いも楽しく、新しい言葉をどんどん吸収し、使ってみたくなる年齢にも適しています」

 

科学への興味が芽生える絵本『しっぽのはたらき』(福音館書店)



文:川田 健 絵:薮内 正幸 監修:今泉 吉典

しっぽには、いろいろな働きがあります。物をつかむクモザルのしっぽ、ハエを追い払う牛のしっぽ、バランスをとるリスのしっぽ、体を支えるカンガルーのしっぽ……。「なんのしっぽでしょう?」という問いかけに、生きもののしっぽが描かれたページをめくると、その持ち主が現れるという構成になっています。たくみな構成とわかりやすい語り口、いきいきとした克明な絵が子どもの好奇心を満たしてくれる一冊です。

高橋さん:
「読み聞かせには物語を選びがちという方も多いのですが、3歳は子どもの幅広い興味に応えたい時期ですから、科学絵本もぜひ手に取っていただきたいですね。
こちらは、生きものたちのしっぽの働きの違いを追った科学絵本。クイズを出すようにみんなでワイワイ読むことも、写実的で動きのある見事な絵をじっくりと味わいながら読むこともできるので、3歳から小学校低学年くらいまで、幅広い年齢の子どもに喜ばれます。『へぇー!』という驚きに満ちていて、ほかのことも知りたくなる、子どもを科学の世界へ導いてくれるロングセラーです」

 

専門用語や図解が満載で知識欲に応える『せんろをまもる! ドクターイエロー』(小学館)



著:鎌田 歩

ドクターイエローの「秘密の仕事」に密着した、のりもの絵本。普段乗っている新幹線の安全や乗り心地のよさは、一体だれが守っているのでしょう?それは「新幹線のお医者さん」と呼ばれるドクターイエローとその仲間たちです。
著者は『しんかんせん、しゅっぱつ!』(福音館書店)、『ヘリコプターのぷるたくん』(小学館)などで知られる人気作家の鎌田歩さん。作中には「バラスト」や「トロリ線」など、ワクワクする専門的な用語がたくさん登場します。

高橋さん:
「電車や自動車、恐竜が好きな3歳児におすすめするのは、その知識欲に応えられる内容の絵本です。たとえば本作は、ドクターイエローや線路で働く保線車両たちの魅力や特徴が描かれた絵本。擬人化された車両たちの会話を中心に展開されるのでわかりやすく、描写は正確で、専門用語が多数使われていることも子どもたちの支持を集めるポイントです。ドクターイエローの内部が見られる、開くと1メートルにもなる図解ページも人気です。絵本を通して、図鑑や図録とは別の角度からの鉄道のおもしろさに出会えるでしょう。また、図鑑ばかりを見ている子どもが、物語を読むきっかけになるかもしれません」

はじめての経験を手助けできるおすすめ作品

保育園や幼稚園で初めての集団生活を送ることになったり、きょうだいが誕生したりと、3歳という年齢は新しい人間関係に不安を感じる場面が増えていく時期でもあります。生活環境の広がりや未体験のことが心配になってしまう子どももいるかもしれません。はじめての経験の支えになってくれるような絵本はあるのでしょうか。

高橋さん:
「不安な感情が生まれるのは、身の回りのことが理解できるようになったからこそ。子どもたちは、絵本の中で疑似体験することで、励まされたり、自分なりの答えを見つけられたりするようです」

 

ひらがなを覚える知育絵本『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』(リーブル)



さいとう しのぶ・作 みね よう・原案

うたって、あそべて、たのしめる、愉快な「たべものあいうえお」。「〇っちゃん〇がつく」のリズミカルなフレーズでひらがなを覚えられる絵本です。食べ物にまつわるフレーズが子どもの興味を引きつけます。発売以降、発行部数50万部を超える人気の絵本です。

高橋さん:
「ひらがなに興味が出てきたり、保育園や幼稚園でひらがなの練習を始めたりしたころに読んでほしい絵本です。
絵本でありながら全140ページという大ボリューム。なぜなら、最も身近な言葉とも言える自分の名前のひらがなを探せるように、五十音のほか、濁音・半濁音も掲載されているからです。自分の名前は特別なものですから、これはうれしいですね。
絵はユーモアたっぷりで、擬人化された食べ物たちの絵は表情豊か。その行動もおもしろいのに加え、別のページとのつながりも出てくるので、大人が見ても全く飽きません。
声に出した時の日本語のおおらかな響きも魅力です。かるた版もあり、絵本と併せて知育にもよいと人気です」

 

実体験の前後におすすめ!『ぼくひこうきにのったんだ』(あかね書房)



わたなべしげお さく おおともやすお え

くまたくんは、朝おきたときからむねがどきどき。きょうははじめて飛行機にのるんです……。わたなべしげおさんの「くまたくんのえほん」シリーズの一冊で、「飛行機に乗る」という初体験の興奮、喜びを描いています。出発してから飛行機を降りるまでのくまたくんの心の動きはもちろん、飛行機の内部や空港で働く車のリアルな部分もていねいに描かれている、臨場感のある作品です。

高橋さん:
「3歳は経験の幅が広がり好奇心が旺盛なころなので、はじめての体験をサポートしたり、より深めたりする内容の絵本もよいでしょう。1歳向けの人気シリーズ『くまくんのえほん』のお兄さん版『くまたくんのえほん』には、自転車やお留守番など多彩なシチュエーションのお話があるので、その時のお子さんに合う絵本を選ぶことができます。
こちらの絵本で取り上げているのは、はじめて飛行機に乗るドキドキ。実際に飛行機に乗る前後に読むのはもちろん、乗りものが好きな子にもおすすめです。もし表現が古く感じられる部分があったら、『今はこうだよ』と教えてあげるとよいでしょう」

 

入園前に読んでおきたい『ならんでるならんでる』(偕成社)



作:竹下文子 絵:鈴木まもる

ちいさいありが ならんでる。あひるのおやこが ならんでる。こどもが10にん ならんでる。いろんな子がいるよ。みんなでならんで、何をするのかな?どこへ行くのかな?わくわく、どきどき、ページをめくるたびに楽しいことが待ってます。
並んでいる先には何が続くのか?子どもの好奇心をくすぐりながら、「並ぶ」という行動を通して社会性を育むことができる絵本です。保育園や幼稚園の入園前や入園後、はじめての集団生活に入る子どもと読みたい、春におすすめの一冊です。

高橋さん:
「『並ぶ』『順番を守る』というのは、大勢で生活するなかでは日々当たり前のように行われていますが、子どもによっては、一人で並ぶのが不安だったり、『ここでいいのかな』と悩んだり、はたまた別のことをしたいのを我慢していたりと、複雑な思いを抱えています。けれども、この絵本を読むと、不思議と並びたくなってしまうのです。ありに、あひるに、車に、こどもたち。みんなずらりと並びますが、その先に、いいこと・楽しいことが待っているからかもしれません。やわらかく親しみやすい言葉と絵も印象的です。ゆったりとした気持ちでお読みください」

 

思いやりの心を育む『そらまめくんのベッド』(福音館書店)



なかや みわ 作・絵

そらまめくんの宝物はふわふわのベッド。だからだれにも貸してあげません。ところが、そのベッドが突然なくなってしまったのです……。
「そらまめくん」が活躍する、子どもたちに大人気の絵本シリーズの第一作。そして『くれよんのくろくん』(童心社)などの人気作家なかやみわさんのデビュー作でもあります。

高橋さん:
「そらまめくんたちの愛らしさは特筆すべきものではありますが、私は、この絵本の最大の魅力は、リアルに、そして細やかに描かれた、さまざまなまめたちの心の動きだと思います。『宝物だから誰にも貸したくない』という気持ちや、意地悪された後の少し冷たい態度、そして誰かを応援する気持ち……。大人でもドキッとさせられるのではないでしょうか。
3歳という年齢は、友だちやきょうだいと言葉でコミュニケーションができるようになり始め、日常的に『かして』『いいよ!』というやりとりをすることも増えてくるころ。『そらまめくん』は、友だちの一人のような存在として、思いやりの心を育んでくれます。
最後はみんなで『おやすみなさい』。ほっとするエンディングですから、眠る前の読み聞かせにもおすすめです」

 

その子の興味や経験に合わせてピッタリの一冊を選びましょう

今回は、3歳児向けに絵本を選ぶポイントとおすすめの作品を高橋さんに紹介してもらいました。もしも3歳児向けの絵本を読むのが難しいように感じた時は、その子に合った絵本を読んであげるのがベターと高橋さんは話します。

高橋さん:
「3歳は、それぞれの子どもに発達や経験の違いが出てきやすい年齢でもあります。絵本の対象年齢はあくまでも目安。まだあまり絵本を読んでいない子であれば、1歳児向け、2歳児向けとされる絵本を選んでもよいと思います。年下の子ども向けの絵本は、その上の年齢の子どもでも楽しめることが多いので、心配せずに、その子に合った絵本を読んであげてください」

子どもによって成長や経験、興味の対象に違いが出てきやすい3歳という年齢。絵本を購入する時やプレゼントする時は、高橋さんに教わった3つのポイントを参考にその子に合った絵本を選んでみてください。絵本を通して世界を広げていく子どもの後押しになるでしょう。

 

【監修者プロフィール】

高橋真生(まい)さん



学びと読書のアドバイザー・絵本専門士。教員・図書館司書の知識と経験を活かし、学習・読書支援に携わる。また、言葉や日本の伝統に関する疑問について、生活文化の伝承という視点から解説を行う。
ホームページ:https://maitaka84.com/


この記事をシェアする

ページトップへ戻る