「サキヨミ!」シリーズで大人気★七海まち・待望の新作『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』は、闇の百人一首の封印をといちゃったヒメと、謎のクール男子・嵐(らん)がいどむ、和歌バトル×学園ストーリー! 9月9日(水)の発売にさきがけて、ドキドキの【ためし読み】を特別に先行公開するよ★
『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』
(七海 まち・作 ぎんいろ・絵)
9月9日発売予定
5 初めての封札(ふうさつ)
「きみがため はるののにいでてわかなつむ わがころもでにゆきはふりつつ」
(……これで、いいんだよね?)
おそるおそる東堂くんを見ると、満足そうにうなずいてくれた。
次の瞬間、光のつぶがグワッと大きくふくらんだ。
(うわっ⁉)
視界いっぱいに光が広がる。
すると、目の前に不思議な映像が流れだした。
――雪の降る草原。平安時代風の衣装を着た男性がしゃがんでいる。
袖に雪が降りかかるのもかまわず、静かな手つきで野草を摘んでいる。
「あの人は喜んでくれるだろうか」
穏やかな声と、優しいほほえみ。――
(これは、何? まぼろし……?)
そう思うのと同時に、ぱっと視界が切りかわった。
目の前に広がっていたのは、元どおりの庭の光景だった。オバケのような野草は元の大きさにもどっていて、雪も降っていない。
すると、
「封札、成就。さすがだね、西園さん」
「わー! おもしろかったあー!」
背の高い男子とショートカット女子が、笑顔で歩みよってきた。
「やったな。成功だ」
そう言って、東堂くんは家の屋根のほうを見上げた。
そこには、二つの四角いもの――闇札がふわふわと浮かんでいる。かと思うと、まっすぐにわたしのところに飛んできた。
「わっ⁉」
あわてて両手で顔をかばうと、「ぱしっ」「ぱしっ」と、二枚の札が指の間におさまった。
おそるおそる見たとたん、「あっ」と声がもれる。これ、ほんとに百人一首の札だ!
一枚は、男性が描かれた読み札。
もう一枚は、取り札。筆で「わかころもてにゆきはふりつつ」と書かれている。
これって、わたしがさっき読んだ歌の札、だよね。
「って、そうだ、お父さん!」
あわてて、お父さんのところに駆けよる。
お父さんは手にヨモギを持ったまま、地面に横たわっていた。
爪には血がにじんだままだけど、すう、すう、と静かに息をしている。
「大丈夫。気絶しているだけだよ。もう少ししたら、目が覚めるはずだ」
背の高い男子が言った。
「あのお、ええと……?」
「あっ、まだ自己紹介してなかったね! あたしは、二年一組の北泉冬希(きたいずみ・ふゆき)! で、こっちは」
「三年二組の南戸清史郎(みなと・せいしろう)だ。よろしく、西園さん」
ショートカット女子と背の高い男子は、わざわざ生徒手帳を見せてくれた。
なるほど、「北泉」に「南戸」――って、あれ?
「西園」と「東堂」をあわせると、「東西南北」になる?
「覚えてるか? 数珠は封じ手のあかし、って言っただろ」
東堂くんの言葉に、先輩たちが手首をつきだす。
冬希先輩は、黒い数珠。南戸先輩は、赤い数珠をつけていた。
色ちがいの、四つの数珠。数珠は、封じ手のあかし。っていうことは、つまり――。
「おれたち四人で、『四方の封じ手』なんだ」
さあっと吹いた風が、東堂くんの髪を静かにゆらした。
***
その後。
わたしたちは、気がついたお父さんといっしょに家の中に入った。
「混乱してるよね、西園さん。でも、聞いてほしい。僕ら封じ手の、大事な使命のことだ」
みんなでソファに座ると、南戸先輩が話しはじめた。
お父さんは、「闇札」の呪いにかかってしまっていたらしい。
闇札は、歌に詠まれた「思い」と似た感情の人――「共感者」に呪いをかけるんだって。
さっきは、お父さんが野草の天ぷらの歌の「共感者」になっちゃってたんだ。
「闇札は、共感者がいる空間に異常現象を起こす。歌に出てくる言葉が大げさになったり、ねじ曲がったり。さっきの吹雪と巨大な野草を思い出してもらえば、わかるよね」
南戸先輩の言葉に、なるほどとうなずく。
「でね! どの歌の呪いなのかがわかったら、嵐が真言っていう呪文を唱えて、ヒメちゃんが歌を読むの。そうすると、呪いの力が弱まって、札として回収できるようになるんだ!」
冬希先輩がにこにこしながら言う。
この一連の流れのことを、「闇札を封じる」、つまり「封札」と呼ぶんだって。
「闇札の呪いにかかると、その間の記憶が消える。だからこのとおり、西園の親父さんは何も覚えてないってわけだ」
東堂くんが言うと、お父さんは腕を組んだまま首をかしげた。
「庭で天ぷらにする野草を摘んでいて、気がついたらヒメたちがいたんだ。でも、本当なのか? 本当にそれ、『闇札』なのか?」
お父さんが、テーブルに載った二枚の札を指さす。
「本当ですよー! しばらくは平気だけど、時間が経つとまた悪さをするようになっちゃうから、その前にほこらにもどさないとなんです」
冬希先輩に言われて、「そうか……」とお父さんが肩を落とした。
「って、あれ? お父さん、闇札のこと知ってたの⁉」
「ああ。お母さんから聞いてはいた。本当はお母さんからヒメに伝えるはずだったんだが、その機会がなくなってしまった。おれも伝える必要はないと思っていたしな」
すまない、とお父さんが苦しそうな表情で言った。
それじゃあ……ぜんぶ、ほんとなんだ。
本当にわたし、「封じ手」のひとりなんだ……!
「でも、どうしてだ? 闇札は、ほこらに封じられていたはずだよな?」
――お父さんの言葉に、ギクッとする。
「そ、それは……」
言いづらくて口ごもっていると、東堂くんがわたしを見た。
「けっとばしたんだよな、おまえが」
「――けっとばした⁉」
お父さんが目を見開く。わああ! わたしから言おうと思ったのに!
そのとき、外からキィッと車が止まる音が聞こえた。
続いて、ピンポーンとチャイムが鳴る。
「ん? だれだ?」
お父さんが玄関に向かう。やがて、がちゃっとドアを開ける音がしたかと思うと、
「――おい! 何しに来た!」
(えっ、何⁉)
お父さんのどなり声に、あわててわたしもろうかに出る。
玄関のドアのむこうには、ぱりっとしたスーツのダンディな男性が立っていた。
「やあ、京太郎(きょうたろう)。ひさしぶりだね」
男性はお父さんの名前を呼ぶと、にっこりとわたしに笑いかけた。
「西園ヒメさん、はじめまして。わたしは東堂澄人(とうどう・すみと)。まほろば中の校長です」
「えっ、校長先生⁉」
そういえば、そうだ! この人、今日の入学式であいさつしてた!
「そして、そこにいる嵐の母親の弟、つまり叔父でもあります」
「えっ?」
ふりかえると、東堂くんがぶすっとした顔で立っていた。
★<ためしよみ・第6回>へ続く★
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