『サキヨミ!』シリーズで大人気★七海まちさんの新作『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』が、いよいよ9月9日から本屋さんにならびます♪
新作発売を記念して、『ウタヨミ!』を購入すると初回特典として『サキヨミ!』の番外編が読めちゃうスペシャル企画を実施! 気になる、美羽と瀧島くんの初デートをのぞけちゃうよ★
ここでは、1章だけとくべつにためし読みを公開! つづきが気になる~って人は、ぜひ『ウタヨミ!』をゲットしてね! ではでは、ドキドキの番外編スタート!(期間限定:2027年3月31日23:59まで)
『サキヨミ!』番外編 ~美羽と幸都の初デート~
◆1
校舎の二階にある、ガラス張りの渡り廊下。
その通路のむこうに、大好きな彼の姿が見える。
――やっと会えた。
ここは、二人の思い出の場所だ。
「ユキト!」
その呼びかけに、はっとこちらを見る彼。二人同時に駆け寄って、ぎゅっと抱き合う。
「会いたかった……」
「ユキト。もう、どこにも行かないで」
涙が、白いほおをつたう。同時に大音量で流れ出す、男性ボーカル。
(うわあ……! だめだ、泣いちゃう!)
大きなスクリーンが、涙でにじむ。
エンドロールが終わるまで、私はハンカチを離すことができなかった。
「美羽(みう)、大丈夫?」
照明がついてシアター内が明るくなると、となりに座っている幸都(ゆきと)君が声をかけてきた。ハンカチで目をぬぐう私を、心配そうに見つめている。
「うん、平気。すっごく、感動しちゃった」
「そうだね。ラストシーンには、僕もうるっときたよ」
言われてみれば、幸都君のまつげ、ちょっとぬれてるように見えるかも。
私は、如月(きさらぎ)美羽。
今日は、ついこの間からお付き合いを始めた彼氏――瀧島(たきしま)幸都君と、ショッピングモールの映画館にやってきたんだ。
見たのは、『アオハレ』っていう映画。感動できるって話題の、SFアニメだ。
親友の夕実(ゆみ)ちゃんにおすすめされたんだけど、本当に見に来てよかった!
ヒロインがタイムリープしながら恋人との再会をめざしてがんばるお話なんだけど、偶然にも相手の男の子の名前が「ユキト」だったこともあって、すごく感情移入しちゃったよ。
実は、デートらしいデートはこれが初めてなんだ。
春休みに入ってから、新入生歓迎会で流す部活紹介の動画を作るのにいそがしくて、なかなか二人で出かけられなかったんだよね。
入学式は、来週だ。私も幸都君も夕実ちゃんも、二年生。ついに先輩になるなんて、なんだか不思議な感じ。
美術部にも、後輩が入ってくるのかな。たくさん来てくれるかな?
新しい学年になるのはいつも緊張するけど、今回はすごくワクワクするな。
「そろそろ出ようか。フードコート、混んじゃうかも」
幸都君に言われて、うなずく。
「そうだね。おなかすいちゃった」
通路の階段を下り始めると、「足元、気をつけて」と、幸都君が手を差し出してくれる。ドキッとしながら、私はそっとその手をにぎった。
付き合う前だって、幸都君と手をつないだことはある。でも、「彼氏」だって思うと、前よりずっとドキドキしてしまう。
「本当に、いい映画だったね。沢辺(さわべ)さんのおすすめ、見にきてよかったよ」
「ね。夕実ちゃんに、よくお礼言わなきゃ」
「沢辺さん、今日も叶井(かない)先輩と会ってるの?」
「そう言ってた。行き先は聞いてないけど、春休みは部活がない日以外、毎日会ってるみたい」
「いいね。僕たちもそうする?」
「えっ? でも、幸都君、生徒会のお手伝いは?」
「昨日で終わり。これからは、始業式まで毎日会えるよ」
すぐとなりでほほえむ幸都君に、胸の中がぱあっと明るくなる。
「うん。じゃあ、明日も会おう。どこにしよう。公園?」
「うちに来たら? 姉も会いたがってたし」
「え、ヒナノさんが? 私も会いたい!」
ふふっ。うれしいな。
幸都君とお付き合いすることになってから、毎日がずっときらきらしている。
最近は、夕実ちゃんが好きなロックバンド・シルバーベリーの曲をよく聴くようになった。
実は今の映画の主題歌も、シルバーベリーが歌っていたんだ。
シルバーベリーの曲は、恋愛を歌ったものが多いの。
これまではなんとなく聴いていた歌詞だけど、幸都君と付き合ってからは、なんだか自分のことに思えるようになってしまった。
早く会いたいっていう気持ちとか、夜電話した後のふわふわした気持ちとか……「どうしてわかるの?」って思うくらい、歌詞に共感しちゃうんだよね。
夕実ちゃんがシルバーベリーを好きになったのも、叶井先輩の彼女になった後のことだったし。私と同じように、共感しながら曲を聴いているのかもしれない。
ポップコーンを持つ人とすれちがうと、そのにおいで空腹が刺激された。
「幸都君、何か食べたいものある? 私、なんでも付き合うよ」
「美羽の好きなものがいいな」
「ええっ? それなら……カツ丼かな? 映画で二人が食べてたの、おいしそうだったから」
「ああ、いいね。言われてみれば、僕もカツ丼の口になってたかも」
二人で笑い合って、シアターの入場口を出る。すぐそばにショップがあって、映画のグッズを見る人たちでにぎわっていた。
すると、そのとき。
「あれ、美羽ちゃん!?」
聞き慣れた声にふりかえると、そこには目を丸くした夕実ちゃんが立っていた。
「夕実ちゃん!? どうして、ここに?」
夕実ちゃんが、へへっと笑う。
「『アオハレ』二周目、急きょ見に行くことになって。ヒサシ君とたった今見てきたんだー!」
言いながら、夕実ちゃんはチョキの手をつき出した。
「ということは、僕たちと同じシアターだった?」
「だね、気づかなかったよ! 美羽ちゃんが今日瀧島君と映画デートってことは知ってたけど、おんなじ回だとは思わなかったなぁ。二人のとこ、ジャマしちゃってごめんね」
「えっ、ぜんぜん! ていうか、叶井先輩は? いっしょなんだよね?」
「うん、あそこで悩んでる」
夕実ちゃんが指差した先には、ショップの棚の前で腕を組んでいる叶井先輩の姿があった。見ているのは、開けるまで何が入っているのかわからないランダムの缶バッジ。どうしても、お目当てのものを出したいらしい。
「私もアオハレグッズ、二個目を買うつもりなんだ」
そう言って、映画場面の写真を使ったしおりを持ち上げた。
「アクキーに続いて、しおりかあ。いいね」
夕実ちゃんは、アオハレのアクリルキーホルダーをカバンにつけているんだ。この前の部活のとき、見せてもらったばかりだ。
「沢辺さん、よっぽど映画が気に入ったんだね」
「だって、胸がぎゅんぎゅんゆさぶられるじゃん! シルバーベリーの歌も最高だし!」
でもね、と夕実ちゃんはくすりと笑う。
「それだけじゃないんだ。ヒサシ君といっしょに出かけるたびに、必ず記念に何か買って、それといっしょに二人で写真を撮ることにしてるの。そうすると、記録にもなるし、二人で過ごした時間がスマホの中にたまっていく感じが好きなんだ。写真もモノも、見るたびに楽しい思い出を振り返られるしね」
「へえ……! それ、すごくすてき」
「でしょ? 美羽ちゃんたちもマネしていいよ!」
そのとき、「夕実!」とすぐそばで大きな声がした。
「決めたぞ! これに賭ける! ……って、如月さんに、瀧島?」
小さな箱を持った叶井先輩が、私たちを見てきょとんと目を見開いた。
*
「まさか、同じ回を見ていたとはな」
叶井先輩が、カツ丼をつつきながら言った。
私たちは、四人でフードコートにいる。
せっかくだから、いっしょにお昼を食べようってことになったんだ。
テーブルの上には、カツ丼が四つならんでいる。
「ねらった缶バッジは出なかったが、うれしい驚きだったぞ。新入部員獲得のためにも、今からカツ丼でゲンかつぎするのはいいかもな」
「叶井先輩、何をねらってたんですか?」
となりに座る幸都君が問いかける。
「ヒロインが飼っているモモンガだ。実際に出たのは『ユキト』だった。瀧島、いるか?」
「いや、いいです。それも大事な思い出になるでしょうから、大切にしてください」
「なるほど、そうだな」
「美羽ちゃんたち、映画館で何か買わなくてよかったの?」
正面の夕実ちゃんにたずねられ、私は首をふる。
「大丈夫。この後、いっしょにお店を見て回ることになってるし」
「まずは本を見にいこうって話してたんだ。沢辺さんたちは?」
「あ、いいね! 私たちは、クレーンゲームとガチャガチャを見にいくつもり」
「クレーンゲームは、映画の半券を見せれば一回無料だしな」
へえ、なるほど! そんなサービスがあるんだ。
それなら、後で見にいってみてもいいかも。また夕実ちゃんたちとばったり会うことになるかな?
「――あれ?」
夕実ちゃんが、おはしを持つ手を止めた。
「ねえ、あそこにいるの、チバ先輩じゃない?」
『サキヨミ!』のキャラクターが続々登場しちゃうなんて!
美羽と瀧島くんの初デート、どうなるの!?
つづきはぜひ、七海まちさんの新作
『ウタヨミ! 呪いの百人一首を封印せよ!』を
ゲットして読んでね!
9月9日(水)発売だよ。お楽しみに!
書籍情報
その他の連載はこちらからチェック!▼