
『世にも奇妙な商品カタログ』の作者がおくる、ときめいて「ゾッ!」とする新シリーズ『もしもの世界ルーレット』を、どこよりも早くおとどけ!
いっけんステキな理想の世界にかくされた、超キケンなワナとはいったい――?
キミには、この結末がわかるかな?
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プロローグ わたしの願いで世界が終わる!?
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こんな世界、もう終わってしまえばいいのに――。
そう思いながら、東雲彩(しののめ さい)は一人で橋の上に立っていた。
らん干(かん)の前に立ち、きょろきょろとあたりを見回す。
(……よし。だれも見てないな)
それをたしかめて、サイは紙袋を持った両手を、らん干の外へとつき出した。
小きざみにゆれる紙袋の真下に、にごった川の流れが見える。
(この手を……はなせば……)
だめだ。だめだめ。そんなことは、しちゃいけない。
だって、この紙袋の中に入っているのは――明日の入学式で着る、普崎(ふさき)中学校の制服なんだから。
これを川にすててもムダ。
そんなことをしたって、あこがれの陽中咲(ひなかさき)学園中学校の制服を着られるわけじゃない。
受験に失敗した事実はなくならないし、入学式は中止になんてならないし。
――もちろん、世界が終わったりもしないのだ。
はあ、とサイはため息をつく。
見下ろす川面を、時おりちらほらと桜の花びらが流れていくけれど、今のサイには、それもただのきたないゴミにしか見えなかった。
(わたしが陽中咲学園に通えない世界なんて、もうこれ以上、続かなくてもいいのにな……)
そのときだった。
川面がふいに、キラリと光ったように見えた。
いや。正確には、川面ではなく……そこに映る空が。
「何……?」
サイが思わず見上げると。
ひゅるるるるる~……
と、空高くから何かが落ちてきて。
ぽすんっ!
と、紙袋を持つ手の上に、その何かが乗っかった。
「えっ……!? 何これ――……ぬいぐるみ?」
そう。それは、ピエロのぬいぐるみだった。
顔に星のマークがついた、二頭身のマスコットキャラクターっぽいデザインのピエロ。
今、サイの手の上に絶妙なバランスですわっているそれは、うかつに手を動かそうものなら、真下の川に落ちてしまいそうだ。
サイは、ぬいぐるみを落とさないよう、そうっと両手を胸の前に――。
引きよせようとした、その瞬間。
「ハーイ、こんにちわ! ワタシは“新しい世界”の管理人、ピリカルカだよ!」
「……っわあああああ――――!!」
ピエロのぬいぐるみが、いきなり動いてしゃべり出したのだ。
おどろいたサイは、さけび声を上げながら、のけぞったいきおいで転んで尻もちをついた。
制服の入った紙袋が、橋の上の道路にどさっと落ちる。
ピエロのぬいぐるみは、空中で一回転したあと、すとんと紙袋の上に着地した。
あっけに取られているサイに向かって、ピエロは言う。
「とつぜんだけど、このままじゃ、この世界は壊れてしまうよ! キミが今、『こんな世界、もう終わってしまえばいいのに』と願ったからね!」
「……え?」
「ほらほら、見てごらん。もうすでに、あっちでもこっちでも崩壊(ほうかい)が始まってしまっているよ」
ピエロが、ぐるりとおどるようにまわりを見た。
つられてサイもそこらを見回す。
すると、ピエロの言うとおり。
空に、地面に、何もない空間のあちこちに、いくつもの大きなヒビ割れが生まれていた。
「う……うそ。……そんな」
「ああっ、もう時間がないよー!」
何かがきしんで、くずれていくような音とともに、ヒビは少しずつ大きくなっていく。
世界が――……壊れていく。
「今すぐに、新しい世界を作るためのルーレットを、回さなきゃ!」
ピカッ、と。ピエロの顔に描かれた星のマークが、光を放った。
サイは、ピエロとともにその光に包まれた。
そして――……。
新しい世界の姿は、ルーレットの結果しだい♪
いったいどんな世界になるのかな♪
さーて、それじゃあ、さっそく。
――ルーレット・スタート!
サイがまわしたルーレットでえらばれたのはいったいどんな世界……?
▶第2回へ続く
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