アメくんのうしろから、三つ編みの女の子があらわれる。
「彼女は同じ二組の、和泉さん。和泉さんは、とくべつな事情があって、雨がふってほしいって願ったんだ」
「とくべつな事情?」
「そんな、すごい事情じゃないの。ただ、カヤックがこわくて……」
あっ。湖でする、カヤック体験のことだね。
「わたし泳げなくて、水が苦手なの。だからつい、雨がふれば中止になると思って……。ごめん。たのしみにしている子だっているのに」
「和泉さん、あやまることじゃないよ。みんなそれぞれ、こわいものはあるから」
「そうだよ。わたしも、ちょっとこわいし」
初体験だけど、うまくできる想像ができないもん。
「でもこれで、はっきりしたね。ぼくたちがかなえる天気は、雨だよ」
アメくんは、うれしそうに言う。うーん。カヤックも、明日の二日目にあるし……。
和泉さんが、こんどこそ、本物の依頼人でまちがいないかも!
「ちょっとまて。和泉がお願いした神社は、ほんとうにお天気神社か?」
ハレくんがきびしい顔つきで、前に出てくる。
「街にある、ながーい石階段をのぼった先にある神社でまちがいないか?」
「うん、そうだよ。おばあちゃんに、教えてもらって」
「赤い鳥居があって、四角いさいせん箱があって、白いひもがたれてて……そういう神社だったか?」
ハレくんったら、じぶんがまちがえたからって。アメくんがまちがえるわけないよ。
「わたし、あんまり周りは見てないの。うす暗い時間に行ったから、ちょっとこわくて」
「えっ、うす暗い時間?」
なぜか、アメくんがびっくりした声を出す。
「和泉さん、きのう何時に、神社に行ったの?」
「おまつりの、夜の笹のお焚き上げが始まる前くらいかな」
「アメ……」
ライくんの視線に、めずらしくアメくんがあわてる。そして、
「和泉さん、ありがとう。もどってもらって、だいじょうぶだよ」
せっかく連れてきた依頼人を帰しちゃった!
「なんでアメくん? せっかく見つけたのに」
「あの子のお願いは、正式に受けつけたものじゃないからだ」
アメくんより先に、ライくんが答える。
「空たちが願いを聞き逃したのは、昼ごろだった。同じ日、同じ場所について複数の天気の願いがあった場合は、一番初めに聞いた願いをかなえるのが決まりなんだ」
そんなルールまであるんだ。
「ったく。オレたちに言う前に、ちゃんと確認しろよな。そそっかしいやつだな」
ハレくんが文句を言うと、アメくんがムッとする。
「もちろん悪かったよ。でも、ハレだけには、言われたくないな」
「はあ? オレだけにって、どういう……」
「二人とも、いいかげんにしろ」
ハレくんとアメくんの前に、ライくんがけわしい顔で立つ。
「なにをやってるんだ。がんばってさがすのはいいが、確認しなくちゃいけないことは忘れるな。今は人間でも、天気の神さまなんだぞ。もっとしっかりしろ」
ライくん、おこってる? ううん、イライラしてる……?
「落ちついてさがせ。あせっても、よけいに時間のムダになるだけだ。俺は、じぶんの班にもどるからな」
ライくんは、さっそうと立ち去る。
ハレくんとアメくんも言い合いをやめて、じぶんの班のところへもどる。
「わたしたちも、もどろっか」
ぽんっと、フウくんの肩をたたいた。
「そらりん……いつでも、話を聞いてくれるって言ったよね。いま、いい?」
「もちろん! でも、だいじょうぶ?」
だって、肩がプルプルふるえてる……。
「だいじょうぶじゃない。おれ、もうダメかも」
言いながら、フウくんはゆっくりこっちをふり返る。
「!」
わたしはびっくりして、口をぱくぱくさせる。
だって、フウくんが、泣いてる……?!
ためし読みはここまで!
この続きは1月7日発売の本『お天気係におねがい!(2) 霧につつまれた林間学校』をチェックしてね。かわいくて楽しいイラストがいっぱいです!
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324009