残されたわたしたちは、びっくり。でもすぐに、みんなで後を追いかけた。
ライくんは、家の一番奥の部屋に入っていった。その部屋には、わたしが落として粉々になった、例の鈴しかないんだけど……。
「――やっぱりだ。みんなも、見てみろ」
ライくんは鈴の前でしゃがみ込みながら、わたしたちを手招きする。
「なにかあったの……あっ! 鈴の形がもどってる?!」
ちょっとだけど、破片がくっついてる!
「今まで、接着剤を使っても、直らなかったのに。どういうこと?」
「たぶんだが……。空が願いをかなえることによって、少しずつ直っていくのかもしれない。そして、鈴が直っていくということは――」
バチッバチッ!
ライくんのかかげた左手の中に、小さなカミナリの玉が浮かんでいる。
「俺たちに、力がもどっていくということだ」
「え! じゃあ、おれも?」
フウくんが、空中で人さし指をくるっと動かす。すると、小さな竜巻が生まれた。
「ほんとうだ! ちょっともどってる! わーい!」
アメくんは、両手の中に、水の玉がぷかぷか浮かんでいる。ハレくんは、にぎったこぶしがピカピカ光っている。
たしかにみんな、力がもどってるってかんじに見える。
「じゃあ、このまま願いをかなえつづければ、みんなは神さまにもどれるってこと?」
ライくんが、うなずく。
よかったあ~。わたしは、むねの前で手を組んでよろこぶ。
「ただし、悪天蝶が、かんたんにはかなえさせないだろうな」
あっ、そっか……。悪天蝶は、お天気の神さまにとって、まさに天敵だもんね。
「ねえ。今さらだけど、悪天蝶はどうして、わたしたちのジャマをするの?」
バタバタしててちゃんと聞けなかったけど、ずーっと気になってたんだよね。
「オレたちも考えたんだけど、分からねーんだよな。あいつらは、地獄の天気を荒らすことだけがしごとのはずなのに」
「どうやって地獄から出てきたのかも、疑問だよ。悪天蝶にはできないと思うんだけど」
ハレくんもアメくんも、むずかしい顔をしてうなる。
「……俺は、だれかが裏で、悪天蝶をあやつっている――と考えている」
さらっと、ライくんがおどろくことを言った。
「あやつってる?! だれが?」
「それは、分からない。でも、悪天蝶はいつも、俺たちの動きに合わせて姿をあらわしている。感情や意思のない悪天蝶に、そんな器用な真似はできない。だから、裏にいるだれかが、俺たちを見張りながら、悪天蝶を使ってジャマしているとしか思えないんだ。わざわざ、地獄から悪天蝶を連れ出して……」
とつぜん始まったこわい話。ピンッと空気が張りつめ――。
「もう、やめやめ~~~!」
フウくんの大声で、一瞬で空気がやぶられた。
「そういうむずかしい話は、今じゃなくていいじゃん! 鈴は形が直ってきて、おれたちに力がもどってくるのはいいことなんだし。明日からの林間学校の話しよ~よ~!」
まるで小さい子みたいに、だだをこねる。するとライくんが、
「そうだな。これ以上考えるのは、やめよう」
まっ先に、賛成した。えっ? いつも、考えすぎるくらい考えるライくんが?
「話し過ぎちゃったね。もう、もどろうか」
「さっさと準備を終わらせようぜ。でなきゃ、まつりも行けないんだろ」
アメくんとハレくんも賛成する。みんながいいなら、いいけど……。
「そうだ、空。軍手がどこにあるか、知らないか? 林間学校で使うだろ」
もどる途中、ライくんは思い出したように聞いてきた。
「夜雲の話だと、神社のどこかにあるらしいんだが、見つからなくて」
軍手かあ。おばあちゃんの部屋にあるかもしれない。おばあちゃん、神社の掃除をするために、いっぱい持ってたんだよね。
「わたし、知ってると思う。みんなの分、とってくるね」
一人で、おばあちゃんが使っていた部屋に向かう。
フウくんの言うとおりかも。みんなと行く、初めての林間学校だもんね。今のところ、お願いはちゃんとかなえられてるし。
むずかしいことは考えないで、たのしんだほうがいいよね!
第2回へつづく(1月2日10時に公開予定♪)
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324009