2★うわさの? お天気係
日付:七月七日(日)
時刻:午前八時
場所:街の広場(七夕まつり会場)
天気:雨
「――あっ、見つけた!」
雨の空をひらひら飛んでいる、青く光る蝶を見つめる。蝶は、羽からニセモノの雨をふらせて、広場をめちゃくちゃにしていた。
七夕まつりのために用意されたかざりやステージ、短冊をつるした笹たちも、すっかりびしょびしょ。
「やっぱり、この雨は悪天蝶のせいだったんだ」
悪天蝶は、大雨とか猛暑とか、異常気象を引き起こすとってもこわい蝶。
きのうの夜から、いきなり雨がふりだして、ヘンだと思ってたけど……。
むむむっ。『七夕まつり、ぜったい晴れにしてほしい』って天気のお願いを、かなえさせないためにジャマしにきたんだね。
でも、負けないもんっ。わたしが悪天蝶を封印して、この雨を止める!
封印するための儀式の、印のまん中に立つ。そして、ぴったり手を合わせて、目を閉じる。
ぜったい、晴れにする。おまつりをたのしみにしている、みんなのために。
すーっと息を吸いこんでから、だいじな言葉をとなえる。
「空よ、晴れろ――」
足元の印と、左手に浮かぶ同じ印が、赤く光る。雨つぶが、空中でピタッととまる。
わたしは、もう一度言った。
「空、晴れてー!」
とまっていた雨つぶが、いっせいに、印の中に吸いこまれる。
悪天蝶も、引っ張られるように空から落ちてきて、印の中に消えた。
どんより雲が流れて、太陽が顔を出す。まぶしい光が、広場を明るく照らしはじめる。
「ふぅ、晴れた……」
わたし、天川空。小学五年生。しばらく前まではふつうの小学生だったけど、今は、お天気の神さま(代理)をしています!
この街には、晴れ・雨・風・カミナリの四人の神さまがいるお天気神社があるんだけど、四人が住んでいる鈴を、わたしがうっかりこわしちゃって……。
天気をあやつる力が、わたしにうつっちゃったの。そして、四人の代わりに、神社に来るお客さんのお願いをかなえることになったんだ。
しかも、かなえられなかったら地獄に落ちちゃう!
ぜったいに失敗できないんだよ~。
「よくがんばったね、空ちゃん。おつかれさま」
青い髪の男の子――雨の神さま・アメくんが、やさしく声をかけてくれる。
「心の特訓の成果が、ちゃんと出てるな。まあ、オレの教え方がうまいおかげだな」
自信まんまんにうなずくのは、赤い髪の男の子――晴れの神さま・ハレくん。
お天気の神さまは、いろんな心――じぶんの気持ちや感情をつかって天気をコントロールするんだ。
晴れにするには、『熱くなる心』が必要で、じぶんを信じる気持ちがだいじ。
わたしは今まで優柔不断で、じぶんに自信がもてなかった。でも先月の、『運動会を晴れにしてほしい』ってお願いをかなえるために心の特訓をする中で、ハレくんたちがわたしに自信をくれた。おかげで、ちゃんとかなえられたんだ。
今日のおまつりも、晴れにできてよかったよ。
雨があがってしばらくすると、広場にぞくぞくと人が集まってきた。
「おっ、まつりの準備を始めるみたいだな。なんか、屋台の食べもの食べてこうぜ!」
「だめだよ、ハレ」
今にも走り出しそうなハレくんの肩を、アメくんがつかむ。
「ぼくたち、今は遊んでるひまないよ。ねっ、空ちゃん」
「うん! おまつりは後にして、そろそろ……」
「みんなおつかれ! はい、七夕ジュース」
とつぜん、目の前に、きれいな水色の飲み物をさし出される。
顔を上げると、銀色の長い髪を結んだかっこいいお兄さん――夜雲さんがいた。
夜雲さんは、お天気神社の管理をしてくれているの。ハレくんたちの正体も知ってて、夜雲さんの親せきの子ってことにして、神社にいっしょに住んでるんだ。
「街の人たちとつくった特製ジュース、おいしいよ。ところで、もう帰るの?」
「うん。ほら、あれがあるから」
「あー、あれね。ぼくも、おまつりの手伝いが終わったら帰るよ。お昼から、神社を開けなくちゃいけないし。さあ、帰る前に飲んでいって」
七夕ジュースは、冷たくて甘くて、とってもおいしかった。
すぐに飲み干して、夜雲さんにお礼を言う。そして、ハレくんとアメくんをふり返る。
「じゃあ、神社に帰ろっか。もう一つ、やらなきゃいけないことがあるからね!」