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大人気!「お天気係におねがい! 運動会を晴れにせよ!」ためし読み連載 第6回

「向井たち、追いこされたじゃん!」

「マジかよ! すげー!」

「天川さん、がんばってー!」

 フウくんの速さに引っ張られて、そのままゴール。

 向井くんは、信じられないって顔で後からやってくる。

「負けた……ウソだろ……」

「ほんとうだし。約束どおり、そらりんのビリは取り消しってことで! そらりん、やったね」

 フウくんと、両手でハイタッチする。

「フウくんのおかげだよ!」

「そらりんだって、前に進もうってがんばって、風をふかせたじゃん」

「わたしが? あれは、たまたまだよ」

「ううん。風も、気持ちで形が変わるんだよね。もうだめだーって気持ちが暗くなると、ふきあれちゃう。逆に、たのしくてわくわくした気持ちでいると、のってくれる。速く走るコツは、走ることをたのしんで、風を味方につけること! 風といっしょに走るんだよ」

「風といっしょに……」

「あっ、そうだ。これあげる!」

 フウくんが、ズボンのポケットから、手づくりの金メダルをとりだす。ひょいっと、わたしの首にかけてくれる。

「うんうん。一位は似合わないって言ったけど、似合うじゃん!」

 フウくんが、むじゃきに笑う。神さまっていうより、天使みたい。

 わたしが言ったこと覚えてて、わざわざつくってくれたんだ……。

「フウくん、ありがとう。わたし、メダルをもらったの初めてだよ。一生だいじにする!」

 ぎゅっと、むねに抱く。

 そこに、ハレくんたちがかけつける。

「空、フウ。よく勝ったな。いい走りだった」

「だけど、本気の競争なんて、フウらしくないっていえばらしくなかったな」

「たしかに。じぶんから勝負を申しこんだって聞いたけど」

「だって、そらりんを泣かしたから」

 頭のうしろで手を組んで、すねたような顔を見せる。

「そらりんが泣いてるのを見るなんて、いやだし……。おれ、そらりんにはいつも、元気でいてほしいからね!」

「うんっ、すごく元気出たよ。向井くんにムリって言われたときは、一位の目標をあきらめかけたけど……」

「なんだって? あいつ、そんなこと言ったのか?」

 ハレくんの目が、きゅっとつり上がる。

「オレ、言い返してくる!」

「ストップ」

 アメくんが、ハレくんの服をつかむ。

「リベンジは、フウがしたんだから。もう十分でしょ」

「オレの気持ちがおさまらないんだよ! 空の目標を、勝手にムリって決めつけやがって」

「ハレのその気持ちは分かるけれど、言い合っても時間のムダだと思うよ」

「くっ……」

 ハレくんは歯を食いしばって、じっと考える。

 しばらくして、ふぅーって息をはいた。

「たしかに、アメの言うとおりだ。それより、つぎの心の特訓に進むべきだな」

「えっ」

 とつぜんの話に、ちょっと身がまえる。

「つぎの特訓って、なにするの?」

「それはもちろん――ひたすら走る練習だ」

「……へっ?」

 もっと、修行? みたいなスゴいことするのかと思っちゃった。

「走る練習って、こんな体育の授業みたいな? それでいいの?」

「めちゃくちゃ、だいじなことだぞ。熱くなる心は、だれかに言われて、すぐ冷めるようじゃあ意味がない。だから、練習をがんばって、自信をつけていく。そして、熱くなる心を強くするんだ。だれになにを言われても、だいじょうぶだって思えるように。そして運動会の日、みんなの前で、空はやればできるってところを証明するんだ」

 ハレくん……。

 向井くんの言葉におこったのは、わたしを信じてくれているからなんだ。

「じつはな、練習の計画も立ててあるんだ」

 ハレくんはポケットに手を入れて、一枚の紙をとりだす。

 時間割りみたいな表に、びっしりスケジュールが書かれていた。

「練習時間がいっぱい! 朝と放課後と……土日は、一日中!?」

 やっぱり、特訓ってたいへん!

「運動会まで時間ねーんだ。これくらい、がんばんなきゃいけないってことだよ」

「おれも見せて! うわっ、ぜんぜんたのしくない計画……」

「ハレの計画は、つめこみすぎなんだ。もっと休む時間を入れないと、体がもたない」

「そうだよ。空ちゃんは、ハレの体とはちがうんだから」

 ほかのお天気男子からは、ブーイング。

 でも、ハレくんはわたしのために考えてくれたし。それに……。

「だいじょうぶ。わたし、がんばる……がんばりたいの」

 メダルをにぎりながら言う。

 ムリとか、できないとか、そういう言葉に引っ張られるのはもうやめたい。

 それよりも、わたしを信じてくれる人の言葉を信じてみたい。わたしは、できるって。

 チャイムが鳴って、合同練習の時間が終わる。

「あ、莉子ちゃんのところに行かないと! わたし、さきに行くね」

 莉子ちゃんが元気になっていたら、メダルを見せて、競争した話をしよう。

 どんな顔するかな? びっくりするかな? なんだか、すごくたのしみ!

 保健室まで、わたしは、あったかい風といっしょに走った。


第7回へつづく


書籍情報


作: あさつじ みか 絵: しそこんぶ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323736

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