わくわくいっぱい、つばさ文庫の新シリーズ! 超~優柔不断で自分になかなか自信がもてない5年生の女の子、天川空がある日突然、天気をあやつるチカラを手にいれた!? 勇気も自信もなかったけど、つよい意思で天気をあやつるために、はじめて自分で目標をたてて、やるって決めた! 個性豊かなお天気男子たちといっしょに、運動会を晴れにせよ!(公開期限:2026年8月31日(月)23:59まで)
6★初めてのココロ
今日の社会は、『じぶんたちの街について』っていうテーマで、グループごとになにを調べるか話し合って、決めなくちゃいけない。
わたしたちのグループは、わたしと莉子ちゃん、クラス委員の田島栞ちゃん、男子のリーダーの柴界人くん。そして急きょ、ハレくんがメンバーになった。
「グループのみんなで、しっかり話し合ってね。先生はしばらく、職員室にいるから」
五人でぴったり机を合わせて、話し合いをはじめる。
「みんな、テーマのアイデアは考えてきた? 順番に話して、さいごに、どれが一番よかったか決めよう」
栞ちゃんが、話を進めてくれる。
いつもは、こんな話し合いは苦手……。言いたいことがあっても、ないふりをしちゃう。
でも今日は、ちゃんと言おう。かくさないっ、かくさないっ。
わたしは、『この街にある、おまじないについて』ってアイデアを考えてきた。
おばあちゃんが、いろいろ教えてくれたんだ。「丘の木の下でかさをさすと、好きな人に会える」「学校の外を逆時計回りで歩くと、ラッキーなことが起こる」とか。
わたしはそういうお話が好きだし、おばあちゃんが教えてくれたこと、みんなにも教えたい。
「じゃあ、だれから言う?」
ふぅ、いよいよだ。がんばれ、わたし……!
手のひらの汗をぬぐってから、そっと手をあげる。
「あの……」
「あのさ! おれに、すっげーいいアイデアがあるんだけど」
柴くんが、体を前のめりにして言う。
「ほかのグループと同じこと調べることにして、いっしょにやらね?」
「でも、先生が、かぶらないようにって言ってたよ」
「わざとってバレなきゃいいじゃん。人数が多いほど、ラクに終わらせられるしさ」
柴くんは話しながら、横のグループにいる仲良しの三木くんを見ている。
もう、二人で相談して決めたんだ……。
あげかけていた手を、あわてて引っこめる。
やっぱり、やめよう。わたしが意見を言ったら、柴くんの機嫌をそこねちゃう……。
「おい、空」
向かいの席から、ハレくんが呼んだ。
「あるんだろ、アイデアが」
「天川が?」柴くんが、すぐに目を丸くする。「それ、気のせいじゃねーの?」
「手をあげてたのに、お前にジャマされたんだよ」
「ジャマって……」
ハレくんの何気ない言葉に、柴くんがムッとする。
「天川は、こういうとき発言しないんだよ。一年生から同じクラスだけど、ぜんぜん変わんねー。なっ、天川。べつに、アイデアないよな?」
「だから、ジャマするなって。空、あるならちゃんと言えよ」
「えっ、あっ、その……」
「ほら、ないじゃん。めんどくさいから、おれのアイデアでいいだろ」
「めんどくさいって、なんだよ。ひとの話を聞くのが、そんなにむずかしいのかよ」
ハレくんと柴くんがにらみ合う。
莉子ちゃんと栞ちゃんも、さすがにこまった顔をしている。ほかのグループの子たちも、「なになに?」ってふり向いて、さわがしくなる。
わたしのせいで、教室がたいへんなことに! な、なんとかしなくちゃ……。
「ふ、二人とも、落ちついて……」
「お前、ムカつくんだよ! 転校生らしく、おとなしくしてろよ」
わたしの小さな声は、柴くんの大きな声にかき消された。柴くんは立ち上がって、ハレくんを見下ろしている。
「転校生らしくって、だれが決めたんだよ」
ハレくんも言い返しながら、すっと立ち上がった。
「人間の学校には、言いたいことがあっても、言っていいやつと、言っちゃだめなやつがいるのか? そんなの、おかしいだろ」
ハレくんから、強い空気を感じる。柴くんも、ちょっと後ずさりする。
「にっ、人間の学校ってなんだよ。今まで、どんな学校にいたんだよ」
「それは関係ない。オレが言いたいのはな、だれだって言いたいこと言って、なにが悪いってことだ!」
しーん。ハレくんの言葉に、教室が一瞬だけしずかになる。
「そうだよ、柴。太陽くんの言うとおりだよ。先生だって、グループのみんなで話し合ってって言ってたでしょ」
「太陽くん、転校初日なんだよ。なんでそんな、ムキになってケンカするの?」
ほかのクラスメイトたち(とくに女子)が、声をあげる。
「あ、分かった。太陽くんに、ライバル意識があるんだ!」
柴くんの顔が、かあっと赤くなる。
「そ、そんなんじゃないし……」
「こら! さわがしいわよ、なにがあったの?」
先生がかけつけて、さわがしい教室もだんだん落ちつく。
でも、わたしのチャレンジは大失敗に終わっちゃった……。