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大人気!「お天気係におねがい! 運動会を晴れにせよ!」ためし読み連載 第5回

「――けっきょく、なにを調べるかは決められなかったんだね」

「うん。わたしたちのグループだけ、話し合いのやり直し」

 放課後。帰りながら、アメくんたちに、社会の時間に起きたことを話した。

 アメくんはあきれた様子で、先頭を歩いているハレくんを呼んだ。

「ハレ、ちゃんとあやまったの?」

「なんであやまるんだよ。オレは悪くない」

「いや、悪いでしょ。いきなりケンカするんじゃなくて、ちゃんと話し合えばよかったのに。やっぱり、ぼくの特訓が必要かなあ」

「ほんっと、ハレハレってケンカするの好きだよねー。おれには分かんないや」

「だから言ったろ。ハレがちゃんと学校生活を送れるか疑問だって。いい証拠だ」

「あのなあ」

 ハレくんは立ち止まって、ふり返る。不満そうに、ちょっとほおをふくらませている。

「オレは、柴のやり方に納得できなくて反対しただけだ。だいたいな、問題は空だ」

 ふくれっ面の顔のまま、わたしを見る。

「どうして、途中であきらめたんだ? お前がなにか言おうとしていたの、オレは見てたぞ」

「そ、それは……」

 がんばろうとしたけど、がんばりきれなかった。つい、柴くんにえんりょした。

 わたしのこのくせって、もう直せないのかな……。

「空! 太陽くん!」

 うしろから、莉子ちゃんの声が聞こえた。

 ふり返ると、ランドセルをゆらしながら、こっちに向かってきている。

「莉子ちゃん! 帰ったんじゃなかったの?」

「どうしても言いたいことがあって……太陽くんに」

 莉子ちゃんは息をととのえてから、まっすぐハレくんを見つめる。

「お前は……莉子か」

 いきなり名前で呼ばれて、莉子ちゃんがびっくりする。

「小鳥遊莉子ちゃんだよ。いきなり、名前で呼んじゃだめだよ」

「空が、莉子莉子言うから、それでしか覚えられなくなったんだよ」

「あたしは、うれしいよ。太陽くんと仲よくなりたいし。今も、ありがとうって言いたくて来たから」

「「「「「えっ?」」」」」

 わたしたちはそろって、声を上げる。

「柴くんに言ってたよね。転校生らしくってだれが決めたんだ。だれだって言いたいこと言って、なにが悪いって……。すっきりしたよ。あたしも転校生で、えんりょしてるところがあったから」

 ハレくんはすぐに、アメくんたちを見た。

「今の、ちゃんと聞いたか? オレが、まちがったことを言ってなかった証拠だぞ」

「すぐ調子にのらない。……莉子ちゃん、だよね? ほんとうに、ハレは教室でめいわくをかけていない?」

「ぜんぜん。太陽くんが、クラスメイトになってくれてうれしい。でも、あんなことを言えるのって、ハレくんが、思ってることをちゃんと聞いてくれる人だからだよね。そういうのってすごく……かっこいいと思う」

 莉子ちゃんは、ちょっとはにかんだように言った。

「とにかく、ありがとう。じゃあ、また明日ね。空も、バイバイ」



 莉子ちゃんは、トントンと軽やかに走っていく。

 そうだよ、莉子ちゃんの言うとおりだよ。

 みんなには、「笑われるかも、信じてもらえないかも」ってこわくて言えないことも、ハレくんたちなら、ちゃんと受け止めてくれるかもしれない。

 じぶんの気持ちを、まずは、ハレくんたちにかくさないことがだいじなんだ。

 ――わたしも、一位になってみたいよ。

 ――でも、だめ。足がおそいから、ぜったいムリ……。

 わたしが心に思ってること、思い切って打ち明けよう。

「あ、あのっ。運動会の目標なんだけどね」

 四人が、いっせいにわたしを見る。

「わたし、借り人競走に出るんだけど。いっ、一位になれたらいいなって……」

「なんだよ、ちゃんと見つけてるじゃん。なんで、だまってたんだよ?」

 ハレくんが、顔をのぞきこんでくる。

「い、言えなくて。わたし、足がおそいから。それに、運動会だけじゃない。ほかでも、一番になれたことがないから自信もない。わたしには、一位は似合わない気がして……」

「それはちがうだろ」

 ハレくんは、人さし指でぐっと、わたしのおでこを持ち上げた。

「なれないんじゃなくて、本気でなろうとしないだけだ」

「ハレくんは、わたしでも一位になれると思うってこと?」

「オレに聞くな。空はどう思うんだよ? なりたいのか? なりたくないのか?」

「それは……」

 ぎゅっと、ランドセルの取っ手をにぎる。

 言って、わたし。言ってもだいじょうぶ。ハレくんたちなら、きっとだいじょうぶ。

「なっ……なりたい! わたし、一位になりたい!」

「じゃあ、なるぞ」

 ハレくんが、力強く返してくれる。

 そのたったの一言が、まっすぐ、わたしの心の中に入ってきた。

 わたしが、一位を目指す――心の奥にしずんでいた気持ちが、引っ張り上げられた気がした。

 ドクンッ。

 あれ? なんか……。そっと、むねのあたりに手を置く。

「ここが、熱い気がする……」

「ほら。お前にもあるじゃん、熱くなる心」

 じわじわこみあげてくるこの気持ちが、熱くなる心なんだ。

「これで、天気を晴れにできるの?」

「言っただろ、お前の気持ち次第だって。一位になりたいって目標をかなえるために、運動会を晴れにする。その気持ちが、深沢の願いをかなえることにつながるんだ」

「空ちゃん。決まってよかったね、すてきな目標だね」

「計画的にがんばれば、ちゃんと達成できる」

「おれも、すっごいたのしみ♪」

 アメくんたちも、賛成してくれる。

「一歩前進だな」

 ハレくんが言った。

 たった一歩。でも、わたしにとっては、すごく大きな一歩。

 心が動きだすって、こんなかんじなのかな。

 夜雲さんの言うとおり、ちがうじぶんになれる、そんな気がしてきた。


第6回へつづく


書籍情報


作: あさつじ みか 絵: しそこんぶ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323736

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