「フウくん!」
ハレくんたちと保健室に飛びこむ。
ベッドのそばに、ライくんが立っていた。フウくんは、頭までふとんをかぶっている。
「ライ! なにがあったんだ⁉ フウはだいじょうぶなのか⁉」
ライくんは重い表情で、無言でふとんをめくる。すると――。
「みんな、どうしたの? なんかあったの?」
フウくんは板チョコをかじりながら、きょとんとしていた。どういうこと?
「なんかって……聞いてるのはこっちだ! ぜんぜんっ、だいじょうぶじゃねーかっ」
ハレくんはフウくんにおこって、それからアメくんをふり返る。
「アメもどういうことだ? たおれたとか、カンちがいするようなこと言って」
「ぼくは、ライから聞いたことを、そのまま伝えただけだよ。フウがカレーを食べてたおれたから、ハレが食べる前に教えろって」
「ライ、大げさだよ~。おれ、カレーがからくてびっくりして、イスから落ちただけじゃん」
「えっ、そうなの? ほんとうに、それだけ?」
「うん。おいしそうなにおい~って一気に食べたら、口の中がヒリヒリしてさあ。でも、こっそり持ってきたチョコで、完全復活!」
フウくんは身軽に、ベッドからジャンプして下りる。
「ていうことは、お前がさわぎの原因か」
ハレくんは、ライくんの服のえりをつかんだ。
「オレ、一口も食べてないのに!」
「ああ、間に合ってよかった。たいへんなことになる前に」
ライくんは、まったく表情を変えない。
「俺たちにとって、給食のメニューは初めて食べるものばかりで、なにが起きるか分からない。フウはたまたまだいじょうぶだっただけで、ハレやアメがたおれていた可能性もあった」
「な、なるほど。わたし、みんなの視線ばっかり気にして、もう少しでハレくんをあぶない目にあわせるかもだったんだ……ありがとう、ライくん」
「空まで真に受けるなっ。ライは、なんでも心配しすぎなんだよ。ったく」
ハレくんが、どかっとベッドにすわる。
「腹がへるのだって、たいへんだろうが。あーあ」
さすがのハレくんも、ちょっとしょんぼり。わたしも、お腹が鳴りそうかも……。
そのとき、保健室にだれかが入ってきた。
「大地、だいじょうぶか?」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
深沢先ぱいと中島先ぱい! わたしは気まずくて、いそいでカーテンを閉める。
「なんで閉めるんだよ?」
「しっ。今は、先ぱいたちと顔を合わせられないのっ」
でも気になって、カーテンのすきまからのぞく。
「先生、いないな。大地のひざ、手当してもらいにきたのに」
「かすり傷だし、いいって。でも、ちょっと休んでこうぜ」
先ぱいたちはならんで、空いているベッドにすわった。
「大地さあ、さいきん運動会の練習がんばりすぎ。本番前にケガしたら意味ないじゃん。なんで、そんなにがんばるんだよ?」
「んー、もう言ってもいいかな……。おれさ、蓮が転校する前にいっしょに優勝したくて」
深沢先ぱいの本音に、中島先ぱいの肩がゆれた。
「そうだったのか……。なんにも言わないから、転校のことは気にしてないと思ってた」
「そんなわけない。ぜったい、最高の思い出をつくる。蓮のこと、忘れたくないから」
「……」
「だから言いたくなかったんだよ。お前、すぐに泣くし」
「泣いてないし! てか、おれも優勝する気満々だから。ちゃんと言えよな」
二人で、照れくさそうに笑い合う。ほんとに、仲いいんだなあ。
「でも優勝するなら、まずは天気の心配しないとな。雨ふったら、中止だし」
「それはだいじょうぶ! おれ、めっちゃお願いしておいたから。さっ、もう行こうぜ」
話しながら、二人は保健室を出ていく。
「すてきな友情だね。がんばって、晴れにしてあげたいね」
アメくんがまた感動して、なみだをぬぐう。
わたしは逆に、どんどん不安になっていく。
「どうしよう? 先ぱい、すごく信じてくれてる」
「あたりまえだ。神さまは、信じてもらえなくちゃ意味がない」
ハレくんはうでを組んで、わたしを見る。
「それで、空のかなえたい目標は決まったか?」
「考えてはいるんだけど、まだ。はあ。わたしには、熱くなる心がないのかも……」
「そんなことない」
ハレくんが、はっきり言う。
「だれの心も、熱くなれる。じぶんの気持ちを、かくしさえしなきゃな」
かくさなかったら……。
わたしは、みんなの顔色を気にするくせのせいで、気持ちをかくしちゃうことがある。
そのせいで、熱くなれる目標も見つけられないのかも。
ちょうど予鈴が鳴った。つぎの五時間目は、社会だ。調べ学習で、話し合いがある。
……まずは、かくさない練習をがんばってみようかな。
第5回へつづく