
人気シリーズ『理花のおかしな実験室』作者・やまもとふみさんの新シリーズ『ノンストップ宣言!』
発売前に64ページもためし読みができちゃう!
中学1年のフツウの女子が、エリート男子校に転校することに……!?
ドキドキハラハラ、笑ってスカッとする、最高の学園ラブコメが始まる!
わたし、町家(まちや)ことは。名門中学校に転校することになっちゃった! しかも、『男子校』って、どういうこと??? 学校は食事も部屋も豪華だけど、校則を破ると罰金を取られる!? 友だちになった優斗(ゆうと)は罰金100万円で退学って、ぜったい納得できない!! わたし、校則を変えてみせる! 最高の学園ストーリー!
『ノンストップ宣言! わたし、エリート男子校に転校!?』
(やまもと ふみ・作 茶乃ひなの・絵)
10月8日発売予定!
※これまでのお話はコチラから
第4章 夢のような寮(りょう)と食事!
その日はほとんど手続きや学校案内だけで終わってしまったけれど、夕方にはわたしの頭も体もぐったりだった。
はー、つかれた!
売店でいきなりトラブルに巻きこまれたし!
だけど、これは終わりじゃないんだよね……始まりなんだよね……!
「町家(まちや)さん、これから寮(りょう)の部屋に案内するよ」
そう言ったのは担任(たんにん)の大谷(おおたに)先生。
まだ若くて、まじめそうな男の先生だ。
先生について、学校の門を出て、校舎のとなりの敷地(しきち)に入ったとたんに、わたしはびっくりする。
目の前にある寮は、学校と同じくらいに大きくて立派な建物。
開いた窓からは、男子たちのにぎやかな笑い声が聞こえてきた。
「ここが東京栄正学園(とうきょうえいしょうがくえん)の寮。まあ今はほぼ男子寮だけど、町家さんには特別室を用意してあるから安心して」
特別。
安心。
ありがたいけど――なんだか、少しだけ居心地(いごこち)が悪い。
なんていうか、自分がのけものにされたような、そんな気持ちになってしまう。
だけど。
そんなちょっとセンチメンタルな気持ちは、寮に入るなり吹っ飛んだ!
入寮手続きを終え、ロビーのおくにある階段を上ると、じゅうたんの敷かれたろうかが現れた。
ガッチリとしたとびらがずらりと並んでいて、まるでホテルのよう。
うわああ、学校もすごかったけど、こっちもすっっっっっごく豪華(ごうか)!
案内された部屋のとびらを開けたわたしは思わず声を上げた。
「うっわああ……広い!」

そして、窓の向こうに目を向けて、さらにびっくりした。
広がっていたのは、やわらかい緑に包まれた丘と、ところどころに咲きほこるピンク色の花たち。
その先には、白く光る川がキラキラと流れていて、青空の下、のどかな町並みが広がっていた。
まんげつ園では男子と女子で分かれた大部屋で、個人の部屋はなかったから、自分だけの部屋ってだけで大コウフンだった。
それだけでもうれしいのに、さらにここ、すごい!
窓は大きくてピカピカにみがかれていて、ふかふかのベッドは大人三人でも寝られそう。
ふんわりとしたラグがしかれている床に、上品なデザインの机といす。さらにソファ!
机の上には、使いやすそうな文房具セットまできちんと並んでいた。
クローゼットを開ければ、制服と同じ色使いのジャージや、休みの日用のかわいいワンピースまでかけてある。
それに、なんと、部屋の中にはお風呂とトイレまでついていた!
ええっ、こんなに……!?
一気にテンションが上がってしまう。
うわああ、すてきすぎる!
ふっかふかのベッドにダイブしたそのとき、館内放送が流れた。
「まもなく、夕食の時間になります。食堂にお集まりください」
ちょうどおなかがグーッと鳴った。
そういえば、お昼もろくに食べてなかったんだっけ。
急いで二階にある食堂に向かう。入り口にあるメニューを見ると、和食、フレンチ、中華、イタリアンと日がわりだったけど、今日の夕食は洋風メニューだった。
ステーキに、サラダに、ごはんに、具だくさんのスープ。
どの料理も、びっくりするくらいおいしい!
感動していると、となりの人の会話が飛びこんできた。
「このあと屋上でアイス食べよーぜ!」
屋上?
気になったわたしは食べおえたトレーを返却すると、そのまま屋上へと向かう。
目の前に広がっていたのは、まるで別世界だった。
夕陽に照らされたのは屋上庭園(ていえん)。
四角く区切られた花だんには、赤青黄色のチューリップ。
レンガ敷(じ)きの小道がぐるりと庭をめぐっていて、その道沿いには、かわいらしいベンチや小さな魚が泳ぐビオトープまであった。
高い建物の上なのに、風はやさしく吹いていて、どこか森の中にいるみたいだった。
どこまでも広がる空はすぐそこにあって、手を伸ばしたら届きそうなくらい近く感じる。
ふと、学校の敷地に目をやると、大きなドーム型の白い建物が見えた。
たしか、入学案内のパンフレットに、コンサートホールって書いてあった気がするけど、あれかも?
何に使うのかはよくわからないけど、もしかして、ほんとにコンサートとかやっちゃうのかも!
すごいな……こんな世界があるんだ。
そんなことを考えていたら、胸のなかが、あたたかくなった。
うん。こんなすてきなところで暮らせるなら、学校がちょっと『変』でもうまくやり過ごせるんじゃないかな……?
だって、校則を破らなければ、だいじょうぶだし?
そうして、わたしは、学校で起こった事件(じけん)や違和感が、だんだんどうでもよいことに思えてきたんだ。
第5回へつづく(9月25日公開予定)
書籍情報
10月8日発売予定!
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323521
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