
人気シリーズ『理花のおかしな実験室』作者・やまもとふみさんの新シリーズ『ノンストップ宣言!』
発売前に64ページもためし読みができちゃう!
中学1年のフツウの女子が、エリート男子校に転校することに……!?
ドキドキハラハラ、笑ってスカッとする、最高の学園ラブコメが始まる!
わたし、町家(まちや)ことは。名門中学校に転校することになっちゃった! しかも、『男子校』って、どういうこと??? 学校は食事も部屋も豪華だけど、校則を破ると罰金を取られる!? 友だちになった優斗(ゆうと)は罰金100万円で退学って、ぜったい納得できない!! わたし、校則を変えてみせる! 最高の学園ストーリー!
『ノンストップ宣言! わたし、エリート男子校に転校!?』
(やまもと ふみ・作 茶乃ひなの・絵)
10月8日発売予定!
※これまでのお話はコチラから
第2章 男子校なんて、聞いてません!
「だ、男子校ってどういうことですかぁああああ!!」
校長室に飛びこんだわたしは、机にのしかかる勢いで、目の前の校長先生につめ寄った。
だけど、校長先生はのほほんとした顔で言った。
「いえいえ、男子校じゃありません。我が、東京栄正(とうきょうえいしょう)学園は今年から共学(きょうがく)になったんですよ」
「え?」
あまりにあっさりした返答に、わたしは思わず間のぬけた声を出してしまう。
校長先生は苦笑いしながら、机の上の書類をわたしに差しだした。
「とりあえず、この入学確認書にサインしてください。それで手続きは完了です。説明はそのあと、きちんとしますからね」
言われるままにペンを取ってサインをすると、校長先生はコホンとせきばらいをして語りだした。
「えー、先日、とある方から多額のご寄付(きふ)をいただく代わりに、やや強引に――いえ、それは大人の事情(じじょう)なので省略(しょうりゃく)しまして、とにかく、四月から東京栄正学園は共学になりました」
……大人の事情って、なに?
「ただし、募集(ぼしゅう)を急にかけたせいか、今年の中等部女子の入学希望者はゼロだったんですよ。つまり、きみが第一号というわけですね。いやあ、記念すべき日だ! めでたいめでたい!」
「ぜんぜんめでたくないですからー!」
思わずさけんだ。
だってそれって、つまり名ばかりの共学ってことじゃん!
実質、男子校じゃん!
「こんなのおかしいでしょ! ぜったい!」
わたしは校長室を飛びだした。
「あ、ちょっと! 生徒手帳とか、カードとかわたすものが――」
校長先生の声が後ろで聞こえたけど、ムシムシ!
聞く余裕なんかあるわけない!
「女子ひとりとか! 聞いてないし!!」
わたしはそのまま門へ向かって走りだした。
とりあえず、いったん落ちつこう。そうだ、あのおばあさんにれんらくしなきゃ。
西園寺桜子(さいおんじ さくらこ)さん。
わたしにこの学校を紹介してきた、あのナゾめいた上品なおばあさん。
わけわかんないこの状況について、説明してもらわなきゃ気がすまない。
「いくらなんでも、女子ひとりはないでしょ……!」
学校のフンイキも、ルールも、今までとぜんぜんちがう。
友だちなんてできるのかな。クラスでういたらどうしよう。想像すればするほど、心がざわざわしてくる。
「これじゃ、ほとんどサギだよ……!」
わたしがちゃんと話を聞かなかったのも悪いけど、それにしたってひどすぎる。
はぁ……とため息をついて、ポケットの中からスマホを取りだす。
「そうだ、れんらく用にってわたされてたんだった」
画面をタップして、登録されている番号をおす。だけど……。
ぷつっ。
「……え?」
呼びだし音の途中で、切れた。
え、なにこれ。
もう一度おしても、今度はうんともすんとも言わない。
「新品のはずなのに、なんでこわれてるのーっ!」
いかりと混乱がいっしょになって、わたしは思わず空に向かってさけんだ。
「条件が悪くたって、みんなのために、逃げるわけにはいかないのは分かってるけど……!」
でも、これはさすがにあんまりだ。
「ほんと……あんまりだよ!!」
わたしがやみくもにかけだした、そのときだった。
「ちょっと、きみ!」
するどい声に立ちどまる。
ふりかえると、かっちりしたスーツ姿の男の人がこっちにまっすぐ歩いてきていた。メガネにぴったり七三分けの髪型(かみがた)、いかにも〝お堅(かた)い大人〟って感じ。
「校内を走ってはいけません。校則違反です」
「え、えぇ!? あの、まだ入学したばっかで──」
「言いわけは結構(けっこう)。罰金(ばっきん)になります」
「……え、罰金? ってなに!?」
「言葉通りですよ。交通違反で警察につかまったら、罰金をはらったりするでしょう。あれです」
はあ!?
「えええ、そんなの、学校でやっていいの!?」
「うちの学校は、保護者会(ほごしゃかい)で念入りに説明してますから、文句がある人は入ってこない……それにしても、あなた、口のききかたがなってませんね」
ってこの人だれ。
目をぱちぱちしていると、その人が名のった。
「わたしは教頭の山川(やまかわ)ですよ」
どこかえらそうに言ったあと、じろりとわたしの手を見て、目を光らせた。
「あなた……もしかしてスマホを使おうとしてました? それも校則違反です」
わたしはあわててスマホを背中にかくす。
「えっ、いや、でも、これこわれてるんで……」
「いえ、こわれているのではなく、学校エリア内では通話できないようにしてあります」
「そ、それじゃあ、スマホの意味がない――」
文句を言おうとすると、先生の目つきがするどくなった。
「ところで、あなた、ハンカチ、持っています?」
「へっ?」
なに? いきなり。
わたしは冷や汗をかく。
持ってきてない。
って、もしかして……それも、違反、だったりするぅ!?
青ざめたわたしの顔で察したのか、教頭先生はふっと笑った。
「ハンカチ不携帯(ふけいたい)——忘れ物も校則違反です。ですが転校してきたばかりですし、すぐに売店で購入(こうにゅう)すれば、さきほどの校則違反といっしょに今日だけは見逃しましょう」
「忘れ物!? そ、そんな理由で買わされるの!?」
教頭先生はきっちりした七三分けの頭を手でなでつける。その手首で、高そうな時計がギラリと光る。
「〝身だしなみはエリートへの第一歩〟――これは本校の理念(りねん)ですので」
ドヤ顔で言われても、ナットクいかない!
でも、教頭先生は、ピシャリと指先で売店の方向を指した。
「では、早急に。売店はそちらです。どうぞ、校則違反の記録がつかないうちに」
ええええ……!?
入学早々校則違反とか、冗談(じょうだん)じゃないよ!

第3回へつづく(9月11日公開予定)
書籍情報
10月8日発売予定!
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323521
つばさ文庫の連載はこちらからチェック!▼