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カービィたちが、力を合わせて温泉で村おこし!? すてきな観光地を作って、メタナイトやドロッチェ、エフィリンたちを招待しよう♪ 2024年3月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』の先行ためし読みだよ!
◆第3回
西の果てにあるというサンセット村へ向かうため、お弁当とおやつを持って、さあ出発!
カービィとデデデ大王、バンダナワドルディがようやくたどりついた村で出会った住民たちは、ちょっと変わったひとぞろいで?
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サンセット村の住民たち
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野を越え、お弁当を食べ、山を越え、お弁当を食べ、おやつも食べ、川をわたって、またお弁当とおやつを食べてお昼寝をし、旅すること十日間。
最初のうちは元気いっぱいだったカービィとデデデ大王も、さすがに、くたびれ果ててしまった。
デデデ大王は、足を引きずりながら、文句を言った。
「こんなに遠いとは思わなかったわい。まだ着かんのか?」
チップが、小声で言った。
「……お弁当やお昼寝の回数をへらせば、五日ぐらいで着くはずだったんだけど……」
「なんだと? きさま、オレ様に、腹ペコのままひたすら歩き続けろと言いたいのか?」
「ううん、そういうわけじゃ……」
リーファンが言った。
「もうすぐだぜ。あと、丘を二つ越えれば、オレたちのサンセット村だ」
「まったく……プププランドがこんなに広いとは、偉大なる支配者のオレ様も知らなかったわい!」
ブツブツ言いながらも、一行は歩き続けた。
丘を二つ越え、さらに山道をしばらく行くと、ようやく、かわいらしい赤い屋根がいくつか見えてきた。
リーファンが言った。
「着いた! ここが、サンセット村だぜ!」
「ふむ。確かに、何もないドいなかだな」
デデデ大王は、つまらなそうに口をとがらせた。
バンダナワドルディが、景色を見回して言った。
「でも、とても空気がすんでいて、気持ちがいいです。お花の香りもします」
「フン。空気や花じゃ、腹はふくれんわい」
カービィが、目をかがやかせて言った。
「お花だけじゃなく、フルーツみたいな香りもするよ! きっと、おいしいフルーツがあるんだよ! 行ってみよう!」
カービィは、旅のつかれも忘れて、元気よく走り出した。
「あ、待てよ、カービィ……」
リーファンが呼び止めようとしたが、カービィはすばやく、一本の木に飛びついていた。
あざやかな黄色の、つやつやした実が、たわわに実っている。
「わあ、ミカンだ! ぼく、大好き!」
幹(みき)をゆすると、大きなフルーツが次々に落ちてきた。
「おいしそう! いただきまーす!」
カービィは大きな口をあけて、フルーツにかぶりついた。
――が。
とたんに、カービィは飛び上がって、ひっくり返った。
「うぴゃぴゃぴゃぴゃー! す、すっぱい……!」
「うわあ! カービィ、大丈夫か!?」
リーファンが、あわててカービィに駆けよった。
カービィは、目になみだを浮かべて言った。
「なに、これ……ミカンじゃないの!? レモンの100倍くらい、すっぱい……!」
「すっぱすぎて、だれも食べないフルーツなんだ。よろず屋がなくなってから、オレたちはいつも腹ペコだけど、これだけは決して食べないぜ」
「は、早く言ってよ~!」
カービィはじたばたして、涙をふいた。
チップが言った。
「とにかく、村のみんなに紹介するね。おーい、みんな! 出てきて!」
チップの声は、村じゅうにひびいた。
すると、家々のドアが開き、中から住民たちが出てきた。
赤いトサカのある鳥のような住民が言った。
「ああ……おかえり、リーファン、チップ。デデデ大王様は、話を聞いてくれた?」
「もちろんだよ、トゥーキー。このひとが……」
チップがデデデ大王を紹介しようとしたが、トゥーキーという住民は大王をチラッと見て、がっかりした様子になった。
「そっかぁ……やっぱり、大王様には会えなかったんだね」
「う、ううん。このひとが……」
「大王様の、かわりのひとだね……まあ、いいや。キミ、よろしくね」
トゥーキーは、ひらひらと、つばさを振った。
デデデ大王は、ムッとして言い返した。
「なんだ、その失礼な態度(たいど)は! きさま、オレ様をだれだと思って……!」
リーファンとチップが、あわてて大王をなだめた。
「わわわわ! ごめんよ、この村のみんなは、礼儀(れいぎ)を知らなくて……」
「トゥーキー、このひとがデデデ大王様だよ。そして、こっちがカービィと、バンダナワドルディ。ボクらのために、力を貸してくれることになったんだ」
「……え?」
トゥーキーは、目をパチッと開いた。
「デデデ大王様? あの、肖像画(しょうぞうが)の? このひとが?」
「そうなんだ。肖像画とは……えーと……あんまり似てないけど……」
チップが、しどろもどろに説明しようとした。
そこへ、別の住民が進み出た。
花のような姿をしている。大輪の花の真ん中に、元気のない顔があった。
「……肖像画なんて、どうでもいいわ。ねえ……あなたたち、ほんとに、あたしたちを助けてくれるの?」
どんよりとした声で聞かれ、デデデ大王は、いばって答えた。
「当たり前だろうが! オレ様は、そのために来てやったのだ」
「そう……ありがと。早く、なんとかしてね。オバチャンがいなくなってから、肥料(ひりょう)が買えなくて、あたし……あたし……もう……」
花の姿の住民はなみだぐみ、しおしおとうなだれた。
チップが言った。
「元気だしなよ、ラブリー。カービィとデデデ大王様が、きっと助けてくれるから」
「ええ……期待……してるわね……うう……ううううっ……」
ラブリーは、しおれながら顔をそむけた。
カービィは、ラブリーが心配になり、大きな声で言った。
「かならず、オバチャンさんに帰ってきてもらえるよう、がんばるよ。だから、元気だして!」
と、そこへ。
「ううーん……大きな声を出さないでよぉ……」
また、別の住民がやって来た。
水玉もようのナイトキャップをかぶった、ピンク色のまんまるい生き物だ。
チップが言った。
「あ、ノディ。キミが外に出てくるなんて、めずらしいね」
「さわがしいから、目がさめちゃったんだよ……ぐー」
そう言いながら目をとじて、寝息を立て始めた。
カービィは、びっくりして言った。
「え? 寝ちゃったの? たった今まで、しゃべってたのに?」
リーファンが言った。
「彼は、ノディ。寝るのが得意なんだ」
「ぼくも得意だよ! だけど、こんなにすばやく寝られないよ」
「寝ることにかけては、ノディは宇宙一なんだ。だれも、かなわないよ」
すると、ノディがうっすらと目をあけた。
寝ぼけた声で、一言。
「……まくら……おふとん……ねむねむ……ぐー」
それだけ言って、また眠ってしまった。
チップが言った。
「気にしないで。寝言だよ。ノディは、寝てる間もずっと、寝てる夢をみてるらしくて。今みたいな寝言を、しょっちゅう言うんだ」
デデデ大王は、あきれて言った。
「変なヤツばかりだな、この村は! どうなっとるんだ」
リーファンが、もうしわけなさそうに言った。
「みんな、外の世界のひとと話したことがなくて、マイペースなんだ。とにかく、これからのことを話し合おうぜ。まずは、オバチャンが残していったお店を見てくれよ。こっちだ」
一行は、リーファンとチップに案内されて、村の真ん中にあるよろず屋に向かった。
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よろず屋は、こぢんまりとした店だった。
ドアの上には「なんでもそろう! オバチャンのよろず屋」という看板(かんばん)がかけられたままだ。
チップが、悲しそうに言った。
「オバチャンは、この店をとても大事にしてたんだ。『アタシの店がみんなの暮らしを支えてるんだ! もっともっと、がんばるよ!』って、口ぐせのように言ってた」
「だが、出て行ってしまったのだろう」
デデデ大王は、ドアを開けて、中へ足をふみ入れた。カービィたちも大王に続いた。
店内はガランとしていて、さびしかった。ショーケースはからっぽだし、たなの上にも何もない。床には、ほこりがたまっていた。
リーファンが言った。
「お店の商品は、オバチャンがぜんぶ持っていっちまったんだ。新しい場所で、新しいお店を始めるんだってさ」
「どこへ行ったのか、心当たりはないのか?」
「さあな……オレたち、外の世界のことをぜんぜん知らないからさ。見当もつかないぜ」
カービィが言った。
「とにかく、みんなで手分けして探そうよ。オバチャンさんの似顔絵を描いて、あちこちにはろう。きっと、見つかるよ」
「そうだな。じゃ、まずは似顔絵を……」
リーファンが、そう言いかけたとき。
それまでだまっていたバンダナワドルディが、口を開いた。
「あの……オバチャンさんが見つかったとしても、戻ってきてくれるでしょうか?」
「え?」
「オバチャンさんには、店をもっと大きくして、村をにぎやかにしたいっていう夢があったんですよね? そして、その夢がかなわないと思ったから、出て行っちゃったんですよね?」
チップが、うなずいた。
「そうだよ。ボクらが、協力しなかったから……」
「だったら、オバチャンさんを見つけて、帰ってきてくださいってお願いしても、聞いてもらえないんじゃないでしょうか。村が今のままでは、オバチャンさんの夢はかなえられないわけですし……」
「……それは……そうだよな」
チップとリーファンは、うなだれてしまった。
カービィが言った。
「それなら、オバチャンさんの夢をかなえてあげようよ」
「……え?」
「ぼくらで、大きなお店を作るんだ。そして、たくさんのお客さんに来てもらうんだ。そうすれば、オバチャンさんだって、よろこんで帰ってきてくれるよ!」
チップとリーファンは、顔を見合わせた。
「大きなお店って……どうやって? ボクら、よろず屋の手伝いすら、したことがないのに……」
「だいじょーぶ! ぼくが、おさかなを、たくさん釣るから!」
カービィは自信まんまんで、手に持ったつりざおを振り回した。
「……魚……?」
「うん。おさかなをたくさん釣って、おさかな料理を作るんだ。きっと、おいしいおさかな料理を食べに、たくさんのお客さんが押しかけるよ。そうすれば、あっというまに、村がにぎやかになっちゃうよ!」
デデデ大王が、せせら笑った。
「何を言い出すかと思えば、くだらんアイデアだわい!」
「え? どうして?」
「魚がたくさん釣れたとしても、だれがそれを料理するのだ? この村の連中は、料理などできそうにないぞ」
すると、カービィはそっくり返って言った。
「もちろん、ぼくが作るよ! お料理には自信があるんだ。毎日、コックカワサキのおいしいお料理を食べてるもんね」
これを聞いて、あわてふためいたのは、バンダナワドルディ。
「えっ!? う、ううん、お料理なら、ぼくが作るよ。カービィのお料理は……その……」
バンダナワドルディは、言葉をにごした。
なにしろ、カービィの作る料理は、「まずい」なんてものではない。一口食べれば口の中に火花が散り、二口食べればあらゆる記憶がふっとび、三口食べればおなかが爆発すると言われるほどの、きゅうきょくの魔の料理なのだ。
けれど、カービィにそれを言うのは、かわいそうすぎる。
そこで、バンダナワドルディは、もごもごと言った。
「カービィには、その、えっと……釣りに集中してもらいたいんだ。お料理は、ぼくが担当するよ」
「よし、ならば、決まりだな」
デデデ大王は、ガツンとこぶしを打ち合わせて言った。
「さっそく、看板(かんばん)を取りかえるぞ! 古くさい看板を外して、もっとセンスが光る看板をかかげるのだ。新しい店名は……『デデデ大王様のスーパー・ゴージャス・ピチピチ・さかなづくしワンダーランド』だ!」
「……え」
リーファンとチップは、のけぞった。
「な、何、その名前……」
「どんなお店か、さっぱりわからないんだけど……」
不安そうな二人を見て、バンダナワドルディが言った。
「あ、あの、おさかな料理はもちろん大事ですが、村のみなさんが望んでいるのは、毎日の暮らしに必要なものが買えるよろず屋さんですよね? おさかなだけでは、足りないのではないでしょうか」
リーファンが、うなずいた。
「もちろんだぜ。オバチャンの店には、まくらカバーとか、おさいほうセットとか、ばんそうこうとか、なんでも売ってた」
「そういう、いろいろなものを売るには、準備が必要です。人手だって、もっともっと必要です」
「ひとで……?」
「もちろん、サンセット村のみなさんに協力してもらいたいですけど、それだけじゃ、まだ足りないと思うんです」
バンダナワドルディは、デデデ大王を見上げた。
「大王様。みんなに、集まってもらいませんか?」
「……みんな、だと?」
「はい。お料理のことなら、コックカワサキに聞くのが一番です。それに、いろいろな品物を運ぶためには、人数がたくさんいたほうがいいです」
カービィが、飛び上がって手をたたいた。
「そうだね! みんなを呼ぼう! コックカワサキとか、ワドルディたちとか、バーニンレオとか、ナックルジョーとか、チリーとか! みんなが手伝ってくれたら、きっと楽しいよ。あっというまに、すごいお店ができちゃうよ!」
リーファンが、おどろいて言った。
「デデデ城の城下町の住民たちってことか? まさか、そんな……」
チップも、むずかしい顔で言った。
「城下町で楽しく暮らしてるひとたちが、こんな遠くの、ふべんな村にまで、来てくれるかなあ……?」
デデデ大王は、余裕の笑顔でうなずいた。
「オレ様が命令すれば、だれも、逆らえんわい。よし、すぐに呼んでやる。ワドルディ、ひとっ走り、行ってこい。どうせ、みんなヒマだろう。役に立ちそうなヤツらを、かき集めてこい」
カービィが声を上げた。
「待って。ワドルディより、ぼくのほうが速いよ」
「む? おまえが?」
「うん。ワープスターに乗れば、ひとっ飛びだよ。パパッと行ってくるね!」
駆け出そうとしたカービィに、デデデ大王は大声で言った。
「ワープスター……だとぉぉ!?」
「うん。ワープスターなら、あっという間だから……」
デデデ大王は、怒りの形相(ぎょうそう)で、両手を振り上げた。
「なんで、きさま、もっと早くワープスターを呼ばなかったのだぁぁ!? あれさえあれば、十日間も旅する必要はなかっただろうが!」
「……あ!」
カービィも、ハッと気づいた。
「そういえば、そうだね! ぼく、ワープスターのこと、すっかり忘れてたよー!」
「この……この……大ばかものー!」
「デデデ大王だって、忘れてたじゃない。とにかく、行ってくるね!」
カービィは店を飛び出し、ワープスターを呼び出して、東のかなたへと飛んでいった。
村をにぎやかにして、オバチャンにもどってきてもらうため、力を合わせることにしたカービィたち。プププランドの住民たちをまきこんで、楽しいことが始まりそうです!
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