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カービィたちが、力を合わせて温泉で村おこし!? すてきな観光地を作って、メタナイトやドロッチェ、エフィリンたちを招待しよう♪ 2024年3月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』の先行ためし読みだよ!
◆第2回
なやみをデデデ大王に解決してもらうため、遠い西の村からやってきたチップとリーファン。その、なやみって一体なに? デデデ大王は解決することができるの!?
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あこがれの大王様?
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緊張した様子で座っていたチップとリーファンは、デデデ大王が入ってくると、パッと立ち上がった。
「は、は、はじめまして!」
「オ、オレ、じゃなかった、ワタクシたち、デデデ大王様に会う……お会いするために、西の果てのサンセット村からやって来たんだ……です!」
二人とも、緊張のあまりデデデ大王の顔を見ることができず、うつむいていた。
デデデ大王は、気取った声で言った。
「緊張せずとも良いぞ。何か、なやみがあるそうだな」
「はい! デデデ大王様に、ぜひとも、お願いしたいことがあって……!」
二人は、ようやく顔を上げて、デデデ大王を見た。
「……………………え?」
長い沈黙(ちんもく)のあと、二人は顔を見合わせた。
リーファンが、肖像画を取り出して、デデデ大王とまじまじと見比べた。
「う……うそぉ……」
チップは、目をこすりながら小声で言った。
「ボクの目が、おかしいのかな。肖像画と、ぜんぜんちがうんだけど……」
「目のせいじゃないぜ。このひと、ほんとに、デデデ大王様なのか?」
デデデ大王は、二人の声など聞いておらず、玉座にふんぞり返って言った。
「サンセット村と言ったか。聞いたこともないぞ。どこにあるのだ?」
チップが、とまどいながら、説明した。
「ここからずっと西の、静かな山の中です」
「ほほう。そんなドいなかにまで、オレ様の名声が届いているとは。感心、感心」
「風に乗って、肖像画が運ばれてきて……それを見て、村人みんなで話し合ったんです。こんなりっぱな大王様なら、きっと、村の大問題を解決してくれるだろうって」
「なんだ、大問題って」
「それは……えっと……」
二人は、また、こそこそと相談した。
「どうする? 想像してた大王様と、ぜんぜんちがうよ」
「でも、せっかく来たんだし。このまま帰るわけには、いかないぜ」
「うん。こうして、ボクらに会ってくださってるんだしね。見た目は肖像画どおりじゃないけど、やさしい大王様みたいだよね」
チップが、デデデ大王に向き直って言った。
「ボクたちの村は、とてもふべんな場所です。他の村からは遠すぎるので、買い物はぜんぶ、村の中ですませていました」
リーファンが続けた。
「村にあるお店は、一軒のよろず屋だけだったんだ。そこで、食べ物とか、えんぴつとか、せっけんとか、なんでも売ってた。だけど、そのよろず屋が、とつぜん閉店しちゃったんだ」
「むむ? どういうわけだ?」
デデデ大王がたずねると、チップが悲しそうに答えた。
「よろず屋をやってたオバチャンっていうひとが、村を出て行っちゃったからです。 オバチャンは、おせっかいだけど働き者で、いいひとでした。そして、店をもっと大きくして、村をにぎやかにしたいって夢をもっていたんです」
リーファンが言った。
「オバチャンは、夢をかなえるために、オレたちに協力してくれって頼んだんだ。だけどみんな、働いたことなんてない連中だからな。めんどうくさくて、そっぽを向いた。オバチャンは、ぐうたらなオレたちにあいそをつかして、出て行っちまったんだ」
「なるほど。それで、たった一軒きりの店がなくなってしまったというわけか」
デデデ大王が、うなずいたときだった。
話を聞いていたカービィが、口を開いた。
「それはたいへんだね。なんとかして、オバチャンさんに帰ってきてもらわなきゃ……」
「むむ?」
デデデ大王は、ムッとして言った。
「なんで、おまえがここにいるんだ。ここは、オレ様が民の願いを聞いてやるための『謁見(えっけん)の間』だぞ」
「だって、チップとリーファンが困ってるみたいだから……ぼくだって、力になってあげたいよ」
「おまえの力なんぞ、いらんわい。だいたい、そのカゴは何だ? オレ様の城に、魚を売りに来たのか?」
「あ、これは……」
カービィは、魚の入ったカゴをせおっていることを、すっかり忘れていたのだ。
「わあ、しまった! 早く、コックカワサキのところへ持って行かなくちゃ!」
「レストランまで行かんでも、城のキッチンに持って行くといい。ワドルディどもが料理するだろう」
「あ、そうか。でも、コックカワサキの新作おさかな料理も食べてみたいし……」
すると、カービィとデデデ大王のやりとりを聞いていたチップが、ふしぎそうに言った。
「魚料理……だって? 魚って、食べられるの?」
カービィは、びっくりして言った。
「ええ!? ひょっとして、おさかな料理を食べたことないの?」
チップとリーファンは、顔を見合わせた。
「あった……かなあ?」
「そういえば、オバチャンの店に、サクサクっとした白っぽいあげものが売ってたっけ。お肉にしては、やけにサッパリしてるし、なんのあげものだろうと思ってたんだけど、あれはひょっとして……」
カービィが言った。
「たぶん、おさかなのフライだよ」
「あと、むにゃ……むにょ……なんだっけ? 名前を忘れちゃったけど、オバチャンの得意料理があったよ。バターで焼いてあって、レモンをしぼって食べると、さわやかで、おいしいんだ」
「それは、おさかなのムニエルだよ。ぼく、大好きだよ!」
カービィは、よだれをたらしそうになった。
チップとリーファンは、感心して言った。
「そうかぁ、あれが魚料理だったんだ!」
「ちっとも知らなかったぜ。そういえば、オバチャンは、よく朝早くからつりざおをかついで出かけて行ってたっけ。今から思えば、近くの川で魚を釣って、料理を作ってくれてたんだな。考えたこともなかったけど」
デデデ大王は腕を組み、きびしい声で言った。
「まったく、そこまで、よろず屋ひとりに頼りっきりとは! おまえたち、あまえすぎだわい。反省して、これからは自分たちで働け。では、大王様の謁見(えっけん)タイム終了」
デデデ大王は立ち上がり、「謁見(えっけん)の間」を出て行こうとした。
リーファンとチップは、あせってデデデ大王に取りすがった。
「もう終わり!? オレたちのなやみを、解決してくれるんじゃないのか!?」
「だから、解決してやっただろうが。『自分たちで働け』。たいせつなアドバイスだぞ」
「だけど……!」
二人が、口々に叫ぼうとしたときだった。
カービィが言った。
「村の近くで、おいしいおさかなが釣れるんだね」
リーファンが、カービィを振り返って答えた。
「え? あ、ああ……オバチャンの料理は、ぜんぶ、おいしかったからな。うまい魚が釣れるのは、たしかだぜ」
「ぼく、行くよ!」
カービィは、張り切って叫んだ。
「きっと、このあたりでは見たことないおさかなが釣れると思う。新しいおさかなを釣って、コックカワサキに新しいレシピを考えてもらうんだ!」
カービィは、新しいつりざおをすっかり気に入っていて、釣りに夢中なのだ。
チップが、とまどって言った。
「え……? そりゃ、遊びに来てくれるのはうれしいけどさ……ボクらのお願いは、よろず屋を再開させることなんだ。釣りなんかしても、オバチャンは……」
カービィは言った。
「もちろん、釣りだけじゃなく、オバチャンさんに帰ってきてもらうお手伝いもするよ。どうすればいいのか、相談しようよ」
チップとリーファンは、ようやく笑顔になった。
「ほんと? ありがとう! えっと、キミの名前をまだ聞いてなかったね」
「ぼく、カービィだよ」
「カービィ、よろしくね。それじゃ、ボクらの村に案内するよ」
「村じゅう総出(そうで)で、かんげいするぜ。カービィは、オレたちの村の偉大なる救い主だ!」
二人は、カービィに抱きつかんばかりのかんげいぶり。
カービィは、張り切って片手を上げた。
「それじゃ、がんばって、よろず屋のオバチャンさんを呼びもどそう! おー!」
「おー!」
三人が、気合を入れたとき。
デデデ大王が、重々しく口を開いた。
「……むろん、オレ様も、さっそくおまえらの村に行こうとしていたところだ。カービィ、オレ様の足を引っ張るんじゃないぞ」
ちやほやされているカービィを見て、デデデ大王は、急にあせりを感じたのだ。このままでは、カービィが「プププランドの偉大なる救い主」になってしまうかもしれない。
カービィは、きょとんとして言った。
「え? デデデ大王は、『自分たちで働け』って言ったじゃない」
「そんなことは言っとらん! オレ様が解決してやるから、さっさと案内しろと言ったのだ! さあ、ぐずぐずするな、行くぞ!」
大またで歩き出したデデデ大王に、バンダナワドルディがあわてて言った。
「お待ちください、大王様。旅の準備が必要です。お弁当も作らないと……」
「おお、そうだな。では、さっそく用意しろ! サンドイッチとたまご焼きとウィンナーとハンバーグとトンカツととりのからあげ二十人前だ! おやつのドーナツとシュークリームも忘れるな」
すかさず、カービィが叫んだ。
「ぼく、コックカワサキのところへ行ってくる! ぼくが釣ったおさかなを、焼いて、ほぐして、おにぎりの具にしてもらうんだ!」
「おお! なんて冴(さ)えてるんだ! カービィ、オレ様にも食わせろ!」
「もちろん、いいよ! わぁい、おにぎり、おにぎり!」
カービィは、大急ぎで「謁見(えっけん)の間」を飛び出していった。
チップとリーファンは、顔を見合わせた。
「……なんだか、遠足に行くみたいなふんいきだけど……」
「だいじょうぶかな?」
ともかく、一行はお弁当とおやつをたっぷり用意して、西の果ての村へと旅立ったのだった。
西の果てのサンセット村を救うため、カービィ、デデデ大王、バンダナワドルディがお弁当とおやつを持って動き出す! 次回「サンセット村の住民たち」をおたのしみに!!(3月1日公開予定)
『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』は2024年3月13日発売予定!
つばさ文庫「星のカービィ」シリーズ10周年! 10年分の大冒険でいっぱいの特集ページだよ!!
『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』好評発売中!ためし読みも公開中だよ♪
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