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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』第1回 遠い村からのお客様


カービィたちが、力を合わせて温泉で村おこし!? すてきな観光地を作って、メタナイトやドロッチェ、エフィリンたちを招待しよう♪ 2024年3月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻』の先行ためし読みだよ!

◆第1回
あくびが出るほど平和な、プププランドの昼さがり。
遠い村から、二人のお客さんがやってきて……?
カービィたちの新しい物語が始まるよ!

 

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遠い村からのお客様

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 まっさおな空に、ソフトクリームみたいな雲がプカプカ浮かぶ、あたたかな昼さがり。

 のどかな小道を、カービィが鼻歌を歌いながら歩いていた。

 片手に、長いつりざおを持っている。そして、背中には、たくさんの魚が入った大きなカゴをせおっている。

「ルルルン……ルンルン……おさかな、おさかな!」

 カービィは、上機嫌だった。

 なにしろ、カゴの中の魚は、すべてカービィがひとりで釣り上げたものなのだから。


 そもそものきっかけは、しばらく前のこと。

 カービィは、コックカワサキにさそわれて、近くの川で釣りをした。

「おいしい魚料理のレシピを考えたんだ。そのために、まずは新鮮な魚を釣らないとね!」

 コックカワサキにそう言われて、カービィは張り切って挑(いど)んだのだが――残念ながら、二人とも、一匹の魚も釣り上げることができなかった。

「うーん……このあたりの魚は、かしこいんだな。仕方ない、魚料理はおあずけだ」

 コックカワサキは、しょんぼりしてそう言った。

 カービィも、がっかりして、ワドルディたちにそのことを話した。

 すると、数日後、ワドルディ隊の中でいちばん手先の器用なワドルディが、カービィをたずねてきた。

 このワドルディは、べんりな道具をたくさん作ってくれるので、みんなから「道具屋くん」と呼ばれている。

 道具屋ワドルディが差し出したのは、長くてりっぱなつりざおだった。

「カービィさん、これを使ってみてください。ぼくが発明した、スーパー・エクセレント・つりざおです。川やみずうみに、ちょいと釣り糸をたらすだけで、おさかながパカパカ釣れるはずです!」

「え? これを、くれるの……?」

「はい! 今度こそ、たくさんおさかなを釣ってきてください!」

「わあ! ありがとう、道具屋くん!」

 ……というわけで、カービィは今度はひとりで釣りに行き、テントを張って何日もがんばり、たくさんの魚を釣ってきたのだった。

「さすがだなあ、道具屋くん! さっそく、コックカワサキにおさかな料理を作ってもらおうっと。お料理ができたら、デデデ城にも届けてあげなくちゃ」

 そんなことを考えながら歩いていると、向こうから、見知らぬ二人組が歩いてきた。

 一人は、頭のてっぺんに大きな葉っぱを生やしている。もう一人は、とんがった頭と、ふさふさのしっぽが特徴(とくちょう)だ。

 二人は、カービィに気づくと、えんりょがちに声をかけてきた。

「あ、あのう……ちょっと、聞きたいんだけど……」

 とんがり頭のほうが言った。

「うん? なあに?」

「あの大きなお城が、デデデ城……だよね?」

 二人は、丘の上に建つデデデ城を示した。

「そうだよ」

「ボクら、デデデ大王様に会いたいんだけど、何か手続きって必要なのかな?」

「え? 手続き?」

「うん。申しこみ書を書くとか、身分証明書を提出するとか……それに、こんなかっこうじゃ、追い返されちゃう? 高級な服を着ていなきゃ、中に入れてもらえないのかな?」

 二人は、思いつめた様子だ。

 カービィは、きょとんとした。

「申しこみ書……服……? そんなの、なんにもいらないよ。お城に行って、門番のワドルディに、デデデ大王に会いたいって言えば中に入れてくれるよ」

「え!? そんなに、かんたんに……?」

 二人は顔を見合わせ、興奮してささやき合った。

「デデデ大王様は、うわさ通りの、おやさしい方なんだね。ボクら庶民(しょみん)を、あたたかく迎えてくださるんだって」

「きんちょうしてたけど、ちょっと安心したぜ。さっそく、お城に行ってみよう」

 カービィは、二人にたずねた。

「デデデ大王に用事なの?」

「あ、うん。ボクら、偉大なデデデ大王様に、お願いしたいことがあってね……」

「いだい? デデデ大王が?」

「うん。風にのって、この紙がボクらの村に届いたんだ。これを見たら、もう、居ても立ってもいられなくなっちゃって……」

 とんがり頭が、一枚の紙を差し出した。

 紙を受け取ったカービィは、目をぱちぱちさせた。

「え? これ、だれ?」

 それは、肖像画(しょうぞうが)だった。

 美しく青いはだに、切れ長のするどい目。キリリと引きしまった口元。みごとな王冠をかぶった、とてつもなくりっぱな王様の絵だ。

 葉っぱ頭が言った。

「まさか、キミ、偉大なる大王様の顔を知らないのか? 信じられないぜ! 肖像画の下に説明が書いてあるから、読んでみろよ」

 カービィは、肖像画の下の文章を読んで、あぜんとした。

『プププランドの偉大なる支配者、デデデ大王様。そのお心は、だれよりも気高く、おやさしい。民のなやみごとは、すべてデデデ大王様が解決してくださることでしょう』

「デデデ大王? これが? ウソだぁ……」

 思わず、あきれてつぶやいたとき。

 お城のほうから、バンダナワドルディがやって来た。

 バンダナワドルディは、カービィに気づくと、手を振って駆け寄ってきた。

「お帰りなさい! 釣りはどうだった?」

「あ、ワドルディ」

 本当は、釣りの話をたっぷりするつもりだったのだが、もはやそんな気分はふっとんでいた。

「どうなってるの? これ、デデデ大王だっていうんだけど……」

 カービィは、二人組が持っていた肖像画を、バンダナワドルディに見せた。

 すると、バンダナワドルディは、困ったような顔で言った。

「あ、ああ……それは……大王様の肖像画……」

「ウソだぁ! ぜんぜん……」

 似てない、と叫ぼうとしたカービィの口を、バンダナワドルディはあわててふさいだ。

「これには、事情があるんだよ。ゆっくり説明するよ……あの、あなたたちは?」

 バンダナワドルディは、二人組を見た。

 二人は、あらたまって自己紹介をした。

「ボクは、チップ。こっちの葉っぱ頭は、リーファンっていうんだ。ボクら、西の果てにあるサンセット村から来たんだよ」

 葉っぱ頭のリーファンが続けた。

「実は、オレたちの村は、大きな問題をかかえててさ。なんとかならないかって頭をなやませていたところへ、この肖像画が、風に乗って運ばれてきたんだ」

 チップが言った。

「プププランドには、こんなにすばらしい大王様がいらっしゃるんだ……って知って、ボクら、勇気を出して大王様に会いに来たんだよ。だけど、あのりっぱなお城を見たら、足がすくんじゃって……」

 チップとリーファンは、まぶしそうにデデデ城を見上げた。

「何も考えずに飛び出してきちゃったけど、約束もなしで、大王様にお会いできるかどうか、心配になったんだ。それで、このひとに声をかけてみたんだよ」

 チップは、カービィを見た。

 バンダナワドルディは言った。

「もちろん、お会いできますよ。デデデ大王様は心の広い方なので、どんな民にも会ってくださるし、なやみを聞いてくださるんです」

「ワドルディ……」

 カービィは、どういうことなのか、話を聞きたかったが、バンダナワドルディはすばやく言った。

「とにかく、お城に行きましょう。こちらへ、どうぞ」

「案内してくれるのか? 助かるぜ!」

 チップとリーファンはホッとした様子で、うなずいた。

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 バンダナワドルディは、二人を「謁見(えっけん)の間」に案内した。デデデ大王が、民のなやみやお願いを聞くための部屋だ。

 もっとも、大王になやみを相談しにくる民なんてめったにいないので、ふだんは、ワドルディ隊が楽器やダンスのレッスンをする「おけいこ部屋」になっている。

 バンダナワドルディは、そのへんに転がっているタンバリンやカスタネットをさりげなく片付けて、チップとリーファンに言った。

「大王様にお伝えしてきます。あなたたちは、この『謁見(えっけん)の間』で待っていてください」

「は、はい」

「たのむぜ。うわあ、緊張する!」

 二人は、ガチガチになってイスに座った。

 バンダナワドルディとカービィは、ろうかに出た。カービィは、さっそくたずねた。

「どうなってるの? あの、ぜんぜん似てない肖像画は何?」

「実はね……」

 と、バンダナワドルディは小声で話し始めた。

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 ワドルディたちの中には、特別な才能や特技をもっている者が何人もいる。カービィにつりざおを作ってくれた「道具屋くん」もそうだし、他にも「ものしりくん」「武器屋くん」など、それぞれあだ名がついている。

 そんな中に、とびぬけて絵のじょうずなワドルディがいた。みんなからは「おえかきくん」と呼ばれている。

 その才能に目をつけたデデデ大王が、命じたのだ。

 オレ様の肖像画を描け、と。

 おえかきワドルディは、もちろん、張り切って取り組んだ。そんけいするデデデ大王の肖像画を、ほんものそっくりに描こうと、たましいをこめて絵筆をふるった。

 けれど、できあがった肖像画を見たとたん、デデデ大王は怒り出した。

「なんだ、これは!? おまえは、オレ様がこんなマヌケな顔をしていると思っているのか!?」

 おえかきワドルディは、ふるえ上がって言った。

「マ、マヌケだなんて……とんでもありません! ぼくは、デデデ大王様の偉大さを表現しようと、努力して……」

「ぜんぜん似とらんではないか! やり直し!」

 しかたなく、おえかきワドルディは肖像画を描き直すことになった。

 ワドルディ隊のリーダー、バンダナワドルディが、たくさんアドバイスをした。

「えーと、目は、そんな、ゆでたまごみたいな形じゃないほうがいいんじゃないかな? もっと切れ長のほうが、かっこいいよ」

「え? でも、大王様の目は切れ長では……」

「いいんだ、これは、芸術作品なんだから。本物そっくりじゃなくても、大王様のかっこよさが表現されていれば、すばらしい芸術になると思うよ」

 バンダナワドルディの言葉を聞いて、おえかきワドルディはハッとした。

「そのとおりです! ぼく、がんばります! 大王様の偉大さやかっこよさを、思いっきり、表現します!」

 こうして描き上がった肖像画に、デデデ大王は大満足。

 肖像画の下に、「プププランドの偉大なる支配者……」という宣伝文までつけて、コピーを大量に作り、プププランドじゅうにばらまくよう、ワドルディたちに命じた。

 ワドルディたちは、近所の住民たちに肖像画を配ったが、もちろんみんなは大さわぎ。

「なんだ、これ! かっこよすぎるよ。デデデ大王にぜんぜん似てない!」

「美化しすぎだわ! これじゃ、だれだか、わかんない!」

「おえかきくんが描いたんだって? ひょっとして、デデデ大王におどされて描いたのか?」

 と、さんざんな言われよう。

 それでもデデデ大王は少しも気にせず、毎日、自分の肖像画をながめては、ニヤニヤしているのだという。

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 話を聞いて、カービィはあきれて言った。

「ぼくが、釣りをがんばってる間に、そんなことがあったなんて!」

 バンダナワドルディは言った。

「あの肖像画が、まさか遠い村にまで届いてるなんて思わなかったよ。とにかく、デデデ大王様に知らせなくちゃ」

 カービィとバンダナワドルディは、デデデ大王の執務室(という名前の昼寝室)に向かった。

 デデデ大王は昼寝からさめたばかりで、寝ぼけまなこだったが、バンダナワドルディの話を聞いたとたん、ぱっちりと目を開けた。

「なに!? あの肖像画を見てたずねてきた、だと!?」

「はい。何か、なやみごとがあるそうです。デデデ大王様に解決してほしいようです」

「ワハハ、まかせろ、なんでも解決してやるぞ! オレ様の実力をみせてやる!」

 デデデ大王は、新品のガウンをはおって、謁見(えっけん)の間へとドタドタ走っていった。

     


「偉大なデデデ大王様」の肖像画を見て、はるばるやってきたチップとリーファン。ふたりの『なやみごと』とは? デデデ大王は、無事に解決できるのか!?
次回「あこがれの大王様?」をおたのしみに!
 (2月23日公開予定)


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814円(本体740円+税)
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新書判
ISBN
9784046322364

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定価
814円(本体740円+税)
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サイズ
新書判
ISBN
9784046322357

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