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「待て、メタナイト! 抜けがけは、ゆるさんぞ!」
「どこ行くの? ホテルのレストラン? 一日一食限定ランチ?」
デデデ保安官とカービィに詰め寄られて、メタナイトは冷たく答えた。
「……捜査だ。ドロッチェは、この町から鉄道に乗り、逃亡する可能性が高い」
デデデ保安官は、当然だとばかりに、うなずいた。
「う、うむ、わかっとるわい。だから、こうしてサボテン・シティまでやって来たのだ」
カウボーイ・ワドルディが言った。
「ならば、駅を見張っていればいいのではないでしょうか? なぜ、ホテルに?」
メタナイトは、そびえ立つつホテルを見上げて答えた。
「汽車に乗るにあたって、ヤツは変装するはずだ。そのためには、個室が必要になる。かならず、ホテルの部屋を利用するにちがいない」
「なるほど! では、オレ様たちも……!」
「大どろぼうを、つかまえるぞー!」
デデデ保安官とカービィは、さっそくホテルに向かおうとした。
と、カウボーイ・ワドルディが、一枚の紙を取り出して言った。
「ドロッチェの指名手配書を持ってきました。これが、ドロッチェの人相書きです」
デデデ保安官とカービィは、足を止めて、手配書をながめた。
描かれているのは、しゃれた赤いシルクハットをかぶった、いかにも上品な紳士だった。
カービィが叫んだ。
「えー!? ぼくらが会ったときと、ぜんぜんちがうね! あのときは、マッチョリーノさんそっくりの、筋肉ムキムキだったのに!」
メタナイトは、ため息をついて言った。
「そこが、やっかいなところなのだ。ヤツの姿は、変幻自在。豪快なガンマンにも、上品な紳士にもなれる。見た目だけでは、見抜くことがむずかしい。とにかく、少しでもあやしいと思ったら、疑ってかかったほうがいい」
カウボーイ・ワドルディが、うなずいた。
「わかりました。見た目にだまされず、すべてを疑うことにします」
「……うむ」
メタナイトはうなずいて、言った。
「このホテルには、二つの入口がある。君らにまかせるのは、本意ではないが……」
メタナイトは、頭を振って、言い直した。
「やむをえん。私は、東側の入口をチェックする。君たちは、西側をたのむ」
「よし! まかせろ!」
「ドロッチェをつかまえるぞー!」
メタナイトは東へ、カービィたちは西へ。
それぞれ、持ち場について、目を光らせることになった。
カービィとデデデ保安官、そしてワドルディ団は、ホテルの入口の正面に陣取った。
「ここなら、出入りする客をぜったいに見逃さんぞ。ドロッチェは、オレ様の手でつかまえてやる!」
デデデ保安官は、目をギラギラさせて、入口をにらみつけた。
カウボーイ・ワドルディが、手配書をじっくりながめて、言った。
「手がかりは、この似顔絵だけですね。変装にだまされないように、気をつけないと」
カービィが、張り切って言った。
「だいじょーぶ! ぼくなら、どんな変装だって、見破っちゃうもんね!」
デデデ保安官も、負けじとばかりに大声で言った。
「引っこんでろ、カービィ。ここは、オレ様の出番だ!」
と、そのとき。
ホテルの入口から、ひとりの客が出てきた。
すその長いドレスを着て、大きなリボンのついたぼうしをかぶった、優雅な女性だ。
デデデ保安官は言った。
「あの女性に、聞き込みをしてみよう。ワドルディ、似顔絵をよこせ」
「はい!」
一行は、女性に駆け寄った。
カービィが、声をかけた。
「こんにちは! ぼく、カービィっていうんだ。ちょっと聞きたいんだけど……」
デデデ保安官が、カービィを押しのけて言った。
「オレ様は、世界じゅうの平和を守るデデデ保安官。今、凶悪な犯罪者を探しているところなのだ」
女性は、おどろいたように目をパチパチさせて、一行を見た。
「凶悪な犯罪者ですって? まあ、こわい」
「安心しろ、オレ様が、かならず逮捕してやるからな。まずは、この似顔絵を見てくれ」
デデデ保安官は、指名手配書を差し出した。
女性は、感心したように言った。
「あら、すてきな紳士ですわね。すごくハンサムで、おしゃれですわ」
「見かけにだまされてはいかんぞ。そいつは、凶悪な大どろぼうなのだ。宝の剣を盗んで、逃亡中なのだ」
「まあ! 悪いひとですのね。こんなに、かっこいいのに」
「見かけた覚えはないか?」
「……あっ、そういえば」
女性は、ハッと思い出したように言った。
「さっき、廊下ですれ違ったような気がしますわ。ええ、たしかに、そのひとでした。こそこそした様子で、ホテルの東側に向かって行きましたわ」
「おお!」
デデデ保安官とカービィは、同時に飛び上がった。
「見つけたぞ、ドロッチェめ!」
「東側には、メタナイトがいるから安心だね」
「フン、あんなヤツ、たよりにならん! やはり、オレ様でなくてはな!」
女性は、張り切るふたりを見て、にっこりして言った。
「ぜったいに、つかまえてくださいね。ゆうかんな保安官さんと、ガンマンさん」
「おお、安心しろ!」
「ぼくに、まかせて!」
カービィたちは、建物の東側に向かって駆け出した。
「がんばってくださいね。では……」
女性は手を振り、駅に向かって歩き出した。
そのとき、カウボーイ・ワドルディが、ふと足を止めた。
女性を振り返って、考えこむ。
女性は、大きなスーツケースを引き、長い棒のようなものを小脇にかかえている。
「長い……棒……あんな荷物、めずらしいなあ。なんだろう?」
カウボーイ・ワドルディは、思いきって声をかけた。
「あの、すみません!」
女性は、立ち止まった。
カウボーイ・ワドルディは、じっと女性を見上げて、たずねた。
「その、長い荷物は、なんですか?」
「え? ああ、これですか?」
女性は、にっこり笑って答えた。
「パラソルですわ。わたくし、日焼けをしたくないので、かならずパラソルを持ち歩いていますの」
「あ、そうでしたか」
カウボーイ・ワドルディは、納得して言った。
「引き止めてしまって、ごめんなさい」
「いいえ、かまいませんのよ。では、さようなら」
「さようなら!」
カウボーイ・ワドルディは、女性に背を向け、デデデ保安官とカービィたちを追いかけた。
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メタナイトは、植えこみの後ろにかくれて、目立たないようにホテルの入口を見張っていた。
そこへ、カービィとデデデ保安官、そしてワドルディ団が、そうぞうしく駆けつけた。
「やっほー、メタナイト!」
「見つけたぞ! ドロッチェのヤツを!」
「……何?」
メタナイトは、おどろいて言った。
「見つけた? ヤツは、どこに……」
「ホテルの中だ。こっちの東側の入口に、あらわれるはずだ」
「どういうことだ?」
カービィが言った。
「ドロッチェを見たっていうひとがいたんだ。廊下で、すれ違ったんだって!」
「目撃者が? まさか……」
デデデ保安官が言った。
「指名手配書を見せたら、すぐに思い出してくれたんだわい。まちがいない、ドロッチェは、まだホテルの中にいるぞ」
「指名手配書、だと?」
メタナイトの目が、キラッと光った。
「ドロッチェが、素顔でうろついているはずはない。つまり、手配書の似顔絵を見て、ピンと来る者など、いるはずがないのだ」
「だが、あの女性はたしかに証言したぞ。ドロッチェが、こそこそして、ホテルの東側に向かったと……」
メタナイトは、怒りをこめて片手をにぎりしめ、叫んだ。
「やられた! そいつが、ドロッチェだ!」
大どろぼうドロッチェを、取り逃がしてしまったカービィたち。このままでは、ドロッチェに名剣を持ち去られてしまう! メタナイトが急いで向かう先とは――?
次回「汽車に乗りこめ!!」は3月14日(金)公開だよ。おたのしみに!
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