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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』第4回 大どろぼうを追え


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「待て、メタナイト! 抜けがけは、ゆるさんぞ!」

「どこ行くの? ホテルのレストラン? 一日一食限定ランチ?」

 デデデ保安官とカービィに詰め寄られて、メタナイトは冷たく答えた。

「……捜査だ。ドロッチェは、この町から鉄道に乗り、逃亡する可能性が高い」

 デデデ保安官は、当然だとばかりに、うなずいた。

「う、うむ、わかっとるわい。だから、こうしてサボテン・シティまでやって来たのだ」

 カウボーイ・ワドルディが言った。

「ならば、駅を見張っていればいいのではないでしょうか? なぜ、ホテルに?」

 メタナイトは、そびえ立つつホテルを見上げて答えた。

「汽車に乗るにあたって、ヤツは変装するはずだ。そのためには、個室が必要になる。かならず、ホテルの部屋を利用するにちがいない」

「なるほど! では、オレ様たちも……!」

「大どろぼうを、つかまえるぞー!」

 デデデ保安官とカービィは、さっそくホテルに向かおうとした。

 と、カウボーイ・ワドルディが、一枚の紙を取り出して言った。

「ドロッチェの指名手配書を持ってきました。これが、ドロッチェの人相書きです」

 デデデ保安官とカービィは、足を止めて、手配書をながめた。

 描かれているのは、しゃれた赤いシルクハットをかぶった、いかにも上品な紳士だった。

 カービィが叫んだ。

「えー!? ぼくらが会ったときと、ぜんぜんちがうね! あのときは、マッチョリーノさんそっくりの、筋肉ムキムキだったのに!」

 メタナイトは、ため息をついて言った。

「そこが、やっかいなところなのだ。ヤツの姿は、変幻自在。豪快なガンマンにも、上品な紳士にもなれる。見た目だけでは、見抜くことがむずかしい。とにかく、少しでもあやしいと思ったら、疑ってかかったほうがいい」

 カウボーイ・ワドルディが、うなずいた。

「わかりました。見た目にだまされず、すべてを疑うことにします」

「……うむ」

 メタナイトはうなずいて、言った。

「このホテルには、二つの入口がある。君らにまかせるのは、本意ではないが……」

 メタナイトは、頭を振って、言い直した。

「やむをえん。私は、東側の入口をチェックする。君たちは、西側をたのむ」

「よし! まかせろ!」

「ドロッチェをつかまえるぞー!」

 メタナイトは東へ、カービィたちは西へ。

 それぞれ、持ち場について、目を光らせることになった。


 カービィとデデデ保安官、そしてワドルディ団は、ホテルの入口の正面に陣取った。

「ここなら、出入りする客をぜったいに見逃さんぞ。ドロッチェは、オレ様の手でつかまえてやる!」

 デデデ保安官は、目をギラギラさせて、入口をにらみつけた。

 カウボーイ・ワドルディが、手配書をじっくりながめて、言った。

「手がかりは、この似顔絵だけですね。変装にだまされないように、気をつけないと」

 カービィが、張り切って言った。

「だいじょーぶ! ぼくなら、どんな変装だって、見破っちゃうもんね!」

 デデデ保安官も、負けじとばかりに大声で言った。

「引っこんでろ、カービィ。ここは、オレ様の出番だ!」

 と、そのとき。

 ホテルの入口から、ひとりの客が出てきた。

 すその長いドレスを着て、大きなリボンのついたぼうしをかぶった、優雅な女性だ。

 デデデ保安官は言った。

「あの女性に、聞き込みをしてみよう。ワドルディ、似顔絵をよこせ」

「はい!」

 一行は、女性に駆け寄った。

 カービィが、声をかけた。

「こんにちは! ぼく、カービィっていうんだ。ちょっと聞きたいんだけど……」

 デデデ保安官が、カービィを押しのけて言った。

「オレ様は、世界じゅうの平和を守るデデデ保安官。今、凶悪な犯罪者を探しているところなのだ」

 女性は、おどろいたように目をパチパチさせて、一行を見た。

「凶悪な犯罪者ですって? まあ、こわい」

「安心しろ、オレ様が、かならず逮捕してやるからな。まずは、この似顔絵を見てくれ」

 デデデ保安官は、指名手配書を差し出した。

 女性は、感心したように言った。

「あら、すてきな紳士ですわね。すごくハンサムで、おしゃれですわ」

「見かけにだまされてはいかんぞ。そいつは、凶悪な大どろぼうなのだ。宝の剣を盗んで、逃亡中なのだ」

「まあ! 悪いひとですのね。こんなに、かっこいいのに」

「見かけた覚えはないか?」

「……あっ、そういえば」

 女性は、ハッと思い出したように言った。

「さっき、廊下ですれ違ったような気がしますわ。ええ、たしかに、そのひとでした。こそこそした様子で、ホテルの東側に向かって行きましたわ」

「おお!」

 デデデ保安官とカービィは、同時に飛び上がった。

「見つけたぞ、ドロッチェめ!」

「東側には、メタナイトがいるから安心だね」

「フン、あんなヤツ、たよりにならん! やはり、オレ様でなくてはな!」

 女性は、張り切るふたりを見て、にっこりして言った。

「ぜったいに、つかまえてくださいね。ゆうかんな保安官さんと、ガンマンさん」

「おお、安心しろ!」

「ぼくに、まかせて!」

 カービィたちは、建物の東側に向かって駆け出した。

「がんばってくださいね。では……」

 女性は手を振り、駅に向かって歩き出した。

 そのとき、カウボーイ・ワドルディが、ふと足を止めた。

 女性を振り返って、考えこむ。

 女性は、大きなスーツケースを引き、長い棒のようなものを小脇にかかえている。

「長い……棒……あんな荷物、めずらしいなあ。なんだろう?」

 カウボーイ・ワドルディは、思いきって声をかけた。

「あの、すみません!」

 女性は、立ち止まった。

 カウボーイ・ワドルディは、じっと女性を見上げて、たずねた。

「その、長い荷物は、なんですか?」

「え? ああ、これですか?」

 女性は、にっこり笑って答えた。

「パラソルですわ。わたくし、日焼けをしたくないので、かならずパラソルを持ち歩いていますの」

「あ、そうでしたか」

 カウボーイ・ワドルディは、納得して言った。

「引き止めてしまって、ごめんなさい」

「いいえ、かまいませんのよ。では、さようなら」

「さようなら!」

 カウボーイ・ワドルディは、女性に背を向け、デデデ保安官とカービィたちを追いかけた。

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 メタナイトは、植えこみの後ろにかくれて、目立たないようにホテルの入口を見張っていた。

 そこへ、カービィとデデデ保安官、そしてワドルディ団が、そうぞうしく駆けつけた。

「やっほー、メタナイト!」

「見つけたぞ! ドロッチェのヤツを!」

「……何?」

 メタナイトは、おどろいて言った。

「見つけた? ヤツは、どこに……」

「ホテルの中だ。こっちの東側の入口に、あらわれるはずだ」

「どういうことだ?」

 カービィが言った。

「ドロッチェを見たっていうひとがいたんだ。廊下で、すれ違ったんだって!」

「目撃者が? まさか……」

 デデデ保安官が言った。

「指名手配書を見せたら、すぐに思い出してくれたんだわい。まちがいない、ドロッチェは、まだホテルの中にいるぞ」

「指名手配書、だと?」

 メタナイトの目が、キラッと光った。

「ドロッチェが、素顔でうろついているはずはない。つまり、手配書の似顔絵を見て、ピンと来る者など、いるはずがないのだ」

「だが、あの女性はたしかに証言したぞ。ドロッチェが、こそこそして、ホテルの東側に向かったと……」

 メタナイトは、怒りをこめて片手をにぎりしめ、叫んだ。

「やられた! そいつが、ドロッチェだ!」


大どろぼうドロッチェを、取り逃がしてしまったカービィたち。このままでは、ドロッチェに名剣を持ち去られてしまう! メタナイトが急いで向かう先とは――?
次回「汽車に乗りこめ!!」は3月14日(金)公開だよ。おたのしみに!


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