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【スペシャルれんさい】『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』第3回 賞金首、あらわる


プププ荒野で、すご腕ガンマンのカービィが大かつやく! 2025年3月12日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』は、大人気サブゲーム『早撃ちカービィ』の小説版!! 発売に先がけて、気になる新作の先行ためし読みを楽しんじゃおう☆

◆第3回
おそろしい『大目玉のバケモノ』に名剣をうばわれた事件を解決したカービィたち。賞金として、ドーナツが百万個も買える大金がもらえるみたい! そんなにたくさんのお金をくれる、となり町の大金持ち・マッチョリーノって、いったいどんな人なんだろう……?



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賞金首、あらわる

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 さて、事件が解決したので、みんなホッとした。

 デデデ保安官が、ふんぞり返って言った。

「むずかしい事件だったわい! オレ様でなければ、解決は不可能だっただろうな!」

 ナックルジョーが、すばやく突っこんだ。

「ワドルドゥが、自分から白状しただけッスよ。保安官は、なんにもやってないッス」

「なんにもとは、何だ! ワドルドゥは、オレ様の取り調べのきびしさを知り、もはや逃げられないと観念して自白したんだぞ!」

「あ、あの、保安官様」

 と、カウボーイ・ワドルディが言った。

「ワドルドゥは、どうなるのでしょう? 罰を受けるのでしょうか?」

 店のすみで小さくなっていたワドルドゥは、ビクッとして顔を上げた。

 キャピィが、気の毒そうに言った。

「そりゃ、ワドルドゥがしたことは悪いけど……自分からあやまって、剣を返したんだし、あんまりきびしい罰じゃなくても……」

「うーむ……」

 デデデ保安官は、考えこんだ。

 ワドルドゥは、みんなの友だちだ。できれば、罰を軽くしてあげたい。

 しかし、馬車をおそって剣をうばうなんて、ゆるされることではない。どうするべきか、頭の痛い問題だ。

 と、そこへ。

「じゃまするぜ。ワイルド・タウンの酒場ってのは、ここかい?」

 そう声をかけながら、男が入ってきた。

 もじゃもじゃのヒゲに、筋肉モリモリの体格。声も大きく、見るからに、たくましい。

 コックカワサキが、飛び上がって叫んだ。

「えー!? マ、マ、マッチョリーノ……!?」

「おう、その通りさ。この町の連中が、うちの家宝の剣を取り返してくれたと聞いたんでな。受け取りに来たってわけさ」

 みんな、びっくりして、マッチョリーノを見つめた。

 カウボーイ・ワドルディが、あぜんとして、たずねた。

「もう、ブロントバートから聞いたんですか? さっき出て行ったばかりなのに……いくらなんでも、早すぎるんじゃ……」

「あいつ、全速力で、知らせに来てくれたんだ。たよりになるヤツだぜ。で、剣はどこだ?」

「これだ」

 デデデ保安官が、布にくるまれたさやと剣を差し出した。

 マッチョリーノはうれしそうに受け取り、みんなの顔を見回した。

「礼を言うぜ。ありがとうよ、ワイルド・タウンの、勇ましい野郎ども!」

 そのまま出て行こうとする彼を、デデデ保安官が呼び止めた。

「待て待て。何か、忘れてないか?」

「なんだと? 忘れもの?」

「賞金だ。きさま、剣を取り返した者には賞金を出すって言っただろう?」

 カービィも言った。

「ぼくら、賞金で、ドーナツをたくさん食べるんだ! ぼく、チョコクランチドーナツと、シナモンドーナツと、バニラクリームドーナツが好き! あと、あと……」

「ああ、そうそう! 忘れちゃいけねえ、賞金だよな」

 マッチョリーノは、豪快な笑顔で言った。

「もちろん、たんまり用意してあるぜ。今夜、となり町の、オレの屋敷に来てくれ。おめぇらをもてなす、超ゴージャスなドーナツ・パーティを開くからよ!」

「ドーナツ・パーティ!? わーい、わーい!」

 カービィたちは、大歓声を上げた。

 そのとき、ワドルドゥが、おずおずとマッチョリーノの前に進み出た。

「あの……あ、あの……」

 ワドルドゥは、ブルブルふるえながら、マッチョリーノを見上げた。

「ワタシが……剣を盗んだ犯人なのであります。ごめんなさい……」

「なんだと?」

 マッチョリーノは、おどろいたように、濃いまゆげをピクピクさせた。

 ワドルドゥは、なみだぐんで続けた。

「どんな罰でも受けるであります……覚悟してるであります……」

 酒場のみんなは、かたずを飲んで、なりゆきを見守った。

 けれど、マッチョリーノは、大声で笑って言った。

「わははは! 罰なんか、必要ねえよ。こうして、剣が無事に戻ってきたんだからな。それに、気絶した御者にも、護衛のガンマンにも、ケガはなかった!」

「でも……でも……」

「反省してるなら、それで十分だぜ。もしも、おめぇの気がすまねえっていうなら……そうだな、この酒場で、皿洗いでもしたらどうだ? 十日間ほど続けりゃ、いいだろう」

「え……ええ? 皿洗い?」

 ワドルドゥは、大きな目をぱちぱちさせた。

 コックカワサキが、ホッとして言った。

「それは、いいね。ちょうど、人手が足りなかったんだ。皿洗いをしてくれたら、助かるよ!」

「は……はい! いっしょうけんめい、お皿を洗って洗って、洗いまくるであります!」

 ワドルドゥは、マッチョリーノに向かって、目玉が床につきそうなほど深々と頭を下げた。

「ありがとうございます、ありがとうございます! このご恩は、けっして、忘れないであります!」

「いいってことよ。もう二度と、どろぼうなんか、するんじゃねえぞ」

「はい! ぜったいに、しないであります!」

「じゃあな、あばよ!」

 マッチョリーノは、酒場を出て行った。


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