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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』第4回 大どろぼうを追え


プププ荒野で、すご腕ガンマンのカービィが大かつやく! 2025年3月12日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』は、大人気サブゲーム『早撃ちカービィ』の小説版!! 発売に先がけて、気になる新作の先行ためし読みを楽しんじゃおう☆

◆第4回
とくいの変装で、まんまと目当ての名剣をうばっていった大どろぼう・ドロッチェ。そのドロッチェを、メタナイト・カービィ・デデデ保安官とワドルディ団が追う! 事件のゆくえは、いったいどうなる!?



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大どろぼうを追え

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 いっぽう、こちらは、ワイルド・タウンの東に位置する大都会、サボテン・シティ。

 町の中心には大きな駅があり、おおぜいの旅人が行き交っている。

 駅前には、世界に名だたる超高級ホテル「ザ・サボテン・ホテル」が建っている。

 そのホテルの最上階、ゴージャスなスイートルームで、大どろぼうドロッチェは、のびのびとくつろいでいた。

 もちろん、マッチョリーノの変装はといて、素顔のままだ。

「ふぅ! 思ったより、楽な仕事だったな。ワイルド・タウンのゆかいな連中に、かんぱいだ!」

 ドロッチェは、大きなソファにゆったりとすわり、グラスについだレモン・ソーダを飲み干した。

 彼は、かの名剣が武器屋から運ばれるという情報をつかみ、ひそかに狙っていた。そこへ、思いがけずワドルドゥの乱入があったため、あとをつけてワイルド・タウンに向かったのだ。

 酒場の会話をカベ越しに盗み聞きし、とっさにマッチョリーノに変装して、まんまと剣を手に入れたというわけだ。彼にしてみれば、まったく、朝メシ前の仕事だった。

 ドロッチェはグラスをテーブルに置き、立ち上がって、剣を手にした。

 さやから抜いて、妖気をはなつ剣身を、じっくりながめる。

 ドロッチェは、ほうっとため息をもらして、つぶやいた。

「なんという、みごとな剣だろう。武器というより、芸術品というにふさわしい。マッチョリーノみたいなならず者には、もったいないってもんだ」

 ドロッチェの声には、怒りがこめられていた。

 マッチョリーノは、一代でばく大な財産を築き上げた、成り上がり者だ。

 とにかく力じまんで、乱暴者。若いころは、山賊団を率いて、暴れまわっていたらしい。彼にかかわったために、財産も地位も失い、どん底に落ちてしまった者も少なくないという。

 しかも、マッチョリーノは、ただの力じまんではなく、ずるがしこい一面もあり、けっして尻尾をつかませない。権力者にわいろを贈って、数々の悪事を見逃してもらっているらしい。

 この名剣も、もともとは、マッチョリーノ家の宝などではないだろう。本来の持ち主をだますか、おどすかして、強引にうばい取ったものにちがいない。

「つまり、マッチョリーノなんかより、オレのほうが、この剣にふさわしいってことさ。早く帰って、じまんのコレクション・ルームにかざるとしよう」

 ドロッチェは、なにげなく窓の外を見下ろした。

 ――と、思いがけない光景が視界に飛びこんできた。

 仮面のガンマンが、駅前広場を歩き回っている。そして、茶色いぼうしの保安官やピンクのガンマンら、ワイルド・タウンの連中が、ぞろぞろと彼について歩いている。

 ドロッチェの顔が、引きつった。

「うげげっ、メタナイト! あいつ、オレを追ってきたのか! こうしちゃいられないぞ……!」

 さっきまでの余裕はどこへやら、ドロッチェは大急ぎでスーツケースを開け、変装用具を取り出した。

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 こちらは、駅前の大きな広場。

 メタナイトは、広場を歩き回り、行き交うひとびとを油断なく見張っている。

 そのいっぽうで、カービィは大声を上げ、はしゃぎ回っていた。

「見て見て! あそこにドーナツ屋さんがある! となりはケーキ屋さん! そのとなりはピザ屋さんで、そのとなりはアイスクリーム屋さん! すごいよ、すごいよー! ぜんぶ、おいしそうだよー!」

 デデデ保安官が、カービィを見下ろして、冷静な声で言った。

「おちつくのだ、カービィ。あのドロッチェが、ケーキやアイスクリームを食ってるとは思えん。オレ様たちが捜査すべきは、もっと他の場所だ……!」

 そのセリフを聞いて、ワドルディ団は、キラキラした目でデデデ保安官を見上げた。

「わあ、かっこいいなあ、保安官様……」

「保安官様は、どんなときだって、任務がいちばん大事なんだ」

「大どろぼうを、つかまえるんだもんね!」

 デデデ保安官は、一軒の店をピシッと指さして、叫んだ。

「あやしいのは、あのステーキ屋だぁぁ! 肉汁したたるステーキ屋に、ドロッチェがひそんでいるにちがいない! 行くぞー! 捜査だ、捜査だー!」

 デデデ保安官は、よだれをたらして、駆け出した。

 カービィも、飛び上がって叫んだ。

「さんせい、さんせーい! ステーキ屋さんに突撃だー!」

「待ってください!」

 カウボーイ・ワドルディが、全身で二人を食い止めた。

「どけ、ワドルディ! 捜査のじゃまをするな!」

「大どろぼうドロッチェが、のんきにステーキを食べてるわけ、ないじゃないですかー! 捜査するなら、もっと別の場所です!」

「うるさい! オレ様はステーキ屋を捜査したいのだ!」

「ぼくも! ぼくも、ステーキ屋さんとハンバーグ屋さんとピザ屋さんを捜査したいんだよー!」

「だめです!」

 カウボーイ・ワドルディは、必死に叫んだ。

「こうしている間にも、ほら! メタナイトさんが、ホテルに向かっています! ホテルを調べる気ですよ!」

「ホテル……だと?」

 目の前にそびえ立っているのは、超高級な「ザ・サボテン・ホテル」。

 とたんに、デデデ保安官は目の色を変えた。

「うぉぉ! ホテルには、レストランがある! 高級ホテルのレストランなら、さぞかしうまいにちがいない!」

 カービィも、浮かれて叫んだ。

「ホテル! ホテル! ホテルのレストランに突撃だー!」

 一行は、飛ぶように、メタナイトを追いかけた。


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