
プププ荒野で、すご腕ガンマンのカービィが大かつやく! 2025年3月12日発売のつばさ文庫『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』は、大人気サブゲーム『早撃ちカービィ』の小説版!! 発売に先がけて、気になる新作の先行ためし読みを楽しんじゃおう☆
◆第5回
大どろぼうドロッチェの、とくいの変装にまんまとだまされ、取り逃がしてしまったカービィたち。このままでは、名剣を持ち去られてしまう! ドロッチェを追って、メタナイトが向かったのは……?
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汽車に乗りこめ!!
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メタナイトはマントをひるがえし、飛ぶように駆けて行く。
カービィたちは、あわてて彼を追いかけた。
デデデ保安官が、走りながらどなった。
「あれが、ドロッチェだと? そんなはず、ないわい! 美しいレディだったぞ!」
「言っただろう! ヤツは、変装の名人だ。筋肉ムキムキ男にも、美しい女性にも、かわいい子どもにも、化けることができるのだ!」
「そ、そんな……!」
カウボーイ・ワドルディは、息を切らせながら、つぶやいた。
「あの長い棒……パラソルなんかじゃなく、やっぱり、盗んだ剣だったんだ! あのとき、ぼくが、気がついていれば……!」
メタナイトを先頭に、一行は駅に駆けこんだ。
駅は、おおぜいの旅人でごった返していた。これでは、ドロッチェを探すどころか、前へ進むことすらむずかしい。
「すまん、通してくれ!」
「オレ様は保安官だぞ! 賞金首を追跡中だ! 道をあけろ!」
大声を上げても、人ごみの中を進むことはできなかった。
そのとき、カービィが、大きく息を吸いこんで飛び上がった。
「ぼくに、まかせて!」
ホバリングで人ごみの上に出て、あたりを見回す。
すると、さっきの女性が、急ぎ足で駅のホームへ向かって行くのが見えた。
「あっ、いたー! ドロッチェだ!」
その声を聞きつけると、ドロッチェは振り返り、ニヤリとした。
「おっと、見つかっちまったか。だが、ここでお別れだぜ」
ドロッチェは優雅に手を振り、ホームへと姿を消してしまった。
「待てー!」
カービィは、ドロッチェめがけて一直線! ホームに飛びこもうとしたが――。
「こらこら! 切符がないと、汽車には乗れないよ!」
駅員が、カービィに飛びついて、つかまえた。
カービィは、じたばたして叫んだ。
「はなして! ドロッチェが逃げちゃう……!」
「乗りたければ、切符を買いなさい!」
「大どろぼうが、逃げちゃうんだよー!」
「大どろぼうより、無賃乗車のほうが重罪だ!」
「そんな~!」
そこへ、ようやく、メタナイトとデデデ保安官、そしてワドルディ団が駆けつけてきた。
駅員は、ギョッとして叫んだ。
「あんたたち、みんな、汽車に乗る気かい!? ダメだダメだ、切符を買わないと!」
「切符代なら、ここに」
メタナイトは、スマートにお金を差し出した。
駅員は受け取って、言った。
「はい、おひとり分ね。他の連中は、ダメだよ!」
「ええい、うるさい! どけどけ!」
デデデ保安官は、駅員をはね飛ばそうとした。
カウボーイ・ワドルディが、あわてて、がま口さいふを取り出した。
「切符代、はらいます! 保安官様と、ぼくらと、カービィの分も!」
「何人いるんだい?」
「えっと……みんな、整列して! 番号!」
ワドルディ団が、元気よく声を上げた。
「いち!」
「に!」
「さん!」「さん!」
「え? さんは、ぼくだよ」
「じゃ、ぼくは……し?」
もたもたしている間に、発車を知らせるベルが鳴りひびいた。
メタナイトは、すばやくマントをひるがえして駆け出し、汽車に飛び乗った。
デデデ保安官は、目をギラつかせて叫んだ。
「こうしてはおれん! メタナイトに、手柄を横取りされてたまるか!」
デデデ保安官は、強引に駅員を押しのけてホームへ駆けこんだ。カービィも、超特急ホバリングでホームへ。
「こらー! おまえら、無賃乗車は、重罪だぞ! サボテン抱きの刑だぞー!」
声を張り上げる駅員の足元を、ちょこまかとワドルディ団が駆け抜ける。カウボーイ・ワドルディは、頭を深く下げて言った。
「ごめんなさい、あとで、ちゃんと払いますから!」
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一行が、バタバタと客車に乗りこんだ、次の瞬間。
四人のならず者たちが、ふらりとホームに現れた。
気づいた駅員が、ふきげんに言った。
「なんだい、あんたたちも、この汽車に乗りたいのかい? でも、もう発車時刻だからね。乗車は、しめきり! 次の汽車に乗るんだね」
男たちのリーダーらしき、体格のいい男がつぶやいた。
「この汽車に、乗りたいんだがな」
「だったら、さっさと切符を買ってくれよ! まったく、今日はどうなってるんだ。無賃乗車の連中ばっかり……」
「オレに、切符を買わせようっていうのか? ほほう……おまえ、命知らずだな」
男は、駅員ののどを締め上げた。
駅員は、初めて男の顔をまともに見て、悲鳴を上げた。
「え……ええええ!? マッチョリーノ様……!?」
そう。ならず者たちを率いているのは、あのマッチョリーノだった。背中に、大きなリュックサックのような荷物をしょっている。
「切符代は、これで足りるか? ええ? 足りるかって聞いてんだ!」
マッチョリーノは、分厚い札束で、バシバシと駅員の顔をたたいた。
駅員は、ふるえる声で言った。
「き、切符代など、もちろん、いただきませんとも! マッチョリーノ様のために、特等室をご用意いたします!」
「よけいなことを、するんじゃねえよ。オレは、静かに汽車の旅を楽しみたいだけなんでな……」
マッチョリーノとならず者たちは、不敵な笑いを浮かべて、ゆうゆうと客車に乗りこんだ。