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ワタシは、みんなに比べて銃がヘタで、早撃ち大会では、いつもビリだったであります。
それがくやしくて、悲しくて……思いあまって、別の武器を買ってみることにしたであります。
お金をためて、谷の向こうの武器屋さんに行ったら、武器屋のオヤジさんが、電撃ムチはどうかとすすめてくれたであります。
ためしてみたら、なんと! ワタシはムチの天才だったであります! ねらったマトは、百発百中! うれしくて、お金を全部はたいて、買ったであります。
で、お店を出ようとしたとき。武器屋のオヤジさんが、お弟子さんに話している声が聞こえたであります。
「このあと、マッチョリーノ様のお使いが、剣を引き取りにくるから、きちんと用意しておけ。そそうがあっては、ならないぞ。マッチョリーノ様は、きびしいお方だからな」
そうしたら、お弟子さんが、興奮した声で言ったであります。
「すごい剣ですよね、親方! ボク、こんなすばらしい剣、初めて見ましたよ!」
「そりゃ、あのマッチョリーノ様の家宝の剣だからな。とてつもない宝物だぞ」
「きっと、高価なんでしょうね。ドーナツが、一万個ぐらい買えそうですね」
「ハハハ! バカを言うんじゃない。一万個どころか、百万個、いや、もっとかな。世界じゅうのドーナツを買い占められるぐらい、高価な剣なんだぞ」
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「ドーナツ百万個~!? わあ、ぼくも食べたい食べたい!」
カービィが、ワドルドゥにかじりつきそうないきおいで、叫んだ。
デデデ保安官も、カービィを押しのけて叫んだ。
「いや、世界じゅうのドーナツは、オレ様のものだわい! だれにも渡さんぞ!」
カウボーイ・ワドルディが、あわてて二人を止めた。
「お、おちついてください、保安官様、カービィ! ワドルドゥ、君は、その話を聞いて、剣をうばおうと思ったの?」
ワドルドゥは、ヒクヒクとしゃくり上げながら、うなずいた。
「実はワタシ、お金をためるのに必死で、三日間なにも食べていなかったであります。おなかペコペコで、百万個のドーナツと聞いて、頭がポーッとなっちゃったであります……」
「そして馬車をおそい、剣をうばったんだね」
カウボーイ・ワドルディは、暗い顔で言った。
ワドルドゥは、泣きながら言った。
「ワタシ、ドーナツのことで頭がいっぱいで、フラフラと馬車を止めてしまったであります。そうしたら、護衛のガンマンさんに攻撃されそうになったので、思わず電撃ムチを振り回してしまって……気がついたら、ガンマンさんも御者さんも、ひっくり返って気絶してたであります。ポーッとしたまま、馬車の中をのぞいてみたら、剣があったであります。ワタシには、その剣が、まるで……まるで……」
ワドルドゥは、ますます大量のなみだを流して、叫んだ。
「特大チュロスのように見えたでありますー!」
カウボーイ・ワドルディが、あぜんとして言った。
「チュロス……? あの、長い棒みたいなお菓子……?」
「はい……ワタシは剣を手に取り、うれしさのあまり『チュロスー! チュロスー!』と叫びながら、駆け出してしまったであります……」
カウボーイ・ワドルディが言った。
「……つまり、ブロントバートが最後に聞いたバケモノの吠え声って……『チュロスー!』だったの?」
さらに、カービィも言った。
「ワドルドゥは、電撃ムチを振り回しちゃったんだね。目からビームを出したなんて、ぜんぜん、ちがうじゃない!」
デデデ保安官も、カービィを押しのけて言った。
「きさま、バケモノにちからを吸い取られたなんて言ってたが、勝手におじけづいて、ヘナヘナになっただけだろう!」
「え……え……えっと……えっと……」
ブロントバートは、しどろもどろになって、言った。
「そりゃ……まあ……ちょっと話を盛ったことは、認めるけどさ……」
「ばかものー! 盛りすぎだ!」
ブロントバートは、たじたじとなりながらも、言い返した。
「でもさ、そいつが剣を盗んだことは事実なんだぜ! りっぱな事件だぜ!」
ワドルドゥは、泣きながら、うなずいた。
「悪いのは、ワタシであります。どんな罰でも、受ける覚悟であります……」
重苦しい空気になった。酒場のガンマンたちは、だまりこんだ。
カウボーイ・ワドルディが、ふんいきを変えようと、言った。
「とにかく、その剣をたしかめなくちゃ! 本当に、マッチョリーノさんの剣なのかどうか」
「まちがいないであります……」
ワドルドゥは、剣をささげ持ち、何重にも巻かれている布を慎重ににはずした。
あらわれたのは、目がくらむほどの宝石をちりばめた、美しいさや。
「ほほう……みごとだわい……」
デデデ保安官が、剣をさやから抜いた。
とたんに――その場の全員が、のけぞった。
「うわああ……!」
その剣身は、まるで、燃えさかる青い炎のようだった。
闇すらも切り裂いてしまいそうな、妖気がほとばしっている。
「ぬぅぅぅ……こ、これは……!」
デデデ保安官は、あわてて剣をさやにおさめ直した。
みんな、想像をこえる剣の迫力に圧倒され、無言で顔を見合わせた。
ただ、カービィだけが、にこにこして言った。
「すっごく、きれいな剣だね! さすが、ドーナツ百万個!」
デデデ保安官は、その言葉を聞いて気を取り直し、ニヤリと笑みを浮かべた。
「そうそう、マッチョリーノ氏は、剣を取り戻した者に、ばく大な賞金を払うという話だったな。その賞金で、たらふくドーナツが食えるということか!」
「やったー! ドーナツ食べほーだい、食べほーだい!」
カービィは両手を上げて飛びはねた。
ブロントバートが言った。
「それじゃ、オレは、マッチョリーノさんを呼んでくるぜ!」
コックカワサキが、たずねた。
「君が、この剣を持って帰ればいいんじゃないの?」
「オレには、そんな重い剣は持てねえよ。それに、万が一、また強盗におそわれたら困るしな。とにかく、マッチョリーノさんを呼んでくるから、待っててくれ。その剣、大事にしといてくれよ!」
ブロントバートは、大急ぎで酒場を飛び出していった。
大事件発生!?……と思ったら、無事にあっさり解決できて、めでたし、めでたし! しかも、ドーナツ食べほうだい♪ カービィたちは、わくわくしながらマッチョリーノの到着を待つけれど……?
第3回へつづく▶
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