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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』第2回 うばわれた名剣


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 ワタシは、みんなに比べて銃がヘタで、早撃ち大会では、いつもビリだったであります。

 それがくやしくて、悲しくて……思いあまって、別の武器を買ってみることにしたであります。

 お金をためて、谷の向こうの武器屋さんに行ったら、武器屋のオヤジさんが、電撃ムチはどうかとすすめてくれたであります。

 ためしてみたら、なんと! ワタシはムチの天才だったであります! ねらったマトは、百発百中! うれしくて、お金を全部はたいて、買ったであります。

 で、お店を出ようとしたとき。武器屋のオヤジさんが、お弟子さんに話している声が聞こえたであります。

「このあと、マッチョリーノ様のお使いが、剣を引き取りにくるから、きちんと用意しておけ。そそうがあっては、ならないぞ。マッチョリーノ様は、きびしいお方だからな」

 そうしたら、お弟子さんが、興奮した声で言ったであります。

「すごい剣ですよね、親方! ボク、こんなすばらしい剣、初めて見ましたよ!」

「そりゃ、あのマッチョリーノ様の家宝の剣だからな。とてつもない宝物だぞ」

「きっと、高価なんでしょうね。ドーナツが、一万個ぐらい買えそうですね」

「ハハハ! バカを言うんじゃない。一万個どころか、百万個、いや、もっとかな。世界じゅうのドーナツを買い占められるぐらい、高価な剣なんだぞ」

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「ドーナツ百万個~!? わあ、ぼくも食べたい食べたい!」

 カービィが、ワドルドゥにかじりつきそうないきおいで、叫んだ。

 デデデ保安官も、カービィを押しのけて叫んだ。

「いや、世界じゅうのドーナツは、オレ様のものだわい! だれにも渡さんぞ!」

 カウボーイ・ワドルディが、あわてて二人を止めた。

「お、おちついてください、保安官様、カービィ! ワドルドゥ、君は、その話を聞いて、剣をうばおうと思ったの?」

 ワドルドゥは、ヒクヒクとしゃくり上げながら、うなずいた。

「実はワタシ、お金をためるのに必死で、三日間なにも食べていなかったであります。おなかペコペコで、百万個のドーナツと聞いて、頭がポーッとなっちゃったであります……」

「そして馬車をおそい、剣をうばったんだね」

 カウボーイ・ワドルディは、暗い顔で言った。

 ワドルドゥは、泣きながら言った。

「ワタシ、ドーナツのことで頭がいっぱいで、フラフラと馬車を止めてしまったであります。そうしたら、護衛のガンマンさんに攻撃されそうになったので、思わず電撃ムチを振り回してしまって……気がついたら、ガンマンさんも御者さんも、ひっくり返って気絶してたであります。ポーッとしたまま、馬車の中をのぞいてみたら、剣があったであります。ワタシには、その剣が、まるで……まるで……」

 ワドルドゥは、ますます大量のなみだを流して、叫んだ。

「特大チュロスのように見えたでありますー!」

 カウボーイ・ワドルディが、あぜんとして言った。

「チュロス……? あの、長い棒みたいなお菓子……?」

「はい……ワタシは剣を手に取り、うれしさのあまり『チュロスー! チュロスー!』と叫びながら、駆け出してしまったであります……」

 カウボーイ・ワドルディが言った。

「……つまり、ブロントバートが最後に聞いたバケモノの吠え声って……『チュロスー!』だったの?」

 さらに、カービィも言った。

「ワドルドゥは、電撃ムチを振り回しちゃったんだね。目からビームを出したなんて、ぜんぜん、ちがうじゃない!」

 デデデ保安官も、カービィを押しのけて言った。

「きさま、バケモノにちからを吸い取られたなんて言ってたが、勝手におじけづいて、ヘナヘナになっただけだろう!」

「え……え……えっと……えっと……」

 ブロントバートは、しどろもどろになって、言った。

「そりゃ……まあ……ちょっと話を盛ったことは、認めるけどさ……」

「ばかものー! 盛りすぎだ!」

 ブロントバートは、たじたじとなりながらも、言い返した。

「でもさ、そいつが剣を盗んだことは事実なんだぜ! りっぱな事件だぜ!」

 ワドルドゥは、泣きながら、うなずいた。

「悪いのは、ワタシであります。どんな罰でも、受ける覚悟であります……」

 重苦しい空気になった。酒場のガンマンたちは、だまりこんだ。

 カウボーイ・ワドルディが、ふんいきを変えようと、言った。

「とにかく、その剣をたしかめなくちゃ! 本当に、マッチョリーノさんの剣なのかどうか」

「まちがいないであります……」

 ワドルドゥは、剣をささげ持ち、何重にも巻かれている布を慎重ににはずした。

 あらわれたのは、目がくらむほどの宝石をちりばめた、美しいさや。

「ほほう……みごとだわい……」

 デデデ保安官が、剣をさやから抜いた。

 とたんに――その場の全員が、のけぞった。

「うわああ……!」

 その剣身は、まるで、燃えさかる青い炎のようだった。

 闇すらも切り裂いてしまいそうな、妖気がほとばしっている。

「ぬぅぅぅ……こ、これは……!」

 デデデ保安官は、あわてて剣をさやにおさめ直した。

 みんな、想像をこえる剣の迫力に圧倒され、無言で顔を見合わせた。

 ただ、カービィだけが、にこにこして言った。

「すっごく、きれいな剣だね! さすが、ドーナツ百万個!」

 デデデ保安官は、その言葉を聞いて気を取り直し、ニヤリと笑みを浮かべた。

「そうそう、マッチョリーノ氏は、剣を取り戻した者に、ばく大な賞金を払うという話だったな。その賞金で、たらふくドーナツが食えるということか!」

「やったー! ドーナツ食べほーだい、食べほーだい!」

 カービィは両手を上げて飛びはねた。

 ブロントバートが言った。

「それじゃ、オレは、マッチョリーノさんを呼んでくるぜ!」

 コックカワサキが、たずねた。

「君が、この剣を持って帰ればいいんじゃないの?」

「オレには、そんな重い剣は持てねえよ。それに、万が一、また強盗におそわれたら困るしな。とにかく、マッチョリーノさんを呼んでくるから、待っててくれ。その剣、大事にしといてくれよ!」

 ブロントバートは、大急ぎで酒場を飛び出していった。


大事件発生!?……と思ったら、無事にあっさり解決できて、めでたし、めでたし! しかも、ドーナツ食べほうだい♪ カービィたちは、わくわくしながらマッチョリーノの到着を待つけれど……?

第3回へつづく▶


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