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【スペシャルれんさい】『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』第1回 荒野のガンマンたち


プププ荒野で、すご腕ガンマンのカービィが大かつやく! 2025年3月12日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ 早撃ち勝負で大決闘!』は、大人気サブゲーム『早撃ちカービィ』の小説版!! 発売に先がけて、気になる新作の先行ためし読みを楽しんじゃおう☆

◆第1回
賞金稼ぎが集まる荒野の町、ワイルド・タウンに住むカービィは、のんきもので食いしんぼうだけど、早撃ち勝負ではだれにも負けない、すご腕ガンマン!
いつものプププランドとはちがう、別世界の物語が始まるよ!



聞こえるか。

荒野を吹き渡る、かわいた風の音が。

見えるか。

赤茶けた地平線の果てに、沈む夕日が。

ここは、プププ荒野。

賞金首の悪党どもが暴れ回る、無法地帯。

荒野の戦いに、ルールは無用。

強い者が勝つ、それだけだ。

ガンマンたちの、仁義なき、熱い戦い。

それは、たとえるなら――

夜空をこがす、かがり火のごとく。

たとえるなら、

強火で焼き上げた、あつあつハンバーグのごとく。

たとえるなら、

焼きたてソーセージと、あげたてドーナツと……

さくさくフライドポテトと、えーと、チーズとろとろピザと!

あと、できたてホットドッグと! ほっかほかココアと!

あと、あと……! 





……とにかく。

荒野の戦いに、終わりはない。

悪党には、ようしゃなき一撃を。

ガンマンたちの、焼けつくバトルが、今、始まる!


☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

荒野のガンマンたち

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 赤茶けたプププ荒野を、かわいた風が吹き抜けていく。

 強い日差しのもと、向き合って立つ二人がいた。

 ひとりは、まんまるピンクのガンマン、カービィ。

 もうひとりは、茶色いぼうしのデデデ保安官。

 先に口を開いたのは、デデデ保安官だった。

「……今日こそ、決着をつけるぞ、カービィ」

 カービィは、きっぱりした口調で言った。

「決着なら、もう、ついてる。今度も、ぼくの勝ちだよ」

「だまれ」

 デデデ保安官は、ゆっくりと、銃に手をかけた。同時に、カービィも。

 まだ、どちらも銃を抜こうとはしない。ただ、緊迫した空気が流れるのみ。

 デデデ保安官は、低い声で言った。

「本気の戦いは、早撃ちで決着をつける。それが、このプププ荒野のおきてだ」

「もちろん、わかってるよ」

「逃げるなよ、カービィ」

「そっちこそ」

 砂ぼこりが舞う。風に吹かれた枯れ草が、草玉になって、大地を転がっていく。

 息づまるような静けさを破ったのは、二人のかたわらに立つ、カウボーイ・ワドルディだった。

「……始めましょう。荒野の決闘に、めんどうなルールはありません。おふたりのうち、強いほうが勝つ。それだけです」

「わかってる」

「わかっとるわい」

 カービィとデデデ保安官は、同時に答えた。

「お二人とも、位置についてください」

 二人は、荒野に引かれた一本のラインの上に立った。

 少しはなれた場所には、保安官の部下のワドルディ団が集まっていた。みんな、小さな声で、おいのりの言葉をつぶやいている。

「保安官様、どうか、勝ってください」

「デデデ保安官様こそ最強のガンマンだって、証明してください……!」

 準備がととのったのを確認して、カウボーイ・ワドルディは叫んだ。

「では――よーい、はじめ!」

 デデデ保安官とカービィは、同時に銃を抜いた。

 二人の前方に、次々に、マトがあらわれた。

 バババババババン!

 二人とも、すさまじいスピードで引き金を引く。すべてのマトが、目にも止まらぬ早さで、撃ち抜かれていく。

 ワドルディ団から、歓声が上がった。

「うわあああ! すごい!」

「かっこいいです、保安官様!」

 あらわれるマトには、十点、二十点などと点数が書かれている。それを、すばやく見て取り、高得点のマトを相手より早く撃つ。それが、早撃ち勝負の鉄則だ。

「二十点、四十点……!」

「四十点、十点……!」

 二人は一心不乱に、銃を撃ち続けた。

 どちらも、一歩もゆずらない。ほぼ同点のまま、勝負はクライマックスへ!

 デデデ保安官の目が、キラリと光った。

「来た! 百二十点!」

 百二十点のマトは、大ボーナス。撃ち抜けば、勝負を一気に決められる高得点だ。

「もらったぁ!」

 デデデ保安官が撃った弾丸は、一直線に百二十点のマトへ――。

 と見えたが、その瞬間。

 カービィの弾丸が、デデデ保安官の弾丸めがけて飛んでいた。

 二発の弾丸はぶつかってはね返り、思わぬ方向へ。

「な、なに――!?」

 デデデ保安官の絶叫がひびく。

 カービィの弾丸は、みごと、百二十点のマトのど真ん中を撃ち抜いていた。

 そして、デデデ保安官の弾丸は、新たにあらわれた最悪のマト「ボンバー」へ!

 すると――。

 ドカァァァァァァン!

 大爆発が起きた。

 カービィはすばやく飛び上がって、爆風をよけている。デデデ保安官は、真っ黒のすすだらけになって、ひっくり返った。

 カウボーイ・ワドルディは、うわずった声で叫んだ。

「す、すごい……! カービィは、マトじゃなくて保安官様の弾丸をねらって撃ったんだ! 反射する角度を計算して、二発の弾丸を思い通りの方向へ……!」

 まさに、神わざ。

 カービィは銃を持ち直し、細く煙の出ている銃口を、ふっと吹いて言った。

「ぼくの勝ち、だね」

 カウボーイ・ワドルディは、ぼうぜんとして、うなずいた。

「う、うん。この勝負、勝者はカービィ。ということは……」

「やったー! コックカワサキの一日一食限定スペシャルランチは、ぼくのものだー!」

 カービィは大よろこびで、飛びはねた。

 デデデ保安官は、真っ黒な顔で、こぶしを握りしめて叫んだ。

「カービィ、きさまぁぁぁ!」

「残念だったねー、デデデ保安官! またねー!」

 カービィは、はずむステップで、町へと帰って行った。

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