特殊能力を持った三きょうだいが、人知れず、困っている人を救う!
角川つばさ文庫の人気シリーズ『神スキル!!!』最新7巻が、もうすぐ発売☆
発売前にドドンとイラストつきで、試し読みしちゃおう!
(公開期限:2026年2月27日(金)23:59まで)
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持った神木三きょうだいが通う学園で、文化祭が開幕! お化け屋敷、占い、カフェに演劇……出し物の準備でトラブル続出!? なにより、まひるが実行委員の先輩に恋しちゃった! そんななか、売上金がねらわれて……犯人を追いかけるまひるが大ピンチ。いったいどうなっちゃうの!?
『神スキル!!! ようこそ! 恋とあらしの文化祭』
(大空なつき・作 アルセチカ・絵)
1月7日発売予定!
2 ドキわく、文化祭!
キーンコーン カーンコーン
チャイムの音とともに、担任の森永(もりなが)先生が教卓の前に立つ。
森永先生は、茶髪の若い男の先生。
おれたちきょうだいが通う日野原(ひのはら)学園の中では、かなり若いほうの先生だ。
「それでは、六時間目のホームルームを始めます。今日は、まず委員会からのお知らせと――」
「……ふわあっ」
あー、眠い。今日は、一日眠かったな。
おれは、あくびで大きく開けた口を、右手でかくした。
教科書を取りに、いつもより早起きして学校に来たから?
ま、おかげで音読の練習がしっかりできたけど。
「でも……びっくりしたな。まひるが恋をするなんて」
ランニングから帰ってきたまひるは、やっぱり少し様子がおかしかった。
教科書はスキルで探してくれたけど、おやつを要求してこなかったし、夜ごはんのあとは、すぐに自分の部屋に引っこんでいった。
――あの、ハル兄(にい)特製からあげを、一つも、おかわりせずに!
好きな人ができたからって、いきなり変わりすぎだって。
「おれにはぜんぜんわかんないけど……恋ってそういうものなのかなあ」
「こい? そういうもの、って?」
「えっ!」
顔を上げると、となりの席の女子が、そっと首をかしげて、おれを見ていた。
ひかえめな、ほほ笑み。軽やかに揺れる、肩くらいまでの髪が印象的な――。
久遠夕花梨(くおん ゆかり)さん。
おれのクラスメイトで――春に起きた『十億円ニセ札製造事件』で、おれたち三きょうだいが神スキルを使って助けた人だ。
それ以外にも、おれたちは『十年間未解決の連続強盗事件』や『テーマパーク・アトラクション破壊事件』も解決してきたんだけど……。
って、おれ、今「恋」って言ってた?
めちゃくちゃはずかしい!
なんて、ごまかそう。
恋、来い、コイ……。
「きょ、今日の国語の授業でやった音読の、魚のコイの話を思いだして……」
「あ、あの、コイが世界中の海を旅する話ね。朝陽(あさひ)くんの音読、気持ちがこもってて、すごく上手だったよ」
久遠さんが、明るく笑う。
うっ、笑顔がまぶしい!
でも、ごまかせてよかった。おれも、そろそろホームルームに集中しないと――。
「それでは、文化祭について、六年二組の話し合いを始めます!」
そのとき、前に出た、二つ結びの女子――中村(なかむら)さんが言った。
いつの間にか、先生の代わりに、学級委員の良介と中村さんが前に立っている。
内海良介(うつみ りょうすけ)は、一年生のときからずっと同じクラスの、お調子者の男子。
中村真弓さんは、眼鏡がおしゃれな女子。良介とは正反対の落ちついた性格だ。
二人が学級委員って、ちょっとおもしろいペアだよな。
って、文化祭って言った?
「もうすぐ、日野原学園の年に一度の文化祭・ひのはら祭です。今年も、小中一貫校であることを活かして、小中合同で行われます」
やった、ひのはら祭!
迷路にお化け屋敷に、ミニゲームに……何より、おいしい食べ物!
毎年、いろんなクラスや部活がお店や展示を出すから、すっごく楽しいんだよな。
「うちの文化祭って、いつも盛りあがるよね!」「楽しみ~。去年は、どこ回った?」
みんながざわざわとしはじめたところで、良介がプリントを読みあげた。
「えーっと、投票で人気が高かったクラスや部活は、出店優勝として、学校集会で表彰される予定です……と。今年は、オレたちも六年生になったので、お店を出せるようになりました。だから、みんなで、優勝できそうなクラスの出し物を考えよう!」
「クラスの出し物?」
そっか。今までは楽しませてもらう側だったけど、今年は楽しませる側にもなれるんだ。
久遠さんも、となりでにっこり笑った。
「クラスでの出し物、楽しみだね。何がいいかな……わたしは去年、友だちとチャレンジしたワニをたたく手作りのミニゲームとか、書道部での色紙作りが楽しかったな。朝陽くんは?」
「おれは、家族で回った、中学校のクラスのたこ焼きと焼きそば! あと、料理研究部のカレーと、サッカー部のボール形おにぎりと……」
「ふふっ、おいしそうなお店ばっかり。朝陽くんらしいね」
うっ、そう言われると、ちょっとはずかしいかも。
それにしても、いざ自分たちでやるってなると、むずかしいな。みんな、手があがってない。
何をすればいいんだろ?
出店優勝できるような――文化祭で、クラスのみんなでやれること。
「……みんなが楽しいものがいいね」
久遠さんが、ぽつりと言った。
「優勝も、もちろん目指したいけど、せっかくクラスでやるんだから、お客さんもわたしたちも楽しいものがいいね」
……そうかも。おれも、みんなが楽しくなるものがいい。明るく、元気になれるような……。
あ!
「何かやりたいことがある人、いない!?」
ガターン!
立ちあがって、まっすぐ手をあげる。
「はい! えっと、カフェなんてどう?」
「カフェ?」
中村さんが、目を見ひらく。意外だったのか、良介も驚いた顔で言った。
「えっと、カフェって、あれだよな? 飲み物とあまいものがいっしょに食べられるとこ」
「そ。そのカフェ。教室をカフェスペースにして、ドリンクとスイーツをお客さんに出すんだ。みんなでおそろいの制服を着てさ! 教室にあまい香りがただよって……」
おいしいお店って、行くだけで楽しい。
何より、みんなでそんなお店をやったら、絶対楽しい!
「あ、でも、他のお店や展示でも、いいよ。おれも、みんながやりたいものが、一番だし」
「……いいじゃん。オレは賛成!」
良介が、元気に言った。
「せっかくだから、やっぱりみんなでお店をやりたいしさ。カフェは、おしゃれでいいじゃん」
「うん。ちょっとカッコいいよね」
「エプロンは家庭科で作ったから、自分たちで準備できそう!」「あ、じゃあ、この案は?」
クラスの中で、だんだんと声が上がりはじめ、他にもアイディアが出る。
ミニゲーム、チョコバナナ――。
でも、最終的に、みんなの投票で「カフェ」がダントツ一位になった。
中村さんが言った。
「じゃあ、六年二組の出し物は、カフェに決定します。次は、クラスリーダー決めだね。だれか、やってくれる人はいますか?」
「……わたし、やってみてもいいかな?」
すぐとなりで、まっすぐ手があがる。静かに立ちあがったのは、久遠さんだ。
「いいの 夕花梨がやってくれたら助かるよ。みんな、どうですか?」
パチパチパチパチ
「……ありがとう! 出店優勝めざして、みんなでがんばろうね」
クラスから起きた大きな拍手に、久遠さんは丁寧に礼をしてから、おれに言った。
「朝陽くん。カフェのサブリーダーをお願いしてもいい? 手伝ってもらえると助かるな」
「もちろん。まかせて」
おれも、さらに楽しみになってきた!
キーンコーン カーンコーン
「あ、これでホームルームを終わります。二人は、放課後に説明会に行ってくれる?」
「うん、わかった」
帰りの会があっさり終わると、久遠さんは荷物をまとめて、すぐ席を立った。
「朝陽くん、行こう」
「うん」
二人並んで、中学校の校舎へつながる渡り廊下に向かう。
中学校の中も、下校するたくさんの人が廊下にあふれている。部活があるからか、どことなく小学校よりいそがしそうな雰囲気だ。
「たしか、三階のはしの会議室だっけ。この時期だけ、実行委員室になるはず」
ここだ!
会議室に一歩入ったとたん、人とぶつかりそうになる。
もうたくさん人が集まってる。しかも、制服を着た中学生がほとんどだ。
久遠さんも、不安そうにきょろきょろとあたりを見まわした。
「緊張しちゃうね……星夜さんや、まひるさんもいるかな?」
「うーん、どうだろ。まひるはともかく、星夜はリーダーなんてやりたがらないような……」
「だれが、やりたがらないって?」
気がつくと、後ろに制服姿の男女二人が、並んで立っている。
星夜と――もう一人は、まひるのクラスメイトで親友の、大川桜子(おおかわ さくらこ)さんだ。
「星夜! 大川さんも」
「朝陽くん、夕花梨ちゃん、こんにちは。中学校の校舎へ、ようこそ」
大川さんが、やさしくほほ笑んだ。
「星夜先輩には、今さっき廊下で会ったの。二人も、リーダー? いっしょに座ろうか」
「みなさん、お待たせしました。今から説明会を始めます!」
さわやかな声を響かせながら、制服姿の男子が、会議室に入ってくる。
わっ、背が高い!
それに、おれも運動好きだからわかるけど、めちゃくちゃきたえてそう。
背の高い先輩は、おれと目が合うと、明るくニコッと笑った。
「実行委員長の天野優希(あまの ゆうき)です。今日はただの説明会なので、自由に座ってください。話が聞きやすい場所でオーケーです――四人で座るの? それなら、あの右奥が空いてるよ」
天野先輩が、会議室の角の席を指さす。
ほんとだ。横に四つ、まだ席が空いてる!
さっと席につく間に、会議室のイスがどんどんうまっていく。
あの人のおかげで、助かったな。話しやすそうだし、親切な先輩なのかも。
そのとき、一つ前の席の中学生二人から、高い声が聞こえた。
「天野先輩、かっこいいよね~。やさしいし、文化祭の実行委員長にぴったり!」
「部活も、がんばってるんだよね。水泳部の子が、日曜日の練習で新記録が出たって言ってた」
「……水泳部?」
水泳部って、プールで泳ぐ、あの部活?
それに新記録って、どこかで……。
「そういえば、なんで星夜がクラスのリーダーをやってるの? 目立つの苦手なのに」
「オレのクラスの出し物は、劇になったんだ。まとめ役のリーダーは、準備で忙しいから……」
星夜が、目をそらしながら、そっと答える。
あー、わかった。劇に出ずにすむように、リーダーになったんだ。
久遠さんが、大川さんに話しかけた。
「桜子さんのクラスは何をするんですか? わたしたちは、カフェなんです」
「そうなんだ。楽しそうね。わたしたちのクラスは、横断幕作りなの。校舎の壁にはる大きな布に絵を描く展示ね。お店もやりたかったんだけど、部活をしてる子が多くて」
「えっ! ってことは、星夜とまひるのクラスは、両方、飲食店じゃないの」
家族割でおいしいものを買いあさる夢が……。
ますます、自分たちのカフェをがんばるしかないな。
「ところで、大川さん。まひるは? お祭り好きだから、絶対にリーダーになると思ってたのに」
「ふふっ、驚いた? 今回、まひるちゃんは――あそこ」
え?
大川さんが指さした教室の前のほうでは、実行委員がいそがしそうにプリントをまとめている。
真ん中にいるのは、さっき話題になってた実行委員長の先輩と――もう一人。
――まひるだ。
ホワイトボードの前で、さっと手をあげて説明して――。
なんか、いつもよりキリッとしてる
「副実行委員長の、神木まひるです。プリントは行きわたりましたか? ない人は、すぐ持っていくので手をあげてください」
「まひるが、副実行委員長?」
つまり、文化祭の実行委員になったってこと
そのとき、実行委員長の天野先輩が、まひるに話しかけた。
「神木さん、プリントの配布ありがとう。仕事が早くて助かるよ」
「そんな……副実行委員長として、当然のことをしただけです。気にしないでください」
まひるが、上品に笑う。
たしかに、パッと見たかんじ、ものすごく頼れる、かっこいい中学生――に見えるけど。
きょうだいである、おれと星夜は見のがさない。
まひるの口元、うれしさとむずがゆさで、ぷるぷる震えてる!
「「……わ・か・っ・た」」
二人で、あきれた顔で同時につぶやく。
文化祭・実行委員長の天野先輩。
あの人が――まひるの好きな人だ!
第3回へつづく
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323774
年末年始はつばさ文庫を読もう!