特殊能力を持った三きょうだいが、人知れず、困っている人を救う!
角川つばさ文庫の人気シリーズ『神スキル!!!』最新7巻が、もうすぐ発売☆
発売前にドドンとイラストつきで、試し読みしちゃおう!
(公開期限:2026年2月27日(金)23:59まで)
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持った神木三きょうだいが通う学園で、文化祭が開幕! お化け屋敷、占い、カフェに演劇……出し物の準備でトラブル続出!? なにより、まひるが実行委員の先輩に恋しちゃった! そんななか、売上金がねらわれて……犯人を追いかけるまひるが大ピンチ。いったいどうなっちゃうの!?
『神スキル!!! ようこそ! 恋とあらしの文化祭』
(大空なつき・作 アルセチカ・絵)
1月7日発売予定!
1 忘れものをさがせ?
日曜日の夕方。
ガサッ ガサガサ
――ドサッ!
「国語の教科書が、な・い!!」
自分の部屋の真ん中で、おれ、神木朝陽(かみき あさひ)は、ノートを放りなげながら叫んだ。
まわりには、広げたものがちらばっている。
宿題のプリント。友だちに貸してたマンガ。
ゲーム機に、パジャマに、くつ下――。
でも、どこにも、国語の教科書がない!
「あーもう、国語のノートはあるのになあ。こうなったら、神スキルで、部屋の物をぜんぶ浮かせて、さがすしか――」
「朝陽、どうかしたのか?」
ドアから、兄の星夜(せいや)がすずしげな顔を見せる。
星夜は、足のふみ場もない部屋を見て、困ったように笑った。
「オレの部屋まで、すごい音が聞こえたぞ。……国語の教科書をさがしてるのか?」
「そうそう、って、星夜、今、おれの心を読んだ」
「まさか。さっき自分で叫んでただろ? でも、リビングや玄関にもなかったぞ。たぶん、学校じゃないか? まひるに、スキルで机の引き出しを視(み)てもらえばいい」
「あ~……まひるね」
たしかに、まひるなら、家からでも学校の机の引き出しだってカンタンに確認できるけど……。
あ、人の心を読むとか、学校の引き出しを視てもらうとか、どういうことって思った?
じつは、おれたち神木三きょうだいは、小さいころから〈神スキル〉――めちゃくちゃすごいスキルを持ってるんだ。
中二の、長男・星夜は、『人の心を読むスキル』。
中一の、長女・まひるは、『はなれた場所を視るスキル』。
そして、小六のおれ・朝陽は、『ふれずに物を動かすスキル』。
でも、スキルがあるからって、なんでもできるわけじゃない。
星夜は、聞きたくない心の声を聞くことがあるし、まひるは半径一キロくらいしか視えない。
おれも、動かせるのは自分の手で持てるのと同じくらい。せいぜい十キロくらい。
しかも、スキルを使いすぎると、すっごくおなかが空くんだ。
でも、国語の教科書がなくて困ってる今こそ、スキルの使いどき?
うちから学校までギリギリ一キロくらいだから、まひるのスキルなら確認できそうだし。
「あー。だけど、そんなこと頼んだら、交換条件に、おれの分のおやつをくれって言われない? 今日は、せっかくハル兄(にい)お手製のふかふか蒸しパンなのに!」
「蒸しパンは、オレの分をわけてやるから。国語の教科書が見つからないと、大変だろ?」
うっ、それはそうなんだよな……。
はあ、しょうがないか。
おれは、しぶしぶ星夜と部屋を出て、すぐとなりのドアまで歩く。
見えてきたのは、大きなリボンとクマがついた、白地にピンクのかわいい札だ。
〈MAHIRU〉
急に開けると怒られるから、強めにノックして……。
コンコン ――ガチャッ
「ごめん、まひる! じつは、頼みたいことがあってあれ?」
――シーン
おれと同じ広さの部屋は、驚くほど、しんとしている。
ふわふわの白いカーペット。
ハート形のテーブルに、ハート形クッション。
クマのぬいぐるみやグッズが並んだ、真っ白な棚――。
中に入った瞬間、広げっぱなしの雑誌をふみそうになって、あわてて足をあげる。
「あぶなっ! ……占いの雑誌? 人のこと言えないけど、まひるも部屋を散らかしすぎだって」
いつもは、もっときれいにしてるのに。
それにしても――一番大事な本人が、どこにもいない?
星夜も、首をかしげる。
「おかしいな。部屋にいると思ったのに……どこかに出かけたのか?」
「もう夕方なのに? それに、外へ出ていく音は聞いてないような――」
ふふふっ、ふふふふふ
ふふふふふふふふふ……
なんだ、今の声!
星夜と部屋の中を見まわすと、窓の近くのベッドの上で羽毛布団の山が、のそりと動いた。
なんだ、布団をかぶってたのか。それにしても、変な笑い声で……。
「ああ、泳ぎながらの息つぎが苦しそう。でも、がんばれっ。もう少し! あと五メートル、四メートル……やった、ゴール! きゃあ~、うれしそう! もしかして新記録なのかな!?」
……えーっと、これ、寝言?
おれは、もこもこと動く羽毛布団をトントンとたたいてから、そっとめくる。
「でへ、でへへ……ああっ、朝陽、星夜!?」
まひるが、クマのぬいぐるみを抱えたまま、ベッドの上で飛びおきる。
ニヤニヤしていた顔が、一瞬で、テストで0点を取ったみたいな顔に変わった。
「なっ、なんで二人が、わたしの部屋に? いつの間に」
「いちおう、朝陽がしっかりノックしたぞ。それより……寝てたのか?」
「まひる、寝言がうるさすぎ! それより、おれ、頼みがあるんだ。まひるのスキルで、ちょっとだけ学校を視てほしいんだけど」
「がっ、が、学校? 視てない、全然視てない! 学校のプールなんて一瞬だって視てな~い!」
学校のプール?
――シーン
えっ。なに、この反応。もしかして、たった今、スキルでこっそり学校を視てるとこだった!?
「とっ、とにかく、わたしは何も視てないから! よっ、夜ごはんの前にランニングしてくる!」
「えっ!? 待って、おれの教科書! って、運動ぎらいのまひるがランニング!?」
ドタドタドタ……
まひるが、おれと星夜の間をすりぬけて部屋から出ていくと、あたりが急に静かになる。
「……何だったんだろ」
まあ、また後で頼めばいっか。夜ごはんの前なら、おやつもとられなくてすむし。
「……なるほど」
星夜が、まひるが去っていったドアを見つめたあと、足元の雑誌を拾いあげる。
あれ? 星夜、なんだか気まずそうな顔になってない?
それに、その雑誌……ええっと、『愛も運命も超ハッピーに! はじめての相性占い』?
「今、まひるが部屋を出るときに、オレにぶつかっていっただろ? それで、読む気はなかったけど、心の声が聞こえて……まひるは、だれかに恋をしたみたいだな」
「へー、恋ね。恋……コイ?」
コイって、あれだっけ……池で、よく泳いでるやつ。
色がきれいで、大きな口をぱくぱくさせてる……。
じゃなくて!
「星夜、そ、それって……」
あのまひるに、好きな人ができたってこと――――!?
第2回へつづく
書籍情報
- 【定価】
- 858円(本体780円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046323774
年末年始はつばさ文庫を読もう!