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こわい話にはウラがある?
大注目の【第10回角川つばさ文庫小説賞《特別賞》受賞作】をどこよりも早くヨメルバで大公開!
アンケートもあるので、ぜひ、連載を読んで、みんなの感想を聞かせてね!
『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は2022年12月14日発売予定です! お楽しみに♪
表紙・もくじページ
【1-1 さあ考えよう。どうして幽霊は泣いているのか】
その日の放課後。
わたしは図書室で宿題を片づけていた。
智聡中学(ちさとちゅうがく)の図書室はとても広く、とても奥行きがあって、とても利用者が少ない。
だからいつ来てもひっそりしていて、どこかさびしい。
ここは本が主役の空間で、人間はおジャマをしている立場なんだと思わせられる。
そんな図書室の雰囲気が、わたしは好きだった。教室なんかより、よっぽど。
「あれ、夜野目(やのめ)さん」
声をかけられて、机から目線を上げると、目の前に、小山内(おさない)さんの顔があった。
「夜野目さん、ここで勉強してたんだ?」
「……そう、なんです、家でやるより、はかどって」
緊張(きんちょう)で、声が震(ふる)える。
おちつけ、あせるな。おちつけおちつけ。たかがクラスメイトとの日常会話じゃないか……。
「ふうん。わたしは図書委員の子に用があってさ」
「は、はい」
「でもさ夜野目さん、放課後も残って勉強するなんて、かなりこわいよね」
「え?」
「だから、こわいよねって」
聞きまちがい――じゃなかった。わたし、いま、面と向かってこわいと言われた……。
たしかに、入学して早々図書室で勉強なんて、いかにもガリ勉じみてる。それは認める。
だけど、わたしを昼食に誘ってくれたやさしい小山内さんが、こんなにもあっさりと、攻撃してくるなんて。
わたしには、その豹変(ひょうへん)のほうが、こわい。
……やっぱり、カンちがいだったんだ。
期待しないでよかった。わたしに、友だちができるわけ、なかったんだ。
「あのさ、夜野目さんて、なんかいつもうつむいてるね」
あなたのせい、とは言えなかった。
たしかに、わたしはいつもうつむいている。
「……じゃ、わたし帰るね」
気まずい雰囲気を残して、小山内さんが去っていく。
きっかけは小山内さんの一言だったはずなのに、空気を悪くした罪悪感におそわれた。
もしかしたら、わたしが悪いのかもしれない。
うん、なんだか、そんな気がしてきた。
すべてを自分のせいにするのは簡単で、なにも考えずに済むから楽で。わたしはこうして、生きてきて。
「…………ふぅっ」
そっと息をはいてから、わたしは立ち上がった。
気分転換(きぶんてんかん)に本でも読もう。
そう決めて、とりあえず、いちばん近くの本棚をのぞいてみる。
『鬼全体解剖図(おにぜんたいかいぼうず)』『幻獣事典(まぼろしじゅうじてん)』『西洋(せいよう)の怪物(かいぶつ)・東洋(とうよう)の妖怪(ようかい)』『ドラゴンの飼(か)いかた 実践編(じっせんへん)』
背表紙を読んで、首をかしげる。
解剖? 鬼を? 飼う? ドラゴン?
古ぼけた背表紙は風格がある。だけどしっかりホコリがついていて、読まれている様子はない。
それがなんだか切なくて。ならば、わたしが読んであげようか、なんて気分にもなって。
わたしは『鬼全体解剖図』を手にとり――うん?
視界のスミに、なにかが入りこんだ。
黒いなにか。たぶん影――人影?
\小説賞受賞作を応えん/
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<第2回は2022年11月8日更新予定です!>
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・伝承等とは一切関係ありません。
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