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ものがたり

期間限定『意味がわかると怖すぎる学校の記録』ためし読み 第2回


最後まで読むと……ゾクッ! 親子で楽しめるホラー傑作『意味がわかると怖すぎる学校の記録』のためし読みができるよ! 
学校で起こる異変の数々……一見バラバラに見えるそれらの異変は、やがて一本の線で結ばれ、恐ろしい真実が明らかに!(全3回、毎週火曜日更新予定 ※2026年1月12日23:59までの期間限定公開)



「この学校で起こる異変は全部つながります」――そう言い残して、一人の女子生徒が消えた。
生徒会のメンバーたちは、彼女の行方を追うため、校内で起こる不可解な出来事を調べ始める。
校庭に積み上げられた机の山、給食室で行われる謎の儀式……
一見バラバラに見えるそれらの異変は、
やがて一本の線で結ばれ、恐ろしい真実が明らかになる!

※これまでのお話はこちらから

第一話 『あ』を探す

語り手:T埼タカト(新聞部部長 三年生 十五歳)

月曜日 放課後 午後四時十七分


 はい、僕は皆さん知ってのとおり、新聞部の部長をやってます。

 他の子たちは部室にも来ない幽霊部員なので、活動しているのは僕だけなんですけどね。

 つい先日、校庭に全校生徒の机が積まれる謎の出来事がありましたよね?

 僕は、あれを『あ積み謎机怪奇事件』って呼んでるんです。

「全校生徒の皆さんは校庭に出て、自分の机を教室に運んでください」

 あの朝、みんながざわざわ騒ぐなか、僕は一人屋上に向かいました。

 靴ノ下中学校始まって以来の大事件の全体像を、上空からしっかりカメラに収めようって思ったんです。

 校内放送が流れて全校生徒がぞろぞろ外へ向かうなか、僕だけが校舎の奥へ分け入っていく。

 その様は間違いなく異端ながら、使命感にあふれてきらきら輝やいていたと思います。

 それで、ひと気のない屋上の踊場にたどり着いたところで、「あっ、鍵、開いてるわけないよな!」って気づいたんです。

 ふだん、屋上に出るドアの鍵は、危険防止のために施錠してあるに決まってるんですから。

 僕はがっくりしながらも、ダメもとでドアノブに手をかけて回すと、


ぎぃぃぃぃぃ……

 ドアが鈍い音を上げて開いちゃったんです。

 鍵が開いてる理由なんて特に考えもしないで、僕は屋上に飛び出しました。

 そして、真上から校庭を見たんです。

 大量に積み上げられた机の周りで、生徒会のみなさんがテキパキ指示をしているのが見える。

(机運びサボっちゃってすみません)

 それに応えて机を運び出そうと頑張っている男子が見える。我関せずでバックネット裏でおしゃべりしている女子グループが見える。追いかけっこしてる男子たちが見える。それを注意してる先生が見える。警察官に耳打ちをしている先生が見える。ニコニコしながらいつもどおりみんなに挨拶をしている校長先生が見える。

 そんなみんなの様子を収めようと、デジタルカメラを構えた時、ファインダー越しに、あることに気づいちゃったんですよ。

 積み上げられている机が『あ』の文字に見える…………ってことに。

 下からだと無造作に置かれてるようにしか見えなかったけど、机は一画目の横棒の直線や三画目のぐるりと回る曲線など、ひらがなの『あ』を立体的に形作っているんだ、って気づいたんです。


 そんなのただのイタズラじゃできないと思うんです。

 机を無造作に積み上げるだけでも大変なのに、文字になるように配列するなんて、面倒くさすぎる作業なので。

 この事件の犯人には何かしらの意図があるって事ですよね?

 僕は見えない思惑の存在を知ってしまって、胸が高鳴ったんです。

 だってこんな大スクープ、そうそうないじゃないですか! 

『あ』の謎を白日の下もとに晒して校内で話題になれば、僕だけしかいないのと同じ新聞部に、やる気がある新入部員が殺到するかもしれない。

 それに、クラスのムードメーカーのY崎君も僕に一目おくかもしれないし、隣の席のおしとやかで美人のK本さんが僕に惚れちゃうかもしれない……!

 震える指を抑えて、シャッターボタンを押したんですね。

 カシャ…

 小さく音が鳴ったんですが、その瞬間、

 校庭にいた警察官たちが全員、屋上の僕の方をパッと見上げたんです。

 シャッター音なんてあまり大きくないんです。

 ましてや、校庭でざわざわと作業をしている人たちの耳に届くとは思えない。

 しかも、音に気づいてこっちを見たのは警察官たちだけ……どう考えても変ですよね……?

 僕はとっさに頭を引っこめて隠れました。顔を見られてしまったかどうかはわかりません。

 これはいよいよおかしいぞ! 

『あ』には、絶対重大な秘密が隠れてるんだ!

 後ずさりしながらゆっくりドアまで戻って、ドアノブをつかんだとき、「あ!」と声が出てしまいました。

 ドア全体に、釘のようなもので引っかいて書かれた小さな『あ』が、びっしり並んでいたんです。

 その引っかき傷のような『あ』は、ドアからこぼれるように、床にまで書かれていてゾクリとしました。

 さすがにたじろいでしまったけど、心を落ち着かせてこれもカメラに収めました。

 シャッター音のカシャ…が鳴った時、心臓が口から出そうになりましたよ。


学校で起こる数々の異変。この調査の先に、何が待っているのか?
『あ積み謎机怪奇事件』の続きは第3回で!(12月23日公開予定)




作: 狐歪野 ツッコ 絵: 湖西 晶

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784041159514

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