角川つばさ文庫の伝説級☆人気シリーズ『いみちぇん!』続編! 「わたしは、モモお姉ちゃんの意志を継ぐ!!」千方センパイの妹、藤原りんねが中学生になって、ミコトバヅカイに!? 先祖代々のお役目のナゾにも迫っていく、『いみちぇん!』ファンならゼッタイ読みたい最新シリーズだよ☆(公開期限:2026年8月31日(月)23:59まで)
※これまでのお話はコチラから
5 わたしのパートナー
玲連がまだ、家に帰ってきてないんだって。
時計の針は七時半を回ってる。窓から見える外は、もう真っ暗だ。
まさか、まだオオカミの術が解けてなくて、こっちにもどって来てない?
玲連のお父さんは、「塾に直接行ったかもしれないから、確認してみる」って、すぐ電話を切った。
「オオカミは、ちゃんと消えてたよ……?」
樹ちゃんと二人で、空気に解けて消えていくのを、最後まで見守ったもの。
なのに、玲連がまだもどってないのは、どうして?
玲連に黒札を貼ったのは、あのオオカミじゃなくって、他のマガツ鬼だった……とか?
そういえば、今日はドタバタのまま帰ってきちゃったけど。樹ちゃんが気にしてた、紙漉き体験の時にすごい光を発した「強いなにか」って、今、どうなってるんだろう。
他にマガツ鬼がいる可能性があるとしたら、……それ?
でも今日は、そんなケタ外れに強い鬼がいる感じはなかったよ。
わたしはそわそわ、電話台の前を行きつ戻りつする。
……怖くなってきちゃった。
樹ちゃんに連絡したほうがいいよね? 今日は匠お兄ちゃんちに泊まるって言ってた。
わたしは電話台に貼っておいた、工房の名刺を見ながら番号を押す。
ちぃくんが本を抱えてこっちに来た。モモお姉ちゃんと話すんだと思ったみたい。
匠お兄ちゃんが出たら、とたんにフキゲンになるくせに。この前なんて勝手に電話を切っちゃって、わたしは大あわてだったんだから。
でもコール音が鳴り始めて十回くらいで、留守番電話に切り変わっちゃった。
「出ない?」
「うん……。モモお姉ちゃんの家にもかけてみる」
こっちはすぐにつながったけど、お母さんが出て、「まだ帰ってきてないわよ。今日は匠くんたちとごはん食べるって」と教えてくれた。
わたしはお礼を言って受話器を置きながら、ますます胸が不安でいっぱいになっていく。
万が一の事を考えて、玲連が消えた現場──うちのクラスを確かめに行く?
でも、わたしだけで夜の学校なんて、怖すぎるよ。どっちにしろ一人だと、マガツ鬼が出てきても戦えないもん。やっぱり、樹ちゃんに相談するのが先だ。
もしかして、樹ちゃんたちはすでに、あの「強いなにか」のほうを、捜し回ってたりする?
矢神家の人は、スマホと相性が悪くてスグに壊しちゃうから、家の電話か文通くらいしかできないんだ。モモお姉ちゃんも、書道中にスマホを気にしちゃうのが好きじゃなくて、解約しちゃったって言ってたから、移動中だと連絡がつかない。
「工房に、直接行ってみようかな」
「──ダメ」
ちぃくんが、わたしの袖を下から引っぱった。
「ダメだよ、りんね」
彼は栗色の大きな瞳で、わたしを見据える。有無を言わせない表情の強さに、「弟」のちぃくんにありえないような迫力を感じる。
「ちーちゃ……、」
「りんねぇ? もうお風呂がわくわよー」
「あ、はぁい」
廊下から顔を出したお母さんは、わたしとちぃくんをジッと見つめて、「早く入っちゃいなさい」と、念を押した。
結局、そのまま外出できなかった。
だけど、玲連の親から電話がかかってくることもなかった。じゃあ、大丈夫だったんだよね。
玲連はただ塾に行ってるだけで、樹ちゃんたちは、みんなで夕ご飯を食べに行ってるだけ。なにかあったら、樹ちゃんのほうから連絡をくれるはずだよ。
そう自分に言い聞かせて、お布団に入った。
ウトウトしかけたところで、嫌な夢を見て冷や汗まみれで飛び起きた。八上くんに「オレはお前と同じじゃない」って言われたり、玲連とケンカ中に、二人一緒にオオカミに食べられちゃったり……。
水を飲みに行こうと思ったら、自分の部屋で寝てたはずのちぃくんが、いつの間にかお布団に入ってきてて、すやすや寝息を立ててた。
ちぃくん、珍しいなぁ。
わたしは小さなふくふくの手を握り、お布団に入りなおす。
ちぃくん効果か、今度は安心して、朝までぐっすり眠れたんだ。