
2024年 新シリーズ人気【第1位】「放課後チェンジ」の1巻がまるごと読める!
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4人は、ドキッとしたら動物に変身!?
力を合わせて大事件を解決する、無敵のコメディ&アクションのストーリー!
まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は仲良しの4人組。
中1のゴールデンウイーク、フシギな指輪を見つけたことで、なんと、動物に変身しちゃった!!!
猫や犬の運動能力、タカの飛ぶ力が使える! でも……指輪が指から外れない!!!
※これまでのお話はコチラから
2章 飛行物体X事件(ひこうぶったいエックスじけん)
1 尊(たける)は爆(ばく)モテ
「まなみ!」
若葉ちゃんがトスしてくれたボールに、高くジャンプして思いっきりスパイクする。
ボールは相手コートに勢いよくたたきつけられて、味方メンバーから、わあっと歓声があがった。
「また決めたー!」
「すごいジャンプ力!」
「今日のまなみ、絶好調じゃん!」
口々にほめられて、わたしはえっへんとVサイン。
「人呼んで、『バレーボールの妖精(ようせい)』斉賀まなみ、ここに見参(けんざん)!」
「初めてきいたよ、そんな二つ名」
すかさず入った若葉ちゃんのツッコミに「伝説はここから始まる!」と返す。
蔵(くら)で指輪を見つけた二日後。連休明けの月曜日、体育の授業。
いつもはドンくさくて足を引っぱることが多いわたしが、バレーボールで大活躍(だいかつやく)!
どうやらこの指輪、人間の姿の時も、少し動物の力が使えるみたいなんだよね。
変身してる時ほどではないけど、耳や鼻の力がするどくなって、運動神経も大幅アップ!
いや~、きっもちいいー。この指輪も、あんがい悪くないかも!?
「けどまなみ、指ケガしてるんじゃないの? そんなアタックしまくってだいじょうぶ?」
クラスメートにツッコまれて、ギクゥッと冷や汗。
指輪なんて校則違反だからね。バレないように、学校にいる間はバンソーコーをぐるぐるまいてごまかすことにしたのです。
「へ、へーきだよ。これはその、えーと……」
「ケガじゃなくて、おまじないみたいなものなんだよね」
しどろもどろになってると、すかさず若葉ちゃんがフォローしてくれた。
「あっ、だから水沢さんも同じところにバンソーコーしてるんだ」
「どんなおまじない?」
「それもなるべく人に言わないほうが、願いがかなうんだって。ね、まなみ」
「そう! そうなの!」
おかげで周りからはそれ以上聞かれずにすんだ。
ホッ……ありがとう、若葉ちゃん!
「そういえば、知ってる? C組の鈴木くん、昨日、風ノ宮公園でナゾの飛行物体Xに襲(おそ)われたんだって」
試合が終わってコートのわきで休けいしていたら、クラスメートがそんなことを話していた。
ナゾの飛行物体X!?
「何それ、くわしく教えて!」
すぐに話題に飛びつくと、クラスメートは説明してくれた。
昨日の夕方ごろ、風ノ宮公園の時計台付近を歩いていた鈴木くんは、突然空から飛んできたナゾの生物に襲われた。
その生物(?)は、姿も見えないほどすばやくて、鈴木くんのシャツの右腕に紫の線を描いて去っていった。
その後すぐに、鈴木くんは高熱を出して、今朝も熱は下がらずに、学校を休んでいるらしい。
「私のお母さんが鈴木くんのお母さんと仲がいいから教えてもらったんだけど、鈴木くんの右腕には別にキズとかついてるわけじゃないんだって。でも、襲われた瞬間、すっごく痛かったらしい。そして原因不明の高熱。訳わかんなくて、コワイよね」
クラスメートに「そうだね」とうなずきながら、若葉ちゃんと目配せする。
これはもしかして、悪霊(あくりょう)が関わってる……!?
「もし他にも知ってることがあったら教え──」と言いかけたところで。
キャー、と女子の黄色い声にさえぎられた。
「あっ、神崎くん、出るんだ!」
いっしょに話してた子もそう言って、男子がバスケをやってるとなりのコートの方に走ってく。
尊と行成はとなりのクラスだけど、うちの学校の体育は男女別で、二クラス合同で行う。
見ると、ちょうど尊にボールがパスされたところだった。
ダンダンダン、と尊はあざやかなドリブルで前を守る三人をぬきさると、大きくジャンプして華麗(かれい)にシュートを決めた!

体育館中に、ひときわ大きな歓声があがる。
見た感じ、尊はわたしとちがって指輪の力は使ってない。
普段から、スポーツは無敵なんだ。でも……。
「ヤバ! 神崎くん、カッコよすぎる!」
「あの最強ルックスでスポーツ万能! 神ってるよ~」
「尊い……!」
なんか、中学入ってやたらと女子にさわがれるようになったなあ……。
小学生の時から「カッコいい」って言ってる子はいたけど、ここまでキャーキャー言われてはいなかった。
そいつ、すごく口悪くて、なにかと人をからかってくるめんどうなやつだよー?
複雑な気分になりながら、注目を集める幼なじみをながめてたら……ん?
チームメートとハイタッチしていた尊が、一瞬、表情をくもらせた気がした。
すぐにまた笑顔で試合にもどったけど……どうしたんだろう?
授業が終わったあとに尊に聞いてみたけど、「なんのことだ?」って知らんぷりされた。
うーん、絶対、なにかあったと思うんだけどなあ。
鈴木くんについては、クラスメートもそれ以上、くわしくは知らないとのことだった。
ただ、鈴木くんは尊と同じバスケ部だから、尊が放課後にお見舞いに行って、本人に話を聞いてくることになった。
校内でも、怪事件のことを知っている人が他にいないか、みんなで情報を集めることにする。
そして、放課後。
「終わったー! さあ、いよいよ、待ちに待ったこの時がやってまいりました!」
帰りのあいさつがすむやいなや、わたしは、カバンからウキウキと一冊の雑誌を取りだす。
今日発売のアイドル雑誌!
朝のうちに、登校途中のコンビニで買ってきたんだ。
「あ、今月号はまなみが大好きな漣(れん)くん特集なんだ」
「うん! ほんとは昼休みに読みたかったんだけど、情報集めでいそがしかったからさ~」
となりに来た若葉ちゃんにニコニコとうなずいてから、いざ! とページを開く。
「わわ、うそっ、漣くんの大人な顔♡だって! えっ、すごい、なんか、いつもとフンイキがちがって……」
きゃあああああ、やばい、カッコよすぎる! ビジュアルの暴力だよ!
いや、ムリ! 顔が天才すぎてムリだから! ふおおおおおおおお……!
推(お)しのあまりに最高なお写真にもだえていたら──ボン!
「「!?」」
ぎゃああああ、ウソでしょ!? コーフンしすぎて、変身しちゃったんですけど!?
「あれ? さっきまでそこにまなみがいなかった──って子猫!? かわいい!」
「ほんとだ、いつのまに!?」
「いっ今、そこの窓からひょいって飛びこんできたの。私もビックリしちゃった」
周りにいたクラスメートが集まってきて、あわててごまかす若葉ちゃん。
ごめん! でも、ここはまかせた!
心の中でそう謝って、わたしはダッシュで教室をとびだした。
「子猫!?」「子猫だ」「かわいい」なんて、廊下でもさんざん注目をあびながら、一目散に走りぬけた。
なんとかひとけのない中庭までたどりつく。
ふう……寿命が縮んだよ。
まさか推しにときめいて変身しちゃうとか、そんなトラップがあるなんて……!
というか、このままじゃ漣くんのライブも行けなくない!?
生で漣くん見たら絶対大コーフンしちゃうもん。
そんな~、やっぱり早くなんとかしなきゃ……。
とほほ、とガックリして、芝生の上にたおれこむ。
あ……お日さまがポカポカして、気持ちいいな……。
普段はさすがに校内で寝っ転がるとかできないけど、この姿ならゴロゴロしてもだいじょうぶだよね。
元にもどるまでの間、このままひなたぼっこしちゃお~。
ふかふかの芝生でくつろいでいるうちに、うっかりウトウトしてたみたい。
「──わ、子猫だ。どこからもぐりこんだんだろ?」
ハッと気づくと、女子生徒に抱きあげられていた。
やばい、もうすぐ人間にもどっちゃうんじゃない!? 逃げなきゃ!
「ニャー! ニャー!」と鳴いてイヤがって、身をよじってみたけど。
女子生徒は「かわいい~」と放してくれない。
どうしよう、どうしよう……!?
あせってたら、不意に女子生徒はわたしをギュッと胸に抱きしめて、立ちあがった。
「神崎くん、来てくれてありがとう」
えっ、尊!?
向こうからやってきた男子生徒は、たしかに、幼なじみの神崎尊だった。