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注目シリーズまるごとイッキ読み!『放課後チェンジ 世界を救う? 最強チーム結成!』第2回 最高? →最悪だ~~

6 結成! チーム ㋐


 わたしたちみんな、ナゾの犬が消えた空間を見つめて、ボーゼンとしてたけど……

「なんだよ、今の……」

 尊のそんな声で、ハッとわれに返った。

「うん、無我夢中(むがむちゅう)で、いまいちピンときてなかったけど……」

「とんでもない状況だよな……これ……」

 若葉ちゃんと行成もまだ半分ぼうっとしてるけど、だんだん実感がわいてきたみたい。

 同時に、どっと疲れが全身に広がった。やっぱり、変身のあとは、クタクタになる……。

 ――いったい何が起こっているんだろう?

 ナゾの指輪を見つけた帰り道に、透明犬と鬼ごっこ。

 黒い〈もや〉をまとった苦しそうな犬。

 そして、指輪からあふれたピンクの光と、吸いこまれた白い光……。

「そこの木のかげにかくれてるあんたなら、なにか知ってるのか?」

 少しはなれたところに立ってる木に向かって、尊がそう呼びかけた直後。

 ガサガサッと黒い影が、枝の間から飛びだしてきた。何⁉

『気づいておったのか』

 そう言いながら、わたしたちの近くの木の枝に降りたったのは、一羽のフクロウ――

 えっ、フクロウがしゃべってる⁉

「紙ぶくろを追いかけてる途中から、オレたちの後をずっとつけてきてただろ? ニオイで気づいたぜ」

 そうだったんだ……⁉

『封印(ふういん)が解かれたようだから、様子を見にきたんじゃよ。おぬしらが着けているのは、伝説の指輪じゃろう』

 封印? 伝説の指輪??

「封印って、なんの封印ですか?」

 行成が質問すると、フクロウはあきれたように言った。

『なんじゃ……おぬしら、自分たちの着けてる指輪のことを、何も知らんのか』

「知りません。だから、教えてください」

『――おぬしらの指輪は、動物の霊(れい)を宿した指輪。それを身につけたものは、動物に変身したり、動物と話したりできるようになる』

 動物の霊を、宿した指輪⁉

「話したり……って、駅前の猫や、透明犬の吠える声の意味はわからなかったぜ」

 尊が口をはさむと、フクロウは『おそらく』と言いながらわたしの方を見た。

『長い時を経て、伝説の指輪が持つ力の多くは失われた。じゃが、そこの嬢(じょう)ちゃんが悪霊(あくりょう)を昇天(しょうてん)させたことで、霊が持っていた霊力が指輪に吸いこまれて、本来の力が少し復活したんじゃろう』

 昇天……って、天国に行くことだよね。霊力って、あの白い光のこと?

「さっきの透明犬は悪霊で、わたしが天国に行かせてあげたの? それで、あの白い光……霊力を吸いこんだから、指輪に動物と話す能力がもどったってこと?」

『そういうことじゃ』

「……じゃあ、指輪を外す方法は知らねーか? どうやっても外せなくて困ってるんだ」

 尊が聞くと、フクロウは『ほう……』ともともと丸い目をさらに丸くした。

『指輪が外れないという話は初耳だが……もしかするとそれは――』

 青白い月明かりの下で、少し考えてから、フクロウが言う。


『指輪についた、動物の呪(のろ)いかもしれんのう』


 ドクン、と心臓が大きく鳴った。

『指輪に閉じこめられた動物たちが、おぬしらに呪いをかけたのではないか?』

 動物の……猫の、呪い……?




 すうっと体が冷たくなった。

 頭の中で、金と青のひとみをした白猫が、にゃーん、と鳴く。

 胸がギュッとしめつけられたみたいに、苦しい……。

「おい、まなみ、だいじょうぶか?」

 尊に肩をゆすられて、いつのまにか息を止めていたことに気づいた。

 すうはあと大きく呼吸をしてから、うん、とうなずく。

「どうやったら呪いが解けると思いますか?」

 若葉ちゃんの質問に、『そうじゃのう……』とフクロウは首をかしげる。

『先ほどの一幕をみるに、その指輪は悪霊を昇天させる力もあるようじゃ。悪霊を救い、うらみをはらった清らかな霊力を指輪にためていけば、やがて指輪についた動物たちのうらみも消えるのではないか?』

「悪霊を昇天させれば、指輪も外れる……? でも、悪霊なんて他にそうそういないんじゃ……」

『伝説の指輪には【災いを呼ぶ指輪】という別名もある。おぬしらの周りでは今後、呼びよせられた悪霊による事件が、つぎつぎと起こるようになるじゃろう』

「「「「……!」」」」

 言葉を失うわたしたちを見まわして、フクロウは淡々と続ける。

『悪霊は古い物や想いのこもった物、強い負の心をもつ者などにとりついて、悪さをする。放っておけば、どんどん力をつけて手に負えなくなる。なるべく早いうちに昇天させてやることじゃ』

 そこまで話したところで、フクロウはバサバサッとつばさを広げた。

「あっ、待ってくれ!」

「もう少しお話を聞かせてください!」

 飛んでいこうとするフクロウを、とっさに追いかけようとしたけど……まだ体に力が入らない。 走りたくても、のろのろとしか動けない!

 わたしだけじゃなく、尊たちも同じみたい。

『指輪の能力を使うと、体力を消耗(しょうもう)する。体力不足では、指輪の能力も使用できん。特に変身は、多くの体力を必要とするようじゃな。しばらく休めば回復するじゃろうが……』

「お願いします、まだ行かないで……!」

「あなたは何者なの⁉」

 必死に声をあげるわたしたちを、フクロウは空から見おろすと。

『早く呪いが解けるといいのう』

 それだけ言い残して、ゆうゆうと去っていった……。


「――とりあえず、次にやることは見えたな」

 行成が気をとりなおすように、わたしたちを見まわした。

「あのフクロウの言うことがすべて正しいかはわからないが……悪霊を昇天させて霊力をためていけば、指輪は外れるかもしれない、という情報が手に入った。指輪が外れれば、変身もしなくなるはずだ」

「もしあやしい事件のウワサをきいたら、すぐ調べることにしよう。悪霊に関わるとか不安だけど……必要なミッションみたいだから、やるしかないか」

 みだれた髪を手でなおしながら、ため息をつく若葉ちゃん。

「あのフクロウ、『おぬしらの周りでは今後、呼びよせられた悪霊による事件が、つぎつぎと起こるようになるじゃろう』なんて言ってやがったけどさ」

 ぶっ、尊の物まね、似てる! 思わずふきだしちゃった。

 尊は不敵に笑いながら、言葉を続ける。

「悪霊を昇天させるには、寄ってきてくれた方がラッキーだよな。呪いだかなんだか知らねーが、こうなったらこの力を利用して、事件をガンガン解決して、悪霊もガンガン救ってやろうぜ」

「呪いを利用⁉ すごいこと言うな……でも、いいね、それ」

 尊のそういうポジティブで転んでもただでは起きないとこ、好きだな……あっ、好きって、別に恋愛みたいな意味じゃなくて!

 あー、やばい、このままじゃまた変身しちゃうかも⁉ 深呼吸、深呼吸……。

「……まなみ、なに一人でわたわたしてるの?」

「なんでもございません!」

 不思議そうに若葉ちゃんにツッコまれて、ぶんぶんっと首を横にふる。

 あ、今は疲れてるから、指輪の力は使えない。

 つまり、ドキドキしても変身しないのか。ホッ……。

 ――ともかく、確実に変身しなくなるためには、指輪を外すこと。

 そのためには、悪霊が関わってるかもしれない事件を調べて、解決すればいいんだね!

「じゃあ、事件を調査するためのチーム名をつけよう! そうだな~、動物探偵団は?」

「そのまますぎねえ?」

「じゃあ、アニマル探偵団!」

「なんか芸人っぽい」

「いちいちうるさいな! ケチつけるなら尊も考えてよ!」

「オレは探偵団より、シンプルにチームがいい」

「えー、じゃあ、チームアニマル?」

 尊と言いあってたら、「えーと」と若葉ちゃんが手をあげる。

「変身することがバレたら困るわけだし、動物をそのままチーム名にするのはさけた方がいいかも」

 それはそうか……。

 じゃあどうしよう、とうなってたら、ぽつりと行成が言った。

「アを〇でかこむと、アにマルだろ。そこにアニマル、動物って意味を秘めて、チーム ㋐(マルア) とか」

 ㋐ で『ア』に『マル』。表向きには、マルアって読ませる……。

「いいじゃん! おもしろい」

「私もそういう言葉遊び、好き」

「異議(いぎ)なーし」

 フクロウからなんだか怖いことをいっぱい言われたけど、こうしてみんなと話してると、不安がうすれていった。

 代わりに胸にわき起こってきたのは、未知の世界に飛びこんでいくワクワクだ。

 尊。若葉ちゃん。行成。

 この幼なじみたちがいっしょなら、きっと、だいじょうぶだよね!

 無敵のパワーを感じながら、指輪をした四つの右手を重ねあわせ、わたしは高らかに宣言した。

「―― チーム ㋐(マルア) 、ここに結成!」


第3回へつづく(4月25日予定)


 



書籍情報


作: 藤並 みなと 絵: こよせ

定価
836円(本体760円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323132

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作: 藤並 みなと 絵: こよせ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323538

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