
2024年 新シリーズ人気【第1位】「放課後チェンジ」の1巻がまるごと読める!
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4人は、ドキッとしたら動物に変身!?
力を合わせて大事件を解決する、無敵のコメディ&アクションのストーリー!
まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は仲良しの4人組。
中1のゴールデンウイーク、フシギな指輪を見つけたことで、なんと、動物に変身しちゃった!!!
猫や犬の運動能力、タカの飛ぶ力が使える! でも……指輪が指から外れない!!!
1章 キセキの始まり
1 無敵のキズナの幼なじみ
「おい、まなみ。だいじょうぶか? まなみ……」
「……う~ん……だめ、行かないで――シロップうううううう!」
「あでっ!!!」
パッと周りが明るくなると同時に、ゴチーン! と頭にショーゲキ。
「いった~い! いきなり何⁉」
わたしが頭をおさえながら上を見ると、
「こっちのセリフだ!」
ととのった顔立ちの男子が、あごを押さえながら、にらみつけてきた。
お日さまをあびて金色に光る、やわらかそうな髪。
意志の強そうなまゆに、くりっとした大きな瞳(ひとみ)。
長い手足は引きしまって、いかにも活発そうなフンイキ。
よ~く知ってる彼の姿を見ても、すぐには何が起こっているのか、ピンとこない。
「えーと……ここはダレ? わたしはドコ?」
「ねぼけすぎだろ! だが親切なオレが教えてやる。
名前は斉賀(さいが)まなみ。グータラでミーハーで食欲だけは十人前の中学一年生。
幼稚園のころからずっと三つ編み。
今はゴールデンウィークで、オレと若葉(わかば)と行成(ゆきなり)といっしょに、まなみの田舎のばーちゃんとこに遊びにきてる。
絶賛(ぜっさん)かくれんぼ中にして、オレが鬼で、林の中の岩のかげで寝てるまなみを見つけたところ!」
「なるほど、理解」
説明とあわせて自然いっぱいの風景を見まわして、現実を思いだした。
幼なじみたちと、ひさしぶりに田舎に遊びにきて。
外でかくれんぼしてる間に、うっかり寝ちゃったんだね、わたし。
「でもグータラでミーハーで食欲だけは十人前ってなに⁉」
「カンペキな説明だろ」
しゃべるたびにとがった犬歯がのぞく、えらそうな彼は、神崎尊(かんざきたける)。
わたしの幼なじみ、その一。
赤ちゃんクラブからの付きあいで、昔は素直でかわいかったのに、どんどんひねくれて、口が悪くなってきた。
中学に入って以来、いっしょに遊ぶのは久しぶりだけど、アマノジャクはますますひどくなってきたかも。
「ったく……いきなり頭つきをかましやがって」
あごをおさえながら、ぼやく尊。
あ、わたしが起きた時に、尊のあごにぶつかっちゃったから、フキゲンなのかな?
「ごめんね」
謝ると、尊は「いいけど」とうなずき、やっとまゆの間のしわをゆるめた。
「うなされてたけど……あいつの夢、みてたのか」
「…………」
尊の言うとおり、さっきまでみていたのは、あの子の夢。
賢そうな金と青の瞳の、白い猫……シロップ。
思いだすと、胸が苦しくなってきた。
けど、わたしはなんでもないふりをして、言う。
「そう? 忘れちゃった」
「……ふーん」
尊は心配そうな目で見てたけど、気をとりなおすように、にやっと笑った。
「でもよかったな、まなみ。万が一この国宝級(こうくほうきゅう)の顔にキズでもつけてたら、賠償金(ばいしょうきん)5兆円だぞ」
「その宇宙レベルの果てしない自信、どこからくるの? てゆうか、なんでわたしにそんな近づいてたの? ハッ、まさか寝こみを襲おうと……⁉」
「アホか! 声かけても起きないから、肩をゆすろうとしたんだよ。そしたらまなみが急に体を起こして――」
尊がそこまで言いかけたところで、ガサッと音がした。
「「⁉」」
見れば岩の向こうにある茂みから、大縄くらいの太さのヘビが、顔をのぞかせている!!
ゾーッと鳥肌が立って、頭が真っ白になった。
「シゲキしないように、 静かに離れるぞ」
かすかに青ざめた尊に小声で言われて、わたしもコクコクとうなずいた、けど…………
あ、あれ?
「……どうしよう、尊」
「?」
「腰がぬけた……」
「…………」
キョトンと首をかしげてた尊が、みるみる「マジかよ」というように顔をしかめる。
わたし、ヘビは大の苦手なんだよ~!
ビックリしすぎて、立ちあがろうとしても、足腰に力が入らない。
「さらば、まなみ。ホネは拾ってやる」
「イヤ~! 大事な幼なじみを見すてるの⁉ このひきょう者!」
「そっちこそ大事な幼なじみを思うなら『わたしはいいから一人で逃げて!』だろ」
はくじょうにも置いていこうとする尊を引きとめて、こそこそと言いあってる間にも。
ヘビは口からチロチロと舌をのぞかせて、すうっとこちらにはい出てくる。
ひい~、キモイ! こわい! ほんっとムリ!
どうしようどうしようどうしたらいい……⁉
「――まなみ。声だすなよ」
パニックになりかけていたら、不意に耳もとで尊がささやいた。
なに? と思った瞬間、わたしの背中とひざのうらにグッと手がそえられて。
ひょいっと尊に抱えあげられた。
「!」

息をのむわたしを横抱きにしたまま、尊はそっと歩きだす。
えっ……力、すごくない……⁉
てかこれ、いわゆる『お姫さま抱っこ』ってやつじゃ……!
ヘビの恐怖も忘れて、なんだかドキドキしてきた。
中学に入ってからバタバタしてて、一カ月ぶりくらいにみんなで集まったけど。
尊、ちょっと大人っぽくなった……?
「この辺でいいか」
林の出口あたりにある大きな木の下で、尊はわたしを下ろして、はーっとため息をついた。
「ありが――」
「あーっ、腕がもげるかと思った!」
大げさに腕をさすりながら言われて、ピシッと固まるわたし。
「バスケ部のハードトレーニングがなかったら、絶対持ちあげられなかったな」
「なっ……そこは『羽根みたいに軽かった』って言うところじゃないの⁉」
「全然。まー、行きの電車でもおかし食べまくって、スキあらば寝てるグータラのまなみが重量級なのは当然か」
「重量級じゃないし! 平均体重だから!」
あー、もう、ひそかなトキメキが宇宙のかなたに消しとんだよ!
尊ってどうしてこう口が悪いんだろう⁉ 腹立つなあ!
むきーっと怒りをこらえていたら――
「あ、まなみ、見つかったんだ」
澄(す)んだ声がひびいて、つややかな黒髪のショートボブの美少女がやってきた。
水沢若葉(みずさわわかば)ちゃん。
わたしの幼なじみ、その二。
「若葉ちゃん! あのね、向こうに大きなヘビがいたんだよ!」
「ヘビ⁉ こわ……どんなヘビ?」
「緑色だった」
「じゃあアオダイショウかな……日本の本州ではマムシとヤマカガシ以外は無毒だっていうから、キケンはなさそう。でも、こわいよね」
「くわしいね⁉ さすが若葉ちゃん」
「『いきものの森』で見たの。全図かんコンプしたしね」
ふふっと少し得意げにほほ笑む若葉ちゃん。
『いきものの森』はプレイヤーがいろんな生き物の暮らす村に住んで遊ぶゲーム。
若葉ちゃんはゲーマーなんだよね。
勉強もスポーツもできる優等生でもあるから、もともと物知りなんだけど。
「あとは行成だな~。どこかくれてるんだ、あいつ」
頭をガシガシとかきながら、尊が言った瞬間。
「ここでした」
「「「うわっ」」」
ガサッと上から色白の男子が逆さまに現れて、わたしたち三人はとびあがった。
木の枝にひざでぶらさがって、ビックリするこっちを見て無表情でVサインしている彼は。
今鷹行成(いまたかゆきなり)。
幼なじみ、その三。
基本無口でクールであまり感情を顔に出さないけど、けっこう自由でマイペース。
でもって親は茶道の家元というおぼっちゃま。
まさか真上にかくれてたなんて……。
「おまえはニンジャか!」
尊のツッコミに「どろん」と答えながら、地面に下りてくる行成。
そして、すらりとした長身でわたしたちを見まわしながら、淡々(たんたん)と言った。
「そろそろ、あきてきたな」
「そうだね。かくれんぼはもういいかも」
「次は何する?」
うーん、と考えていたら、不意に。
『こっちだよ』
呼ばれた気がして、振りかえる。
……だれもいない。気のせいかな?
「どうした、まなみ?」
「なんでもない。そうだ、あそこの中に入ってみるのはどう?」
振りかえった先に見えた、かわら屋根の蔵を指さした。
「あー、あの物置? いいじゃん。変わったものがいっぱいあったよな」
「前は時間がなくて、さっとしか見られなかったしね」
「賛成」
尊がパチンと指を鳴らし、若葉ちゃんと行成もうなずきあう。
みんな、五年前にも遊びにきたことがあるんだよね。
その時にいっしょにあちこち探検して、あの蔵もちょっとだけ見に行ったっけ。
「カギはかかってなかったはずだよ」
「よっしゃ」
「いざ行かん、がらくたの楽園へ」
目を輝かせて、蔵へと向かって歩きだす、幼なじみたち。
三人の後を追いながら、わたしの足どりもはずんでいた。
みんな同い年で、幼稚園から小・中学校もずっと同じ。
気づけば四人でいることがあたりまえ……だったんだけど、中学校に入ってからはわたしと若葉ちゃん、尊と行成でクラスが分かれちゃって。
尊はバスケ部の練習、行成は家の用事でいそがしかったり、若葉ちゃんは体調不良だったり。
わたしも新しい環境でバタバタして、今回おばあちゃんが、久しぶりにみんなで泊まりにおいでって呼んでくれるまで、ずっと集まれてなかったんだ。
特に尊と行成とは、こんなに長いことゆっくり会えてないのは初めてだった。
いっしょにいると、ケンカはしても、テンション上がるし。
しっくりくるっていうか、ホッとする。
クラスの友だちも好きだけど、やっぱりこの三人はトクベツなんだ。
みんなで集まると、なんでもできちゃいそうな、無敵のパワーがわいてくる。
でも……ゴールデンウィークは明日で終わりだし、今日の夕方にはもう、家に帰るんだよね。
そう気づいた瞬間、ずーん、と気分が沈んできた。
やだな、帰りたくないよー。
また、あのヘーボンな毎日にもどるのかぁ……。