1章 調理実習(ちょうりじっしゅう)は大さわぎ
1 追跡(ついせき)! 動くなわとび事件
「逃げられた! まなみ、そっちだ!」
「わかった!」
わたし、斉賀まなみ。中一。
わけあって幼なじみ三人と、チーム㋐っていうヒミツのチームを組んでいる。
そして、チーム㋐はただいま風ノ宮中学校の校庭のすみで、追いかけっこのまっさい中!
「待ちなさーい!」
わたしたちが追いかけてるのは――しゅるしゅると地面をすばやく動く、『なわとび』だ!
どうしてなわとびが勝手に動いてるかって?
ごめん、今はとりこみ中だから、あとからまとめて説明するね!
なわとびは、校舎の横の道に入っていく。
人がひとり通れるくらいのせまい場所。
ここを追いかけても、スピードを出して走れなそさう。
このままじゃ逃がしちゃう!
瞬間、体がカッと熱くなって、右手の中指の指輪がピンクに輝いた。
ボン!
わたしの体は、サーモンピンクの子猫に変身。
幼なじみたちも、それぞれ動物にチェンジしたみたい。
これなら走って追える!
わたしは小道にとびこんで、前を行くなわとびとグングン距離をつめていく。
なわとびの手で持つ部分、「持ち手」がカラカラとはずみながら逃げていくのを見てると、なんだかムズムズしてきて、無性に飛びつきたくなってきた。
カラカラ……ああ、ガマンできない!
えーい、と思いっきりジャンプ!
つかまえた! と思ったけど、おしいところでスルリと逃げられた。
「まなみ、あせらないで!」
ハムスターに変身した若葉ちゃんに、後ろからたしなめられる。
「ごめん、なんかナゾの衝動(しょうどう)が……猫の習性かな」
なわとびはカランと持ち手をかべにぶつけながら、校舎の角をまがっていく。
少しおくれて、猫のわたしとハムスターの若葉ちゃんも角をまがって、せまい小道をぬけだした。
「どこいった……⁉」
目の前に広がるのは、ひとけのない中庭。
なわとびは、どこにも見えない。
「まなみ、若葉!」
中庭につづく反対の通路から、黒い柴犬になった尊がとびだしてくる。
尊はあえて他のルートを行ってたんだね。
「なわとびは⁉」
「植えこみの中にもぐりこんだのが見えた。このあたりにはいるはずだ」
バサバサッと空から舞いおりてきたのは、タカになった行成だ。
行成は校舎の上から追っていたみたい。
わたしたちは注意深く、校舎のかべに沿って長く植えられた茂みを横からのぞきこむ。
でも、うまく草の間にかくれてるのか、なわとびはなかなか見つからない。
「植えこみの中に入ってさがす?」
猫のわたしがたずねると、ハムスターの若葉ちゃんはふるふると小さな頭をふった。
「まわりが見えにくくて動きにくい場所で、もし襲いかかられたら危ないよ」
「たしかに」
なわとびが飛びだしてきたらすぐつかまえられるように、みんなでじりじりしながら植えこみの茂みを見はっていたら――ボン!
変身が解けて、わたしたちは元の姿にもどった。
もう二十分くらいたったんだ。
「くやしいけど、そろそろ他の生徒も登校してくるし、今日はここまでか」
「そうだね。あー、おしかった!」
尊の言葉にうなずいて、校舎へ行こうとしたわたしは、不意にグイッと足を引っぱられた。
「わわっ⁉」
転びそうになったのをなんとかこらえて下を見ると、なんとわたしの足首になわとびがグルグルとまきついてる! ええっ、ウソでしょ! このタイミングで出てくる⁉
「チャンスだ、まなみ!」
尊の声にハッとして、わたしはからみついてくるなわとびの持ち手をつかんだ。
「つかまえた!」
瞬間、ピンクの指輪がまたピカッと光って、なわとびは力を失ってだらんと地面に落ちる。
そして、上空に現れたのは、なわとびにとりついていた悪霊。
ウロコにおおわれた、ニョロニョロと長い体。
口からはしゅるしゅると赤い舌を出し入れするその動物は――ヘビ⁉
ギャー、わたし、ヘビはめっちゃ苦手なのに!
ゾゾゾッと背すじに悪寒(おかん)がはしって、固まってしまうわたしに、シャアッと襲いかかってくるヘビ!
「まなみ!」
もうダメ、と思ったけど、わたしの腕を行成がグイッと引っぱってくれて、ヘビの一撃はなんとかかわす。

行成は座りこんだわたしの足元に落ちたなわとびをすばやく拾うと、右手でなわとびの真ん中あたりをつかんで、そこを支点に持ち手をひゅんひゅんと回してから、勢いよくヘビに投げつけた。
左手でにぎったもう片方の持ち手をグッと引くと、なわとびのロープがからまってもがくヘビに向かって、指輪のはまった右手をかざす。
「成仏しろ」
行成の手のひらから放たれた青い光が、ヘビの悪霊(あくりょう)をおおっていた黒いもやをみるみるうちに飲みこんで、まばゆい白い光に変わっていく。
ヘビは白い光に包まれたまま空にのぼっていくと、すうっとその姿を消し、同時に白光は四つに分かれて、わたしたち四人の指輪に吸いこまれた。
「まなみ、だいじょうぶ?」
「ナイス、行成!」
若葉ちゃんと尊が集まってくる。
「ありがとう、行成」
わたしが立ちあがりながらお礼を言うと、行成はかすかに笑ってうなずいた。
はあ~、ハラハラした。あっ、やっと一息ついたから、説明するね!
この前のゴールデンウィーク、わたしはおばあちゃんの家の蔵で、ドキッとしたりゾーッとしたりすると動物に変身しちゃう指輪を見つけた。
どうやら動物の霊がとりついた『伝説の指輪』らしくて、これをつけてると動物に変身する以外にも、動物の言葉が分かったり、人間の姿でも動物の能力が使えたりするんだ。
だけどこの指輪、どうしても外せない!
しかも幼なじみの尊、若葉ちゃん、行成もまきぞえにしちゃった。
指輪を外すためには、動物の悪霊たちを、指輪の力を使って昇天(しょうてん)させなきゃいけないんだって。
悪霊は、古い物や、想いのこもった物、強い怒りや悲しみなどの負の心をもった人にとりつくらしい。
動物に変身しちゃうなんて、他の人に知られたら大変なことになっちゃう!
だから、わたしたち四人は、悪霊が起こしてると思われる怪事件を調査して、解決するためのヒミツのチームを結成したんだ。
それこそがチーム㋐!(マルアって読むけど、アに丸でアニマルって意味をこめてる)
そして今日は、『生徒の足にからみついて転ばせようとする、動くなわとび』という怪事件のウワサを聞いて、わたしたちが通う風ノ宮中学校に朝早~くから来てね。見事、なわとびを見つけて、とりついていた悪霊を昇天させたというわけなんです!
やったー、拍手! パチパチパチ……!
「それにしても、ちょうどいいタイミングで変身できてよかったね」
「さっきのような緊急の場合は、とっさに変身したいと願えばできるようになってきた気がするな。悪霊を昇天させて霊力を吸いこむほど、指輪の本来の力がもどるという話だっただろう。もしかしたら、指輪の力がもどるほど、好きな時に変身できるようになったり、逆に望まない変身はしにくくなったりするのかもしれない……希望的な観測だけど」
行成の話に、みんなの目が輝いた。
「それはめっちゃ助かる! けど、やっぱ、早く外したいよなー」
ぐいぐいっと指輪を引っぱって、まだとれないことを確認しながら、尊が言う。
わたしの指輪も、今日もビクともしなかった。
ほんと、早く解放されたいよ~。
第2回へつづく(3月21日公開予定)
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