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第4章『バザーの準備、そしていよいよ、当日の朝』


中学1年生の結乃がある日ばったり出会ったのは、鏡でも見ているぐらいに顔も声もそっくりな女の子・芽衣! もしかして、生き別れのふたご?と思ったけれど、ふたごじゃないし、姉妹でもない。そんなふしぎなふたりが大親友になって、ドキドキの毎日が始まります! 大好評の第1巻のつづきが、なんと8月5日につばさ文庫から発売予定✨ 大注目の2巻目を、どこよりも早く先行ためし読みしちゃおう!


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そっくりな顔の結乃と芽衣は超気の合う大親友だけど、おたがいの存在は、家族や友人にはぜったいヒミツ。でも、おたがいのこと、もっと知りたい!
第2巻は、芽衣が結乃のおうちにこっそり遊びに行くことから始まります!

 

★4★ バザーの準備、そしていよいよ、当日の朝

 イベントは12月23日。クリスマスイブの前日だ。

 あと2週間。がんばって、作品を作りためないと!

 それに、ほかにもいろいろ準備することはたくさんあるよね。

 週末、芽衣の住む若葉市に出かけた。

 芽衣に作りためた小物を見せて意見をもらったり、いっしょに、お店について話し合ったり、アイデアを出し合ったりするんだ。

 電車を降りて歩く。肩にかけたトートバッグには、新たに作った作品たちを入れてる。なんだかドキドキするよ。

 昔ながらって感じの雰囲気をのこしたお店たちがたちならぶ、すずらん商店街。

 その中ほどにある、フリースペース、「すずらん図書室」。小さな子どもとその親たちでにぎわう時間帯以外は、基本、だれもいないらしい。

 ってことで、わたしと芽衣は、ふたりで会うとき、ここを利用することにしてる。

 中に入ると、すでに芽衣は来ていた。

 わたしを見つけて、「よっ」と片手を挙げる。

 ミニテーブルに向かい合わせで座ると、わたしは、バッグの中身を広げた。

 中身は、バザーに出品する予定の小物たちだよ。

「わわっ、また作品増えたね」

「うん。おもにポーチとか、ヘアゴムとか」

「がま口ポーチもある! これ、むずかしいんじゃないの?」

「口金を入れるのにコツがいったけど、何回か試したらうまくできるようになったよ」

「いいな~、かわいい」

「でも、あとすこし、何かが足りない気がするんだよね……」

「そうかな? いいと思うけど。でも、あえて言うなら、シンプルすぎるのかも。ワンポイント、何かあったらいいんじゃない?」

「ワンポイント……。これ、つけてみようかな」

 持ってきていた材料ボックスから、ワッペンを取り出した。

 小さな、くまさんのししゅうワッペン。

「わっ、かわいい! がま口ポーチのチェック柄とも合うね!」

 芽衣とふたりだと、楽しいし、新しいアイデアもたくさんわいてくる。

「ところで」

 芽衣がミニテーブルに片ひじをついた。

「バザーだし、これに、値段をつけないとだよね。いくらにしたらいいんだろう?」

 今回わたしが出品するのは、チャリティイベント。

 売上のうち、材料費とかを引いたお金は、寄付することになっている。

「うーん……。材料費より安くしちゃったら寄付するぶんがなくなっちゃうから、上乗せしないとだよね」

「どれぐらい?」

 安くしすぎると損するし、高くすると売れない。むずかしい。

 芽衣はスマホでいろいろ調べ始めた。

「ヘアゴムだったら100円とか、シュシュだったら200円とか? ポーチはもっと材料費かかってそうだから、上げるか」

「そうだね。それぐらいで売ってみて、売れなかったら値下げするのもアリだよね」

「うん。まとめ売りとか、やってもいいかも」

 わいわい言いながら、ひとひとつ値段を決めて、タグに書き込んでいく。

 ところで、寄付する先は、児童養護施設なんだって。

 赤ちゃんのころのことだから、ぜんぜん記憶はないけど、わたしもいたんだよね、施設に。

 芽衣とわたしのひみつを探るためには、お世話になった施設に話を聞きにいったりしたほうがいいのかな……。

 っていうか、わたしと芽衣、そもそも同じ施設にいたのかな?

 自分がどこの施設にあずけられていたのか、実はわたし、知らないんだよね。

 お父さんとお母さんは、もちろん知ってるんだろうけど、聞くわけにいかないし。

 ほんとうの両親に会いたがっているって誤解されたら、いやだもん。

「ねえねえ、お店の名前、なんにするの?」

 芽衣にたずねられて、はっとわれにかえる。

「バザーに出すだけなのに、名前とか、いるかな?」

「あったほうが絶対いいよ! お店っていうか、結乃のブランドネーム、みたいなやつ! ほら、こういうの」

 芽衣が、自分の着ているニットの、タグを見せてくれた。

 ティーンに人気のお洋服ブランドで、タグにししゅうされたロゴもおしゃれ。

「こういうタグ、つけたらかわいいだろうな……」

「それ、いい! 絶対かわいいよ!」

「でも、タグは今からじゃ間に合わないかな」

 でも、名前を考えるのは、アリだね。

 胸がどきどき、高鳴ってきたよ!  

 どんな名前にしよう……?

 ふたりして、首をひねる。

 すずらん図書室の本棚から英和辞書を引っ張り出して、ぱらぱらめくる。

「芽衣、これとか……どうかな?」

 わたしが指さした単語は、「Twinkle(トゥインクル)」。「星などが、きらっとかがやく」って意味。

「いいじゃん!」

 芽衣が、ぐっと親指をたてた。

 

 そして、12月23日がやってきた。

 両親には、今日は若葉市の教会でのイベントに出る友だちの、お手伝いに行くって話してある。手作り品をバザーに出すっていうのは、なんだかはずかしくてだまっていた。

 いつもより早起きをして、リビングに行く。まだ、だれも起きていないみたい。

 今日は土曜日だけど、お母さんは休日出勤。ゆうべも帰りが遅かった。

 きっと疲れてるだろうから、なにか元気が出るようなこと、してあげたいなって思ってた。だから……。

 キッチンで、冷蔵庫のとびらを開ける。ラップをしたトレイを取り出した。

「うん、いいかんじ」

 トレイの中身は、甘い卵液にひたしたパン。

 ゆうべ、仕込んでおいたんだ。これを焼くと、フレンチトーストになるよ。

 甘党のお母さんの、大好物なんだよね。

 フライパンをあたため、バターをとかす。卵液がしみしみのパンをそっとならべると、じゅうっと音がして、あまい香りがただよった。

 焦げやすいから、慎重にようすを見ながら両面焼いて……。

「うん、いい色。めちゃくちゃおいしそう!」

 われながらよくできた! 大好きな甘いものを食べて、元気もりもりになって、お仕事がんばってほしいな。

 わたしも、これをお母さんとお父さんといっしょに食べたら、イベント、もっとはりきれる気がするよ。

 お皿にフレンチトーストを盛りつけていると、バタバタと、あわただしい足音。お母さんがリビングに駆け込んできた。

「やばい! 寝坊した!」

 お母さんは大慌てで顔を洗い、着替え、歯磨きをし、髪をまとめた。

「ねえ、お母さん」

「なに? 結乃」

「朝ごはんは……」

「あー! 食べる時間なさそう。遅刻しちゃう!」

 お母さんはあわただしく玄関へ。

「じゃあ、行くね。結乃も、今日、教会のイベント、がんばってね」

 バタン、と、ドアが閉まる音。

 お母さん、行っちゃった……。

 わくわくとふくらんでいた気持ちが、しゅるしゅるとしぼんでいく。

 ひとり、リビングでフレンチトーストを食べる。お父さんも、まだ起きてこない。

 なんだか、泣きそうだよ。

 これを食べて元気になってほしいって思ってたのに。

 喜んでもらえると思ってたのに。

 伝わらなかった。

 もやもやが、胸の中に広がっていくよ……。



たのしく準備を進めて、いざ当日になったけれど、朝はもやもやのスタート。でも、しょげてばかりはいられない! いよいよイベントが始まります!!
次回、『キケンな彼と、まさかの再会!』をおたのしみに♪


書籍情報


作: 夜野 せせり 絵: 駒形

定価
924円(本体840円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046324122

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