中学1年生の結乃がある日ばったり出会ったのは、鏡でも見ているぐらいに顔も声もそっくりな女の子・芽衣! もしかして、生き別れのふたご?と思ったけれど、ふたごじゃないし、姉妹でもない。そんなふしぎなふたりが大親友になって、ドキドキの毎日が始まります! 大好評の第1巻のつづきが、なんと8月5日につばさ文庫から発売予定✨ 大注目の2巻目を、どこよりも早く先行ためし読みしちゃおう!
そっくりな顔の結乃と芽衣は超気の合う大親友だけど、おたがいの存在は、家族や友人にはぜったいヒミツ。でも、おたがいのこと、もっと知りたい!
第2巻は、芽衣が結乃のおうちにこっそり遊びに行くことから始まります!
★3★ 勇気を出して、やってみる!?
結局。
バザーの件、すぐに「やる」とは言えなくて、いったん保留にしてもらった。
「うーん……」
手作りのシュシュを手にとって、首をひねる。
芽衣とのひみつがばれるかもしれないって不安もあるけど、すぐに「うん」って言えなかったいちばんの理由は、自分の作ったものに、いまいち自信がもてないってこと。
芽衣は、わたしの手作り小物のこと、すごくほめてくれたけど……。はりきって出店して、一個も、だれの目にも留まらなかったらどうしよう。
「結乃ー! はやく朝ごはん食べなさい! 遅刻するよー!」
リビングから、お母さんの声が飛んできた。
「はあーい!」
返事をして、自分の部屋を出た。
お母さんとお父さんと、3人そろって朝食をかこむ。
我が家の平日の朝はすっごくバタバタしてる。
両親はふたりとも会社員で、毎朝早起きして、洗濯とか、お弁当や朝食づくりとか、手分けしてやってるんだ。
とくに最近は、お母さんが忙しそう。年末だからいろいろ仕事が山盛りなんだって言ってた。
「今日の目玉焼きは、固かったな」
お父さんがまゆを下げた。
今日はお父さんがごはんを作った。どうやら満足の出来じゃなかったみたい。
「そうかな? おいしいよ」
お母さんが言って、わたしもうんうんとうなずく。
「結乃、ごはんつぶがついてる」
お母さんがわたしのほおに手をのばして、とってくれた。
「ありがと」
なんでもない、いつものやりとり。やさしい両親。
はたから見ると、きっと平凡な家族……なんだろうけど、実はちがう。
わたしは、赤ちゃんのとき、施設から引き取られた。
ほんとうの両親が、どこのだれなのかはわからない。
芽衣も、そうなんだって。施設から引き取られた……って。
だからこそ、ふたりが出会ったとき、おたがいに、「生き別れのふたごだ!」って思っちゃったわけだけど。
「年が一個ちがうふたごなんて、ありえないよね……」
ぼそっと、つぶやきがこぼれ出た。
「え?」
お父さんに聞き返されて、
「う、ううん。なんでもない。今読んでるまんがの話!」
あわててごまかした。
あやしい組織に狙われるのもこわいけど、わたしがいちばんいやなのは、両親を悲しませること。
芽衣との関係は、まだなんなのかわからない。
でも、そのなぞは、きっとわたしたちの出生にかかわってる。
それを探ってるって思われたら、お母さんたち、わたしが今の生活を否定してるみたいに感じちゃうんじゃないかなって。そう思えて、こわいんだ。
だから、ぜったいに、ふたりには、芽衣のことを知られちゃいけない。
「あら、すごい。真坂野大学で新発見だって」
テレビのニュースに目をやったお母さんが、つぶやいた。
「真坂野大学って、たしか、おとなりの島崎さんの大学よね」
「海里くんの?」
「そう。海里くんのご両親、ふたりとも、真坂野大学で研究をされてるんだって」
へえ……すごい。
「なんの研究?」
「さあ? そこまでは聞いてない」
お母さんは苦笑いした。そして、時計を見て、
「もうこんな時間!」
あわててお水を飲んで、席をたった。
「ごちそうさまでした! 行ってくるね!」
「いってらっしゃい!」
バタバタと支度をして家を出るお母さん。大変そう……。
お父さんが、お母さんのぶんの食器も流しに下げた。
わたしも、そろそろ学校に行かなきゃ。
今日も、寒い。
教室に入って、自分の席にかばんを置いていると、
「おはよう結乃ちゃん」
さわっちがやってきた。岡部佐和、通称さわっちは、小学校からの仲良しさん。
おっとりのんびりした、いい子なんだよ。
「寒いねっ」
さわっちは、ポケットからカイロを取り出して、両手でもみもみした。
さわっちに聞いてみようかな。わたしの作った小物たちのこと、どう思う? って。
「…………」
深呼吸して、わたしは、自分のスクールバッグからスマホを取り出した。
「あのね、……これなんだけど、どう思う?」
さわっちに画面を見せる。
心臓がバクバクしている。
必死で、「なんでもない顔」をつくって差し出したそれは、自分で作ったシュシュの画像。
黒いギンガムチェックのはぎれと、レースのはぎれを合わせて縫ったんだ。
アクセントに、金色のビーズも縫い付けたよ。
「えっ! かわいいーっ!」
さわっちの目がかがやいた。
「どこかのお店の画像? それともこれ、結乃ちゃんの?」
さわっちの、くもりのない瞳。
すうっと息を吸い込んで、さわっちに、こっそり耳打ちした。
「実は、わたしが作ったんだ」
「えーっ! ほんと!? すごいっ」
さわっちは目をまるくした。
「すっごくかわいいよ、それ!」
ほ、ほ、ほんとに!?
藤沢さんは、どう思うかな?
教室のうしろのほう、藤沢マコさんの席を見やる。
藤沢さん、ずっと、机でつっぷして寝ている。
休み時間とか、教室移動のときとか、わたしと、さわっちと、なんとなくいっしょにいることが多いんだけど……。
藤沢さんはいつもぼんやりしてて、話しかけてもだまったままのことが多くて。
わたしたち、実はめいわくって思われてるんじゃないかな、って、ちょっと不安なんだ。
チャイムが鳴る。
「あっ、じゃあまたねっ」
さわっちが急いで自分の席に戻る。
担任の先生が教室に入ってきて、出席をとりはじめた。
わたしのシュシュ、芽衣だけじゃなくて、さわっちもほめてくれた。ちょっとだけ、いけるかも……って、思い始めてる。
芽衣のことばを思い出す。
やらなきゃもったいない。
芽衣なら、きっと、「やってみる」んだろうな、いろんなこと。つねに前向きで、なんでもチャレンジしていくタイプの、芽衣だったら。
今回のイベントだって、子ども会の子どもたちといっしょに、ステージ発表するって言ってたし。
わたしは……どうしよう。
そっと目を閉じる。想像してみる。
教会の、クリスマスイベント。にぎやかなバザー。たくさんのお客さん。その中のだれかひとりでも、わたしの作品を見て、気に入ってくれたなら……。
ぜったい、楽しい。
芽衣の声がした。……気がした。
ぱちっと、目を開ける。
「やって……みよう」
小さく、つぶやく。
ひざの上でにぎりしめたこぶしに、ぐっと、力をこめた。
わたしだって、やってみたい!
ついに、一歩ふみだす決意をした結乃。クリスマスイベント参加決定です!!
参加するとなったら、作品をたくさんつくって準備しなきゃ!
次回『バザーの準備、そしていよいよ、当日の朝』をおたのしみに!
書籍情報
- 【定価】
- 924円(本体840円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324122
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