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第2章『宝物、ドキドキのおひろめ』


中学1年生の結乃がある日ばったり出会ったのは、鏡でも見ているぐらいに顔も声もそっくりな女の子・芽衣! もしかして、生き別れのふたご?と思ったけれど、ふたごじゃないし、姉妹でもない。そんなふしぎなふたりが大親友になって、ドキドキの毎日が始まります! 大好評の第1巻のつづきが、なんと8月5日につばさ文庫から発売予定✨ 大注目の2巻目を、どこよりも早く先行ためし読みしちゃおう!


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そっくりな顔の結乃と芽衣は超気の合う大親友だけど、おたがいの存在は、家族や友人にはぜったいヒミツ。でも、おたがいのこと、もっと知りたい!
第2巻は、芽衣が結乃のおうちにこっそり遊びに行くことから始まります!

 

★2★ 宝物、ドキドキのおひろめ

 思わぬハプニングで、いきおいで招き入れたかたちになっちゃったけど。

 あらためて、芽衣に、「さあ、あがって」とうながした。

「じゃあ。おじゃましまーす……」

「なんで、そんなひそひそ声なの?」

「だってさあ、留守の家にこっそりしのびこむみたいで」

「わたしはれっきとしたこの家の住人なんだから、『しのびこむ』はちがうでしょ」

 思わず、苦笑いしてしまった。

 でも、なんとなく芽衣の気持ちはわかる。

 だれにも見つかっちゃいけない! 自分はひみつの存在! っていう思いが大きすぎて。

 悪いことなんてしてないのに、すっごくどきどきして、こっそり行動しなきゃって気持ちになっちゃうんだ。

「ここで待ってて」

 芽衣を、わたしの部屋に通す。

 ベッドと学習机と、本棚がわりのカラーボックスを置いてるだけの、とりたてて特徴のない、フツーの部屋。

 あいてるスペースに、折りたたみの小さいテーブルを広げて、クッションをふたつならべた。

 芽衣は、ものめずらしそうに、部屋を見回してる。なんだかはずかしいよ……!!

 リビングでココアをいれて、ふたたび、部屋へ。

 寒いから、あったかくて甘いものがおいしいよね。

「どうぞ」

「ありがと。あ、このマグカップ」

 芽衣の瞳がきらんとかがやく。

「くらげさんのだ~。かわいい~」

「でしょ? 雑貨屋さんで見かけて、ひとめぼれだったんだ!」

 芽衣ならぜったい食いついてくれるって思ってた。

 くらげさんっていうのは、わたしが好きなゆるいキャラクター。芽衣も好きなんだって。

 それを知ったとき、顔がそっくりなだけじゃなくて、好みも似てるの? って思って、うれしかったんだ。

「あたしもほしいなー、くらげさんグッズ」

 つぶやくと、芽衣は、両手でつつむようにマグカップを持って、ふうふうと、息をふきかけた。

「買えないの?」

「ん。キャラものはママのしゅみじゃないからね」

 芽衣は、ひとくちココアを飲んだ。

 以前、芽衣の家に行ったときのことを思い出す。たしかに、芽衣の部屋には、キャラもののたぐいはいっさいなかったな……。

「ねえ、結乃」

 空気を変えるみたいに、いきなり、芽衣は明るい声をだした。

 その視線は、クッションへ。

「ひょっとして、このクッションカバー、結乃がつくった?」

 どきん!

「……わかる? 手作りだって」

 おずおずとこたえると、芽衣はにっと笑った。

「うん。なんとなく、だけど」

「実は……、そうなんだ。使わなくなったマフラーとか、セーターとかを切って、はぎあわせて、作ってみたの」

 胸がどきどきする。

 10月末、芽衣の学校の文化祭で、「リメイクファッションショー」をやった。

 使わなくなったものをリメイクして作った衣装での、ショーだよ。

 わたしも、実は、芽衣の友だちのリオのドレスづくりに、芽衣を通してアドバイスしたんだ(もちろんわたしの存在は、リオも知らないんだけど……)。

 すてきなドレスが仕上がって、とっても感謝されて、うれしかった。

 こっそりファッションショーを観に行ったわたしは、ほかにも、いろんな生徒たちのいろんな作品を観て、自分でも作ってみたいな、って思うようになったんだ。

 もともとわたしは、お洋服のデザインや、コーデを考えるのが大好き。

 まだ、洋服を作るのはハードルが高いけど、小物ならできるかも……って思って、チャレンジしてみたの。

 作った作品を人に見せたのは、これがはじめてだよ!

 芽衣は、クッションを手に取って、まじまじと見つめた。

 ひえ~! はずかしい!

「めちゃくちゃかわいいと思う。色や柄の組み合わせとか、すごくすてき」

「ほんとに……?」

 うれしくて顔が熱くなる。実は、すごくこだわって作ったから……。

「ねえねえ」

 芽衣が、ずいっと、わたしの前に身をのりだした。

「ほかにも、作ったもの、あるんじゃない?」

「わっ、すごい。どうしてわかるの?」

「結乃の顔見てたらわかるよ。エンリョせずに見せてみなよ!」

 にいっと、芽衣は笑う。

 その笑顔に背中を押されるように、わたしは、押し入れからお菓子の空き缶をとりだした。

 ふたをあけると、中には……。

「わあっ! かわいい!」

 芽衣の声のトーンがあがった。

「すっごくいっぱい! シュシュとか、ヘアゴムとか、アクセサリーもある!」

「シュシュは、はぎれで作ったの。このヘアゴムは、毛糸を巻いてポンポンを作ってつけたよ。アクセサリーは、ビーズをテグスに通して作ったんだ」

 説明しているわたしの、ほおは熱い。きっと赤くなってるんだろうな、って思う。

 だって今、「ヒミツの親友」に、「ヒミツの宝物」を、見せてるんだもん!

「これとか、すっごくかわいい! いちばん好きかも!」

 芽衣が手に取ったのは、赤いさくらんぼのチャームがついた、ネックレス。

 とたんに胸が熱くなった。

「ほんと? 実は、それ……。芽衣をイメージして、作ったんだ」

「えっ」

 芽衣が目を見開く。

 さくらんぼのチャームは、小さいビーズを編んで作ったんだ。細かい作業で、何度も失敗してやり直して、大変だったけど、できあがった赤いさくらんぼは、元気で明るい芽衣にぴったりだって思ったよ。

 だから、芽衣が「いちばん好き」って言ってくれて、ちょっと感動してる!

「芽衣にあげるよ、そのネックレス」

「えっ! いいの?」

「うん。それにね、実は、色ちがいも作ったんだ」

 缶の中から、黄色いさくらんぼのネックレスを探して、取り出した。黄色いさくらんぼなんてめずらしいけど、チャームにするとなかなかかわいい。

「赤が芽衣で、黄色がわたしで。おそろいでつけちゃったり……」

「それ、いい! うれしいっ!」

 芽衣がぱあっと笑顔になった。わたしに、黄色いさくらんぼのネックレスをつけてくれる。

 わたしも芽衣に、赤いさくらんぼのネックレスをつけた。

「さくらんぼって、なんかニコイチって感じがして、いいよね」

「うん。ふたつでひとつ、ふたりでひとつ」

 芽衣は胸元のチャームをそっと指でなぞった。

「ありがとう。大切にするね」

 芽衣は、そう言うと、缶の中のたくさんの小物たちに、目を落とした。

 しばらくなにか考えていたみたいだけど、

「……ねえ、結乃」

 ふたたび口を開いた。

「なに?」

「この、すてきな作品たち。この缶の中で眠らせたままじゃ、もったいないって思わない?」

「え……」

「あたし、このさくらんぼのネックレス見たとき、ビビッてきたんだよね。好き! って。もし、いろんな人に見てもらえたら、そんなすてきな出会いが生まれて、結乃もハッピーなんじゃないかなあって」

「いろんな人に? でも……」

 芽衣にだから、思い切っておひろめできたんだよ。ちょっと勇気いるかも。

「あ、そうだ!」

 突然芽衣は、自分のひざをぽんと手のひらで打った。

「バザーがある」

「え?」

 芽衣はきらっきらの目で、わたしをまっすぐに見つめた。

「実はね。うちの街の教会で、今度、クリスマスイベントがあるの。内容は、おもに、ステージ発表と、広場でのバザーなんだけど。バザーのほうは、ただいま出店者募集中」

「ってことは、つまり……」

「バザーで、いろんな人に手作り小物を見てもらおう! ってこと!!」

「えーっ!」

 バザーなら、むかし、行ったことがある。

 出店者さんたちは、それぞれ、広場に敷物やテントを広げて、いろんなものを売ってた。

 見て回るのは楽しかったけど、売るほうになるなんて!

 しかも、手作り初心者のわたしの作品を、だよ!

「むり! そんな、売りものになるような作品、つくれないよ」

「だいじょうぶ。かわいいし、ほしい人いっぱいいるよ」

「っていうか、お客さんと直接やりとりするんだよね?」

 わたしに、できるのかな……?

「接客ならやったじゃん、うちの文化祭で」

「あ、あれは……」

 芽衣にまちがわれて、芽衣のクラスの喫茶店でお客さんの注文をとったり、飲み物を運んだりした。たしかに、した。

「それに、文化祭では、結乃がアイデア出してくれて、すてきなドレスができたじゃん。結乃って、自分が思ってるより、もっと、ずっと、すごいんだから! やらなきゃもったいないよ」

 自分が思ってるより、もっと、ずっと、すごい?

 いろいろやってみたら、できちゃう……のかな?

 とくん、と、心臓が小さく鳴った。やらなきゃもったいない……?

「なんなら、あたしも手伝うからさ」

「えっ……? それは無理じゃない? だって、わたしたちの存在は……」

「そう。ヒミツ。だれにもばれてはいけない」

 芽衣はいたずらっぽくほほえむ。

「こういうのは、どう? 当日、あたしと結乃が、あえておそろいの恰好して行くの。それで、時々、こっそりいれかわるの」

「ええーっ」

 そんな、大胆な!

「実は、あたしと陸斗も、クリスマスイベントに出るんだ。今、すずらん商店街の子どもたちに、ボランティアで合奏とダンスを教えてて。それをステージで発表するの」

 陸斗くんっていうのは、芽衣の幼なじみの男の子。

 すずらん商店街は、芽衣の家の近所にある商店街。

 そこにある「すずらん図書室」っていう名前のフリースペースで、わたしたちは時々こっそり会ってるの。って、その説明は、いったん脇に置いておいて……!

「じゃあ、どっちにしろ、芽衣もそのイベントには行く……ってことなんだ」

 芽衣はこくこく、とうなずいた。

「結乃も来てくれたら、きっと楽しいよ」

「た、楽しい……かな」

「断言する。ぜったい楽しい」

 芽衣はわたしの手をぎゅっとにぎった。

「やろう!! いれかわり大作戦!」

 でも、でもでもっ。

 ふたりいっしょに、同じ場所にいるなんて。しかも、いれかわるなんて、スリル満点すぎません!?



クリスマスのバザーに、ふたりでいれかわって参加するなんて、そんなのぜったい楽しいに決まってる! でも、結乃はちょっと不安みたい。結乃の不安は『ふたりのヒミツがばれちゃう可能性』だけじゃないみたいで…?
次回『勇気を出して、やってみる!?』をおたのしみに!


書籍情報


作: 夜野 せせり 絵: 駒形

定価
924円(本体840円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046324122

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