
もうすぐ中2になるわたし・くるみは お父さんが海外出張に行く2か月の間、 幼なじみの家で暮らすことに。8年ぶりに再会した久瀬(くぜ)兄弟との同居生活は毎日がドキドキで……!?
第1回 王子様たちとの再会
「くーちゃん、ひさしぶり! これから二か月よろしくね」
優しい顔でにっこりと笑ったのは、久瀬琥白(くぜ こはく)くん。わたしの通う中学で、『一番かっこいい男の子のひとり』と言われている子だ。
ぱっちりとした二重の目に、すっと通った高い鼻すじ。モデルとかアイドルみたいな顔立ちで、少し目が合っただけでどきどきしてしまうくらいかっこいい。
わたしは今、そんな琥白くんにぎゅっと手を握られている。予想もしていなかったから、握られた瞬間、驚きと恥ずかしさで悲鳴を上げそうになってしまった。
固まるわたしに、もうひとりの男の子がぐいっと近づいてくる。
「ひさしぶり、くるみ。……ずっと会いたかった」
――一番、なのに、どうして『ひとり』という言い方なのか。
それは、彼らが双子だから。
「ひ、ひさしぶり、琥白くん、藍翔(あいと)くん。これからしばらくお世話になります!」
「ああ、よろしく。……で、おまえはいつまでくるみの手ぇ握ってんだよ」
わたしたちの手を強引に振りほどいて、彼は琥白くんのことをキッとにらみつけた。
久瀬藍翔くん。琥白くんとそっくりだけど、浮かべる表情がちがうからか、まったく別人に見える。
優しくていつも笑顔の琥白くんと、荒っぽい言動が多い藍翔くん。ふたりはわたしの通う中学で、タイプのちがう王子さまとして大人気だった。
琥白くんは、少しむっとした顔で藍翔くんに言い返した。
「藍翔もくーちゃんの手、握りたかったんだ? 僕に先越されたからって嫉妬(しっと)しないでよ」
「ちげぇよ! ひさしぶりに会ったばっかでそんなことされたら、くるみが困るだろ」
同意を求めるように、藍翔くんがわたしのほうを見た。
「え!? ええっと……びっくりはしたけど、大丈夫だよ」
本当はちょっと、大丈夫じゃない。
こんなにかっこいいふたりに、手を握られたり、『ずっと会いたかった』なんて言われたり……! そんなの、どきどきしちゃうに決まってる。どうしたらいいかわからなくて、ひさしぶり、と返すのも遅れてしまった。
「びっくりはさせちゃったか……ごめんね。会えたのがうれしくて」
申し訳なさそうに眉(まゆ)を下げる琥白くんに、藍翔くんが不満そうに鼻を鳴らした。
なんだかこの感じ、なつかしいな。
昔からふたりは、『けんかするほど仲がいい』っていう感じだった。……でもあのころより、少しだけ本当に険悪な気もするような?
わたしとふたりは、幼なじみだ。幼稚園ではすごく仲がよくて、いつも一緒にいた。
ふたりのほうがひとつ年上で、小学校は学区がちがったから、幼稚園のころの二年間しかかかわりはなかったんだけど……。
わたしは今日から、八年ぶりに会ったこのふたりと――二か月間、同じ家で暮らすことになる。

第2回につづく(6月14日公開予定)
『双子くんがわたしのことを好きすぎる』は2023年6月14日(水)発売!
ふたりに愛されすぎて困っちゃうくるみの選択は――!?
キュンが止まらない恋愛ストーリーをお楽しみに!!