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ものがたり

泣き虫幼なじみが王子様系アイドルに!? ドキドキが止まらない溺愛ラブストーリー♥『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』【特別ためしよみ連載】第6回


中1に進学したばかりの美織が再開したのは、今を時めく王子様系アイドルに変身した元泣き虫の幼なじみ・俊だった。毎日、美織しか見えない俊に溺愛されるドキドキの学園生活、スタート!
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』の特別試し読み!

 

※これまでのお話はコチラから
 

☆四話 まさかの三角関係


 そんなこんなで、私のめちゃくちゃな学園生活はスタートした。

 毎日、通学路のどこか(公衆トイレやその辺の茂み)で制服に着替えた俊と待ち合わせし、一緒に校門をくぐる。

 黄色い声を浴びながら教室に行き、俊と一緒に質問攻めにあったり、いつの間にか教室を抜け出してひとけのないところにいた俊に会いに行き、二人で話したり、お弁当を食べた

り……。学校ではメモのやりとりをして、校外ではスマホで連絡を取り合っていた。

 ちなみに、同居するという話はやんわりと断った。けど、たまに俊の部屋でお泊まりするということにはなった。

 そうして全く想像していなかった生活が一週間過ぎたところで、重大な事実に気がついてしまう。

 ——私、ひとりも新しい友達できてなぁ——いっ!!

 これは由々しき事態だ。

 凪咲は、もうとっくに違う小学校から来た子たちと仲良くなっている。……私の入る隙がないくらい。

 俊と会っているうちに、凪咲がどこかに行ってしまいそうで……。そんなワガママな寂しさを抱えていると、凪咲は「今はぁ、俊くんの方が大事だってぇ〜! 二人の邪魔したくないし、行っておいで〜っ!」といつも笑顔で言ってくれる。その言葉のまま、密会を続けてきてしまったけど……。

 やっぱり、凪咲みたいに、みんなと仲良くなりたい。

 そして、俊みたいに——みんなに認められたい。

 こんな願いごと、傲慢すぎて口には出せないけど……私だって、俊みたいに成長したいとは思っている。

 でも、違う小学校から来た子たちは、当然だけど……私自身じゃなくて、俊の隣にいる私に興味があるみたいだから、俊のことしか聞かれないし。そういえば……普通の中学生らしい会話をしていない。どこの小学校から来たの? とか、こんな変な先生いたんだよ、とか。

「……はぁ。どうしたらいいんだろう……」

 お昼休み。旧校舎の空き教室で、つい重いため息をついてしまう。

 そんな私の隣で焼きそばパンを頬張っていた俊は、「なにが?」と呑気な顔で見つめてくる。

 もう、私の気も知らないでっ。

 まぁ、悩みつつも密会を続けている私も私だよね……。

「新しい友達が欲しいの」

「僕がいるじゃん。友達関係は望んでないけど」

「……そ、そうじゃなくて、女の子の!」

 あははっ、と俊は無邪気に笑う。

 二人で座っている古い椅子が、キイ、と音を立てた。

「女の子だったらいいけど、男には近づかないでよ?」

「……私に興味ある男の子なんか、いませんっ」

「あ、そう? 見る目ない奴らばっかりでよかった」

 語尾にハートがつきそうなくらいのテンションで言う俊。

 こうやって俊と二人きりの時間を過ごしていると、もうずっとこのままでいいんじゃないかな、って思ってしまうときがある。

 けど、そんな甘い時間に浸っていたら……きっと、私はいつか痛い目を見る。

 スーパーアイドルの俊と、どこにでもいそうな私。

 今は、こんなにも想ってくれているけど……俊が、このままトップアイドルへの階段を上っていったら、そのうち私のことなんてすっかり忘れて、キラキラした超美人な子のことが好きになっているかもしれない。俊のことだから、引く手あまただろうし。

 そのとき、私にはいったい何が残っているんだろう?

「……では、そんな美織には、朗報かもしれません」

「ん?」

 俊は机の上にだらっと寝そべり、寂しそうな顔でこちらを見つめてくる。

「明日は学校休みます……」

「え? なんかあるの?」

「まぁ、いろいろ。アイドル活動のことで」

「……そ、そっかぁ」

 俊がいないと、不安だなぁ。……って、私の方がこんなことを思うなんて……。小さい頃は、本当に想像もつかなかっただろうなぁ。

 完全に立場が逆転してしまっている。

「寂しいなぁ、って思ってる?」

 俊が頬杖をつき、上目づかいで聞いてくる。

 期待を含ませた目が、わんこみたいで……。可愛い、とか思ってしまった。

「うん、思ってるよ。俊と話すの、楽しいから」

 すると、俊が真顔になって急に背筋を伸ばす。

 ……あれっ、なんか変なこと言っちゃったかな。と心配になったけど、すぐに俊は綺麗に口角を上げる。

「僕、美織のためにいっぱい頑張ってくるね。それで、帰ってきたら一緒に寝よう」

「そっ、そこはファンの人たちのために、でしょ! ……まぁ、お泊まりは考えとく」

「やった! ご褒美があるほうが頑張れるから、よろしくっ」

 俊は嬉しそうに目を細めると、再び焼きそばパンを頬張りはじめる。

 今さらだけど、私……ファンの人たちに恨まれたりしないかなぁ?

 現に、この学校で冷ややかな視線を送ってくる女の子たちがいるわけなんだけど。

 でも……間違えたらダメだ。

 私が一人ぼっちになるのは、私のせい。

 俊のせいなんかじゃ、決してない。

 俊は、自分のしたいようにまっすぐ生きているだけなんだから。それは何も、悪いことじゃない。

 きりきりとお腹が痛んだけど、俊には気づかれないよう、ずっと笑みをつくっていた。



第7回へつづく(6月6日公開予定)

『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』は、カドカワ読書タイムより2024年6月13日(木)発売!

幼なじみの王子様系アイドルから溺愛が止まらない!
キュンがいっぱいの学園ラブストーリーをお楽しみに!


著者: 木下 すなす イラスト: あさぎ屋

定価
1,375円(本体1,250円+税)
発売日
サイズ
B6判
ISBN
9784046835475

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