中1に進学したばかりの美織が再開したのは、今を時めく王子様系アイドルに変身した元泣き虫の幼なじみ・俊だった。毎日、美織しか見えない俊に溺愛されるドキドキの学園生活、スタート！
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』の特別試し読み！
※これまでのお話はコチラから
大きな声を出してしまう私に、俊は顔をそらして思いきり吹いた。そして、またとんでもないことをさらりと言う。
「ちなみに、今日は泊まるって、美織のお母さんには言ってあるから」
「……ええっ!? なんっ、お母さんはなんて言ったの？」
「よろしくお願いしまぁ〜す！ って」
思わず眉間にしわを寄せた。
……お母さんめ。
俊ったら、お母さんになに言ったんだろう？
まさか、この調子じゃ……美織は僕がもらいますとかなんとか言ったんじゃ……って、なに妄想してんの私!!
ひとりでに顔が火照ってきて困っていると、俊がにやりとして覗きこんでくる。
「やっぱり、僕のこと男として意識してる？」
「なっ……そんなわけ——」
あぁ、もう。なんで、私こんなツンデレみたいになっちゃうんだろう？
……俊のせいだ。
「じゃあ、泊まれるよね？ 何回も一緒のお布団で寝てたもんね？」
顔を近づけて言ってくるから、思わず距離をとる。
「べっ……別に泊まれるけど！ 布団は別々だから!!」
力強く言うと、ちぇっ、と俊は唇を尖らせた。
当たり前でしょ！ と腕を組む私の肩に、なんのためらいもなく頭を預けてくる俊。
そんな俊の顔は、上手くセットされた髪の毛に隠れて見えない。
心臓がドキドキと鳴る一方で、さっき、自分の気持ちとか正直に言いすぎたかな……と反省してしまう自分がいた。
……もう。本当に、俊にかき乱されてばっかりだ。
Side 俊
美織は、やっぱり僕のことを可愛い弟だとしか思っていないみたい。
僕はこんなにも、一途に想い続けているというのに……。
ため息をつきたくなるけど、美織がすぐそばにいるから、ぐっと我慢をする。
いま、幸せが逃げていったら困るから……。
ソファに座ってくっつきながら、二人で小さい頃の思い出話をしていた。
近所の神社にある階段でグリコゲームをし、僕だけが負け続け、美織が先に下りちゃったこと。もう一生帰れないよ〜、と泣きじゃくる僕を、下から美織は一生懸命はげまし、なんとかジャンケンを続けて僕を下りさせたこと。
たかが遊びに本気になりすぎていて、今となっては微笑ましい。
「私は勝っても動かないから！ ずっと待ってるから！ 男を見せろ！ って叫んでたよね」
「あはははっ、超熱血！ しかも、俊ったら泣きながらチョキとパーを交互に出し続けるんだもん。ほんっと笑いこらえるのに必死だっんだから」
「早く下りたくて仕方なかったんだよ」
「あはっ、単純で可愛い〜」
このやろう、と僕は美織の頭を拳でグリグリとする。
「あのとき出せなかったグーをくらえ！」
「きゃー！ グリコの逆襲こわい！」
頭を抱え、こちらをふと見上げた美織の上目づかいが、あまりにも可愛すぎて。僕は一瞬、息が止まるかと思った。
あぁ、もう。
本当に、美織に惚れすぎている。
美織の気持ちがどうなろうが、今さら知ったこっちゃない。
こっちはすでに手遅れなんだよ。
小さい頃から、僕はずっと美織に負け続けている。
スーパーアイドルになったって、その事実は変わらないんだ。
「……俊？」
美織が不思議そうにこちらを見つめてきて、ハッとする。
緩んでいた頬は、もうなおしようがなかった。
「……美織が可愛すぎて、見惚れてた」
「もうっ、またそんなこと言って！」
僕から顔をそらすけど、髪の隙間から見える耳は真っ赤だった。
……こっちが、もうっ、て言いたくなるよ。そんな反応するから、余計に期待しちゃうんだよな。
それから眠りについた美織を眺め、静かにため息をつく。
僕のお姫様は、可愛くて、難攻不落で。
本当に、なにもかもかき乱されてばっかりだ。
責任とってよ、とか言いたくなっちゃうね。まぁ、とらせる気満々なんだけど。
……誰が諦めるか。
美織は絶対に、僕だけのものなんだから。
と、天使のような寝顔に見入りつつ、僕は心に固く誓う。
小さい頃に、僕が「けっこんしようね」って言ったら笑って頷いてくれたの、まだ忘れてないからな？
第６回へつづく（６月５日公開予定）
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』は、カドカワ読書タイムより2024年6月13日(木)発売！
幼なじみの王子様系アイドルから溺愛が止まらない！
キュンがいっぱいの学園ラブストーリーをお楽しみに！
- 【定価】
- 1,375円（本体1,250円＋税）
- 【発売日】
- 【サイズ】
- Ｂ６判
- 【ISBN】
- 9784046835475
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