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ものがたり

泣き虫幼なじみが王子様系アイドルに!? ドキドキが止まらない溺愛ラブストーリー♥『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』【特別ためしよみ連載】第7回


中1に進学したばかりの美織が再開したのは、今を時めく王子様系アイドルに変身した元泣き虫の幼なじみ・俊だった。毎日、美織しか見えない俊に溺愛されるドキドキの学園生活、スタート!
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』の特別試し読み!

※これまでのお話はコチラから
 


 翌日。

 朝、一人で登校してきた私に、女の子たちがわらわらと集まってくる。

「今日は、俊さまと一緒じゃないの?」

「俊くん来る?」

「……俊は今日、お休みするみたい。なんか、仕事の都合とかで」

 言うと、女の子たちの顔が一気に曇る。

 そこかしこからため息が聞こえてくる。

「なぁーんだ。つまんないの」

「ていうか、前から思ってたんだけど……花垣さんって、俊さまと同居してるの?」

「えっ!? いやいや全然!」

「じゃあ、なんでいっつも一緒に登校してるの?」

「ええっと……」

 どうしよう。なんと答えれば、正解なのか……。

 頭を悩ませていると、ポンッといきなり右肩に手を置かれる。

 びっくりして振り返る前に、女の子たちの黄色い声が響き渡った。

「なんだかお困りみたいだね、美織ちゃん」

 柔らかい笑顔を向けてくるのは……私の知らない、見たことのないほどのイケメンだった。

 えっ? ど、どうして私の名前を……。

 気になったけど、あまりにも綺麗な顔に、思わず言葉を失ってしまう。まつ毛の長い垂れ目がちの大きな目に、小さくて高い鼻。至近距離で見ても透明感のある肌に、淡い髪色がよく映えている。

「きゃーっ! 玲(れい)きゅん!? 玲きゅんだよねっ!?」

「玲さまが、どうしてここにっ!?」

「もうこの学校どうなってるの〜っ!?」

 俊を目の前にしたときと同じくらい、目をハートにして騒ぎだす女の子たち。

 その反応を見て、ようやくピンとくる。

「えっ……玲きゅんって、あの、Top-of-King3の?」

「そうに決まってるじゃないっ!! 今をときめくTop-of-King3の最年長でリーダー、みんなの憧れ王子こと早瀬玲(はやせ れい)さまよっ!!」

 さっきまで不満そうに唇を尖らせていた子が、ずいっと顔を近づけてきて言う。息がかかり、私は思わず後退ってしまった。

 そうだ。早瀬玲さん……確か、中三のお兄さん。

 もしかして、この間ちらっと凪咲が言ってた、〝俊くん並みにイケメンな男子〟って……玲さんのこと?

 俊はわかるけど、どうして玲さんまで!?

 戸惑って言葉が出ない私にお構いなく、玲さんは、「ははは」とこれまた柔らかい声で笑う。

 その声に当てられたみんなは、甘いものを食べたみたいに顔がとろけ、ぽ〜っと頬がピンク色に染まった。玲さんの笑顔には、なにか魔力が宿っているようだ。

「こんなにリングの子たちであふれていて、本当に嬉しいな。この学校に来てよかったよ」

 玲さんが言うと、「当たり前じゃないですか〜っ!!」とまた黄色い声が飛び交った。

 リングとは、確かTop-of-King3のファンネームだ。

「あ、あのっ」

 騒がしいなか、私はなんとか玲さんに声が届くよう、顔を近づけて話す。

「どうして、ここに……? 私を知っているってことは、もしかして、俊からなにか聞きました?」

 言うと、「うん、そうだね」と玲さんはあやしく目を細めた。

 そっと私の耳元に唇を寄せると、ゆっくりと囁く。

「美織ちゃんのこと、僕はよーく知ってるよ」

 思わず離れ、まじまじと目を見つめてしまう。

 優しく微笑んでいる玲さん。だけど、なにを考えているのかよくわからない……。

 また固まってしまう私に、玲さんはなんだか楽しそうに話しだす。

「俊がさ、普通の中学に通うっていうから、心配になっちゃって。蓮司さんとよく話し合って、僕たちもついていくことにしたんだよね。この学校、新しい事務所と近くて、意外に立地いいし」

「……えっ。僕、たち?」

「うん。ほら、あそこの怖ーい顔してる男の子、見える?」

 玲さんが指さす先には、女の子たちの後ろで佇んでいる、黒髪のメガネ男子がいた。

 私たちが見つめていると、バッと勢いよくメガネとウィッグを取る。

 ウ、ウィッグ……?

 綺麗に赤みがかった髪色に、ギラギラとした目つき。はっきりと整った顔立ちに、またも言葉を失ってしまう。

 だって、この人も……。

「おい、玲。俺様より目立ってんじゃねーよ」

 瞬間。こちらに夢中になっていた女の子たちはすぐに振り向き、ぎゃあああ、と腰を抜かしそうな勢いでわきたった。

「嘘ーっ! 瑛斗(えいと)までいるのぉーっ!?」

「Top-of-King3のエース! 俺様系男子代表! ぶっきらぼうに見えて、実は一番グループ愛の強い椿瑛斗(つばき えいと)さまっ!」

 女の子の丁寧な説明を聞いた瑛斗さんは、チッと強く舌打ちをする。綺麗な顔だから、眉をひそめただけで迫力があるけど……リングのみんなは慣れているのか、「キャ〜ッ! ありがとうございますっっ!!」と余計に歓喜している。

 その様子を見て、ははは、と優しい声をもらす玲さん。

「もう、瑛斗は我慢しなきゃ駄目でしょ? これで、僕ら三人とも通っていることがバレちゃったじゃん」

「どの口が……っ」

「違う、違う。僕は、困っている女の子がいたから、助けようと思っただけだよ」

 ね? と、私にアイドルスマイルを向けてくる玲さん。

 た、確かに困ってはいたけど……その、もっと困るようなことが出てきそうな予感が……。

 女の子たちを前に、つい苦笑いを浮かべていると、瑛斗さんが無言でこちらにやってくる。ズンズンと歩く瑛斗さんに、女の子たちは自然と道を空けていた。

 玲さんの隣に立った瑛斗さんは、じっとこちらを見下ろしてくる。

「……へぇ。あんたが、例の美織ね」

「えっ?」



 例の……って、俊のってことだよね?

 いや、俊のってなによ!! と勝手に内心照れて熱くなってしまっていると、瑛斗さんが、ぐっと屈んで顔を近づけてくる。

 大きくて力強い瞳に睨みつけられた。

「思ったよりカワイイな。まぁ、俊があそこまで溺愛する理由はわかんねーけど……これからよろしくな?」

 抑えた声でそう言うと、瑛斗さんは「行くぞ、玲」と颯爽と立ち去ってしまう。はいはい、とゆるい返事をしてついてくる玲さん。

 な、なんか、可愛いとか言われたような……気のせいかな?

 凄みがきいていたからか、喧嘩を売られたような気分になってしまった。

 よ、よろしくって、どういうこと……?


ためし読みはここまで。
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』は、カドカワ読書タイムより2024年6月13日(木)発売!
幼なじみの王子様系アイドルから溺愛が止まらない!キュンがいっぱいの学園ラブストーリーをお楽しみに!




著者: 木下 すなす イラスト: あさぎ屋

定価
1,375円(本体1,250円+税)
発売日
サイズ
B6判
ISBN
9784046835475

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