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中1に進学したばかりの美織が再開したのは、今を時めく王子様系アイドルに変身した元泣き虫の幼なじみ・俊だった。毎日、美織しか見えない俊に溺愛されるドキドキの学園生活、スタート!
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』の特別試し読み!
※これまでのお話はコチラから
翌日。
朝、一人で登校してきた私に、女の子たちがわらわらと集まってくる。
「今日は、俊さまと一緒じゃないの?」
「俊くん来る?」
「……俊は今日、お休みするみたい。なんか、仕事の都合とかで」
言うと、女の子たちの顔が一気に曇る。
そこかしこからため息が聞こえてくる。
「なぁーんだ。つまんないの」
「ていうか、前から思ってたんだけど……花垣さんって、俊さまと同居してるの?」
「えっ!? いやいや全然!」
「じゃあ、なんでいっつも一緒に登校してるの?」
「ええっと……」
どうしよう。なんと答えれば、正解なのか……。
頭を悩ませていると、ポンッといきなり右肩に手を置かれる。
びっくりして振り返る前に、女の子たちの黄色い声が響き渡った。
「なんだかお困りみたいだね、美織ちゃん」
柔らかい笑顔を向けてくるのは……私の知らない、見たことのないほどのイケメンだった。
えっ? ど、どうして私の名前を……。
気になったけど、あまりにも綺麗な顔に、思わず言葉を失ってしまう。まつ毛の長い垂れ目がちの大きな目に、小さくて高い鼻。至近距離で見ても透明感のある肌に、淡い髪色がよく映えている。
「きゃーっ! 玲(れい)きゅん!? 玲きゅんだよねっ!?」
「玲さまが、どうしてここにっ!?」
「もうこの学校どうなってるの〜っ!?」
俊を目の前にしたときと同じくらい、目をハートにして騒ぎだす女の子たち。
その反応を見て、ようやくピンとくる。
「えっ……玲きゅんって、あの、Top-of-King3の?」
「そうに決まってるじゃないっ!! 今をときめくTop-of-King3の最年長でリーダー、みんなの憧れ王子こと早瀬玲(はやせ れい)さまよっ!!」
さっきまで不満そうに唇を尖らせていた子が、ずいっと顔を近づけてきて言う。息がかかり、私は思わず後退ってしまった。
そうだ。早瀬玲さん……確か、中三のお兄さん。
もしかして、この間ちらっと凪咲が言ってた、〝俊くん並みにイケメンな男子〟って……玲さんのこと?
俊はわかるけど、どうして玲さんまで!?
戸惑って言葉が出ない私にお構いなく、玲さんは、「ははは」とこれまた柔らかい声で笑う。
その声に当てられたみんなは、甘いものを食べたみたいに顔がとろけ、ぽ〜っと頬がピンク色に染まった。玲さんの笑顔には、なにか魔力が宿っているようだ。
「こんなにリングの子たちであふれていて、本当に嬉しいな。この学校に来てよかったよ」
玲さんが言うと、「当たり前じゃないですか〜っ!!」とまた黄色い声が飛び交った。
リングとは、確かTop-of-King3のファンネームだ。
「あ、あのっ」
騒がしいなか、私はなんとか玲さんに声が届くよう、顔を近づけて話す。
「どうして、ここに……? 私を知っているってことは、もしかして、俊からなにか聞きました?」
言うと、「うん、そうだね」と玲さんはあやしく目を細めた。
そっと私の耳元に唇を寄せると、ゆっくりと囁く。
「美織ちゃんのこと、僕はよーく知ってるよ」
思わず離れ、まじまじと目を見つめてしまう。
優しく微笑んでいる玲さん。だけど、なにを考えているのかよくわからない……。
また固まってしまう私に、玲さんはなんだか楽しそうに話しだす。
「俊がさ、普通の中学に通うっていうから、心配になっちゃって。蓮司さんとよく話し合って、僕たちもついていくことにしたんだよね。この学校、新しい事務所と近くて、意外に立地いいし」
「……えっ。僕、たち?」
「うん。ほら、あそこの怖ーい顔してる男の子、見える?」
玲さんが指さす先には、女の子たちの後ろで佇んでいる、黒髪のメガネ男子がいた。
私たちが見つめていると、バッと勢いよくメガネとウィッグを取る。
ウ、ウィッグ……?
綺麗に赤みがかった髪色に、ギラギラとした目つき。はっきりと整った顔立ちに、またも言葉を失ってしまう。
だって、この人も……。
「おい、玲。俺様より目立ってんじゃねーよ」
瞬間。こちらに夢中になっていた女の子たちはすぐに振り向き、ぎゃあああ、と腰を抜かしそうな勢いでわきたった。
「嘘ーっ! 瑛斗(えいと)までいるのぉーっ!?」
「Top-of-King3のエース! 俺様系男子代表! ぶっきらぼうに見えて、実は一番グループ愛の強い椿瑛斗(つばき えいと)さまっ!」
女の子の丁寧な説明を聞いた瑛斗さんは、チッと強く舌打ちをする。綺麗な顔だから、眉をひそめただけで迫力があるけど……リングのみんなは慣れているのか、「キャ〜ッ! ありがとうございますっっ!!」と余計に歓喜している。
その様子を見て、ははは、と優しい声をもらす玲さん。
「もう、瑛斗は我慢しなきゃ駄目でしょ? これで、僕ら三人とも通っていることがバレちゃったじゃん」
「どの口が……っ」
「違う、違う。僕は、困っている女の子がいたから、助けようと思っただけだよ」
ね? と、私にアイドルスマイルを向けてくる玲さん。
た、確かに困ってはいたけど……その、もっと困るようなことが出てきそうな予感が……。
女の子たちを前に、つい苦笑いを浮かべていると、瑛斗さんが無言でこちらにやってくる。ズンズンと歩く瑛斗さんに、女の子たちは自然と道を空けていた。
玲さんの隣に立った瑛斗さんは、じっとこちらを見下ろしてくる。
「……へぇ。あんたが、例の美織ね」
「えっ?」
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例の……って、俊のってことだよね?
いや、俊のってなによ!! と勝手に内心照れて熱くなってしまっていると、瑛斗さんが、ぐっと屈んで顔を近づけてくる。
大きくて力強い瞳に睨みつけられた。
「思ったよりカワイイな。まぁ、俊があそこまで溺愛する理由はわかんねーけど……これからよろしくな?」
抑えた声でそう言うと、瑛斗さんは「行くぞ、玲」と颯爽と立ち去ってしまう。はいはい、とゆるい返事をしてついてくる玲さん。
な、なんか、可愛いとか言われたような……気のせいかな?
凄みがきいていたからか、喧嘩を売られたような気分になってしまった。
よ、よろしくって、どういうこと……?
ためし読みはここまで。
『アイドル幼なじみと溺愛学園生活 君だけが欲しいんです』は、カドカワ読書タイムより2024年6月13日(木)発売!
幼なじみの王子様系アイドルから溺愛が止まらない!キュンがいっぱいの学園ラブストーリーをお楽しみに!
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- 【定価】
- 1,375円(本体1,250円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- B6判
- 【ISBN】
- 9784046835475