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ものがたり

新刊発売記念!「サバイバー!!③ 大バクハツ! とらわれの博物館」第6回 光をめざして

短編  いつもの放課後、小さな約束

「がんばってる三人組に、さっしいれで~す♪」

 涼馬班のいつもの三人は、午後訓練のあと、本日も居のこり訓練!

 と、疲労困憊でグラウンドにひっくり返ってたあたしのおでこに、冷たいモノが置かれた。

 横にしゃがみこんだ楽さんが、ペットボトルをのっけてきたんだ。

「やった! ありがとうございますっ」

 ガバッと身を起こすと、なんと久々に学校で見る、七海さんまで!

「商店街がまだ復旧工事中で閉まっていたので、コンビニ菓子ですが……」

 そうして朝礼台にお菓子を広げ、とつぜんの放課後パーティが始まった。

 居のこりしてると、いいこともあるんだなぁ~。

 あたしはほっくほくで、大好物のお団子をぱくり。

「ああ、あんこが疲れきった体にしみわたるよ~っ」

 涼馬くんもポップコーンをつまもうとするも――、でっかいバケツが、すでに空っぽだ⁉

 ゴッ! と、涼馬くんのつっこみチョップが、犯人のつむじにヒットした!

「うにゃっ」

「センパイたちのぶんまで、一人で食うバカがいるか」

 うてなのほっぺたは、リスのほお袋なみにパンパンだ。

「いいよ、お食べよ。商店街の大さわぎでも、三人ともがんばってたからね。ごほうびだよ」

 楽さんはニコニコ、優しい顔であたしたちを眺めてる。

 やっぱりS組の総リーダーってより、S組のお母さんだよなぁ。

 来年のあたしたちが今の六年みたいになれてるかって、ぜんぜんそんな気がしないや。

「センパイたちって、なんだか生まれたときからセンパイってかんじですよね」

「マメさん、それは不可能です。ほ乳類の誕生時は、母体の腹部におさまるサイズですから」

 真顔で言う七海さんに、そりゃそうだってうなずいてから、みんなでアハハッと笑いあう。

「そういえばさー。楽さんたちって、なんでS組に入ったのー?」

 口の中のポップコーンを処理しおえたうてなが、あたしのふとももにゴロンと寝そべる。

 ……と、話をふられた楽さんは、飲みかけの水をおろして、にっこり笑みを作りなおした。

「ひ・み・つ」

 指でぷにっと、なぜかあたしが鼻の頭がツブされる。

「な、なんであたしっ」

「だってうてなちゃんのほっぺたをツブしたら、いろいろ出てきそう」

 下を見たら、一度へこんだほっぺたが、また満ぱいに!

 しかも串らしきものが何本も突きだしてるよ⁉

「アーッ! うてな、お団子もぜんぶ食べちゃった!」

 いっぱいあるから、もう一串いけるかななんて思ってたのにぃっ。

 あと、みたらし二串しかないじゃん!

 悲鳴をあげたあたしに、彼女はしょんぼり、口の中の串をずるぅっと取りだそうとする。

「やっぱり、もういいです!」

「でほぉ(でもぉ)……」

「うてな。エネルギー取りすぎたぶん、走りこみ十キロしてきたらどうだ」

「イヤーッ! だったらぜんぶ返すーっ」とか「ギャアア」とか「やめろ!」とか、いつもの調子でしっちゃかめっちゃかだ。

 楽さんは声をあげて笑い、あたしの手に、貴重なお団子パックをのっけてくれた。

「じゃあ、残りはぜんぶマメちゃんのだな。また今度、中村のおばあちゃんにお団子をたのんで、放課後パーティしようね。五年が、無事に週末の遠足から帰ってきたら」

「「「え」」」

 その五年は三人そろって、彼に首を向ける。

「ぶ、無事にって、遠足でなにかあるんですか?」

「あれはねー、お楽しみレクが、すっごくヤバイんだよね。ひどい目にあうと思うけど、がんばってね~」

「ヤバイと言えば、そうですね……、たしかにヤバかったかもしれません」

 楽さんはんふふふふと不穏な笑いをもらし、七海さんは肩をすくめる。

 こ、これは激しくヤバそうだぞ……っ⁉

 せまりくる土曜を想像して、あたしたちはごくりとノドを鳴らす。

「はやく帰っておいで。こうしてみんなでワイワイすんのって、楽しいからさ。ね、涼馬」

「……まぁ、そうですね」

 楽さんと涼馬くんは、自分たちにしか分からないような視線をかわし、静かな笑みを浮かべた。

 夕陽の赤い色に染まった、彼らの横顔。

 なんでだろう。笑ってるのに、あたしにはそれが、ちょっとさびしそうに見えてしまった。

「あの。おなかいっぱいになっちゃったから、食べてください」

 あたしはせっかくもらったお団子を、彼らにさし出した。

 心配したのが伝わっちゃったのか、二人は顔を見合わせて。

 楽さんには頭を、涼馬くんには背中を、ぽん、ぱんっとたたかれちゃった。

 ジャレてきたうてなとほっぺたを押しつけあって、クスクス笑う。

 七海さんがそれを眺めて、すこしだけくちびるのハシを持ちあげる。

 みんなの笑顔に、夕陽の光の粒子がきらきらと輝いてる。

 お団子を食べてくれる二人は、ちょっぴり照れくさそうだ。

 日が経つにつれ、どんどんS組が好きになって、あたしの居場所になっていく。

 今日も明日もあさってもずっとずっと、クラスのみんながだれ一人欠けず、こんなふうに過ごしていけますように。

 見上げた大きな赤いお日さまに、あたしはこっそりお願いしたんだ。



あとがき

 コンニチハ アサバミユキデス ナンデコンナ デンポウ ミタイナ コトニ…? ってあとがきが1ページしかないからだよー! 三巻を読んでくれたみんな、ありがとー! 学年遠足だワーイと思ったら、やっぱりのサ~バ~イバ~ルゥゥ……。ノドカ失踪の秘密や涼馬が抱えていた過去も明らかになり、マメの転機となる三巻! 楽しんでもらえたら幸せで~す♡ 手に汗握るような臨場感バリバリの超かっこいいイラストを下さった葛西尚先生、完全に迷宮入りした私を脱出口まで導いてくれた大場師匠、本書に関わって下さった皆々様、そしてマメや涼馬たちを応援してくれてるみんなに、あーりーがーとーうございまぁぁす‼ 発売中の『歴史ゴーストバスターズ③』(ポプラキミノベル)、そして『サバイバー!!④』でも、みんなに会えますように☆ 最新情報やオマケ小話は私のHP(https://note.com/asabamiyuki)をチェックしてね! 次の巻もマメたちは大波乱! なんとココマデ ズット スガタヲ アラワサナカッタ ノドカガ ソシテ ガクマデ タイヘンダァァ~!? それではっ、みんなもマメたちと一緒に、「注意・ゴー!」だーっ! (S組に入ったら即落第の運動音痴な鯖より)


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