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ものがたり

新刊発売記念!「サバイバー!!③ 大バクハツ! とらわれの博物館」第1回 わくわくドキドキ、学年遠足!!


この授業、恋も授業も命がけ! ぜったいおもしろい&最高にキュンとする「サバイバー!!」シリーズ。サバイバルな学校で、成績サイアクでも夢かなえます! 角川つばさ文庫の大人気シリーズ第1巻~第3巻が、期間限定でまるごと読めちゃうよ!(公開期限:2025年6月6日(金)23:59まで)


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 サバイバルの五か条


    サ:最初に、そして常に心をしずめろ

    バ:場所と状況を確かめろ

    イ:命を大切にせよ

    バ:場にあるモノを工夫して使え

    ル:ルールを守れ。しかし臨機応変に



1  わくわくドキドキ、学年遠足!!


 七月の太陽はくっきりと輝き、今朝もヤル気まんまん。

 照りつける陽ざしの下、強勇学園の生徒がずら~りと体育ずわりだ。

 あたし、双葉マメは手でひさしを作り、緑の景色を眺める。

 きらっきらの木もれ日に、澄んだ風。

 夏の山って、ほんと気持ちいいよねーっ。

「この『ノコ山』は、山の地下深~くからてっぺんまで、丸ごとが石切り場なんです。ここから切りだされた石のブロックは、むかしはお城の石がきに使われていました。

 で、これから見学するG地区博物館は、なんとっ、地下からその石切り場に入れちゃうんですよ~! 大ハクリョクの古代遺跡みたいだから、お楽しみに! ただし、まだ現役で石を採ってるところもあるので、みんな、うっかり四角く切りだされないように、気をつけてねー」

 博物館まえの広場で説明してくれてるのは、実行委員長さんだ。

 彼女のトークにアハハッと笑いがおこる。

 そして、目のまえに立ちはだかる、どどんっとデッカイ建物こそ、強勇学園研究所ふぞく「G地区博物館」!

 今日は待ちに待った、五年生の学年遠足なんだっ。

 日をかえて半ぶんずつの出発で、あたしたちS組は、初日の先発組。

 バスにゆられること三時間、はるばるおとなりの地区までやってきたのです!


 商店街が浸水しちゃった大さわぎから、はや二週間。

 研究所に入院してた健太郎くんも、このまえやっと学校にもどってこられた。

 視線を感じてふり向くと、その健太郎くんと目が合った。

 照れくさそうな笑顔にホッとして、あたしもにっこり笑みを返す。

「ねー、マメちゃぁん。ボクたちも、私服がんばってくればよかったねー」

 退屈になったのか、肩にゴロニャンとなついてきたのは、親友のうてなだ。

 うてなの言うとおり、まわりの女子はワンピにサンダル、ミニスカートに肩出しブラウス。

 まるでファッションショーの、色とりどりの華やかさ!

「ほんと、みんなめっちゃ気合い入ってるよね」

 あたしも去年の遠足は、仲よしたちと色ちがいコーデだったんだけど。

 今年はけっきょく、動きやすい服を選んじゃった。

 S組は、どんな災害でも要救助者を救けて還ってくる、「特命生還士」の卵。

 その一員としての自覚が――ってより、四月からとつぜんのピンチに巻きこまれまくってきたせいで、いつでもぱっと動けるカッコウでいなきゃって気がしちゃってさ。

 けど、まさかS組全員が同じことを考えてくるとは、思ってなかった。

 クラスメイトはそろいもそろって、Tシャツかパーカーにパンツ。足もとは、はきなれたスニーカーの一択だ。

「こっちがわの列はジミだねぇ」

「ねーっ。ボクもマメちゃんとオシャレしたーい」

 うてなはあたしのポニーテールを、ちまちまと三つ編みしはじめた。

 あたしはされるがまま、実行委員さんたちに目をもどす。

「そ~し~てっ! 博物館見学のあとは、お楽しみレクリエーションでーす♪ お昼ごはんも、レク中にチームごとで食べるからねっ。くわしくは後で説明するから、よろしくお願いしまーす」

 ごはんの一言に、うてながピクッと耳を動かす。

 S組一の食いしんぼうの頭の中は、たぶんもう博物館を飛びこして、お昼ごはん一色だ。

 しかし、あたしはゴクリとのどを鳴らした。

 うわさのお楽しみレク!

 実は、出発まえに楽さんからアドバイスをもらったんだ。


 ――お楽しみレクが、すっごくヤバイんだよね。ひどい目にあうと思うけど、がんばってね~。


 ……って、S組の総リーダー、しかも全科目ダブルAをめざす楽さんが言う「ヤバイ」「ひどい」って、いったいどんななの⁉

 無人島実地訓練に、商店街の浸水事件。

 ギリギリくぐりぬけてきたピンチが、次々と頭をよぎっていく。

 今回は、まさかの「博物館で命がけの実地訓練」!

 ……なんてことはないよね?(ないと言って!)

 リュックを抱えてドキドキしてたら、

「マメ」

 となりから、ヒジでつつかれた。

 去年同じクラスだった、綾と美空だ。

 実行委員の腕章をつけた二人は、色ちがいのマキシワンピで、髪もふわふわに巻いてきてる。



「わっ、今年はふたごコーデ? かわいい!」

「んふふ~、ありがと。マメは三つ編みかわいいよ……って、なにそのリュック」

 今日は日帰りなのに、あたしのリュックはぱんっぱんだ。

 いやぁ……。楽さんの話を聞いたら、準備が必要かなって。

 訓練の装備、ロープやら応急処置キットやらをつめるうちに、大荷物になっちゃったんだ。

 笑ってごまかすあたしに、綾はあきれ顔で肩をすくめる。

「まぁいいや。それよりマメって、あの風見涼馬と友だちになったんでしょ?」

「レクの時にでも、紹介してよ~」

「……へ? 友だちって、あたしと涼馬くんが?」

 相手はS組のアタッカーリーダーだよ?

 彼はあたしが追いかけて、追いこさなきゃいけない「目標」で。

 大事な仲間なのはまちがいないけど、「友だち」なんてフレーズは、頭にもなかった。

 身のほど知らずすぎて、あたしは大あわてで両手をふる。

「涼馬くんと友だちなんて、まさか! ないないっ」

 思わず声が大きくなっちゃった。

 と、綾と美空がサッと青ざめ、うてながあたしの口をパシッとふさいだ。

 二人の視線のさきは、あたしの……背後?

 おそるおそるふり向いてみたら、

 体育ずわりの群れのむこうから、風見涼馬その人が、こっちをニラんでる!

 視線がぶつかったとたん、端整なお顔が眉を上げ、にーっこりと笑みを浮かべた。

 けど、目はまったく笑っていない……っ!

「あわわわわっ」

 あたしはバッと前に向きなおる。

 ぜったい「身のほど知らずな話をしやがって」って思ってたって!

 やっぱり友だちどころじゃないじゃん!

「あ、え、えっと。じゃあがんばってね。マメ」

 あたしたちの厳しい関係をさっした綾たちは、そそくさと会話の輪から脱出。

「はくじょーモノォォッ」

 塩鬼の視線をリュックでガードするも、リュックくらい貫通してきそうだよっ。

 ……でもな。

 あたしね。彼がなぜか、ノドカ兄にあげたはずのホイッスルを持ってたもんだから、「兄ちゃんをゆくえ不明にした、敵の一味かも」ってうたがってたんだ。

 だけど実は、ノドカ兄をすでにさがしてくれてる、たった一人の味方だったんだよね。

 涼馬くんは「友だち」の一言じゃかたづけられないような、重要すぎる人だ。

 黒幕の情報を教えてくれないのは、〝担当ナシ〟な弱いあたしには危険すぎるから。

 そりゃ、S組リーダーに安心してもらえるレベルじゃないのは、自分でも分かってる。

 だから一日でもはやく、彼に強くなったと認めてもらって、「ノドカ兄情報」を聞きだすのが、あたしの当面の目標なんだ。

 今日の「お楽しみレク」は、いいところを見せるチャンスだよねっ。

 そう思うと、気合いが入る。

 準備バンゼンのリュックを抱えなおしてると、前に、筋肉むっきむきのS組の担任が出てきた。

「それでは見学のまえに、先生からも一言。今日はサプライズがあるぞ!」

 まさか、いきなりの実地訓練とか⁉

 S組のメンバーはそろって顔を引きしめ、腰まで浮かせる。


「転校生を紹介する。橘リリコだ!」


 遠足の行きさきで、転校生?

 ほんとにサプライズだ。

 実行委員の一人だと思ってた女子が、静かに歩みでてきた。

 ロングのひらひらワンピースに、腰まで届く波うつ髪。

 いかにもおだやかな下がり眉。

 彼女は平安時代のお姫さまみたいにおっとりした笑顔で、あたしたちを見まわす。

「リリコちゃんかぁ。名前までかわいいね」

「あのコ、ボクより背がちっちゃそうじゃないっ?」

 S組最小のうてなが、うれしそうに瞳をきらきらさせる。

「んんんっ、並んでみないとなぁ」

「ゼッタイそうだって! ボクもいよいよ、前へならえの先頭から卒業かァ」

 でもどう見ても、S組には来てくれなそうなコだ。

 むしろ「守ってあげたい女子ナンバー1」に輝きそうな……。

「橘は実家がG地区なので、ここで現地集合になった。しかし遠足のあとは、みんなといっしょに帰って、そのまま寮に入る予定だ。寮生のS組メンバーは、よろしくたのむな」

 ざわりと生徒たちがどよめいた。

 S組? 先生、「S組」って言ったよね。

 ってことは、サバイバー志望なの?

「橘は強勇学園G地区分校の、五年S組リーダーだ。今回は、本人の熱い希望でわれわれの本校へ転校となった」

「S組リーダー!?」

 あたしは今度こそ声を上げちゃった。

 だって、この平安お姫さまな彼女が、G地区のS組では、涼馬くんと同じ立場ってことだよね。

 め、めっちゃツヨツヨな優等生じゃん!

 外見とのギャップにあぜんだ。

 ざわめくみんなを前に、彼女はおっとりと笑みを浮かべる。

「涼馬さん♡ 橘は、約束どおりに追いかけてきましたよーっ。きっと将来、リベロの相方になりましょうねー♡」

 お、おお⁉ 意外にもハキハキしてるけど、語尾に♡マークがついて聞こえる。

 その♡が飛んでいくさきは、あたしのナナメ後ろ方向、こっちのS組リーダーだ。

 っていうか、涼馬くんとリベロの相方の約束って……⁉

 S組一同のざわめきが、いっそう強くなった。

「約束はしてねーけど。本校S組にようこそ、リリコ」

 当の風見涼馬氏は、ちょっとニガ笑いで、みんなを代表して応える。



「涼馬さん以外に用はありませんが、よろしくお願いいたします♡」

 手をふる彼女から、彼だけに向けて♡がぴょんぴょこ飛んでいく。

「あ、あいつ、なんかヤバそうだよ。マメちゃん……っ」

「す、すんごい転校生が来たねぇ」

 震えるあたしとうてなの頭に、♡がコツンッと当たって落っこちた――気がした。


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