
この授業、恋も授業も命がけ! ぜったいおもしろい&最高にキュンとする「サバイバー!!」シリーズ。サバイバルな学校で、成績サイアクでも夢かなえます! 角川つばさ文庫の大人気シリーズ第1巻~第3巻が、期間限定でまるごと読めちゃうよ!(公開期限:2025年6月6日(金)23:59まで)
13 未知の巨大生物、第二弾⁉
まさか、部屋のなかを泳ぐ日がくるなんてっ。
「マメ、上にのれ!」
お団子製造機の上に両手をつき、ザバッと水から体を持ちあげる。
涼馬くんもとなりに上がってきて、階段をふり返る。
アオムシは頭から水に入ろうとしてるのに、やっとシッポの先が見えたような大きさだ。
ぶにぶにした緑の体。
うごめく脚のぶきみさに、トリハダと震えが止まらない。
「あたしたちをねらってきてるよね⁉」
「そもそも、なぜココにおれたちがいるのが分かったんだっ。水の底だぞ⁉」
涼馬くんはすぐ後ろのシャッターを、思いきりけとばす。
ガッと硬い音がしただけで、やっぱりビクともしない。
「おれが奥へ引きつける。マメはそのスキに、階段へまわって脱出しろ!」
「でも、涼馬くんは⁉」
「おれは自力で脱出できる!」
彼は言いきるけど、ホントに――⁉
どぷんっと波をたて、アオムシが部屋に入ってきた。
身をくねらせながら、脚で水をかき、まっすぐにあたしたちに向かってくる。
アオムシが作る波しぶきが、顔にかかる。
近づくと、ほんとに大きい……!
腕を広げても抱えこめない大きさの顔に、木の板も噛みわる強じんなアゴ。
「やっぱり一人じゃムリだよ!」
「マメ、おれはだれだ!」
涼馬くんの瞳が、あたしのおびえた胸をつらぬく。
「ア、アタッカーリーダーの、風見涼馬くんですっ!」
「そうだ、信じろ! ゴーッ!」
どんっと背を押された。
あたしは水のなかへ飛びこむ。
同時に彼も大きくジャンプ!
ドッ!
アオムシの頭に飛びのり、ナイフを突きたてる。
もろともに水にしずんでいく、一人と一匹。
あたしはカベづたいに全速力で泳ぎ、階段の手すりをつかんだ。
「涼馬くん!」
ふり向いて、血の気が引いた。
アオムシが短い脚で、機械にのりあがろうとしてる!
あいつ、ナイフの刃も立たないの⁉
ナイフで刺したハズのところから、にゅうっとオレンジ色のツノが出てる。
威かくのツノだ。怒ってる……!
キュウウ――ッ!
甲高い音が耳を打つ。
水面に広がった円のもようの内がわに、ザパッと涼馬くんの頭がつき出す。
はじかれた時に落としたのか、彼はナイフを持ってない。
「うそっ……!」
「はやく行け!」
ほえるように言われるけど、行けるワケないよ!
彼とアオムシのキョリは、浮かびあがったテーブルをはさんで、二メートルもない。
背後はシャッター。
しかも、あたしのいる出口と真反対だ。
アオムシは体をふり上げ、水面にはげしくたたきつける!
水柱があがって、涼馬くんのすがたが見えなくなった。
あたし、どうすればいい⁉
涼馬くんは信じて逃げろって言った。
足手まといにだけは、ゼッタイになっちゃいけない。
じりりと一段上にのぼる。
階段をのぼりさえすれば、この息苦しい、変になっちゃいそうな空間から、外に出られる。
よろりとついた手が、配電盤にふれた。
あたしはハッと息を止めた。
ショートして、もう使えなくなってるけど――。
配電盤ボックスから伸びたケーブルは、カベを伝って天井へ続いてる。
ドゴッ‼
にぶい音に、我に返って目をうつした。
アオムシが、涼馬くんのいたあたりに、頭を打ちつけてる!
シャッターがひしゃげ、水が外へ大量に流れだしはじめた。
「涼馬くん⁉」
「マメ、退避!」
彼の声が、左がわ、思わぬ方からっ。
もぐってよけたのか!
彼は団子製造機に腕をつき、すばやくのりあがる。
だけどこっちの出口にはまだ遠い。
アオムシは首をもたげ、また涼馬くんを目標に定めた。
「行けって言ってる! 命令だ!」
「ダメッ!」
「おれはいい!」
涼馬くんがたたきつける声が、いつにも増して鋭い。
ずぶぬれの顔の表情にもよゆうがない。
彼にすらドンづまりの状況なんだ。
あたしはぶんぶん首を横にふる。
実地訓練のときも今も、涼馬くんは危険な場所に一番に飛びこんで、脱出するのは最後だ。
アタッカーリーダーだから?
あたしはっ、みんなで生きて還りたいからムチャするけど、自分だって生きて還るつもりでいる。
だけど涼馬くんは、リーダーの責任感以上に、
わざと、自分の命を守ってない気がするんだよっ!
あたしはバッと、天井のケーブルを見定める。
「涼馬くん、あたしを信じて!」
「な……っ、」
「上だよっ! 水から離れて‼ ゴーッ!」
彼は機械から飛びあがり、両手で天井の鉄骨をつかむ。
あたしも思いっきりジャンプして、真上の、ねらったケーブルに飛びついた!
「あたしたち、生きて還るんだぁーっ‼」

「マ、マメッ⁉」
全体重をかけたケーブルは、天井からハガされて、ぐんっとたわむ。
ぶちっ!
音をたて、配電盤からケーブルが引っこぬけた。
あたしはとっさに近くの鉄骨に飛びうつる。
ケーブルは火花を上げ、階段でヘビみたいにのたうった。
配電盤が壊れてたって、電気を送ってくる元のケーブルは、まだ電流が生きてる。
それが水にふれたら、一気に電気が流れるはずだっ。
行け、落ちろ!
階段に引っかかったケーブルは、念じるあたしに応えるようにズルッとすべり――、
ちぎれた先っぽの銅線が、水面にふれた!
バリバリバリッ!
とたん、カミナリが落ちたような光が水面を走る。
アオムシは絶叫をあげ、身をのたうった。
***
どしゃっと水しぶきをまき散らし、アオムシが横だおしになる。
「や、やったっ!」
機械とテーブルのあいだで、巨体は半ぶん水にしずんでいく。
やっぱり大きい。全長三メートルはありそうだ。
「……おどろいた。電気モレの感電を、わざと起こしたのか」
涼馬くんは天井にぶら下がったまま、真下のアオムシをあぜんと見下ろす。
「サバイバルの五か条〝バ〟! 場にあるモノを工夫して使え、だよねっ」
これで未知の危険生物、二匹目は、どうにか倒せた?
アオムシを回収してもらったら、七海さんの研究の役に立つかな。
とにかく、今回も生きて還れそうだよ。
はやく、うてなたちに会いたい!
あたしはホ~ッと息を吐きだし、鉄骨をにぎりなおす。
「――って、あれっ」
着地しようとしたら、下に足場がない⁉
階段へもどるのも無理なキョリだし、涼馬くんの真下のお団子製造機までだって、ここからは五メートル以上。
そして真下は電気ビリビリの水。
「あたしまさか、救けがくるまで、ずーっとこのままケンスイ⁉」
こっちは真剣に悲鳴をあげたのに、涼馬くんはブハッとふき出した。
「一瞬前までカッコよかったのに、台無しすぎだろ」
「ぐぅっ、塩鬼めぇ」
彼は笑いながら腰のロープをはずし、それを天井とパイプのあいだに通す。
身軽くお団子製造機に着地すると、反対がわをあたしに投げてくれた。
「振り子の調子で、こっちに飛んでこい。受けとめてやる」
「なっ、なるほど。ターザンみたいにねっ?」
「で、シャッターから脱出だ」
見れば、涼馬くんの背後のシャッターに、肩が入るくらいのスキマができてる。
さっきのアオムシの頭突きのおかげか。
あたしはさっそく、腰にロープを片手もやい結びで巻きつけた。
「「3、2、1ッ!」」
天井を支点に、ロープを引っぱってくれる彼のもとへ、思いっきり飛びこむ!
ドッ!
「ナイスジャンプ」
「やった」
がっちり受けとめてくれた彼と、ニッと笑いあおうとしたところで、
「ウワアアッ⁉」
とうとつに、ものすごい力でロープを引っぱられた!
腰からぐんっと浮いた体を、涼馬くんが飛びついて捕まえてくれる。
「マメ!」
「な、なに」
首だけふり向いたら、恐ろしいモノが目に入った。
アオムシが、あたしの腰につながるロープを口にくわえ、ぐいぐい引っぱってる!
まだ生きてたんだ!
あたしはとっさにカベの配管をつかむ。
涼馬くんもあたしを抱きこみ、必死にふんばってくれる。
けど、足場の機械自体がかたむいてきた。
引きこまれた後で水に落とされたら、感電&ばっくり噛みつかれるの確定だよね⁉
「マメッ、おれの腰からナイフを取って、ロープを切、」
そこまで言って、彼はゴクッと息をのむ。
そうだ、さっきナイフは落っことしちゃったんだ!
涼馬くんが歯を噛みしめる音が横に響く。
なにかっ、どうにか、乗りきる方法を探さないと――!
こんなところで涼馬くんまで巻きこんで、アオムシに食われたくない!
「マメちゃぁん‼」
シャッターのむこうから、うてなの声!
――来てくれた⁉
応援だっ!