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新刊発売記念!「サバイバー!!② 緊急避難! うらぎりの地下商店街」第1回 学力総確認、Sテスト!

2  「帰れま1000」ってマジですか⁉

「仲間って……なんだっけ……」

「ケンタロもユイも信じてたのにぃ。裏切ったなァ……ッ」

 あたしとうてなは並んですわり、カタカタ震える。

 初めておじゃました、強勇学園・学生寮のコミュニティルーム。

 大きなお部屋のカベには、寮の行事の写真がたくさん貼られて、すごく楽しいふんいきだ。

 ――しかし。

 出入り口のとびらには、黄色い「立ち入り禁止」テープ。

 さらには、ドンッとイスにふんぞり返って腕をくむ、塩鬼リーダー!

 そして唯ちゃんと健太郎くんが、ずいっとプリントの山を差しだしてくるっ!

「プリント百枚! 一枚につき十問で、ぜんぶでちょうど千問!」

「これをぜんぶ正解するまで、」


「「帰れま1000~!」」


「おお~っ」

 うしろでハクシュするのは、六年S組のセンパイ、ナオトさんと千早希さんだ。

 た、たしかにさっ。

 ここにS組総リーダーの楽さんと、副リーダーの七海さんがいたら、無人島メンバー勢ぞろいだけど。

「ぜんぜん、おつかれさまパーティじゃないじゃーんっ!」

 パーティを期待してたうてなは、ぶえええっと半ベソだ。

「あ、あはははっ」

 そしてヒキ笑いのあたしのほうは――。

 ふだんは入れないこの寮で、ノドカ兄の情報をゲットできるかもしれない。

 だから三十分だけって決めて、こっちに来たんだけどっ。

 千問終わるまで部屋から出られないんじゃ、情報収集なんてできないよぉ!

 まぁ……、ノドカ兄は現場に入るようになってから、寮は寮でも、プロ用の基地の寮にいたって聞いてる。

 こっちの学生寮じゃ、あんまり情報はなさそうだけどさ。

 ギワクの涼馬くんの部屋なら、なにか見つかるかも?

 ちょっぴり期待してたのに、「部屋におじゃまさせて」なんて、言いだせる空気じゃないし!

「しょうがねーな。唯と健太郎にめんじて、つきあってやるよ。いいか。このプリントは、ドリルから基本用語だけまとめた、一問一答クイズだ。ナオトさんが去年作ったのを、トクベツに貸してもらった」

「そだねー。この基本をがっちり押さえとけば、六十点は取れるかな」

「だけどナオト。暗記だけじゃ、合格点は取れないわよ」

 センパイがたのお言葉に、あたしたちはさらに震えるばかりだ。

 と、涼馬くんが息をつく。

「千早希さん。サバイバーが現場に出たら、かぎられた情報から、自分で考えて、自分なりの答えを導きださなきゃいけません。それができなきゃ、とてもじゃないが現場になんて出られない。だよな? 二人とも」

「「んぐうっ」」

 たしかにこの前のピンチは、とっさの判断が生死を分ける状況だったもんな。

 どすっと心臓をつらぬく言葉だよっ。

「時間がないから、さっそく始めるぞ。三秒以内に答えろ」

「「はいいっ!」」

 あたしたちはビッと背スジをのばす。

「『天気の基本と災害』より、第一問! だんだん大きく高くなり、カミナリや大雨をつくる可能性のある雲は?」

 これは理科でもやったゾ!

 もくもくと空に立ちのぼる、ザ・夏! の雲!

「積乱雲!」

「もくもく雲!」

「マメ正解、うてな不正解! 第二問。近ごろ、都心で巨大な積乱雲ができやすくなっている。理由はなんだ!」

「え、ええとっ? 夏だからっ、暑いので!」

「地球温暖化!」

「マメ、出なおしてこい! うてなはあと一歩! 都心は、アスファルトの地面やビルにかこまれているせいで、熱がこもりやすいからだ。温まった空気は上へのぼって巨大な雲をつくる。これが『局地的大雨』、いわゆるゲリラ豪雨をもたらすんだ」

「ゲリラ豪雨っ。あたし、その言葉、聞いたことあるかも!」

「だろーな。この前おれが、アタッカー訓練で説明したばっかりだ」

 すわった目を向けられて、あたしはヒイィと身をちぢめる。

「とくに都心では、マンホールや下水道から水が噴きだしたりって、都市型水害になりやすい。ゲリラ豪雨は予測しづらいから、避難がおくれれば、要救助者がたくさん発生する、おそろしい災害につながるぞ。

 では、第三問! 町が浸水した場合、移動が難しくなるのは、水の深さがどこからだ!」

「ええっ、腰くらい? そんくらいなら歩けそうかな」

「マメちゃん、泳げばいいじゃんっ。だから、休けいするときに足がつくくらい!」

「アホ! 二人とも死亡!」

「「ぎゃっ!」」

「答えは『ヒザ下』! おれたちの身長だと、二十センチから三十センチほどで安全に歩くのが難しくなってくる。ネットやラジオは常にチェック! 情報はまわりの人間と共有! そしてすみやかに避難! よく覚えとけ」

「「了解ッ!」」

「第四問。アタッカーには一番大事な問題だ。救助に入るとき、もっとも優先すべきは?」

「要救助者の、安全をカクホです!」

「バカッ! まずは自分自身の安全だ。いくら救けたくたって、自分の命を捨てるようなムチャは、絶対に禁止だっ。ミイラとりがミイラになんのは最低だぞ!」

 自信満々に答えたあたしのつむじに、プリント百枚の束がべちっと降ってきた!


 つ、つ、疲れました、先生……っ。

 なんて言えるはずもなく。

 ただいま千問ノックの折りかえし、休けいをかねた暗記タイムだ。

 えーと、浸水した道を歩く場合は、切れた電線に注意。

 水は電気をとおすから、感電で大ケガする可能性アリ――と。

 あたしは×で真っ赤になったプリントと首っぴき。

 塩鬼リーダーもみんなも、カリカリとエンピツを走らせてる。

 が、うてなが机につぶれた。

「リョーマァ~~、もう七時半だよぉ。おなかすいた~~っ」

「ああ。夕飯の時間、終わっちまうか。さきに食堂へ行っててくれ」

 はぁーいと、みんなはガタガタ席を立つ。

 そしてあたしたちにあわれみの目を向け、立ち入り禁止テープをくぐって出ていっちゃった。

「りょ、涼馬くんは?」

「あとでいい。おまえらも早く終わらせて、さっさと家に帰れ」

「「らじゃぁ……」」

 あきらめて、またまちがった問題に赤ペンでしるしをつける。

 だけどその赤ペンも、あたしの気力と同じようなカスレ具合だ。

 筆バコをごそごそ、新しいのを探して、ハッと手を止めた。

「涼馬くん! あのっ、赤ペン借りてもいいっ?」

「どーぞ」

 彼は自分が使ってたのを差しだしてくれる。

「ええと、ちがくて。ベツのがいいかなー。涼馬くんの部屋に新しいのない? 取りに行こうよ! いっしょに!」

 あわてて言葉をたすと、彼はみるみる不審な顔になっていく。

「……おれの部屋に、なんか用か」

 あああっ! ウソがヘタな双葉マメ VS 頭の回転のはやい風見涼馬!

 さっそく大失敗の予感です!

 だけど、うてなが急に元気を出し、ガバッととび起きた。

「リョーマの部屋行くのっ? 行こう行こう! ボクもキョーミあるぅ!」

「そう、それ! あたしも寮の部屋にキョーミがあって! いつか保護者の許可が出たら、寮にうつりたいなーって?」

 ここぞとばかり、うてなにのっかってみる。

 涼馬くんは視線の塩分濃度を上げて、あたしたちを見まわした。

「ホントは休けいしたいだけだろ。しょうがねーな、ペン取ったら、すぐ戻るからな」

「「了解!」」

 ビッとおでこに手をあてて敬礼のポーズ。

 やったぁ、うてなの好奇心に救われたよっ!


 そんなわけで、二階の女子フロアを通りすぎ、さらに階段をあがった男子フロアの、一番手まえの部屋。

「楽さん、入ります」

「はいはーい。おかえりさーん」

 涼馬くんがノックすると、ゆる~い返事があった。

 そっか、涼馬くんって楽さんと同室なんだっけ。

 我らがアタッカーリーダーと、S組総リーダーのお部屋!

 どんななんだろうって、ノドカ兄のこと関係なしにワクワクしてきちゃう。

「楽さんって、部屋ちらかしそうだよねー」

 うてなが目を輝かせて、くふふっと笑う。

「うんうんっ。で、涼馬くんは、すっごいキッチリしてそう」

「そうでもないぞ?」

 ドアを開けると、楽さんはやっぱり勉強中だったみたい。

「あれ。めずらしいコたちだ」

 机から顔を上げた彼は、イスを回転させてこっちを向いた。

 部屋のなかは、ロッカーにベッド。

 奥には、背中あわせの勉強机。

 それが右と左に同じように置いてある。

「この二人、Sテストがヤバそうなんで、勉強会に来てるんです」

「わー、さすがの二人。でも涼馬はヨユーだねぇ。他のコのめんどうみてあげるなんて」

「こいつら帰したら、おれも自分のやりますよ」

 涼馬くんは机の引き出しから、新しい赤ペンを探してくれる。

 ノートパソコンの上に、教科書やノートがドサッとつまれてて、思いのほかザツだ。

 本だなには少年まんがやゲームソフトが並んでる。

「リョーマってゲームとかやるんだぁ。意外~」

「けっこー好きだな。格闘ゲームとか」

「男子の部屋ってかんじだねぇ。それに楽さんのほうが意外な……かんじですか?」

「ぼくが? そうかなぁ?」

 首をかたむけるあたしに、彼はほおづえをついて笑う。

 いま開いてるSテストのドリル以外、机のまわりはなんにもない。

 本だなもスッカスカで、教科書がさびしそうにスミに肩をよせあってる。

 私物らしい私物が、ない?

「モノを増やすの苦手でさ。でも涼馬のを借りて、シューティングゲームやったりするよ」

「楽さん、ほとんど触ったことないくせに、いきなりフルスコアたたきだすんだよ」

「で、おたがい引っこみつかなくなって、朝まで競っちゃったりねー」

 あたしたちは「へええ~っ」と、目がおっきくなっちゃう。

 ってことは、二人ともあんなさわやかな顔して、こっそり寝ぶそくの日もあったりするんだ。

 知らざれる、雲の上のリーダーたちの、プライベート情報。

 想像してたより、意外とフツーの男子をしてるらしい。

 キョロキョロしてたら、つま先がなにかに当たった。

 大きなリュックが、カベぞいに二つ置かれてる。

 海外旅行でも行けちゃいそうなサイズだ。

「すごい荷物だね。二人でどっかに行く予定?」

「いや。それは、基地に呼ばれたとき用だ。一週間は寝泊まりできるしたくをしてある」

「基地……! サバイバーのプロのっ?」

 トキメキの単語に、思わず声が高くなっちゃう。

 学園都市駅のむこうには、「中央司令基地」のビルが、どどんっとデッカくかまえてるんだ。

 そこにはプロが何十人も、二十四時間三百六十五日、災害への対応のために、ひかえてくれている。

 ノドカ兄が住んでたプロ用の寮も、その基地の近くにあるそうだ。

「そうそう。『仮免呼びだし』ってね。いきなり今から来いとか、スマホが鳴るんだよ。急にお休みの人が出ちゃった場合とかの、穴うめ役にね」

「あーっ、それ! うわさの、プロの現場で働くやつだぁ!」

 うてなの言うとおり、「特命生還士」の仮免許を持ってるメンバー、すなわちリーダー格は、もう本物の現場に入れるんだよねっ。

「カッコいいなぁ……」

 遠いアコガレの世界に、あたしはしみじみつぶやく。

 すると涼馬くんと楽さんは視線をかわし、なぜだか苦笑いした。

「マメ、実はな。おれたちも毎回、災害現場に入れてもらえるワケじゃないんだ」

「へ? なんで?」

「受け入れさきのチームリーダーによっては、『小学生なんて使えるか』って、ひたすら待機だけの回もある」

「そうそう。そういう時の涼馬、おりこうにイスに座ったまま、目が死んでてカワイーよ」

 からかう楽さんに、涼馬くんは口を引きつらせる。

「だって、時間のムダもいいとこじゃないですか。だったら学校で訓練してたいです」

「リョーマって、動いてるほうが生き生きしてるもんなー」

「うん。あたしだって座ってるだけはヤダなぁ」

 これは涼馬くんに同情だ。

 正和時代は、大災害時代。

 そのうえオトナの数も激減しちゃってるせいで、サバイバーの数は常にたりない。

 はやく若いリーダーを育てなきゃって、仮免は十六歳からだったのが、十三歳になり、いまや十歳からに。

 現場のプロたちも、国のルールがどんどん変わってくから、こまってんのかもな。

 そんなことを考えつつ、あたしは抜け目なく、部屋に視線を走らせる。

 なにかノドカ兄関係のものはないっ?

 すると――、本だなの写真たてが目に入った。

「これ、涼馬くんの家族?」

 海を背景に、幼稚園生くらいの涼馬くんが、全開の笑顔でピースしてる。

 両がわには、彼とよく似た、すっきりした顔だちの美男美女。

 お父さんらしき人のほうは、赤ちゃんをダッコしてる。

「……うん。家族だ」

「え~っ、リョーマかっわい、」

 い、までうてなが言いきるまえに、涼馬くんがあたしの真後ろから、腕を伸ばしてきた。

 彼の手は、写真たてをパタンとふせてしまう。

 まるで腕の中に閉じこめられたみたいな体勢になっちゃった!

 ドキッと心臓がハネて、あたしは本だなに向かったまま動けなくなる。



「なんだよー。ケチンボ~」

「うるせ」

 うてながプウッとほっぺたをふくらませると、彼はそっけない悪態をついて、あたしから離れていく。

 び、びっくりしたぁ。

 恥ずかしくて写真を見られたくないなら、口で言ってくれればいいのにさ。

 胸を鳴らしたまま、チラリとうかがうと――。

 彼は眉間にシワを寄せ、照れてるってより、痛いのをガマンするような顔。

 意外な表情を、あたしはまじまじと見つめてしまった。

 ……まさか。涼馬くんも、家族になんかあったとか?

 あたしがT地区大災害でパパとママを失ったみたいに。

 おなかの底が、急に冷たくなってきた。

 い、いやいやっ、勝手に変な想像すんのやめとこっ。

「ほら、『帰れま1000』、まだ半ぶんも暗記してねーだろ。もどれもどれ」

「なにそれ、楽しそうなのやってんねぇ。ってことは、マメちゃんもうてなちゃんも、今日は帰れないのかぁ」

 楽さんはあたしたちにニヤニヤ笑う。

「いっ、いや、帰りますよ!?」

「またまたァ~」

 あたしたちの学力にたいする、なんという信用のなさ!

「イスで寝るんじゃ体調くずすから、唯ちゃんのとこに泊めてもらいな。大浴場も使っていいから。涼馬、夕ごはんは食堂連れてってあげなよ。食堂のおばちゃんが涼馬のファンだから、こっそりごはん出してくれると思うよ。ただ、親には電話しときなね」

「でも、そんな勝手に……」

 ほんとは許可なく忍びこんでるだけで、怒られちゃうトコなのに。

「だいじょーぶ、寮長はぼくだから。今日だけ、目をつぶってあげるね」

 ぱちっとウィンクが飛んできた。

 あたしとうてなは、まさかの展開に顔を見合わせる。

「楽さん、甘やかしすぎですよ。勉強が終わったら、ちゃんと帰します」

「えー? だけどさ涼馬。あんま遅くなってから家に帰すのは危ないでしょ。自分が送るつもり? 寮の外出許可時間、もうすぎてるよ」

 涼馬くんは反論できず、ぐっとノドをつまらせた。

「マメちゃん。これでキミへの借りは返したからね」

「借り? なんでしたっけ」

 楽さんに首をかしげた後で、アッと分かった。

 実地訓練のとき、あたし、未知の危険生物を見たって報告したんだ。

 でも楽さんは信じてくれなくて、すぐ後に、大ネズミの襲撃を受けた。

 とはいえ、あれは先生たちだって予想外の、いまだナゾのままの生物だったし。

 楽さんは自分がケガしてまで、みんなを守ってくれたんだよ。

 借りだなんて思うこと、なんにもないのに。

「以上、おたがいがんばりましょー。五年S組がお祭りに参加できなかったら、六年もさびしーもんね」

 あたしのとまどいを読んだように、彼は笑って、ひらひら手をふった。


    ***


 けっきょく涼馬くんの部屋では、ノドカ兄情報はなーんにも発見できず。

 でもうてなはしっかり気分てんかんできたらしく、スキップで廊下を歩いていく。

「リョーマって楽さんに弱いよねー。あ、七海さんにもか。二人のまえだと、ふつーの五年生っぽくなっちゃって、おっもしろーい♪」

「そりゃ、尊敬するセンパイたちだからな」

「そういえば七海さんは? 七海さんも寮生だよね?」

「七海さんは近ごろ、研究所に泊まりこんでる。あの大ネズミの調査を進めてくれてるらしい。七海さんこそ、テスト前の勉強なんて必要ないもんな」

 さすがはS組のキャンパートップ、「歩くスーパーコンピューター」だ。

 あの未知の危険生物も、もしかしたらノドカ兄のゆくえ不明に関係してるかもしれないよね。

 と思うと、七海さんと話すチャンスもほしかったなぁ。

 なーんてゆっくり考える間もなく。

 その後の時間は、ジェットスピード。

「帰れま1000」を暗記しながら、焼き肉定食をおいしく食べて、大浴場までまぜてもらって、唯ちゃんにパジャマまで借りちゃって。

 なんとか千問を覚えきったら、とっくに消灯時間オーバーだっ!

 唯ちゃんと千早希さんの部屋で、ベッドにぎゅうぎゅうヅメで、おやすみなさい。

 やーっ、楽しかった!(そんな場合じゃないけど!)

 こうして毎日にぎやかにすごせるって、うらやましいなぁ。

 あたし、ノドカ兄の情報収集もしやすいから、寮を希望してたんだけどね。

 おじさんとおばさんが、ゼッタイ反対!

 亡くなった親友の娘をあずかってるのに、あたしがノドカ兄みたいにゆくえ不明になったら、どうしていいか分かんないって。

 もちろんS組に入るのも大反対された。

 でも、あたしがどうしても折れなかったから、せめて自宅からってコトにしてもらったんだ。

 ほんとの親じゃなくても、五歳から今まで、大事に育ててくれた人たちだ。

 心配なんてかけたくない。

 だけどね。あたしがノドカ兄を見つけていっしょに帰ってきたら、ものすごく喜ぶと思うんだ!


 ――そうして、まさかの寮生活も味わっちゃってむかえた、Sテスト当日!

パンッ!

 あたしは両手で顔をはさみたたき、いざっ!

 回ってきたテストのぶ厚い問題用紙を、うしろの涼馬くんに手わたす。

 彼はあたしの決意の顔つきにおどろいたのか、二度見してきた。

 そうでしょーとも。

 今日の双葉マメは、気合いのほどがちがうのデス!

「ほっぺた、赤い手形がついてるぞ」

 って、そっちか!


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