
夏から秋にかけてみなさんの周りを飛んでいるトンボ。
むしとり網を持って追いかけた経験がある方も多いかと思います。
本日はそんなトンボと、その幼虫であるヤゴについてお話しします。
トンボってどんな昆虫?
トンボとはトンボ目に属する昆虫の仲間の総称です。
丸い頭部と細長い身体、そして大きな4枚の翅が特徴的です。とても飛ぶのが上手で、他の小さな虫などを捕まえて食べる肉食性の昆虫です。幼虫時代はヤゴと呼ばれ、ほとんどの種類が水中で生活しています。そして数ヶ月から数年の幼虫期間を経て、トンボへと羽化する不完全変態の昆虫です。
トンボの代表的なグループを知る!
トンボ目はいくつかのグループに別れているので、その代表的なものを簡単に紹介します。
1. イトトンボ、カワトンボのなかま
小さな頭に、細長い体をしており、4枚の翅の形が同じ種類のトンボのなかまです。
分類では均翅亜目(きんしあもく)というグループに分類されます。
2. トンボのなかま
身近でよく見かけるシオカラトンボやアキアカネなどの中型のトンボが含まれるグループです。
3. ヤンマ・オニヤンマのなかま
ギンヤンマやオニヤンマなど、大型で飛ぶのがとても速いのトンボが多く含まれるグループです。
4. サナエトンボのなかま
トンボやヤンマに似ていますが、2つの複眼が離れています。
5. ムカシトンボ
原始的なグループのトンボです。イトトンボのような翅を持っていますが、体は他のトンボのように太い体を持っています。
ヤゴって何!?
トンボの幼虫のことをヤゴと呼びます。ヤゴはそのほとんどが水中で生活しています。
流れのある渓流の中や、浅い緩やかな水路、流れのない池など、種類によって生息している環境はさまざまです。ヤゴも成虫と同じく肉食性で、イトミミズやおたまじゃくし、小さな魚など、他の生き物を捕まえて食べます。
ヤゴの捕食はとても特徴的で、下唇という部位が折り畳まれたマジックアームのようになっており、獲物が近づくとその部位を素早く伸ばして獲物を捕まえます。
ヤゴの期間は種類によってさまざまです。
数ヶ月から1年で羽化するものもいれば、オニヤンマのように2〜4年かかる種類もいます。
ヤゴの採集する方法は?
ヤゴを採集するには、池などで網を使って採集することができます。魚獲りなどに使われるタモ網を使うのが良いでしょう。ヤゴは池や川の端にいることが多いので、水際の植物の根本を狙ってタモ網で掬うのがコツです。また水中の藻や枯れ草などにもついていることがあるので、それらを網で救ってから探す方法もよいでしょう。
地域や環境を変えることでさまざまなヤゴに出会うことができます。ヤゴも種類によって大きく形が異なるので、どんな場所でどんな形のヤゴが採集できるのかを観察してみるのも面白いです。
ヤゴの飼育は簡単?
種類にもよりますが、おうちでヤゴを飼育して、トンボへと羽化させることが可能です。
しかし先述したとおり、ヤゴは種類によっては非常に長い期間をヤゴで過ごすため、小さなヤゴを持ち帰ることはお勧めしません。
ヤゴを採集したら、水を入れた飼育ケースや水槽に移動します。水は深く入れる必要はなく。5cmくらいあれば大丈夫です。水は水道水をそのまま使うのではなく、1日汲み置きしたものなどを使用する方が安全です。素早く準備したい時は、市販のカルキ抜き剤を使用するのも良いでしょう。
エサは生きている他の生き物を与えます。おたまじゃくしや小さな魚、釣具屋さんで売っているミミズなどを与えます。水中の生き物だけではなく、小さなバッタなどもピンセットで摘んでヤゴの前で揺らすと食べます。飢餓には強いので、2〜3日おきにエサを与えると良いでしょう。
羽化が近づくとヤゴは、餌を食べなくなります。こうなったらヤゴが羽化する足場を入れてやる必要があります。
ヤゴは成虫へと羽化する際は、水から上がって草や木の枝に捕まって羽化します。
そのため、木の枝などを水の中に立てかけてあげて、羽化する準備を整えてあげましょう。
羽化のタイミングになるとヤゴは水からあがり、足場を登ってじっと動かなくなります。
そうなると羽化が始まるので、決して動かさずにそっと見守りましょう。
羽化は夜中から明け方にかけて行われることが多いため、なかなか観察するのは難しいですが、大切に育てたヤゴが無事にトンボになった姿を見るととても感動します。
羽化したトンボは、元いた場所に返してあげてもよいでしょう。ただ以前の記事には「一度飼育した虫は最後まで責任をもって飼育しましょう」という言葉を書いたにも関わらず、このようなことを書くのは矛盾ではないかと思う人もいるかもしれません
トンボの成虫は、家の中で飼育することが非常に難しい昆虫です。そのため飼育にチャレンジしても、羽がボロボロになったり、すぐに死んでしまうことがほとんどです。
しかしヤゴを飼育して完全変態の様子を観察するということは、非常に有意義な経験であり、この飼育をきっかけに昆虫や自然環境に興味を持つ人も増えることでしょう。
そのためヤゴの飼育に関しては、成長したあとは野外に放すという行為が例外的に許されてもいいものと個人的には思っています。ただし、自然環境にできるだけ影響を与えないように下記のことを考慮することが大切です。
- ヤゴに与えるエサは、ヤゴを見つけた場所のものを採集して与える
- 成虫を放す際は、必ずヤゴを見つけた場所で行う
- 一度に多くのヤゴを飼育しすぎない
- 飼育の過程で増やしたものを野外には放さない
上記のことを必ず守り、自然環境に配慮した上でヤゴ飼育を楽しむことが大切です。
写真:PIXTA
【プロフィール】
むし岡だいき
昆虫採集YouTuber 。チャンネル登録22万人 、一番好きな昆虫はコロギス。