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いきものの獲り方 海編『水辺の冒険日記 いきものはいつも隣にいる』ためし読み


僕たちの身近な自然には、まだ知られざる生命のドラマが息づいています。より広く自然を見ることで、みなさんがいつも歩いている道端や眺めている川が、これまでとは違った表情を見せたり、何気ない日常が実は楽しさに満ちあふれていたりします。僕と一緒に、命をいただく冒険へ出発しましょう。

連載第3回は、「捕獲マスターへの道」の中から「いきものの獲り方」を紹介します!

※本連載は『水辺の冒険日記 いきものはいつも隣にいる』から一部抜粋して構成された記事です。

<捕獲マスターへの道>いきものの獲り方 海編

法律を守ってキス釣りから

 捕獲マスターへの道は、いきものに関する法律や規則、ルールやマナーを守ることから始まる。捕獲の計画を立てるときには注意事項(P138)を必ず確認しよう。
 まずは海釣りをするなら知っておきたい魚がキス。傷みが早いのでスーパーに並ぶことはほとんどなく、釣り人だけが鮮度を味わえる。砂浜や堤防の近くにいることが多く、特に春は浅いところで群れている。
 準備する道具は、僕が動画でよく使っている100円ショップの釣り具。
 キスを釣るなら竿の長さは180㎝あれば十分だ。仕掛けのブラクリにつけるエサのアオイソメは、口に針をかけると逃げられにくい。
 釣り方の基本は、釣り竿を振って投げたらリールで糸をゆっくり巻き、エサを動かしながら広範囲を探る。アタリ(魚がかかった反応)が出て糸を巻き取る際は、魚が引いているときに待ち、緩んだら巻くこと。小魚でも大物でもコツは変わらない。
 キスはSNSなどの釣果情報を頼りに行けば即釣れる。釣れないときはその場所にいないと思って移動したほうがいい。


最近では部屋から直接釣りができる宿もあるからおすすめ


水ラーメン流・マゴチ必勝法

 砂浜や河口近くの海底に潜む上品な旨味の高級魚・マゴチも狙い目。旬は夏だけど場所を選べば一年中釣れる。
 キスと同じ釣りセットでもいいが、マゴチは40㎝超えもよく釣れるし、遠投したほうが確実に釣果もあるので、リールを取りつけた210㎝以上の振り出し竿を用意したい。
 ここで誰にも教えたくない水ラーメン流の必勝法をこっそり公開。
 まずはマゴチの大好物のキスやハゼなどを先に釣って、エサとして使う。小魚だけでは軽くて飛距離に限界があるけど、オモリをつけてぶん投げるとかなり遠くまで届くから試してみて。 
 マゴチは捕食スイッチが入ると食いついてくるので、キスが生きているようにリールをゆっくり巻いて泳がせるのもコツ。
 これは熟練のフィッシャーマンに圧勝するくらい釣れた方法だ。同じようにして海底にいるヒラメが釣れることもある。

網で獲れるトウゴロウイワシ

 トウゴロウイワシは光に集まるプランクトンを追いかけて来る小魚だ。夜の漁港の海面をライトで照らせばすぐ集まってくるので、タモ網ですくって捕まえよう。
 小魚やカニは100円ショップの網でも捕まえられるが、柄が弱くて耐久性には難あり。ホームセンターなどにある柄がアルミ製の網のほうが長持ちする。
 両手が空くヘッドライトは、夕方以降の釣りや観察のときに便利なので用意する。

イソガニは動きが鈍る夜に狙う

 いつでも獲れるけど獲れない、それがイソガニとイワガニ。
 小さいくせにめちゃくちゃ素早いので、日中の潮干狩りのときに見かけても獲るのは至難の業。動きが鈍くなる夜以降に狙ったほうがいい。
 石の裏に隠れているヤツは、石をひっくり返して素手でパーン。消波ブロックの隙間にいるヤツも素手でパーン。
 本当に速いからつぶす勢いで押さえなければ獲れない。網でも獲れるけど、シンプルに素手のほうが簡単だと思う。
 捕まえたときにハサミを持つと自切して逃げるので、シリブタ(腹側の下部)を持とう。ハサミが届かないから挟まれる心配もない。
 イソガニとイワガニはどっちも素揚げがうまい。エビ味のスナックみたいな香ばしさがやみつきになる。

釣って楽しいショウジンガニ

 捕獲の難易度が上がるけど、みなさんに食べてほしいのが別名・みそ汁ガニと呼ばれるショウジンガニだ。
 日中には消波ブロックや石の隙間、夜間には漁港の岸壁に張りついている。捕まえに行くには危ない場所もあるので釣るのがおすすめだ。
 ナイロンの釣り糸があれば、釣り竿や針はなくても大丈夫。打ち上げられた魚やスーパーで買った切り身を糸に結び、ショウジンガニに向かって垂らすだけ。
 動くものに反応するので、糸を軽く動かして食いつかせよう。
 エサをハサミでしっかりつかんだのを確認したら素早く釣り上げる。

塩をかけると飛び出すマテガイ

 貝は獲って食べるいきものの入門編にぴったり。潮干狩りのイベントでも気軽に獲れる細長い二枚貝のマテガイは、アサリより身が柔らかくて味も濃厚な食材だ。
 潮の満ち引きが大きい大潮の時期が獲りやすい。干潟で菱形の小さい穴が開いている場所を見つけたら、ねじり鎌やスコップで平らに掘る。穴が続いていたらマテガイが潜んでいる証拠なので掘り出そう。
 マテガイは塩を使って獲るのも楽しい。穴に塩をつまんで入れると、塩分の変化に反応して飛び出してくる。
 殻が割れないように先端をやさしくつかんで、ゆっくり回しながらまっすぐに引き抜くのがコツだ。


塩をかけるとどんどん飛び出てくるマテガイ


消波ブロックの隙間に落ちるな

 海岸でよく見かける消波ブロックの隙間に落ちたら、二度と上がってこられないと思ったほうがいい。
 ブロックの複雑な隙間によって洗濯機のような渦が生まれているので、吸い込まれてしまう危険がある。
 水辺で遊ぶ場合はライフジャケットが必須。スポンジが入っている固型式と、空気で膨らむ膨張式があるが、僕は海岸で使うなら固型式をおすすめする。
 海沿いには消波ブロックや岩場、フジツボなどの尖ったものがたくさんあり、膨張式ではぶつかった拍子に破れてしまう危険もある。
 安全を確保したうえで捕獲を楽しもう。

船釣りイベントはアジが爆釣

 船に乗って沖へ釣りに行く船釣りはハードルが高いと思われがちだけど、家族で楽しめるおすすめのイベントだ。特にアジ釣りは春から秋まで開催されているし、手ぶらで気軽に出かけられるコースもある。
 ベテランの船長が釣り具を用意して魚がいる海域に船を出してくれるから、腕に自信がない人でもちゃんと釣れる。僕が小学生のときに初めて参加した船釣りでもアジを10匹以上釣ったくらいだ。
 アジは魚の捌き方を練習するのにもぴったり。100円ショップの包丁で三枚おろしからチャレンジしてみよう。

海釣りの1 0 0円ショップ釣り具

 海釣りに使うことが多い100円ショップの釣り具を紹介しよう。釣り竿とリールと糸がセットで1000円前後の商品もあり、必要な道具を格安でそろえられる。

ルアーロッド…120〜200㎝程度の短い竿。遠投の必要がない岸に近い場所での釣りに。リールと糸が付属する竿は、買っておいて損はない良コスパの釣り具だ。

振り出し竿…伸縮できる200㎝以上の竿。どんぶりアタックで遠投できる。

リール…釣り竿につけて糸を巻き取る。扱いやすいスピニングリールと、巻き取る力が強いベイトリールがある。使用できる竿が違うので間違えないようにそろえて。

穴釣り用ロッド…リールを使わない竿。糸に針とオモリをつければ使える。消波ブロックの隙間の釣りにぴったり。

仕掛け…釣り針や糸(PEライン)、オモリ、サルカン(針とオモリの連結具)

釣り鈴…魚のアタリが見えづらい夜間に使うと音でわかる。夜釣りには便利だ。

擬似餌…釣りたい魚のエサに似せた金属製のジグヘッドやラバー製のタイラバなど。

ブラクリ…針とオモリが一体化した簡易な仕掛けは穴釣りやカニ釣りにぴったり。

クーラーボックス…釣った魚を入れる容器。軽くて持ち運びしやすい発泡スチロール製。見た目以上に使える。

ラインカッター…仕掛けを交換するときに釣り糸を切るためのカッター。

水汲みバケツ…ロープつきのコンパクトに折りたためるバケツ。高さのある堤防や岩場から海水を汲むときに。

エアーポンプ…獲ったいきものに酸素を供給できる。


安くても丈夫で、僕が2年近く使っている釣り具もある


 


楽しさの裏に危険があることを忘れずに

水辺に限らず、自然には楽しさがあると共に危険が必ずあります。ちょっとした気のゆるみなどで甘く見ていると大きな事故など命にかかわる事態に繋がってしまいます。特に小さいお子さんは、ひとりで冒険に出るのではなく、ご家族に必ず確認を取って楽しんでほしいです。いつもみなさんに自然の素晴らしさを届けている僕も危険な体験をたくさんしてきました。楽しさを追いかけるだけではなく、安全面にも配慮して、新たな大冒険へ出発しましょう!

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