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「努力」ってなんだろう


「先生の話に集中できない」「友達と話が合わない」「自分のペースを大事にしたい」……そんな自分の特性に悩む10代に向けて、発達を専門とする人気精神科医・本田秀夫先生によるアドバイスをまとめたのが『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』です。臨床経験30年以上の本田先生だからこそ語れる具体的な悩みと対処法を、マンガ付きで紹介します。子どもの気持ちを理解したい保護者、教育関係者、支援者にもぜひ手に取ってほしい1冊です。

※本連載は『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』から一部抜粋して構成された記事です。一部写真は本には掲載されていません。

練習してもうまくできないのは努力が足りないから?

 体育の授業で、苦手ななわとびの練習をしなければいけないとき。クラスには二重とびができている人もたくさんいるのに、自分はまだ前とびすら5回以上続かない。放課後に一人で練習してもまったくうまくならず、むしろ疲れてつまずく回数が増えるばかり……。そんなことがあると、「どうして自分だけ」と思ってしまいますよね。「練習が足りないんだ」「もっと努力しなきゃ」と自分を責めて、つらい思いをした人もいるかもしれません。

 確かに、練習を繰り返すことによって習得できる場合もあります。しかし、なかには一生懸命やってもうまくいかないこともあります。「努力すれば、どんな壁も必ず乗り越えられる」というセリフはよく聞きますが、実際にはそうともかぎりません。

 一生懸命やってもできなかったとき、その人の努力不足だとは私は思いません。人間には、得意不得意があるからです。何もかもが得意な人なんていません。人それぞれ、少しの練習で身につくこともあれば、繰り返し練習しても身につきにくいこともあります。

 不得意なことに向き合わないのは「逃げ」だとか「かっこ悪い」というイメージもあるかもしれません。ただ、不得意なことを無理して続けていると、得意なことが消えてしまう場合もあります。だからこそ、不得意を克服することよりも、得意を伸ばすことに切り替えてみる。そうすると、いろいろなことを努力しやすくなります。どうして得意を伸ばすことがそんなに重要なのか。それはこのあと、「努力」にまつわるさまざまな悩みを紹介しながら、説明していきましょう。

 自分に自信が持てない 



勉強をがんばっているけど同級生に評価されない

 学校では、勉強ができる人よりも、運動が得意な人や話がおもしろい人のほうが、人気があることも多いもの。そんな環境のなかで、自分のよさが評価されず、自信が持てなくてモヤモヤすることもあるでしょう。

 よくあるのが、勉強が得意で、どの教科もテストでいい点が取れるけど、勉強以外のことにはなかなか自信が持てないというパターンです。勉強を本当によくがんばっていて、授業中も積極的に発言をしている。でも、それをほめてくれるのは先生だけで、同級生にはあまり評価されていない感じがする。自分だってがんばっているのに、運動が得意な人たちばかりチヤホヤされて、不公平だと思う、というような悩みごとを聞くことがあります。

無理にがんばって自信を失うことも

 勉強が得意な人のなかには、「勉強だけではダメなんだ」と思って、得意ではないことに手を広げる人もいます。本当は運動が苦手なのに、まわりの人にいいところを見せようとして、運動系の部活動を始めたりするんです。部活動で弱点を克服しようとしたり、ほかの人の評価を求めたりするんですね。

 ところが、そういうやり方をすると、うまくいかないことが多いです。好きで始めたことではないので、練習についていけない。練習してもうまくなれず、自分の能力のなさを痛感することになってしまって、むしろ自信を失う、といったことになりがちです。失敗して恥ずかしい思いをして、いわゆる「黒歴史」になってしまう場合もあります。



弱点を克服するよりも得意なことに注力しよう

 これまでにも書きましたが、苦手なことを克服するのは大変です。それよりも得意なことを伸ばすほうが、ストレスも少なくなり個性も際立ちます。

 好きなこと・得意なことをやっていれば、同じ分野に興味を持つ人と出会うチャンスも広がります。みんなにチヤホヤされることよりも、自分が楽しく活動することを大事にしたほうが、結果として巡り合わせがよくなると思います。

 

まとめ
人気を求めて好きでもないことに手を出すと、「黒歴史」になってしまうかも。

あなたは変わることも、変わらないことも選べます

私がみなさんに伝えたいのは、「あなたは変わることも、変わらないことも選べます」ということです。

そもそも人生は、変わるか変わらないかの二択ではありません。「この部分は変えるけど、ここは変えない」という選択をすることも多くあります。
そういう意味では、みなさんには「変えなくていい部分」を見極めてほしいと思います。自分の好きなこと、自分らしいやり方が「変えなくていい部分」です。自分らしさを大切にしながら、それ以外の部分はまわりの人にも合わせていく。その見極めができれば、心地よく過ごすことができます。

書籍情報


著者: 本田 秀夫

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784048974110

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