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「普通」ってなんだろう


「先生の話に集中できない」「友達と話が合わない」「自分のペースを大事にしたい」……そんな自分の特性に悩む10代に向けて、発達を専門とする人気精神科医・本田秀夫先生によるアドバイスをまとめたのが『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』です。臨床経験30年以上の本田先生だからこそ語れる具体的な悩みと対処法を、マンガ付きで紹介します。子どもの気持ちを理解したい保護者、教育関係者、支援者にもぜひ手に取ってほしい1冊です。

※本連載は『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』から一部抜粋して構成された記事です。一部写真は本には掲載されていません。

みんなとノリが合わず「正解」がわからなくなったら

 小学生から中学生、高校生へと学年が上がっていくなかで、生活は大きく変化していきます。勉強のやり方や結果、部活動での活躍、友だち関係など、いろいろなことが変わっていくものです。そのなかで、自分のやり方がある時期から、うまくいかなくなることもあるでしょう。

 例えば、小学校低学年の頃はみんなと仲良く、うまくやっていたのに、だんだん「みんなとノリが合わないこと」が増えてくる場合。何人かで勉強や部活動などの話をしているとき、思ったことを口にすると、自分の発言だけ「えっ?」とキツめにつっこまれるようになる。「普通、そんなことしないよね」「ちょっと変だよ」と言われてしまって、それ以上話せなくなる。それからは発言しようとするたびにびくびくしてしまう……。

 勉強でも運動でも、会話でも、それまで問題なくできていたことが急に通じなくなると、とまどってしまいますよね。「正解」や「普通」がよくわからなくなり、何を言っても、何をしても、否定されるような気がしてくる。そうやって、一人で悩みを抱えてしまう人もいるでしょう。

 自分が普通じゃないと思ったときには、どうすればいいのでしょうか。みんなに合わせることを覚えたほうがいいのか。それとも、まわりから「変だよ」と言われても、自分を貫いたほうがいいのか。難しい問題ですが、私は「普通」を気にしないほうがいいと思っています。なぜ「普通」を気にしないのがいいのか。そのためにどんな工夫をすればいいのか。この章で一緒に考えていきましょう。

 「普通はこうでしょ」と言われる 



「普通はこうでしょ」と言われたらどうすればいいのか

 自分では普通にしているつもりなのに、友だちから「変だよ」「普通はこうでしょ」というようなことを言われたら、みなさんはどうしますか?

 例えば、マンガのように数人の友だちが「これ、かわいくない?」と話して盛り上がっているときに、同じテンションで入っていくことができず、雰囲気を壊してしまったら。素直に思ったことを伝えただけなのに、ちょっと険悪なムードが出てしまったら。

 友だちと仲良くやっていくために、「正直、かわいいと思えない」と感じていても、話やノリを合わせますか? それとも無理に合わせないで、その子たちと少し距離をとるようにするでしょうか。

相手に合わせるのが苦手で態度に出てしまう人もいる

 学校生活では、話やノリを合わせようとする人が多いかもしれません。学校は集団行動をする場面が多く、みんなに合わせたほうが無難なこともあります。

 なかには、どこのグループに行ってもその場のノリに合わせて、そつなく振る舞えるという人もいます。そういう人は相手に合わせて世渡りしていくことに、さほどストレスを感じないのかもしれません。

 一方で、ノリを合わせるのが苦手という人もいます。みんなが「かわいい」と言っていても、その雰囲気に乗り切れない。内心「そうでもない」と思っていると、気持ちが態度や言葉に出てしまうタイプですね。そういう人は、無理に交流せず、距離をとるというのも一つの方法かもしれません。



「普通」の人だと思われていたほうが無難?

 友だち同士の集まりでは、何をかわいいと思うか、どんなファッションが好きか、どういう流れで何の話をするのかなどいろいろな基準があり、それがグループの「普通」になっています。

 ただ、その「普通」は狭い人間関係のなかでの評価にしか過ぎません。他の集団ではまったく違うことが「普通」とみなされている場合もあるのです。

 コミュニティごとに「普通」が異なっていれば、それが合わない人もいるのは当然のこと。自分が所属しているコミュニティの「普通」に合わせることが難しいと感じるのであれば、自分に合いそうな基準を持っているほかの場所を探したっていいわけです。

「ほかの普通」にも目を向けてみるといいかも

 とは言え、ほとんどの時間を学校で過ごしている時期に、いきなり「友だちと距離をとろう」と考えるのも難しいと思います。その場合はいまの人間関係をそれなりに維持しながら、生活範囲のなかで「ほかのコミュニティ」を探してみましょう。

 例えば学校の部活動や委員会に所属してみると、そのなかで居心地のいい集団が見つかるかもしれません。すでに部活動をやっていて、部のノリが苦手なら、部活終わりの雑談にはつき合わず、さっさと家に帰る。その上で、ほかの部活との兼部や転部を考えるのもいいでしょう。

 学校内の関わりにこだわらず、習い事や地域の趣味のサークルなどに参加してみるのもおすすめです。同級生よりも、地域で年上や年下の人とつき合うほうが合っているという人もいます。できる範囲で「ほかの普通」にも目を向けてみると、少し世界が広がって、楽になるかもしれません。



 

まとめ
「普通」はコミュニティによって変わる。いつもと違うグループにも参加してみよう。

あなたは変わることも、変わらないことも選べます

私がみなさんに伝えたいのは、「あなたは変わることも、変わらないことも選べます」ということです。

そもそも人生は、変わるか変わらないかの二択ではありません。「この部分は変えるけど、ここは変えない」という選択をすることも多くあります。
そういう意味では、みなさんには「変えなくていい部分」を見極めてほしいと思います。自分の好きなこと、自分らしいやり方が「変えなくていい部分」です。自分らしさを大切にしながら、それ以外の部分はまわりの人にも合わせていく。その見極めができれば、心地よく過ごすことができます。

書籍情報


著者: 本田 秀夫

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784048974110

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