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「先生の話に集中できない」「友達と話が合わない」「自分のペースを大事にしたい」……そんな自分の特性に悩む10代に向けて、発達を専門とする人気精神科医・本田秀夫先生によるアドバイスをまとめたのが『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』です。臨床経験30年以上の本田先生だからこそ語れる具体的な悩みと対処法を、マンガ付きで紹介します。子どもの気持ちを理解したい保護者、教育関係者、支援者にもぜひ手に取ってほしい1冊です。
※本連載は『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』から一部抜粋して構成された記事です。一部写真は本には掲載されていません。
友だちとのつき合い方は一つじゃない
ここからは、私がこれまでに多くの10代の人たちから聞いてきた悩みごとの紹介と、それに対しての発想の切り替え方を提案していきます。
まずは友だち関係についての悩みから始めましょう。
学校生活は、同級生と過ごす時間がとても長いものです。だからこそ、友だち関係が思い通りにいかなかったり、友だちグループから浮いてしまったりすると、ずっとモヤモヤした気持ちを抱えてしまうことになりますよね。
学校の先生からは「友だちと仲良く」と繰り返し言われるでしょうし、誰とでも仲良くできる、友だちが多い人はクラスでも目立つ存在になりがちです。また、リアルの友だちとSNSでつながるとき、友だちの数がそのままフォロワーやいいねの数につながることもあるでしょう。
ただ、改めて考えてみると「友だち」って一体なんなのでしょうか。また、「友だち」の輪から外れることや、数が多くないことってそんなに悪いことなのでしょうか。
一般的な友だちの定義や、大人が理想とするような友だちとのつき合い方はひとまず置いておいて、自分のタイプに合った友だち関係の築き方を一緒に考えていきましょう。
自分がどういうタイプの人間なのかを知る。そして、自分のタイプに合ったやり方で問題に対処していく。私は、そういうふうに発想を切り替えて、悩みごとから解放された人たちを見てきました。
パラパラとめくって気になるところから読み進めてもらうと、「そういう考え方もアリなんだ」というヒントがなにかしら見つかると思います。
友だち関係でモヤモヤする
「友だち関係の悩み」は人によってけっこう違う
友だち関係の悩みは誰にでもありますが、「どうしてモヤモヤしているのか」を聞いてみると、悩んでいるポイントは人によって違います。
例えば、「話し相手はいるけど、趣味の合う友だちがいない」と悩む人もいれば、「親友と呼べるほどの相手がいない」という人も、「仲が良い友だちはいるけど、ときどき無性に一人になりたくなる」という人もいます。
人それぞれ求めているものは違いますが、友だち関係の悩みは基本的に「自分を取り囲む人間関係に満足できていない」というものです。友だちの数や人柄、つき合い方をよく考えてみたときに、満足できる状況ではないからモヤモヤする。それで友だち関係を変えようとするわけです。
そもそも「友だち」ってなにか説明できる?
多くの人はそこで、友だちを増やそうとしたり、友だちともっと仲良くなろうとします。でも「より多く」「より親しく」を追い求めても、なかなか満足できなくて、ないものねだりになっていくこともあります。
友だち関係で悩んだときには「そもそも友だちってなんだろう?」と考えてみましょう。「友だち」の形はいろいろあります。いつも一緒にいるのが友だちだと考える人もいれば、たまに遊ぶ相手を友だちだと思っている人もいます。
例えば、普段はそれほど接点がないけど、試験勉強のときだけ一緒に行動する友だちがいてもいい。そこで「より親しく」と考えず、「この友だち関係がちょうどいい」と思ってつき合う。そういう距離感が向いている場合もあります。
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「理想の友だち関係」にこだわらなくてもいい
「いつも一緒にいられるのが友だち。そういう相手をつくらなきゃ」と思っていると、苦しくなるものです。そこまで親しくなれない相手とも仲良くなろうとして、結局、自分が我慢することになったりします。そうなると、なんのための友だちづき合いなのか、わからなくなっていきますよね。
思春期には、いつも誰かと交流しているフレンドリーな人間になろうとする人が多いです。それこそが明るく健康的な生き方だと考えるのでしょう。
でも、あなたがしんどいと感じるなら、その理想は手放してOKです。「たまにしか遊ばないけど、あの子とは仲が良い」という方向に考えを変えると、無理なく友だちとつき合っていけるのではないでしょうか。
自分を大切にすると友だち関係のモヤモヤが減る
ここまで読んで、気づいた人もいるかもしれませんが、友だちづき合いに満足するには、友だちより自分を大切にしたほうがいいんです。「友だちのために何をすれば、いいつき合いになるか」ではなく、「自分はどんな友だちづき合いをしたいのか」を考える。誰かと趣味の話をしたいのか。一緒にいたいのか。心地よい距離感はどれくらいなのか。そういうことを考えていくと、おのずと自分に合う友だちづき合いも見えてきます。
学校では同級生とそれなりに会話して過ごし、授業が終わったらすぐに家に帰って、ゲーム友だちとオンラインで楽しくしゃべっている人もいます。一人で帰宅する姿だけを見れば、友だちがいないように見えるかもしれませんが、その人らしく友だちづき合いをして、生活に満足できているんです。
自分らしい友だちづき合いを広げるためには、「みんなと仲良く」よりも「自分が楽しく」を優先してみてください。
まとめ
「仲良く」よりも「楽しく」を優先したほうが、いい友だち関係ができるかもしれない。
あなたは変わることも、変わらないことも選べます
私がみなさんに伝えたいのは、「あなたは変わることも、変わらないことも選べます」ということです。
そもそも人生は、変わるか変わらないかの二択ではありません。「この部分は変えるけど、ここは変えない」という選択をすることも多くあります。
そういう意味では、みなさんには「変えなくていい部分」を見極めてほしいと思います。自分の好きなこと、自分らしいやり方が「変えなくていい部分」です。自分らしさを大切にしながら、それ以外の部分はまわりの人にも合わせていく。その見極めができれば、心地よく過ごすことができます。
書籍情報
著者: 本田 秀夫
- 【定価】
- 1,540円(本体1,400円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784048974110